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  1. 2018.04.30 달려라 메로스 - 일본어
  2. 2018.04.30 달려라 메로스 - 한국어

달려라 메로스(走れメロス:はしれめろす)

다자이 오사무(太宰 治) (1940)

일본어 원문


 メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此(こ)のシラクスの市にやって来た。メロスには父も、母も無い。女房も無い。十六の、内気な妹と二人暮しだ。この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿(はなむこ)として迎える事になっていた。結婚式も間近かなのである。メロスは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。メロスには竹馬の友があった。セリヌンティウスである。今は此のシラクスの市で、石工をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちにメロスは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。のんきなメロスも、だんだん不安になって来た。路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈(はず)だが、と質問した。若い衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老爺(ろうや)に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。メロスは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。

「王様は、人を殺します。」

「なぜ殺すのだ。」

「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」

「たくさんの人を殺したのか。」

「はい、はじめは王様の妹婿さまを。それから、御自身のお世嗣(よつぎ)を。それから、妹さまを。それから、妹さまの御子さまを。それから、皇后さまを。それから、賢臣のアレキス様を。」

「おどろいた。国王は乱心か。」

「いいえ、乱心ではございませぬ。人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮しをしている者には、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。御命令を拒めば十字架にかけられて、殺されます。きょうは、六人殺されました。」

 聞いて、メロスは激怒した。「呆(あき)れた王だ。生かして置けぬ。」

 メロスは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。たちまち彼は、巡邏(じゅんら)の警吏に捕縛された。調べられて、メロスの懐中からは短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。メロスは、王の前に引き出された。

「この短刀で何をするつもりであったか。言え!」暴君ディオニスは静かに、けれども威厳を以(もっ)て問いつめた。その王の顔は蒼白(そうはく)で、眉間(みけん)の皺(しわ)は、刻み込まれたように深かった。

「市を暴君の手から救うのだ。」とメロスは悪びれずに答えた。

「おまえがか?」王は、憫笑(びんしょう)した。「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」

「言うな!」とメロスは、いきり立って反駁(はんばく)した。「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。王は、民の忠誠をさえ疑って居られる。」

「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ。人の心は、あてにならない。人間は、もともと私慾のかたまりさ。信じては、ならぬ。」暴君は落着いて呟(つぶや)き、ほっと溜息(ためいき)をついた。「わしだって、平和を望んでいるのだが。」

「なんの為の平和だ。自分の地位を守る為か。」こんどはメロスが嘲笑した。「罪の無い人を殺して、何が平和だ。」

「だまれ、下賤(げせん)の者。」王は、さっと顔を挙げて報いた。「口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、いまに、磔(はりつけ)になってから、泣いて詫(わ)びたって聞かぬぞ。」

「ああ、王は悧巧(りこう)だ。自惚(うぬぼ)れているがよい。私は、ちゃんと死ぬる覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」と言いかけて、メロスは足もとに視線を落し瞬時ためらい、「ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい。たった一人の妹に、亭主を持たせてやりたいのです。三日のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来ます。」

「ばかな。」と暴君は、嗄(しわが)れた声で低く笑った。「とんでもない嘘(うそ)を言うわい。逃がした小鳥が帰って来るというのか。」

「そうです。帰って来るのです。」メロスは必死で言い張った。「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許して下さい。妹が、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にセリヌンティウスという石工がいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人を絞め殺して下さい。たのむ、そうして下さい。」

 それを聞いて王は、残虐な気持で、そっと北叟笑(ほくそえ)んだ。生意気なことを言うわい。どうせ帰って来ないにきまっている。この嘘つきに騙(だま)された振りして、放してやるのも面白い。そうして身代りの男を、三日目に殺してやるのも気味がいい。人は、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代りの男を磔刑に処してやるのだ。世の中の、正直者とかいう奴輩(やつばら)にうんと見せつけてやりたいものさ。

「願いを、聞いた。その身代りを呼ぶがよい。三日目には日没までに帰って来い。おくれたら、その身代りを、きっと殺すぞ。ちょっとおくれて来るがいい。おまえの罪は、永遠にゆるしてやろうぞ。」

「なに、何をおっしゃる。」

「はは。いのちが大事だったら、おくれて来い。おまえの心は、わかっているぞ。」

 メロスは口惜しく、地団駄(じだんだ)踏んだ。ものも言いたくなくなった。

 竹馬の友、セリヌンティウスは、深夜、王城に召された。暴君ディオニスの面前で、佳(よ)き友と佳き友は、二年ぶりで相逢うた。メロスは、友に一切の事情を語った。セリヌンティウスは無言で首肯(うなず)き、メロスをひしと抱きしめた。友と友の間は、それでよかった。セリヌンティウスは、縄打たれた。メロスは、すぐに出発した。初夏、満天の星である。

 メロスはその夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで、村へ到着したのは、翌(あく)る日の午前、陽は既に高く昇って、村人たちは野に出て仕事をはじめていた。メロスの十六の妹も、きょうは兄の代りに羊群の番をしていた。よろめいて歩いて来る兄の、疲労困憊(こんぱい)の姿を見つけて驚いた。そうして、うるさく兄に質問を浴びせた。

「なんでも無い。」メロスは無理に笑おうと努めた。「市に用事を残して来た。またすぐ市に行かなければならぬ。あす、おまえの結婚式を挙げる。早いほうがよかろう。」

 妹は頬をあからめた。

「うれしいか。綺麗(きれい)な衣裳も買って来た。さあ、これから行って、村の人たちに知らせて来い。結婚式は、あすだと。」

 メロスは、また、よろよろと歩き出し、家へ帰って神々の祭壇を飾り、祝宴の席を調え、間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。

 眼が覚めたのは夜だった。メロスは起きてすぐ、花婿の家を訪れた。そうして、少し事情があるから、結婚式を明日にしてくれ、と頼んだ。婿の牧人は驚き、それはいけない、こちらには未だ何の仕度も出来ていない、葡萄(ぶどう)の季節まで待ってくれ、と答えた。メロスは、待つことは出来ぬ、どうか明日にしてくれ給え、と更に押してたのんだ。婿の牧人も頑強であった。なかなか承諾してくれない。夜明けまで議論をつづけて、やっと、どうにか婿をなだめ、すかして、説き伏せた。結婚式は、真昼に行われた。新郎新婦の、神々への宣誓が済んだころ、黒雲が空を覆い、ぽつりぽつり雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。祝宴に列席していた村人たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、狭い家の中で、むんむん蒸し暑いのも怺(こら)え、陽気に歌をうたい、手を拍(う)った。メロスも、満面に喜色を湛(たた)え、しばらくは、王とのあの約束をさえ忘れていた。祝宴は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになり、人々は、外の豪雨を全く気にしなくなった。メロスは、一生このままここにいたい、と思った。この佳い人たちと生涯暮して行きたいと願ったが、いまは、自分のからだで、自分のものでは無い。ままならぬ事である。メロスは、わが身に鞭打ち、ついに出発を決意した。あすの日没までには、まだ十分の時が在る。ちょっと一眠りして、それからすぐに出発しよう、と考えた。その頃には、雨も小降りになっていよう。少しでも永くこの家に愚図愚図とどまっていたかった。メロスほどの男にも、やはり未練の情というものは在る。今宵呆然、歓喜に酔っているらしい花嫁に近寄り、

「おめでとう。私は疲れてしまったから、ちょっとご免こうむって眠りたい。眼が覚めたら、すぐに市に出かける。大切な用事があるのだ。私がいなくても、もうおまえには優しい亭主があるのだから、決して寂しい事は無い。おまえの兄の、一ばんきらいなものは、人を疑う事と、それから、嘘をつく事だ。おまえも、それは、知っているね。亭主との間に、どんな秘密でも作ってはならぬ。おまえに言いたいのは、それだけだ。おまえの兄は、たぶん偉い男なのだから、おまえもその誇りを持っていろ。」

 花嫁は、夢見心地で首肯(うなず)いた。メロスは、それから花婿の肩をたたいて、

「仕度の無いのはお互さまさ。私の家にも、宝といっては、妹と羊だけだ。他には、何も無い。全部あげよう。もう一つ、メロスの弟になったことを誇ってくれ。」

 花婿は揉(も)み手して、てれていた。メロスは笑って村人たちにも会釈(えしゃく)して、宴席から立ち去り、羊小屋にもぐり込んで、死んだように深く眠った。

 眼が覚めたのは翌る日の薄明の頃である。メロスは跳ね起き、南無三、寝過したか、いや、まだまだ大丈夫、これからすぐに出発すれば、約束の刻限までには十分間に合う。きょうは是非とも、あの王に、人の信実の存するところを見せてやろう。そうして笑って磔の台に上ってやる。メロスは、悠々と身仕度をはじめた。雨も、いくぶん小降りになっている様子である。身仕度は出来た。さて、メロスは、ぶるんと両腕を大きく振って、雨中、矢の如く走り出た。

 私は、今宵、殺される。殺される為に走るのだ。身代りの友を救う為に走るのだ。王の奸佞(かんねい)邪智を打ち破る為に走るのだ。走らなければならぬ。そうして、私は殺される。若い時から名誉を守れ。さらば、ふるさと。若いメロスは、つらかった。幾度か、立ちどまりそうになった。えい、えいと大声挙げて自身を叱りながら走った。村を出て、野を横切り、森をくぐり抜け、隣村に着いた頃には、雨も止(や)み、日は高く昇って、そろそろ暑くなって来た。メロスは額(ひたい)の汗をこぶしで払い、ここまで来れば大丈夫、もはや故郷への未練は無い。妹たちは、きっと佳い夫婦になるだろう。私には、いま、なんの気がかりも無い筈だ。まっすぐに王城に行き着けば、それでよいのだ。そんなに急ぐ必要も無い。ゆっくり歩こう、と持ちまえの呑気(のんき)さを取り返し、好きな小歌をいい声で歌い出した。ぶらぶら歩いて二里行き三里行き、そろそろ全里程の半ばに到達した頃、降って湧(わ)いた災難、メロスの足は、はたと、とまった。見よ、前方の川を。きのうの豪雨で山の水源地は氾濫(はんらん)し、濁流滔々(とうとう)と下流に集り、猛勢一挙に橋を破壊し、どうどうと響きをあげる激流が、木葉微塵(こっぱみじん)に橋桁(はしげた)を跳ね飛ばしていた。彼は茫然と、立ちすくんだ。あちこちと眺めまわし、また、声を限りに呼びたててみたが、繋舟(けいしゅう)は残らず浪に浚(さら)われて影なく、渡守りの姿も見えない。流れはいよいよ、ふくれ上り、海のようになっている。メロスは川岸にうずくまり、男泣きに泣きながらゼウスに手を挙げて哀願した。「ああ、鎮(しず)めたまえ、荒れ狂う流れを! 時は刻々に過ぎて行きます。太陽も既に真昼時です。あれが沈んでしまわぬうちに、王城に行き着くことが出来なかったら、あの佳い友達が、私のために死ぬのです。」

 濁流は、メロスの叫びをせせら笑う如く、ますます激しく躍り狂う。浪は浪を呑み、捲き、煽(あお)り立て、そうして時は、刻一刻と消えて行く。今はメロスも覚悟した。泳ぎ切るより他に無い。ああ、神々も照覧あれ! 濁流にも負けぬ愛と誠の偉大な力を、いまこそ発揮して見せる。メロスは、ざんぶと流れに飛び込み、百匹の大蛇のようにのた打ち荒れ狂う浪を相手に、必死の闘争を開始した。満身の力を腕にこめて、押し寄せ渦巻き引きずる流れを、なんのこれしきと掻(か)きわけ掻きわけ、めくらめっぽう獅子奮迅の人の子の姿には、神も哀れと思ったか、ついに憐愍(れんびん)を垂れてくれた。押し流されつつも、見事、対岸の樹木の幹に、すがりつく事が出来たのである。ありがたい。メロスは馬のように大きな胴震いを一つして、すぐにまた先きを急いだ。一刻といえども、むだには出来ない。陽は既に西に傾きかけている。ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠をのぼり、のぼり切って、ほっとした時、突然、目の前に一隊の山賊が躍り出た。

「待て。」

「何をするのだ。私は陽の沈まぬうちに王城へ行かなければならぬ。放せ。」

「どっこい放さぬ。持ちもの全部を置いて行け。」

「私にはいのちの他には何も無い。その、たった一つの命も、これから王にくれてやるのだ。」

「その、いのちが欲しいのだ。」

「さては、王の命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな。」

 山賊たちは、ものも言わず一斉に棍棒(こんぼう)を振り挙げた。メロスはひょいと、からだを折り曲げ、飛鳥の如く身近かの一人に襲いかかり、その棍棒を奪い取って、

「気の毒だが正義のためだ!」と猛然一撃、たちまち、三人を殴り倒し、残る者のひるむ隙(すき)に、さっさと走って峠を下った。一気に峠を駈け降りたが、流石(さすが)に疲労し、折から午後の灼熱(しゃくねつ)の太陽がまともに、かっと照って来て、メロスは幾度となく眩暈(めまい)を感じ、これではならぬ、と気を取り直しては、よろよろ二、三歩あるいて、ついに、がくりと膝を折った。立ち上る事が出来ぬのだ。天を仰いで、くやし泣きに泣き出した。ああ、あ、濁流を泳ぎ切り、山賊を三人も撃ち倒し韋駄天(いだてん)、ここまで突破して来たメロスよ。真の勇者、メロスよ。今、ここで、疲れ切って動けなくなるとは情無い。愛する友は、おまえを信じたばかりに、やがて殺されなければならぬ。おまえは、稀代(きたい)の不信の人間、まさしく王の思う壺(つぼ)だぞ、と自分を叱ってみるのだが、全身萎(な)えて、もはや芋虫(いもむし)ほどにも前進かなわぬ。路傍の草原にごろりと寝ころがった。身体疲労すれば、精神も共にやられる。もう、どうでもいいという、勇者に不似合いな不貞腐(ふてくさ)れた根性が、心の隅に巣喰った。私は、これほど努力したのだ。約束を破る心は、みじんも無かった。神も照覧、私は精一ぱいに努めて来たのだ。動けなくなるまで走って来たのだ。私は不信の徒では無い。ああ、できる事なら私の胸を截(た)ち割って、真紅の心臓をお目に掛けたい。愛と信実の血液だけで動いているこの心臓を見せてやりたい。けれども私は、この大事な時に、精も根も尽きたのだ。私は、よくよく不幸な男だ。私は、きっと笑われる。私の一家も笑われる。私は友を欺(あざむ)いた。中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。ああ、もう、どうでもいい。これが、私の定った運命なのかも知れない。セリヌンティウスよ、ゆるしてくれ。君は、いつでも私を信じた。私も君を、欺かなかった。私たちは、本当に佳い友と友であったのだ。いちどだって、暗い疑惑の雲を、お互い胸に宿したことは無かった。いまだって、君は私を無心に待っているだろう。ああ、待っているだろう。ありがとう、セリヌンティウス。よくも私を信じてくれた。それを思えば、たまらない。友と友の間の信実は、この世で一ばん誇るべき宝なのだからな。セリヌンティウス、私は走ったのだ。君を欺くつもりは、みじんも無かった。信じてくれ! 私は急ぎに急いでここまで来たのだ。濁流を突破した。山賊の囲みからも、するりと抜けて一気に峠を駈け降りて来たのだ。私だから、出来たのだよ。ああ、この上、私に望み給うな。放って置いてくれ。どうでも、いいのだ。私は負けたのだ。だらしが無い。笑ってくれ。王は私に、ちょっとおくれて来い、と耳打ちした。おくれたら、身代りを殺して、私を助けてくれると約束した。私は王の卑劣を憎んだ。けれども、今になってみると、私は王の言うままになっている。私は、おくれて行くだろう。王は、ひとり合点して私を笑い、そうして事も無く私を放免するだろう。そうなったら、私は、死ぬよりつらい。私は、永遠に裏切者だ。地上で最も、不名誉の人種だ。セリヌンティウスよ、私も死ぬぞ。君と一緒に死なせてくれ。君だけは私を信じてくれるにちがい無い。いや、それも私の、ひとりよがりか? ああ、もういっそ、悪徳者として生き伸びてやろうか。村には私の家が在る。羊も居る。妹夫婦は、まさか私を村から追い出すような事はしないだろう。正義だの、信実だの、愛だの、考えてみれば、くだらない。人を殺して自分が生きる。それが人間世界の定法ではなかったか。ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切り者だ。どうとも、勝手にするがよい。やんぬる哉(かな)。――四肢を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。

 ふと耳に、潺々(せんせん)、水の流れる音が聞えた。そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。すぐ足もとで、水が流れているらしい。よろよろ起き上って、見ると、岩の裂目から滾々(こんこん)と、何か小さく囁(ささや)きながら清水が湧き出ているのである。その泉に吸い込まれるようにメロスは身をかがめた。水を両手で掬(すく)って、一くち飲んだ。ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。歩ける。行こう。肉体の疲労恢復(かいふく)と共に、わずかながら希望が生れた。義務遂行の希望である。わが身を殺して、名誉を守る希望である。斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。日没までには、まだ間がある。私を、待っている人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。私は、信じられている。私の命なぞは、問題ではない。死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ! メロス。

 私は信頼されている。私は信頼されている。先刻の、あの悪魔の囁きは、あれは夢だ。悪い夢だ。忘れてしまえ。五臓が疲れているときは、ふいとあんな悪い夢を見るものだ。メロス、おまえの恥ではない。やはり、おまえは真の勇者だ。再び立って走れるようになったではないか。ありがたい! 私は、正義の士として死ぬ事が出来るぞ。ああ、陽が沈む。ずんずん沈む。待ってくれ、ゼウスよ。私は生れた時から正直な男であった。正直な男のままにして死なせて下さい。

 路行く人を押しのけ、跳(は)ねとばし、メロスは黒い風のように走った。野原で酒宴の、その宴席のまっただ中を駈け抜け、酒宴の人たちを仰天させ、犬を蹴(け)とばし、小川を飛び越え、少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った。一団の旅人と颯(さ)っとすれちがった瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。「いまごろは、あの男も、磔にかかっているよ。」ああ、その男、その男のために私は、いまこんなに走っているのだ。その男を死なせてはならない。急げ、メロス。おくれてはならぬ。愛と誠の力を、いまこそ知らせてやるがよい。風態なんかは、どうでもいい。メロスは、いまは、ほとんど全裸体であった。呼吸も出来ず、二度、三度、口から血が噴き出た。見える。はるか向うに小さく、シラクスの市の塔楼が見える。塔楼は、夕陽を受けてきらきら光っている。

「ああ、メロス様。」うめくような声が、風と共に聞えた。

「誰だ。」メロスは走りながら尋ねた。

「フィロストラトスでございます。貴方のお友達セリヌンティウス様の弟子でございます。」その若い石工も、メロスの後について走りながら叫んだ。「もう、駄目でございます。むだでございます。走るのは、やめて下さい。もう、あの方(かた)をお助けになることは出来ません。」

「いや、まだ陽は沈まぬ。」

「ちょうど今、あの方が死刑になるところです。ああ、あなたは遅かった。おうらみ申します。ほんの少し、もうちょっとでも、早かったなら!」

「いや、まだ陽は沈まぬ。」メロスは胸の張り裂ける思いで、赤く大きい夕陽ばかりを見つめていた。走るより他は無い。

「やめて下さい。走るのは、やめて下さい。いまはご自分のお命が大事です。あの方は、あなたを信じて居りました。刑場に引き出されても、平気でいました。王様が、さんざんあの方をからかっても、メロスは来ます、とだけ答え、強い信念を持ちつづけている様子でございました。」

「それだから、走るのだ。信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ。ついて来い! フィロストラトス。」

「ああ、あなたは気が狂ったか。それでは、うんと走るがいい。ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。走るがいい。」

 言うにや及ぶ。まだ陽は沈まぬ。最後の死力を尽して、メロスは走った。メロスの頭は、からっぽだ。何一つ考えていない。ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走った。陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、メロスは疾風の如く刑場に突入した。間に合った。

「待て。その人を殺してはならぬ。メロスが帰って来た。約束のとおり、いま、帰って来た。」と大声で刑場の群衆にむかって叫んだつもりであったが、喉(のど)がつぶれて嗄(しわが)れた声が幽(かす)かに出たばかり、群衆は、ひとりとして彼の到着に気がつかない。すでに磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれたセリヌンティウスは、徐々に釣り上げられてゆく。メロスはそれを目撃して最後の勇、先刻、濁流を泳いだように群衆を掻きわけ、掻きわけ、

「私だ、刑吏! 殺されるのは、私だ。メロスだ。彼を人質にした私は、ここにいる!」と、かすれた声で精一ぱいに叫びながら、ついに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の両足に、齧(かじ)りついた。群衆は、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。セリヌンティウスの縄は、ほどかれたのである。

「セリヌンティウス。」メロスは眼に涙を浮べて言った。「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。君が若(も)し私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」

 セリヌンティウスは、すべてを察した様子で首肯(うなず)き、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。殴ってから優しく微笑(ほほえ)み、

「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生れて、はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」

 メロスは腕に唸(うな)りをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。

「ありがとう、友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。

 群衆の中からも、歔欷(きょき)の声が聞えた。暴君ディオニスは、群衆の背後から二人の様を、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。

「おまえらの望みは叶(かな)ったぞ。おまえらは、わしの心に勝ったのだ。信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」

 どっと群衆の間に、歓声が起った。

「万歳、王様万歳。」

 ひとりの少女が、緋(ひ)のマントをメロスに捧げた。メロスは、まごついた。佳き友は、気をきかせて教えてやった。

「メロス、君は、まっぱだかじゃないか。早くそのマントを着るがいい。この可愛い娘さんは、メロスの裸体を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ。」

 勇者は、ひどく赤面した。

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Posted by 문학관 관리인 위어조자(謂語助者)

달려라 메로스(走れメロス)

다자이 오사무(太宰 治) (1940)

번역 : 홍성필


 메로스는 격분했다. 반드시 그 사악하고 포악한 왕을 제거해버려야만 한다고 결심했다. 메로스는 정치를 모른다. 메로스는 마을의 목동이다. 피리를 불고 양들과 놀면서 지내왔다. 그러나 사악한 것에 대해서는 남들보다 민감했다. 오늘 미명에 메로스는 마을을 출발하여 들을 넘고 산을 넘어 백 리 떨어진 이 시라크스 시에 도착했다. 메로스에게는 아버지도 어머니도 없다. 열 여섯을 먹은 내성적인 누이동생과 단 둘이서 살고 있다. 이 누이동생은 마을에 있는 어느 건실한 목동을 머지않아 신랑으로 맞이하기로 되어 있었다. 결혼식이 코앞에 닥쳐 있었다. 메로스는 이를 위해 신부가 입을 옷이나 축하연 때 대접할 음식들을 사들이기 위해 머나먼 도시까지 온 것이다. 우선 그 물건들을 사 모은 후, 큰 길을 터벅터벅 걷고 있었다. 메로스에게는 죽마고우가 있었다 세리눈티우스다. 지금 이곳 시라크스 시에서 석공을 하고 있다. 그 친구를 지금부터 찾아가는 참이다. 오랫동안 만나지 않았으므로 만남이 매우 기대된다. 걷고 있는 사이에 메로스는 동네 모습이 조금 이상하게 여겨졌다. 너무 조용하다. 이미 해도 저물어 동네가 어두운 것은 당연하나, 그렇지만 어딘지 모르게 밤이기 때문만은 아닌 듯 도시 전체가 너무나도 쓸쓸하다. 평소에는 둔한 메로스도 점점 불안해지기 시작했다. 길거리에서 만난 젊은이들을 잡아 세워놓고 무슨 일이 있었는가, 2년 전 이곳에 왔을 때에는 밤에도 모두가 노래를 부르며 동네는 활기찼었는데, 하고 물었다. 젊은이들은 고개를 저으며 대답하지 않았다. 잠시 걸어가자 노인을 만나, 이번에는 더욱 강한 말투로 물었다. 노인은 대답하지 않았다. 메로스는 두 손으로 노인의 몸을 흔들며 계속 물었다. 노인은 주변을 신경 쓰듯 낮은 목소리로 짧게 대답했다.


 “왕은, 사람을 죽입니다.”


 “왜 죽이는 거요?”


 “나쁜 마음을 가지고 있기 때문이라고는 하는데, 아무도 그런 나쁜 마음을 가지고 있진 않습니다.”


 “많은 사람을 죽이는 거요?”


 “예, 처음에는 왕의 매제님을, 그리고 자신의 대를 이을 세자를, 그리고 누이동생, 그리고 누이동생님의 자제분을, 그리고 황후님을, 그리고 현신(賢臣) 알레키스님을.”


 “참 놀랍소. 국왕께서는 제정신이시오?”


 “예, 정신은 온전하십니다. 사람을 믿을 수가 없으시다는 것입니다. 요즘은 신하들의 마음조차도 의심하시어 조금이라도 화려한 생활을 하고 있는 자들에게 인질 하나씩을 내 놓으라는 명을 내리셨습니다. 명을 거절하면 십자가에 달려 죽고 맙니다. 오늘은 여섯 명이 죽었습니다.”


 이를 듣고 메로스는 격분했다. “어이 없는 왕이외다. 살려 둘 수가 없소.”


 메로스는 단순한 사나이였다. 구입해온 짐을 진 채로 저벅저벅 왕궁으로 들어갔다. 순식간에 그는 순찰을 돌던 형리(刑吏)에 의해 포박당했다. 조사를 받고는 메로스의 품속에서 단검(短劍)이 나왔기에 소란이 커지고 말았다. 메로스는 왕 앞으로 끌려갔다.


 “이 단도(短刀)로 무엇을 할 셈이었는가. 말하라!” 폭군 디오니스는 조용히 그러나 위엄 있는 목소리로 집요하게 물었다. 그 왕의 얼굴은 창백하고 미간에 난 주름은 칼로 파낸 것처럼 깊었다.


 “이 도시를 폭군의 손으로부터 구해낼 것이오.” 라고 메로스는 당당하게 대답했다.


 “네가 말이냐?” 왕은 비웃었다. “모자란 녀석 같으니라고. 네게 어찌 내 고독을 알 수 있겠느냐.”


 “닥치시오!” 메로스는 분을 내며 반박했다. “사람의 마음을 의심하는 것은 그 어느 것보다도 수치스러운 악행이오. 왕은 백성들의 충심조차 의심하고 계시오.”


 “의심하는 것이 정당한 일이라고 내게 가르쳐준 것은 네놈들이다. 사람의 마음에는 믿음이 가질 않는다. 인간은 본래 사리사욕 덩어리다. 믿어서는 안돼.”폭군은 차분하게 말하고서 짧은 한숨을 내쉬었다. “이런 나도 평화를 원하는데 말이다.”


 “무엇을 위한 평화란 말이오. 자신의 지위를 지키기 위함이오?” 이번에는 메로스가 조소했다. “죄 없는 사람을 죽이고서 무엇이 평화란 말이오.”


 “입 닥쳐라 천한 놈아.” 왕은 재빨리 고개를 돌려 말했다. “입으로는 어떤 깨끗한 소리도 말할 수 있지. 내게는 그 깊은 속이 다 들여다 보인단 말이다. 네놈도 이제 사형대에 달리고서 울부짖어봤자 소용없으니 그리 알아라.”


 “그러시군. 왕께서는 똑똑하시오. 자기만 잘난 줄 아시는구려. 나는 벌써 죽을 각오가 되어 있는데 말이오. 절대 목숨을 살려달라 애원하진 않을 것이오. 다만…….”말을 마치지 못하고 고개를 숙이고서 조금 망설이고는, “다만 내게 은혜를 베푸시려거든 처형까지 사흘간의 기간을 주시오. 단 하나뿐인 누이동생에게 신랑을 갖게 하고 싶사옵니다. 사흘 중에 저는 동네에서 결혼식을 올려주고 반드시 이 곳으로 돌아오겠사옵니다.”


 “말도 안 되는 소릴.” 폭군은 쉰 목소리로 낮게 웃었다. “어이없는 거짓을 지껄이고 있구나. 풀어준 새가 다시 돌아오기라도 한단 말이더냐.”


 “그렇사옵니다. 돌아온단 말입니다.” 메로스는 필사적으로 대답했다. “저는 약속을 지킬 것이옵니다. 제게 사흘만 시간을 주시옵소서. 제 누이는 제가 돌아오기만을 기다리고 있사옵니다. 그렇게 저를 믿지 못하시겠다면, 좋습니다, 이 도시에 세리눈티우스라는 석공이 있사옵니다. 저와는 둘도 없는 친구입니다. 그 놈을 인질로 이곳에 두고 가지요. 제가 도망치고 사흘째 해가 질 때까지 이곳에 돌아오지 않는다면 그 친구를 목 졸라 죽여주시옵소서. 제발 그리 하옵소서.”


 그 말을 듣고 왕은 잔인한 마음이 들어 슬며시 미소를 지었다. 건방진 소리를 한다. 어차피 안 돌아올 것이 분명하다. 이런 거짓말쟁이에게 속는 척 하고 풀어주는 것도 재미있겠군. 그렇게 해서 대신 다른 놈을 사흘째 되는 날에 죽이는 것도 볼만 하겠지. 사람은 이러니 믿을 수 없다며 나는 슬픈 표정을 지으며 그 친구 놈을 나무에 매달려 죽게 만드는 것이다. 이 세상에서 정직한 놈이라는 인간들에게 좋은 구경거리가 되겠어.


 “소원을 들어주마. 그 인질을 불러오너라. 사흘째 되는 날 해가 지기 전에 돌아오라. 늦는 날에는 그 인질을 분명 죽이겠다. 조금 늦게 오너라. 네 죄는 영원히 사해주마.”


 “무슨 말씀을 하시오.”


 “하하. 목숨이 아깝거든 늦게 오라는 말이다. 네 마음 속은 내가 훤히 들여다보인다.”


 메로스는 억울하여 발버둥을 쳤다. 아무 말도 하고 싶지 않았다.


 죽마고우 세리눈티우스는 심야, 궁궐로 불려 들어갔다. 폭군 디오니스의 면전에서 좋은 벗과 좋은 벗은 2년 만에 서로 만났다. 메로스는 친구에게 모든 사정을 털어놓았다. 세리눈티우스는 말없이 고개를 끄덕이고는 메로스를 힘껏 끌어안았다. 친구와 친구 사이에 있어서는 그것만으로 충분했다. 세리눈티우스는 포박당했다. 메로스는 곧바로 출발했다. 초여름, 하늘에는 별들로 가득 찬 밤이었다.


 메로스는 그날 밤 한 숨도 자지 않고 백 리 길을 허겁지겁 서둘러, 마을에 도착한 것은 이튿날 오전, 해는 이미 높이 떠올랐으며 마을사람들은 들에 나와 일을 시작하고 있었다. 열 여섯 먹은 메로스의 누이동생이 오늘은 오라버니를 대신하여 양떼를 돌보고 있었다. 비틀거리며 걸어오는 오라버니의 기진맥진한 모습을 보고는 놀랐다. 그러고서 소란스럽게 오라버니에게 사정을 캐물었다.


 “아무것도 아니야.” 메로스는 억지로 웃으려 애를 썼다. “마을에 볼일을 남겨두고 왔어. 다시 바로 돌아가야만 해. 내일 네 결혼식을 올린다. 빠른 편이 좋겠지.”


 누이동생의 얼굴이 빨갛게 물들었다.


 “기쁘냐? 예쁜 옷도 사왔다. 자, 이제 가서 마을사람들에게 알리고 오너라. 결혼식은 내일이라고.”


 메로스는 다시 비틀비틀 걷기 시작하여 집으로 돌아가서는 신들에게 바칠 재단을 장식하고 축하연에 쓸 자리들을 정리하고 나자마자 그대로 바닥에 쓰러져 숨도 못 쉴 정도로 깊은 잠 속으로 빠져들어갔다.


 잠에서 깨어난 것은 밤이었다. 메로스는 곧바로 일어나 신랑 집을 찾아갔다. 그리고 조금 사정이 있어서 그러니 결혼식을 내일로 해달라고 부탁했다. 목동인 신랑은 매우 놀라며, 그건 곤란하다, 이쪽은 아직 아무런 준비도 되어있지 않다, 포도를 추수할 계절까지 기다려달라고 대답했다. 메로스는, 기다릴 수가 없다, 어떻게든 내일로 해달라며 간곡히 부탁했다. 목동인 신랑도 완강했다. 좀처럼 승낙해주지 않는다. 새벽까지 논쟁을 벌이다가 겨우 간신히 신랑을 달래며 설득했다. 결혼식은 한낮에 거행되었다. 신랑신부가 신에 대한 선서를 마쳤을 무렵, 먹구름이 하늘을 덮더니 부슬부슬 비가 내리기 시작하여, 이윽고 마차가 떠내려갈 정도로 큰 비가 내리기 시작했다. 축하연에 모여든 마을사람들은 무언가 불길한 예감이 들었으나, 그래도 각각 마음을 가다듬고 좁은 집안에서 찜통 같은 더위도 견디며, 유쾌하게 노래를 부르고 손뼉을 쳤다. 메로스도 만면에 희색을 띄우며, 잠시 동안은 왕과 맺었던 그 약속조차도 잊고 있었다. 축하연은 밤이 되자 절정에 이르러, 사람들은 바깥에 쏟아지는 큰 비도 전혀 신경을 쓰지 않았다. 메로스는 평생 이대로 있고 싶다고 생각했다. 이 좋은 사람들과 한평생 살아가길 원했으나, 지금은 내 몸이 내 것이 아니다. 돌이킬 수 없는 일이다. 메로스는 마음을 굳게 먹고 마침내 출발을 결심했다. 내일 해가 저물 때까지는 아직 시간이 충분하다. 잠깐 눈을 붙이고, 그리고 나서 곧바로 출발하자고 생각했다. 그때쯤이면 빗줄기도 가늘어졌을 것이다. 조금이라도 오랫동안 이 집에 머물고 있고 싶었다. 메로스 정도 되는 사나이도 역시 미련이라는 것은 있다. 오늘밤 마음껏 환희에 취해있는 신부에게 다가가서,


 “축하해. 나는 피곤하니 잠깐 실례해서 잠을 청해보겠다. 깨어나면 곧바로 마을로 나가겠어. 중요한 일이 있으니 말이야. 내가 없어도 이제 너에게는 착한 남편이 있으니 절대 쓸쓸할 일은 없을 거야. 네 오라버니가 제일 싫어하는 건 사람을 의심하는 일과, 그리고 거짓말을 하는 것이야. 그건 알고 있겠지? 남편과의 사이에 어떤 비밀도 만들어서는 안돼. 네게 말하고 싶은 건, 그것뿐이다.  네 오라버니는 훌륭한 놈이니 너도 그것을 자랑스럽게 생각하고 있겠지?”


 신부는 비몽사몽간에 고개를 끄덕였다. 메로스는 그러고서 신랑의 어깨를 끌어안고,


 “준비가 안된 건 서로 마찬가지일세. 우리 집에도 보물이라고는 누이동생과 양들 뿐이네. 그것들 말고는 아무 것도 없다. 모두 주리라. 그리고 한 가지. 메로스의 매제가 된 것을 자랑스럽게 여겨주게나.”


 신부는 두 손을 만지작거리며 수줍어하고 있었다. 메로스는 웃으며 동네사람들에게 인사를 하고 연석에서 물러나와 양떼들의 우리 속으로 들어가 죽은 듯이 깊이 잠들었다.


 눈이 뜬 것은 이튿날 새벽 무렵이었다. 메로스는 튕겨 오르는 몸을 일으켜, 큰일이다, 늦잠을 잤나, 아니, 아직까지는 괜찮다, 이제부터 곧바로 출발하면 약속시간까지 충분히 갈 수 있다. 오늘은 반드시 그 왕에게 사람에게 신실함이 존재한다는 것을 보여주리라. 그리고는 웃으며 십자가의 단위에 올라가주마. 메로스는 서둘러 채비를 하기 시작했다. 빗줄기도 어느 정도 가늘어졌다. 준비는 다 됐다. 이제 메로스는 두 팔을 크게 휘두르고서 빗속을 쏜살같이 달리기 시작했다.


 나는 오늘밤 죽임을 당한다. 죽임을 당하기 위해 달리는 것이다. 나 대신 잡혀있는 친구를 구하기 위해서 달리는 것이다. 왕의 사악함을 타파하기 위해 달리는 것이다. 달려야만 한다. 그러고서 나는 죽임을 당한다. 젊었을 때부터 명예를 지켜라. 잘 일거라 내 고향아. 젊은 메로스는 마음이 쓰렸다. 몇 번이고 멈춰 설뻔했다. 에잇, 에잇 하면서 큰 소리로 자신을 꾸짖으며 달렸다. 동네를 빠져 나와 들판을 가로질러 숲 속을 뚫고 이웃동네에 다다랐을 무렵에는 비도 그치고 해도 높이 떠있었다. 서서히 더워지기 시작했다. 메로스는 이마에 흐르는 땀을 주먹으로 닦아내며, 여기까지 왔으니 이제 됐다, 이미 고향에 대한 미련은 없다. 누이동생들은 분명 좋은 부부가 되리라 내게는 지금 아무런 마음에 걸리는 것이 없으리라. 곧바로 궁궐에 도달하면 그걸로 되는 것이다. 그렇게 서두를 필요도 없다. 천천히 걷자, 하고 본래의 여유를 되찾아, 즐겨 부르던 노래도 좋은 목소리로 부르기 시작했다. 터벅터벅 걸어 이십 리, 삼십 리 가며, 거의 절반 정도까지 왔을 무렵, 갑자기 들이닥친 재난, 메로스의 두 다리는 그 자리에 멈춰 섰다. 보라, 앞에 놓인 강을. 어제 있었던 폭우로 산에 있던 저수지가 범람하여 흙탕물이 하류로 모여들어 맹렬하게 휘몰아쳐 단번에 다리를 쳐부수고 요란한 소리를 내며 거친 물줄기가 사정없이 다리 축을 박살내고 있었다. 그는 넋을 잃고 멈춰 섰다. 여기저기를 돌아보며, 또한 목청껏 소리쳐보았으나 나룻배는 남김없이 파도가 삼켜버리고 흔적조차 남아있지 않았다. 뱃사공도 찾아볼 수 없다. 강물은 점점 부풀어올라 바다와도 같다. 메로스는 강가에 주저앉아 사나이의 울음을 터뜨리며 제우스를 향해 손을 들고 애원했다. “아아, 가라앉혀주소서, 미친 듯이 흘러가는 저 강물을! 시간은 점점 지나가고 있습니다. 태양도 이미 중천에 떠올랐습니다. 저것이 지기 전에 궁궐에 도착하지 못한다면, 저 좋은 나의 벗이 저 때문에 죽게 되고 맙니다.”


 탁류는 메로스의 외침을 조소라도 하듯 점점 격렬하게 춤을 춘다. 파도는 파도를 삼키고 소용돌이 치며 부풀어 오르고, 그리하여 시간은 시시각각 흘러와서는 사라져간다. 이제 메로스는 각오했다. 헤엄치는 것 외에 다른 방법이 없다. 아아, 신들이시여, 나를 지켜주소서! 탁류에도 지지 않는 사랑과 참된 위대한 힘을, 이제야 발휘해 보이리라. 메로스는 텀벙 강물로 뛰어들어 백 마리의 큰 구렁이와도 같이 발광하는 파도를 상대로 필사적인 투쟁을 시작했다. 온 전신의 힘을 팔에 담아, 밀려와서는 잡아당기는 소용돌이를, 이 정도에 질소냐 하며 헤치고 헤쳐나가, 눈 먼 사자 새끼의 분투하는 모습에 신도 불쌍히 여겼는지, 드디어 은혜를 베풀어 주셨다. 밀려나면서도 드디어 건너편 나무 미끼를 잡아낼 수 있었다. 감사하다. 메로스는 말처럼 크게 몸을 떨고서 곧바로 다시 길을 재촉했다. 한 시라도 낭비할 수 없다. 해는 이미 서쪽으로 저물기 시작했다. 헉헉 거친 숨을 내몰아 쉬며 계곡을 오르고 올라, 한 숨 돌렸을 때 갑자기 눈앞에 산적 일단이 튀어나왔다.


 “게 섰거라”


 “무슨 짓이냐. 나는 해가 지기 전까지 궁궐에 가야 한다. 놔라!”


 “그럴 수야 없지. 가지고 있는 것을 모두 다 놓고 가라.”


 “내게는 지금 목숨 말고 아무 것도 없다. 이 하나뿐인 목숨도 이제 왕에게 줘버릴 작정이다.”


 “그 목숨을 내놓으라는 게다.”


 “그렇다면 왕의 명령으로 나를 이 곳에서 기다리고 있었구만”


 산적들은 말을 하지 않은 채, 한 번에 곤봉을 휘둘러댔다. 메로스는 가볍게 몸을 굽혀, 나는 새와 같이 곁에 있던 한 놈에게 덤벼들어 그 곤봉을 빼앗고는,


 “안됐지만 정의를 위해서다!” 라고 맹렬하게 일 격. 순식간에 세 명을 때려눕혀놓고, 다른 자들이 당황하는 순간 재빨리 계곡을 내려갔다. 단번에 계곡을 뛰어내려갔으나 과연 피곤하여, 얼마 전부터 태양열이 너무나도 뜨거워져, 메로스는 몇 번이고 현기증을 느끼며, 이대로는 안 된다며 정신을 가다듬고서 비틀비틀 두 세 발자국 걷고는 덜커덕 무릎을 굽힌다. 일어날 수가 없었다. 하늘을 우러러 억울한 눈물을 터뜨렸다. 오오, 오, 탁류를 헤엄쳐 나와 산적들을 셋이나 때려눕히고 이 곳까지 온 메로스여. 참된 용사 메로스여. 지금 여기 지쳐서 움직일 수 없다니 억울하다. 사랑하는 벗은 너를 믿었기에 이제 죽음을 당해야 한다. 너는 희대의 믿지 못할 인간. 그야말로 왕의 속셈에 넘어가고 만다, 하며 자신을 꾸짖어보지만, 온몸에서 힘이 빠져 이제는 송충이만큼도 앞으로 갈 수가 없다. 길바닥 초원에 몸을 던졌다. 육신이 지치면 정신도 함께 가눌 수가 없다. 이제 어떻게든 되라, 용사에게는 어울리지 않는 심통이 마음 구석에서 싹트기 시작했다. 아는 이토록 노력했다. 약속을 깰 생각은 조금도 없었다. 신께서도 보아 알고 계시듯, 나는 최선을 다해 왔다. 움직이지 못할 때까지 달려왔단 말이다. 나는 신의 없는 인간이 아니다. 아아, 될 수만 있다면 지금 내 가슴을 갈라내어 붉은 빛 심장을 보여주고 싶다. 그러나 나는 이렇게 중요한 때에 모든 힘이 바닥나고 말았다. 나는 가면 갈수록 불행한 인간이다. 나는 아마도 조롱을 당하겠지. 내 집안도 조롱을 당할 것이다. 나는 내 친구를 속였다. 도중에 쓰러지는 것은 처음부터 아무것도 안 한 것과 마찬가지다. 아아, 이제 어떻게 되도 좋다. 이것이 내게 정해진 운명인지도 모른다. 세리눈티우스여, 용서하라. 자네는 언제나 나를 믿었다. 나도 자네를 속이지 않았다. 우리들은 진실로 좋은 친구 사이였다. 단 한 번이라도 어두운 의혹의 구름을 서로의 마음 속에 둔 적이 없었다. 지금조차도 자네는 나를 애타게 기다리고 있겠지. 아아, 기다리고 있겠지. 고맙다, 세리눈티우스. 정말 나를 잘 믿어주었다. 그것을 생각하면 참을 수가 없다. 친구와 친구 사이의 신실함은 이 세상에서 가장 자랑스러워할 보물이니 말이다. 세리눈티우스, 나는 달려왔단다. 자네를 속일 생각은 조금도 없었다. 믿어주게! 나는 최선을 다해 서둘러 이곳까지 왔다. 탁류도 돌파했다. 산적들로부터도 재빨리 빠져 나와 단번에 고개를 달려내려 왔단다. 나였으니까 할 수 있었던 거라네. 아아, 더 이상 나에게 바라질 말아주게. 내버려 달란 말일세. 이제 나는 모르네. 나는 지고 말았어. 한심하지. 웃어주게. 왕은 내게 조금 늦게 오라며 속삭였다. 늦으면 인질을 죽이고 나를 살려주겠다고 약속했다. 나는 왕의 비열함을 증오했다. 그러나 지금에 와서 생각해보면 나는 왕이 말한 대로 되고 말았다. 나는 늦게 도착하겠지. 왕은 혼자 생각하고 나를 비웃고는, 그리고 말한 대로 나를 방면하리라. 그렇게 되면 나는 죽는 것보다 마음이 아프다. 나는 영원한 배신자다. 지상에서 가장 불명예스러운 인종이다. 세리눈티우스여, 나도 죽으리라. 자네와 함께 죽게 해주게. 자네만은 나를 틀림없이 믿어주겠지. 아니, 그것도 나 혼자만의 생각인가? 아아, 이렇게 된 바에야 악인으로 살아남을까. 마을에는 내 집이 있다. 양도 있고 누이동생 부부는 설마 나를 마을에서 내쫓지는 않겠지. 정의다, 신실함이다, 사랑이다, 생각해보면 다 쓸데 없다. 사람을 죽이고 내가 산다. 그것이 인간세계의 법칙 아니었던가. 아아, 이도 저도 부질없다. 나는 추한 배신자다. 어떻게든 마음대로 하라고 해라. 아아……사지를 내던지고 점점 의식을 잃어가고 말았다.


 문득 귀에 콸콸 물 흐르는 소리가 들렸다. 조심스럽게 고개를 들어 숨죽이고 귀를 기울였다. 발 밑에서 물이 흐르고 있는 것 같다. 비틀비틀 일어나 보았더니 바위 틈새에서 조금씩 무언가 작게 속삭이면서 깨끗한 물이 쏟아져 나오고 있었다. 그 샘에 빨려들 듯 메로스는 몸을 구부렸다. 물을 두 손으로 떠서 한 모금 마셨다. 휴우, 하고 긴 한숨이 나오고는 꿈에서 깨어난 듯했다. 걸을 수 있다. 가자. 육체의 피로회복과 함께 약간이나마 희망이 보였다. 의무수행의 희망이다. 나를 죽이고 명예를 지키는 희망이다. 기울어져가는 태양은 붉은 빛을 우거진 나뭇잎을 사이로 비추고, 잎사귀도 나뭇가지도 불타오르듯 빛나고 있다. 일몰까지는 아직 시간이 있다. 나를, 기다리고 있는 사람이 있는 것이다. 조금도 의심 없이 조용히 기대해주는 사람이 있는 것이다. 나는, 믿음을 받고 있다. 내 목숨 따위는 문제가 아니다. 죽음으로 사죄를, 라는 배부른 소리를 할 겨를이 없다. 나는 신뢰에 보답해야만 한다. 지금은 단지 그것뿐. 달려라! 메로스.


 나는 신뢰 받고 있다. 나는 신뢰 받고 있다. 조금 전 그 악마의 속삭임은, 그것은 꿈이다. 악몽이다. 잊어버려라. 오장육부가 지쳐있을 때에는 문득 그런 악몽을 꾸곤 하는 것이다. 메로스, 네 수치가 아니다. 역시 어는 참된 용사다. 또다시 달릴 수 있게 되지 않았는가. 이렇게 감사할 수가! 나는 정의의 사나이로서 죽을 수가 있다. 아아, 해가 진다. 점점 진다. 기다려라, 제우스여. 나는 태어났을 때부터 정직한 놈이었다. 정직한 놈으로서 죽게 해주시오.


 길 가는 사람들을 밀어내고 걷어차며, 메로스는 검은 바람처럼 달렸다. 들판에서 벌어지는 축하연 그 한 가운데를 뚫고, 거기 모인 사람들을 놀라게 만들고, 개를 걷어차고, 작은 강을 뛰어넘으며, 조금씩 저물어가는 태양보다 열 배나 빠르게 달렸다. 한 무리의 나그네들과 재빨리 마주친 순간, 불길한 대화가 들려왔다. “지금쯤은 그 녀석도 십자가에 걸려있겠지.” 아아, 그 녀석, 그 녀석을 위해 나는 지금 이렇게 달리고 있다. 그 녀석을 죽여서는 안 된다. 서둘러라, 메로스. 늦어서는 안 된다. 사랑과 참된 힘을 지금이야말로 알려주리라. 옷차림 같은 건 문제가 안 된다. 메로스는, 지금은 거의 알몸이었다. 호흡도 할 수 없고 두 세 번 입에서 피를 토했다. 보인다. 저멀리 작게 시라크스 시의 건물들이 보인다. 건물은 석양을 받아 반짝반짝 빛난다.


 “아아, 메로스님” 신음과도 같은 목소리가 바람과 함께 들려왔다.


 “누구냐.” 메로스는 달리면서 물었다.


 “필로스토라토스이옵니다. 당신의 친구 세리눈티우스님의 제자입니다.” 그 젊은 석공도 메로스를 뒤따라 달리며 소리쳤다. “이미 늦었습니다. 부질없는 일입니다. 달리는 것을 멈춰주십시오. 이제 저 분을 살릴 수는 없습니다.”


 “아니, 아직 해는 지지 않는다.”


 “마침 지금 그 분의 사형이 집행되는 참입니다. 아아, 당신은 늦었습니다. 원망스럽습니다. 조금만, 아주 조금만 더 빨랐더라면!”


 “아니, 아직 해는 지지 않는다.” 메로스는 가슴이 찢어지는 심정으로 붉고 큰 석양만을 바라보고 있었다. 달리는 수밖에 도리가 없다.


 “그만 하십시오. 달리는 건 이제 그만 하십시오. 지금은 본인의 생명이 중요합니다. 그 분께서는, 당신을 믿고 계셨습니다. 형장에 끌려가면서도 태연하셨습니다. 왕이 그토록 그 분을 조롱해도, 메로스는 옵니다, 하고만 대답하시고 강한 신념으로 기다리고 계신 모습이셨습니다.


 “그렇기 때문에 달리는 것이다. 나를 믿어주고 있기에 달리는 것이다. 늦는다, 늦지 않는다의 문제가 아니야. 사람의 목숨도 문제가 아니라구. 나는 왠지 더욱 무섭고 큰 것을 위해 달리고 있다. 따라오너라, 필로스토라토스.”


 “아아, 당신은 제정신이 아닙니다. 그렇다면 마음껏 뛰십시오. 어쩌면 늦지 않을지도 모릅니다. 원하신다면, 달리십시오.”


 무슨 말이 필요하랴. 아직 해는 지지 않는다. 마지막까지 사력을 다해 메로스는 달렸다. 메로스의 머리는 텅 비어있다. 아무 생각도 안 한다. 그저 정체 모를 큰 힘에 끌려가듯 달렸다. 해는 점점 지평선 너머로 저물어가고, 그야말로 마지막 한 조각 남았던 빛마저 사라지려던, 순간 메로스는 질풍과도 같이 형장으로 뛰어들었다. 안 늦었다.


 “멈추시오. 그 사람을 죽여서는 안돼. 메로스가 돌아왔소. 약속대로 지금 돌아왔소.” 라며 큰 소리로 형장에 모인 군중들을 향해 외쳤다고 생각했으나, 목소리는 안 터지고 쉰 소리가 약간 나왔을 뿐, 군중들은 누구 하나 그가 도착한 사실을 모른다. 이미 나무기둥은 높이 세워져, 끈에 묶인 세리눈티우스는 점점 끌어올려진다. 메로스는 그것을 목격하고 최후의 힘, 얼마 전 탁류를 헤엄치듯 군중들을 헤치고 또 헤쳐나가며,


 “나요, 형리! 죽는 건 나란 말이오. 메로스요. 그를 인질로 만든 내가 여기 있소!” 라고 쉰 목소리로 힘껏 외치며, 마침내 사형대 위에 올라, 끌어올려가는 친구의 두 다리에 매달렸다. 군중들은 웅성거렸다. 훌륭하다. 용서하라고 소리쳤다. 세리눈티우스를 묶었던 끈이 풀려진 것이다.


 “세리눈티우스.” 메로스는 눈에 눈물을 글썽이며 말했다. “나를 쳐라. 힘껏 내 얼굴을 쳐라. 나는 도중에 한 번 악몽을 꾸었다. 자네가 만약 나를 치지 않는다면 나는 자네와 포옹할 자격조차 없다. 쳐라.”


 세리눈티우스는 모든 것을 알아차린 듯 고개를 끄덕이며, 형장 가득히 울려 퍼질 정도로 메로스의 오른쪽 볼을 쳤다. 치고는 부드럽게 웃으며,


 “메로스, 나를 쳐라. 똑같이 큰 소리가 날 정도로 나를 쳐라. 나는 이 사흘 동안, 단 한번 순간 자네를 의심했다. 태어나서 처음으로 자네를 의심했다. 자네가 나를 치지 않는다면, 나는 자네와 포옹할 수 없다.”


 메로스는 힘껏 팔에 힘을 실어 세리눈티우스의 얼굴을 쳤다.


 “고맙다, 친구여.” 둘이 동시에 말하고는 힘껏 끌어안고, 그리고 기쁨에 넘쳐 큰 소리로 울었다.


 군중들에게서도 환희의 소리가 들려왔다. 폭군 디오니스는 군중들 뒤편에서 둘의 모습을 가만히 바라보고 있었으나, 이윽고 조용히 다가와서는 얼굴에 주홍빛을 띄우며 이렇게 말했다.


 “자네들의 소원은 이루어졌다. 자네들은 내 마음을 이긴 것이다. 신실함이란 절대 공허한 망상이 아니었다. 내 부탁을 들어주겠나. 나를 자네들의 친구로 삼아주게. 제발 내 소원이니 자네들의 친구가 되게 해주게.”


 군중들 사이에서 큰 환호성이 일었다.


 “만세, 국왕 만세.”


 한 소녀가 붉은빛 망토를 메로스에게 건네주었다. 메로스는 당황했다. 좋은 벗은 이 모습을 보고 가르쳐주었다.


 “메로스, 자네는 알몸이잖아. 어서 그 망토를 입게나. 이 귀여운 아가씨는 메로스의 알몸이 많은 사람들에게 보여지는 걸 원하지 않는 거라네.”


 용사의 얼굴은 빨갛게 물들었다.




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Posted by 문학관 관리인 위어조자(謂語助者)