축견담(畜犬談 :ちくけんだん) 다자이 오사무(太宰 治) (1939) 일본어 원문 私は、犬については自信がある。いつの日か、かならず喰(く)いつかれるであろうという自信である。私は、きっと噛(か)まれるにちがいない。自信があるのである。よくぞ、きょうまで喰いつかれもせず無事に過してきたものだと不思議な気さえしているのである。諸君、犬は猛獣である。馬を斃(たお)し、たまさかには獅子(しし)と戦ってさえこれを征服するとかいうではないか。さもありなんと私はひとり淋しく首肯(しゅこう)しているのだ。あの犬の、鋭い牙(きば)を見るがよい。ただものではない。いまは、あのように街路で無心のふうを装い、とるに足らぬもののごとくみずから卑下して、芥箱(ごみばこ)を覗(のぞ)きまわったりなどしてみせているが、もともと馬を斃すほどの猛獣である。いつなんどき、怒り狂い、その本性を暴露するか、わかったも..