봄의 낙엽(春の枯葉:はるのかれは)

一幕三章

다자이 오사무(太宰 治) (1948)

일본어 원문


 人物。


野中弥一(のなかやいち) 国民学校教師、三十六歳。

節子(せつこ)   その妻、三十一歳。

しづ   節子の生母、五十四歳。

奥田義雄(おくたよしお) 国民学校教師、野中の宅に同居す、二十八歳。

菊代(きくよ)   義雄の妹、二十三歳。

その他  学童数名。


 所。

津軽半島、海岸の僻村。


 時。

昭和二十一年、四月。



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     第一場


舞台は、村の国民学校の一教室。放課後、午後四時頃。正面は教壇、その前方に生徒の机、椅子二、三十。下手(しもて)のガラス戸から、斜陽がさし込んでいる。上手(かみて)も、ガラス戸。それから、出入口。その外は廊下。廊下のガラス戸から海が見える。

全校生徒、百五十人くらいの学校の気持。


正面の黒板には、次のような文字が乱雑に、秩序無く書き散らされ、ぐいと消したところなどもあるが、だいたい読める。授業中に教師野中が書いて、そのままになっているという気持。

その文字とは、

「四等国。北海道、本州、四国、九州。四島国。春が来た。滅亡か独立か。光は東北から。東北の保守性。保守と封建。インフレーション。政治と経済。闇。国民相互の信頼。道徳。文化。デモクラシー。議会。選挙権。愛。師弟。ヨイコ。良心。学問。勉強と農耕。海の幸。」

等である。


幕あく。


舞台しばらく空虚。


突然、荒い足音がして、「叱(しか)るんじゃない。聞きたい事があるんだ。泣かなくてもいい。」などという声と共に、上手(かみて)のドアをあけ、国民学校教師、野中弥一が、ひとりの泣きじゃくっている学童を引きずり、登場。


(野中)(蒼(あお)ざめた顔に無理に微笑を浮べ)何も、叱るんじゃないのだ。なんだいお前は、もう高等科二年にもなったくせに、そんなに泣いて、みっともないぞ。さあ、ちゃんと、涙を拭(ふ)け。(野中自身の腰にさげてあるタオルを、学童に手渡す)

(学童)(素直にタオルで涙を拭く)

(野中)(そのタオルを学童から取って、また自分の腰にさげ)よし、さあ歌ってごらん。叱りやしない。決して叱らないから、いまお前たちが、あの、外のグランドで一緒に歌っていた唱歌を、ここで歌ってごらん。低い声でかまわないから、歌ってごらん。叱るんじゃないんだよ。先生は、あの歌を、ところどころ忘れたのでね、お前からいま教えてもらおうと思っているのだ。それだけなんだから、安心して、さあ、ひとつ男らしく、歌って聞かせてくれ。(言いながら、最前列の学童用の椅子に腰をおろす。つまり観客に対しては、うしろ向きになる)


学童は、観客に対して正面を向き、気を附けの姿勢を執り、眼をつぶって、低く歌う。

はる、こうろうの花のえん、

めぐるさかずき、影さして、

ちよの松がえ、わけいでし、

むかしの光、いまいずこ。


(学童)(歌い終ってうつむく)

(野中)(机に頬杖(ほおづえ)をつき)ありがとう。いや、先生はね、お前たちも知っているように、唱歌はあまり得意でないのでね、その歌も、うろ覚えでね、おかげで、やっといまはっきりと思い出した。悲しい歌だね。ちかごろお前たちは、よくその唱歌ばかり歌っているようだが、誰か先生が教えてくれたの?

(学童)(首を振る)

(野中) 誰も教えてくれなくても、自然に覚えたの?

(学童)(だまっている)

(野中) この歌の意味が、よくわかって歌っているの? いや、この歌が、お前たちのいまの気持に一ばんぴったりするから、それだから歌っているの?

(学童)(うなだれたまま、だまっている)

(野中) 決して叱りやしないから、思っている事をそのまま言ってごらん。先生もね、いまいろいろ考えているんだ。さっきもあんな工合に、(と、ちょっと正面の黒板を指差し)さまざま黒板に書いて、新しい日本の姿というものをお前たちに教えたつもりだが、しかし、どうも、教えたあとで何だか、たまらなく不安で、淋(さび)しくなるのだ。僕には何もわかっていないんじゃないか、という気さえして来るのだ。かえって、お前たちに教えてもらわなければならぬことがあるんじゃないかとも考えられてな。それで、どうなんだい? お前たちは、あの歌を、どんな気持で歌っているのか、それをまず正直に、先生に教えてくれないか? やっぱり、淋しくてたまらないから、あんな歌をうたいたくなるのかね? それとも、何か、いたずらの気持で歌っているのかね? どうなんだい?

(学童)(だまっている)

(野中) なんとか一言(ひとこと)でいいから、言ってくれよ。まさか、お前たちは、腹の中で先生を笑っているのじゃあるまいな。(ひとりで低く笑い、立ち上り)もういい。帰ってよろしい。しかし、気持を暗くするような歌は、あまり歌わんほうがいいな。他の生徒たちにも、そう言ってやるように。とにかく、いま僕たちは、少しでも気持を明るく持つように努めなければいけないのだから。もう、よし。お帰り。


学童、無言で野中教師にお辞儀をし、上手(かみて)の出入口から退場。野中は、それを見送り、しばらくぼんやりしている。やがて、ゆっくり教壇の方に歩いて、教壇に上り、黒板拭きをとって、黒板の文字を一つ一つ念入りに消す。

消しながら、やがて小声で、はる、こうろうの花のえん、めぐるさかずき、影さして、と歌う。

舞台すこし暗くなる。斜陽が薄れて来たのである。


くすくす忍び笑いして、奥田菊代、上手の出入口より登場。


(菊代) なかなかお上手(じょうず)ね、先生。

(野中)(おどろき、振りかえって菊代を見つけ、苦笑して)なんだ、あなたか。(黒板を拭き終って正面を向き)ひやかしちゃいけません。

(菊代) あら、本当よ。本当に、お上手よ。すばらしいバリトン。

(野中)(いよいよ口をゆがめて苦笑し)よして下さい、ばかばかしい。僕んところは親の代(だい)から音痴(おんち)なんです。(語調をかえて)何か御用? 奥田先生なら、ついさっき帰ったようですよ。

(菊代) いいえ、兄さんに逢いに来たんじゃないんです。(たわむれに、わざと取り澄ました態度で)本日は、野中弥一先生にお目にかかりたくてまいりました。

(野中) なあんだ、うちで毎日、お目にかかってるじゃないか。

(菊代) ええ、でも、同じうちにいても、なかなか二人きりで話す機会は無いものだわ。あら、ごめん。誘惑するんじゃないわよ。

(野中) かまいませんよ。いや、よそう。兄さんに怒られる。あなたの兄さんは、まじめじゃからのう。

(菊代) あなたの奥さんだって、まじめじゃからのう。


二人、笑う。野中教師ゆっくり教壇から降り、下手(しもて)のガラス戸に寄り添って外を眺(なが)める。菊代は学童の机の上に腰をかける。華美な和服の着流し。


(野中)(菊代のほうに背を向け、外の景色を眺めながら)もう、すっかり春だ。津軽の春は、ドカンと一時(いっとき)にやって来るね。

(菊代)(しんみり)ほんとうに。ホップ、ステップ、エンド、ジャンプなんて飛び方でなくて、ほんのワンステップで、からりと春になってしまうのねえ。あんなに深く積っていた雪も、あっと思うまもなく消えてしまって、ほんとうに不思議で、おそろしいくらいだったわ。あたしは、もう十年も津軽から離れていたので、津軽の春はワンステップでやって来るという事を、すっかり忘れていて、あんなに野山一めんに深く積っている雪がみんな消えてしまうのには、五月いっぱいかかるのじゃないかしらと思っていたの。それが、まあ、ねえ、消えはじめたと思ったら、十日と経たないうちに、綺麗(きれい)に消えてしまったじゃないの。四月のはじめに、こんな、春の青草を見る事が出来るなんて、思いも寄らなかったわ。

(野中)(相変らず外の景色を眺めながら)青草? しかし、雪の下から現われたのは青草だけじゃないんだ。ごらん、もう一面の落葉だ。去年の秋に散って落ちた枯葉が、そのまんま、また雪の下から現われて来た。意味ないね、この落葉は。(ひくく笑う)永い冬の間、昼も夜も、雪の下積になって我慢して、いったい何を待っていたのだろう。ぞっとするね。雪が消えて、こんなきたならしい姿を現わしたところで、生きかえるわけはないんだし、これはこのまま腐って行くだけなんだ。(菊代のほうに向き直り、ガラス戸に背をもたせかけ、笑いながら冗談みたいな口調で)めぐり来(きた)れる春も、このくたびれ切った枯葉たちには、無意味だ。なんのために雪の下で永い間、辛抱(しんぼう)していたのだろう。雪が消えたところで、この枯葉たちは、どうにもなりやしないんだ。ナンセンス、というものだ。


菊代、声立てて笑う。


(野中)(わざとまじめな顔になって)いや、笑いごとじゃありませんよ。僕たちだって、こんなナンセンスの春の枯葉かも知れないさ。十年間も、それ以上も、こらえて、辛抱して、どうやら虫のように、わずかに生きて来たような気がしているけれども、しかし、いつのまにやら、枯れて落ちて死んでしまっているのかも知れない。これからは、ただ腐って行くだけで、春が来ても夏が来ても、永遠によみがえる事がないのに、それに気がつかず、人並に春の来るのを待っていたりして、まるでもう意味の無い身の上になってしまっているんじゃないのかな。

(菊代)(あっさり)案外、センチメンタルね、先生は。しっかりなさいよ。先生はまだお若いわ。これからじゃないの。

(野中)(ちょっと本気に怒ったみたいに顔をしかめ)くだらん事を言っちゃいけない。僕はもう三十六です。都会の人たちと違って、田舎者(いなかもの)の三十六と言えば、もう孫が出来ている年頃だ。からかっちゃいけません。

(菊代) でも、先生にはまだお子さんがおひとりも無いじゃないの。だから、どこかお若く見えるわ。奥さんだって、あんなにお綺麗で、あたしより若いくらい。いくつ違うのかしら。

(野中) 誰とですか?

(菊代) あたしと、よ。

(野中)(興味無さそうに)女房は、三十一です。

(菊代) じゃあ、あたしと八つも違うのね。ずいぶん若く見えるわ。家附き娘だけあって、貫禄(かんろく)はあるし、どこから見たって立派な奥さんだわ。先生は果報者ね。あんな奥さんだったら、養子もまんざらでないでしょう?

(野中)(いよいよ、不機嫌そうに)なぜ、あなたは、そんなつまらない事ばかり言うのです。よしましょう、もう、そんな話は。何かきょう僕に用事でもあって来たのですか?

(菊代)(平然と)お金を持って来たのよ。

(野中) お金を?

(菊代) そうよ。(帯の間から、白い角封筒を出し、歩いて野中教師の傍に寄り)先生、黙って、ね、何もおっしゃらずに、黙って、受け取って頂戴(ちょうだい)!

(野中)(無意識の如く払いのけ)なに、なんですか?

(菊代) いいのよ、先生。平気な顔して受け取ってよ。そうして、おすきなように使って頂戴。誰にも言っちゃ、いやよ。

(野中)(腕組みして苦笑する)わかりました。しかし、僕も、落ちたものだな。菊代さん、まあいいから、その封筒はそちらへ引込めて下さい。


菊代、封筒を持てあまして、それを、傍の学童の机の上にそっと置く。


(野中) 御承知のように、僕のところは貧乏です。ひどく貧乏です。どんな人でも、僕の家に間借りして、同じ屋根の下に住んでみたら、田舎教師という者のケチ臭いみじめな日常生活には、あいそが尽きるに違いないんだ。殊(こと)につい最近、東京から疎開(そかい)して来たばかりの若い娘さんの眼には、もうとても我慢の出来ない地獄絵のように見えるかも知れない。しかし、御心配無用なんだ。あなたたちの御同情は、ありがたいけれども、しかし、僕たちの家庭にはまた僕たちの家庭のプライドがあるんだ。かえって僕たちは、あなたたちに同情しているくらいなんだ。そんな、お金なんか、そんな、そんな心配は今後は絶対にしないで下さい。僕たちはあなたたちから毎月もらっている部屋代だって、高すぎると思っているんです。気の毒に思っているんだ。さあ、もう、わかったから、そんなお金なんか、ひっこめて下さい。一緒に家へ帰りましょう。菊代さん! でも、あなたは、(しげしげと菊代の顔を見つめて)いいひとですね。御好意だけは、身にしみて有難く頂戴しました。(軽く笑って)握手しましょう。


野中教師、右手を差し出す。ぴしゃと小さい音が聞えるほど強く菊代はその野中の掌(てのひら)を撃つ。


(菊代)(嘲笑(ちょうしょう)の表情で)ああ、きざだ。思いちがいしないでね。間(ま)が抜けて見えるわよ。あたしは何でも知っている。みんな知っている。そんな事をおっしゃっても、あなたたちは、本当はお金がほしいんです。気取らなくたっていいわよ。あなたも、それからあなたの奥さんも、それからお母さんも、みんなお金がほしいのよ。ほしくてほしくて仕様が無いのよ。そのくせ、あなたたちは貧乏じゃない。貧乏だ、貧乏だとおっしゃっているけれども、貧乏じゃない。ちゃんとしたお家(うち)もあれば土地もあるし、着物だって洋服だってたくさんたくさん持っている。それでも、お金がほしいんだ。慾が深いのよ。ケチなのよ。お金よりも、よいものがこの世の中に無いと思い込んでしまっているんだ。それにくらべて、まあ、あたしたちの生活は、どうでしょう。兄は、前からずっとこの土地にいたのだから、あのひとは、べつだけれども、あたしは父とふたりで東京へ出て、大戦がはじまる前だってちっとも楽じゃ無かったし、いよいよ大戦がはじまって、あたしも父の工場に出て職工さんたちと一緒に働くようになった頃から、もう、あたしたちは生きているのだか死んでいるのだか、何が何やら、無我夢中でその日その日を送り迎えして、そのうちに綺麗に焼かれて、いまはあたしたちのものと言ったら、以前こちらに疎開させてあった行李(こうり)五つだけ、本当にもうそれだけなのよ。父がひとり東京に踏みとどまって頑張(がんば)って、あたしだけ、兄のところへやっかいになりに来たのだけれども、本当にあたしには何も無いのよ。何も無いから仕方なくこんないやらしい派手な着物なんかを行李の底から引っぱり出して着ているのだけど、田舎の人たちの眼から見ると、あたしたちがおそろしくぜいたくなお洒落(しゃれ)の衣裳(いしょう)道楽をしているみたいに見えているんじゃないかしら。ところが、それはあべこべで、地味(じみ)な普段着も何も焼いてしまって、こんな十六、七の頃に着た着物しか残っていないので、仕方なく着ているのだわ。お金だって、そのとおり、同じことよ。あたしたちには、もう何も無いのよ。いいえ、兄はあんな真面目(まじめ)くさった性質だから或(ある)いはお金をいくらかためているかも知れないけど、あたしたちにはもう何も無いのよ。手にはいったお金は、もうその場でみんな使ってしまうし、父もあたしも十年間、東京でそんな暮しをして来たのだわ。でも、あたしは、そのあいだ一度だって、お金をほしいと思った事は無かったわ。無ければ無いで、またどんなにかして切り抜けてやって行けたのだもの。だけど、田舎では、そうはいかないのね。田舎では人間の価値を、現金があるか無いかできめてしまうのね。それだけが標準なのだわ。もう冗談も何も無く、つめたく落ちついてそう信じ切ってしまっているのだから、おそろしいわ。ぞっとする事があるわ。どんなにお上品に取りすましていたって、心の中では、やっぱりそうなのだから、いやになるわ。もしあたしにいま一文(いちもん)もお金が無いという事がわかったら、あなたの奥さんも、お母さんも、それから、あなただって、どんなにいやな顔をするでしょう。いいえ、それにきまっているわ。しんそこから、あたしという女を軽蔑(けいべつ)し、薄きたない気味(きび)の悪いものに思うにきまっていますよ。あたしは、うっかり、自分の貧乏を口にすることも出来やしない。あなたたちは違うのよ。あなたたちは、ご自分のことを貧乏だの何だのと言っても、そりゃもうちゃんとした財産のあることが誰にもわかっているのだから、物価が高くて困るとか、このさきどうしようなんておっしゃっても、それはご愛嬌(あいきょう)にもなるけれど、それをもし、あたしたちが言ったらどうでしょう。冗談にもご愛嬌にもなりやしない。ただもう浅間(あさま)しい、みじめな下等な人種として警戒されるくらいのものなのだわ。ばかばかしい。だからあたしたちは、お金のありったけを気前よくぱっぱっと使って見せなければならなくなるのよ。そうするとあなたたちはまた、東京で暮して来た奴等(やつら)は、むだ使いしてだらしがないと言うし、それかと言って、あなたたちと同様にケチな暮し方をするともう、本物(ほんもの)の貧乏人の、みじめな、まるでもう毛虫か乞食(こじき)みたいなあしらいを頂戴するし、いったい、あなたの奥さんなんて、どこが偉くてあんなに気取っているの? 何か、あたしたちと人種が違うの? ひどく取り澄まして、あたしが冗談を言っても笑わず、いつでもあたしたちより一段と高いところにいるひとみたいに振舞っているけど、あれはいったい何さ。美人だって? 笑わせやがる。東京の三流の下宿屋の薄暗い帳場に、あんなヘチマの粕漬(かすづけ)みたいな振(ふる)わない顔をしたおかみさんがいますよ。あたしには、わかっている。あんなひとこそ、誰よりも一ばんお金をほしがっているんだ。慾張っているんだ。ケチなんだ。亭主よりも親よりも、お金だけを尊敬しているんだ。あたしには、わかる。先生、そのお金は、どうぞ奥さんに渡してやって下さい。先生、あたしの味方になってね! あたしは復讐(ふくしゅう)したいんです。先生、その封筒の中には、あなたの奥さんの一ばん喜ぶものがはいっているんです。全部、新円です。あたしが自分でもうけたお金ですから、誰にも遠慮は要(い)らないんです。


二、三の学童の口笛が聞える。はる、こうろうの花のえん、の曲の合奏である。


(菊代)(その口笛に聞耳を立て)おや、あたしのお友だちが迎えに来た。行かなくちゃいけない。それじゃあ、お願いしてよ。いいでしょう? 奥さんにね、あたしからだって言わないで、先生から何とか上手(じょうず)に嘘(うそ)ついて奥さんにあげてよ。あのお澄ましの奥さんが、どんな顔をするか、ああ愉快だ。


菊代、上手(かみて)の出入口に向って走り去る。野中教師、はっと気を取り直して呼びとめる。


(野中) お待ちなさい、菊代さん。どこへ行くのです。


菊代、戸口のところに立ち上り、野中教師のほうにくるりと向き直る。口笛は、なお聞えている。


(菊代)(ほがらかに)お友だちのところへ。

(野中) それじゃあの歌は、あなたが教えてやったのですね?

(菊代)(むしろ得意そうに)そうよ。あたしたちは音楽会をひらくのよ。音楽会をひらいてもうけるのよ。新円をかせぐのよ。はる、こうろう、も、それから、唐人(とうじん)お吉(きち)も、それから青い目をした異人さんという歌も、みんなあたしが教えたのよ。きょうはこれからみんなでお寺に集ってお稽古(けいこ)。うちへ帰るのがおそくなるでしょうから、兄さんにそう言ってね、日本の文化のためですからってね。


菊代、くすくす笑いながら退場。口笛はなお続く。舞台また少し暗くなる。

野中教師、菊代を二、三歩追いかけ、それから立ちどまり、引返して机の上の角封筒を取り上げ、上衣のポケットに入れて、少し考え、また取り出して封筒の中をしらべる。大型の紙幣、一枚二枚と黙って数える。十枚。あたりを見まわす。また数え直す。

――舞台、静かに廻る。


     第二場


舞台は、国民学校教師、野中弥一宅の奥の六畳間。ここは、奥田義雄、同菊代の兄妹が借りている。

部屋の前方は砂地の庭。草も花もなし。きたなげの所謂(いわゆる)「春の枯葉」のみ、そちこちに散らばっている。


舞台とまる。


弥一の義母しづ、庭の物干竿(ものほしざお)より、たくさんの洗濯物を取り込みのさいちゅう。

菊代の兄、奥田義雄は、六畳間の縁側にしゃがんで七輪(しちりん)をばたばた煽(あお)ぎ煮物をしながら、傍に何やら書籍を置いて読んでいる。

斜陽は既に薄れ、暮靄(ぼあい)の気配。


第一場と同じ日。


(しづ)(洗濯物を取り込み、それを両腕に一ぱいかかえ、上手(かみて)に立ち去りかけて、ふと縁側のほうを見て立ちどまり)あら、奥田先生、お鍋(なべ)が吹きこぼれていますよ。

(奥田)(あわてて鍋の蓋(ふた)を取り、しづの方を見て苦笑し)妹がまたきょうも、どこかへ飛び出して、帰らないものだから、どうも。

(しづ) おや、おや。それでは、お兄さんもたいへんですね。(笑いながら縁側に近寄り)何を煮ていらっしゃるの?

(奥田)(いそいでまた鍋の蓋をして)いや、これは見せられません。何でもかんでもぶち込んで煮て、そうして眼をつぶって呑(の)み込んでしまうつもりなんです。

(しづ)(声を立てて笑って)本当に、男の方の炊事はお気の毒で、見て居られませんわ。あとで、おしんこか何か持って来てあげましょう。

(奥田)(まじめに)いいえ、何も要りません。学生の頃から十何年間、こんな生活ばかりして来たので、かえって妹と一緒にいて妹のへんに気取った料理などを食べるのは、不愉快なくらいなんです。(書籍を持って立ち上り、部屋へはいって、電燈をつける。それから縁側に面した机に向ってあぐらをかき、つまり、観客に正面を向いて坐って、書籍を机の上に置き、無意識の如くパラパラ書籍のペエジをもてあそびながら、ぶっきらぼうに)女のこさえた料理なんて、僕はいちどもおいしいと思ったことが無いんです。

(しづ)(洗濯物を縁側にそっと置いて、自身も浅く縁側に腰をかけ)それはまあ。(鷹揚(おうよう)に笑って、それからしんみり)お母さんが亡くなって、もう何年になりますかしら。

(奥田)(べつに何の感慨も無げに)僕がここの小学校にはいったとしの夏に死んだのですから、もう二十年にもなります。

(しづ) もう、そんなになりますかねえ。わたくしどもも、お母さんのお葬式の時の事は、よく覚えていますよ。(洗濯物を一枚一枚畳みながら)いまの、あの、妹さんがお父さんに手をひかれて、よちよち歩いてお焼香(しょうこう)した時の姿が、まだどうしても忘れられません。あれを見てわたくしどもは、ああ、母親というものは、小さい子供を残しては、死んでも死にきれないと思いました。

(奥田)(冷静に)しかし、母は、自殺したのです。

(しづ)(顔を挙げて)まあ、そんな、あなた、決してそんな。

(奥田) 野中先生から聞きました。おもてむきは、心臓麻痺(まひ)という事になっているけれども、たしかに自殺だ。うちで使っていた色の黒い料理人と通じて、外聞(がいぶん)が悪くなって自殺したのだ。だから、妹の菊代の本当の父は、どっちだかわからない。それで僕のうちでは、旅館をやめて、この土地を引払い青森へ行き、僕が青森の師範学校へはいるようになったら、こんどは、父は僕ひとりを残して妹と二人で東京へ行ってしまった。よっぽど父は、この津軽地方には、いたくなかったらしい、と野中先生に聞かせていただきました。

(しづ) まあ、あのひとは、なんというおそろしい事を言うんでしょう。みんな、もう、根も葉も無い事です。だいいち、あなたのお母さんが亡くなった頃には、あの人はまだ、この村に来てやしません。あのひとが、わたくしどものうちへ養子に来てから、まだ十年も経っていないのですよ。その前は、あの人の生れた黒石のうちにいて、黒石の小学校の先生をしていたのですし、この村のそんな、二十年も昔の事など知っているわけはないじゃありませんか。ばかばかしい。

(奥田)(軽く)いいえ、でも、土地に新しく来た人というものは、へんにその土地の秘密に敏感なものですよ。

(しづ)(さびしく笑って)でたらめですよ。そんな馬鹿らしい事ってあるものですか。(ふと語調を変えて)あの人はその時、お酒を飲んでいませんでしたか? あなたにそれを言った時に。

(奥田)(ぼんやり)ええ、酔っていました。

(しづ) そうでしょう? (意気込んで)それにきまっています。あの人は若い時に、哲学だか文学だかをやった事があるんだそうで、そのためにひどい神経衰弱になって、それがまだすっかりなおっていないんでしょうね、いまでもお酒を飲むと、まるでもう気違いみたいなへんな事を口走って、ご自分が夢で見た事を、そのままげんざい在った事みたいに、それはもう、しつっこく言い張ったりして、いつもわたくしどもは泣かされていますのです。そんなまあ、料理人と、どうのこうのなんて、よくもまあ。

(奥田)(苦笑しながら)でも、その、色の黒い料理人というのは、たしかにうちにいましたね。函館の男だとかいって、ちょっとこう一曲(ひとくせ)ありそうな、……子供心にも覚えています。

(しづ)(やや鋭く)およしなさい、ばからしい。ご人格にかかわりますよ。

(奥田) 僕は平気です。過去の事なんか、どうだっていいんです。

(しづ) よかあ、ありませんよ。だいいち、あの人も、失礼じゃありませんか。げんざい、奥田家(おくたけ)のご総領に向って、そんなおそろしい事を言うなんて、まるで、鬼です。

(奥田) 鬼は、ひどい。(快活に笑う)

(しづ)(急(せ)きこんで)鬼ですとも。鬼以上かも知れない。あなたには、あの人の真のおそろしさが、まだわかっていらっしゃらないのです。お酒を飲むと、もう、まるで気違いですし、意地くねが悪いというのか、陰険というのか、よそのひとには、ひどくあいそがいいようですけど、内の者にはそりゃもう、冷酷というのでしょうか、残忍というのでしょうか、いいえ、ほんとう、本当でございますよ。げんにあなた、こないだだって、……。

(奥田)(さえぎるように)でも、野中先生は、正直ないいお方ですよ。(微笑して)僕なんかが、こんな事を言うのは、それこそ失礼かも知れませんが、これは、お母さんも、また奥さんも、一つ考え直さなければならないところがあるんじゃありませんか。

(しづ) まあ! (洗濯物を押しのけて、奥田のほうにからだをねじ向け)たとえば? たとえば、それは、どんなところでしょうか。

(奥田) たとえば、……さあ、……(口ごもる)

(しづ)(勢い込んで)わたくしは、もう、これだからいやなんです。誰ひとり、わたくしどもの、ひと知れぬ苦労をわかってくれやしないんですものねえ。養子を迎えた家の者たちのこまかい心遣(こころづか)いったら、そりゃもうたいへんなものなんです。殊(こと)にもあんな、まあ一口に言うと、働きの無い、万事に劣った人間を養子に迎えて、この野中の家を継がせ、世間のもの笑いにならないよう、何とかしてわたくしどもの力で、あのひとのボロを隠してあげたいと思って、よそさまへは、あのひとの悪いところは一言(いちごん)も言わず、かえって嘘ついてあの人をほめて聞かせたりして来ましたのに、あの人はまあ何と思っているのやら、剛情、とでもいうんでしょうかねえ、素直なところが一つも無くて、あれで内心は、ご自分の出た黒石の山本の家が自慢で自慢でならないらしく、それはまあ黒石の山本の家は、お城下まちの地主さんで、こんな田舎(いなか)の漁師まちの貧乏な家とは、くらべものにならないくらい大きい立派なお屋敷に違いございませんけれど、なあに地主さんだって、今では内証はみんな火の車だそうじゃありませんか。昔からあの家は、お仲人(なこうど)の振れ込みほどのことも無く、ケチくさいというのか、不人情というのか、わたくしどもの考えとは、まるで違った考えをお持ちのようで、あのひとがこちらへ来てからまる八年間、一枚の着換えも、一銭の小遣いもあのひとに送って来た事が無いんですよ。そんなにむごくされても、あの人は、やっぱり生れた家に未練があるのか、いつだったか、あの黒石の兄さんが、何とか議員に当選した時の、まあ、あの人の喜びようったら、あさましくて、あいそが尽きました。議員なんて、何もそんなに偉いものではないと思いますがねえ。わたくしどもの野中家(のなかけ)は、それはもうこんな田舎の貧乏な家ですけれども、それでも、よそさまから、うしろ指一本さされた事も無く、先祖代々この村のために尽して、殊にも、わたくしの連れ合いは、御承知のように、この津軽地方の模範教員として、勲章までいただいて居りますし、それに、わたくしどもの死んだ長男は、東京帝大の医科にはいって、もう十年もそれ以上も、昔の話でございますけど、あれが卒業間際(まぎわ)に死んだ時には、帝大の先生やら学生さんやら、たくさんの人からおくやみ状をいただき、また、こんな片田舎にまで、わざわざご自身でお墓まいりに来て下さった先生さえあったのです。本当にもう、あれが生きていたら、あれさえ生きていてくれたら。(泣く)いまごろはもうあれも、立派なお医者になって、わたくしどもも、いまのような、こんな苦労をしなくても、……(くどくどと、涙まじりの愚痴(ぐち)になる)

(奥田)(もてあまし気味で)しかし、そんな事をおっしゃったって、……。お母さん。僕の、考え直さなければいけないところというのも、つまり、そんなところなんです。ここの、野中のお宅のご主人は、いまは、あの野中先生なんでしょう? 過ぎ去った事よりも、現在が大事じゃありませんか。僕には、養子というものは本来どんな姿のものであるべきか、その道徳上の本質がよくわからないんですけれども、しかし、あなたたちのように、客間の正面に、あんな大きなお父さんのお写真と、それからお兄さんのお写真を、これ見よがしに掲げたりなんかして置いては、野中先生もあれで気の弱いお方ですから、何だか落ちつかない気持になるんじゃないでしょうか。

(しづ)(顔を挙げて)それは、あの人が劣っているせいです。いたらないせいです。わたくしどもが、あの写真を二つ並べて飾ってあるのは、あの人にも、死んだ父や兄に負けないくらいの人物になってもらいたいという、つまり、あの人をはげます意味で、それで、……。

(奥田) だから、それが、(笑い出して)いや、きりがないですね、こんな事を言い合っていても。(立ち上り、縁側に出て、鍋を七輪からおろし、かわりに鉄瓶(てつびん)をかける。この動作の間に、ひとりごとのように)これからも一生、野中家(け)だ、山本家だ、と互いに意地を張りとおして、そうして、どういう事になるのかな? 僕には、わからん。わからん。

(しづ)(興覚めた様子で)あなたも、いまにお嫁さんをおもらいになったら、おわかりでしょう。(立ち上り、襟元(えりもと)を掻(か)き合せ)おお、寒い。雪が消えても、やっぱり夕方になると、冷えますね。(そそくさと洗濯物をかかえ込んで)お邪魔しました。


風吹き起り、砂ほこりが立つ。春の枯葉も庭の隅で舞う。

しづ、上手(かみて)より退場。


(奥田)(縁側に立って、それを見送り)おしんこか何かとどけてくれると言ったが、あの工合いじゃあてにならん。(ひとりで笑って)さあ、めしにしようか。


奥田、鍋を部屋のなかに持ち運び、障子(しょうじ)をしめる。障子に、奥田の、立って動いて、何やら食事の仕度をしている影法師が写る。ぼんやり、その奥田の影法師のうしろに、女の影法師が浮ぶ。

その女の影法師は、じっと立ったまま動かぬ。外は夕闇(ゆうやみ)。

国民学校教師、野中弥一、酔歩蹣跚(すいほまんさん)の姿で、下手(しもて)より、庭へ登場。右手に一升瓶、すでに半分飲んで、残りの半分を持参という形。左手には、大きい平目(ひらめ)二まい縄でくくってぶらさげている。


(野中) 奥田せんせい。やあ、いるいる。おう、菊代さんもいるな。こいつあ、いい。大いにやろう。酒もあり、さかなもある。


障子の女の影法師、ふっと掻き消すようにいなくなる。

同時に、障子があいて、奥田が笑いながら顔を出す。


(奥田) ああ、お帰り。(縁側に出る)いいご機嫌ですね。きょうは、どこか、ご招待でもあったんですか?

(野中) ご招待? ご招待とは情ない。(縁側にどかりと腰をおろし)いかに我等国民学校教員が常に赤貧(せきひん)洗うが如しと雖(いえど)も、だ、あに必ずしも有力者どもの残肴余滴(ざんこうよてき)にあずからんや、だ。ねえ、菊代さん、そうじゃありませんか。(腕をのばして障子を左右一ぱいにあけ放つ)菊代さん! おや、いないのか。

(奥田) 妹は、まだ帰って来ないんです。また、れいの文化会でしょう。

(野中)(少し落ちつき)そう。それは僕も知っているんだが、……しかし、いま、たしかに、……。

(奥田)(静かに)きょうは、ずいぶんお酔いになっていらっしゃるようですね。まあ、お上りなさいませんか。

(野中)(急にまた元気づいて)ああ、上らせてもらおう。(サンダルのようなものを脱いで縁側に上り、よろめき)きょうは、ひとつ、盛大にやろうじゃないか。このたびの教員大異動に於(お)いて、君も僕も、クビにならず、まず以(もっ)て無事であった。これを祝する意味に於いて、だ、(一升瓶とさかなを両手にぶらさげ部屋にはいり、部屋の上手(かみて)の襖(ふすま)をあけ)おうい、おうい。節子! (と母屋(おもや)に呼びかける)


野中の妻、節子、登場。しかし、襖の外にしゃがんでいる形なので観客からは見えぬ。


(野中)(その襖の外の節子に平目(ひらめ)を手渡しながら)たったいま、浜からあがった平目だ。刺身(さしみ)にしてくれ。奥田先生と今夜は、ここで宴会だ。いいかい、刺身をすぐに、どっさり持って来てくれ。どっさりだよ。待て、待て。一まいは刺身に、一まいは焼く、という事にしたらいい。もの惜しみをしちゃいけねえ。お前たちも、食べろ。いいかい、お母さんにも、イヤというほど食べさせろ。


節子、無言で静かに襖をしめる。


(野中)(にやにや笑いながら一升瓶を持ったまま奥田の机の傍に坐り)どうも、ねえ、漁師まちの先生をしていながら、さかなが食えねえとは、あまりにみじめすぎるよ。

(奥田)(部屋の中央に持ち運んだ鍋(なべ)やら茶碗(ちゃわん)やらを、また部屋の隅(すみ)に片づけながら)さかなは、どうです、いま。新円になってから、すこしは安くなりましたか。

(野中)(苦笑して)安くならねえ。漁師の鼻息ったら、たいしたものさ。平目一まいの値段が、僕たちの一箇月分の給料とほぼ相似たるものだからな。このごろの漁師はもう、子供にお小遣いをねだられると百円札なんかを平気でくれてやっているのだからね。

(奥田) そう、そうらしいですね。(部屋の中央に据(す)えた小さな食卓も部屋の隅に取片づけ)子供たちにあんな大金を持たせるのは、いい事じゃないと思いますがね。子供たちの間で、このごろ、ばくちがはやっているそうじゃありませんか。

(野中) そうらしい。何もかも、滅茶苦茶さ。(語調をかえて)君、その食卓は、そこに置いといたほうがいいよ。金(かね)の話なんか、つまらない。飲もう。茶呑茶碗を二つ貸してくれ。


奥田、またその小さい食卓を部屋の中央に据えて、それから、茶呑茶碗を取りに縁側へ出る。


(野中)(その間に、ふと、傍の机の上にある奥田の読みかけの書籍を取り上げて)フランス革命史、なんだ、こんなものを読んでいるのか。よせ、よせ。歴史は繰り返しやしねえ。(軽く書籍を畳の上にほうり出す)歴史は繰り返すなんて、どだい、あれは、君、弁証法を知らんよ、なんてね、僕もこれは一つ、社会党へでもはいって出世をしようかな。つまらない。飲もう! 飲んで鬱(うつ)を晴らそう。汝(なんじ)、無力なる国民学校教師よ。


二人、小さい食卓をはさんであぐらを掻き、野中は、二つの茶呑茶碗に一升瓶の酒をつぐ。


(野中) 乾盃! (ぐっと飲む)

(奥田)(飲みかけて、よす)なんですか? これは。ガソリンのようなにおいがしますね。(そのまま茶碗を食卓の上に置く)

(野中) サントリイ。

(奥田) え?

(野中) サントリイウイスキイ。(と言いながら一升瓶を目の高さまで持ち上げ、電燈の光にすかして見て)無色透明なるサントリイウイスキイ。一升百五十円。

(奥田) 冗談じゃない。

(野中) いや、そこが面白いところさ。僕だって知ってるよ、これは薬用アルコールに水を割っただけのものさ。しかしだね、僕にこれをサントリイウイスキイだと言って百五十円でゆずってくれた人は、だ、いいかね、そのひとは、この村の酒飲みのさる漁師だが、このひと自身も、これをサントリイウイスキイという名前の、まことに高級なる飲み物であると信じ切っているんだから愉快じゃないか。つまり、その漁師は、青森あたりにさかなを売りに行って、そうして帰りに青森の闇屋にだまされて、三升、いや、四升かも知れん、サントリイウイスキイなる高級品を仕入れて来て、そうしてきょう朝っぱらから近所の飲み仲間を集めて酒盛りをひらいていた、そこへ僕が、さかなをゆずってもらいに顔を出したというわけだ。たちまち彼等は僕をつかまえ、あなたならばたしかに知っているに違いないが、これはサントリイといってわれらの口には少しもったいなすぎる酒だ、ぜひとも先生に一ぱい飲んでいただきたい、と言って大きい茶碗になみなみとついで突きつける。見ると、かくのごとく無色透明、しかも、この匂い。僕もさすがに躊躇(ちゅうちょ)したよ。れいの、あの、メチルかも知れないしねえ。しかし、僕は、あの漁師たちの、一点疑うところ無き実に誇らしげな表情を見て、たまらなくなり、死を決した。うむ、死を決した。この愚かで無邪気な、そうして哀(かな)しい漁師たちと一緒に死のうと覚悟した。僕は飲んだよ。そんなに味がわるくない。しかも、気持よく、ぽっと酔う。そこでだ、僕は、彼等から一升をわけてもらって、彼等と共に大いに飲んだ。やはり、サントリイに限る、サントリイを飲むと、他の酒はまずくて飲まれん、なんて僕はお世辞を言ってね、そうして妙に悲しかったよ。(言いながら、自分で注いで自分で飲む)あ、そうだ、煙草もあるんだ。吸い給(たま)え。たくさんあるんだ。(上衣(うわぎ)のポケットから、バラの紙巻煙草を一つかみ取り出し、食卓の上に置く)やっぱり、あの漁師たちから、わけてもらって来たんだ。まったく、あいつらのところには、何でもあるなあ。

(奥田)(ほとんど無表情で煙草を一本とり)いただきます。(ズボンのポケットから、マッチを取り出し煙草に点火する)

(野中) みんなあげる。みんなあげるよ。僕には、まだまだたくさんあるんだ。(さらに酒をひとりで注いで飲んで)

あなたじゃ

ないのよ

あなたじゃ

ない

あなたを

待って

いたのじゃない

という歌を知っているかね。これはね、「ドアをひらけば」というこの頃の流行歌だがね、知らんのか、君は。聞いた事が無いのかね。これは意外だ。怠慢の二字に尽きる。フランス革命史なんかよりは、現代の流行歌のほうが、少くとも我々にとっては重大ではないか。いやしくも君、国民学校の教師でありながら、君、(言いながら、また酒を注いで飲んで)現代の流行歌一つご存じないとは、君。

(奥田) 大丈夫ですか? そんなに飲んで。

(野中) 大丈夫、だいじょうぶ。これは君、サントリイウイスキイという高級品じゃないか。馬鹿にするな。君もそんなに気取ってないで一口(ひとくち)まあ、こころみてごらん。

あなたじゃ

ないのよ

あなたじゃ

ない

あなたを

待って

いたのじゃない

ちょっといいね、これは。失恋の歌だそうだよ。あわれじゃないか。まあ一つ飲め。(一升瓶を持ち上げる)

(奥田)(それを制して)いや、僕のはまだここに一ぱいあります。(苦笑しながら、申しわけみたいにちょっと自分の茶碗に口をつけ、すぐまたそれを卓の上に置き)どうも、これは。

(野中) いのちが惜しいか。(笑う)


上手(かみて)の襖しずかにあく。

野中の妻、節子、大きいお皿二つを捧げてはいって来る。一つのお皿には刺身、一つのお皿には焼(や)き肴(ざかな)。


(野中) やあ、来た、来た。おう、こりゃまた豪華だね。多すぎるぞ、これあ。

(節子)(にこりともせず、食卓の上を片づけて、その二つの皿を置き)これで、全部でございます。

(野中) 全部? (顔を挙げて、節子の顔を見る)お母さんは? 食べないのか?

(節子)(まじめに)あの、わたくしどもは、ごはんはもう、すみました。

(野中)(憤然と)そうか。(矢庭(やにわ)に食卓をひっくりかえす)久しぶりの平目(ひらめ)じゃないか。お母さんにも、お前にも、みんなに食べてもらいたくて買って来たんだ。それを、なんだ。きたないものみたいにして、気味(きび)のわるいものみたいにして、一口も食べてくれないとは、あまり、あんまり、ひどいじゃないか。(泣き声になる)


節子、無言で、その辺に散らばった肴を皿の上に拾い集める。


(野中) やめろ! 拾うのは、やめてくれ。それは皆、捨てちまえ! 拾い集めてもらって、また食べるなんて、あまり惨(みじ)めだ。惨めすぎる。少しは、こっちの気持も察してくれよ。(上衣の内ポケットから、白い角封筒を出し、節子の手もとにほうってやって)まだ、七、八百円は残っている筈(はず)だ。新円だぞ。それで肴を買って来い。たったいま買って来い。ケチケチするな。鯛(たい)でも鮪(まぐろ)でも、漁師の家にあるものを全部を買って来い。ついでに甚兵衛(じんべえ)のところへ寄って、このサントリイウイスキイがまだ残っていたら、もう一升ゆずってもらって来い。これからまた僕は飲み直すんだ。そうして、ぜひとも、お母さんとお前に、肴を食べてもらうんだ。

(節子)(角封筒のほうには目もくれず、黙ってうなだれている。やがて静かに面を挙げて)あの、お伺(うかが)いしたい事がございます。

(野中)(たじろぎ)何だ。何か文句があるのか。

(節子)(緊張した声で)あなたは、いったい、……。


この時、舞台下手(しもて)より庭先へ、学童二名駈(か)け込み、「先生! 奥田先生!」と叫ぶ。

奥田教師、縁側に出る。学童二名、息せき切って何やら奥田教師に囁(ささや)く。


(奥田)(それを聞いて)そうか、よし。すぐ行く。(部屋へはいって、壁にかけてある自身の上衣をとって着ながら野中に)妹が警察に挙げられました。ばくちです。麻雀賭博(マージャンとばく)を学校の子供たちに教えてやっていたのです。たぶん、そんな事じゃないかと思っていました。ちょっと警察に行って来ます。(会釈(えしゃく)して、縁側に出て、はきものを捜す)

(野中)(蹌踉(そうろう)と立ち上り)僕も行く。

(奥田)(靴をはきながら)だめ、だめ。あなたはもう、どだい、歩けやしませんよ。(学童たちに向い)さ、行こう。


奥田教師、学童二名と共に舞台下手(しもて)に走り去る。


(野中)(夢遊病者の如くほとんど無表情で歩き、縁側から足袋(たび)はだしで降りて)僕も行く。


野中教師、ほとんど歩行困難の様子だが、よろめき、よろめき、足袋はだしのまま奥田教師たちのあとを追い下手に向う。

節子、冷然と坐ったままでいたのであるが、ふと、膝元(ひざもと)の白い角封筒に眼をとめ、取りあげて立ち、縁側に出てはきものを捜し、野中のサンダルをつっかけ、無言で皆のあとを追う。

――舞台、廻る。


     第三場


舞台は、月下の海浜。砂浜に漁船が三艘あげられている。そのあたりに、一むらがりの枯れた葦(あし)が立っている。

背景は、青森湾。


舞台とまる。


一陣の風が吹いて、漁船のあたりからおびただしく春の枯葉舞い立つ。


いつのまにやら、前場の姿のままの野中教師、音も無く花道より登場。

すこし離れて、その影の如く、妻節子、うなだれてつき従う。


(野中)(舞台中央まで来て、疲れ果てたる者の如く、かたわらの漁師に倒れるように寄りかかり)ああ、頭が痛い。これあ、ひどい。


節子、無言で野中に寄り添い、あたりを見廻し、それから白い角封筒をそっと野中に差し出す。角封筒は月光を受けて、鋭く光る。


(野中)(力弱くそれを片手で払いのけるようにして)それは、お前から、菊代さんにやってくれ。


節子、そのままの形で、黙って野中の顔を見つめている。


(野中) いやなら、いい。(節子の手から封筒をひったくり、自身の上衣のポケットにねじ込み)僕から、返してやる。(急にまた、ぐたりとなって)しかし、お前は、強いなあ。……負けた、負けた。僕は、負けたよ。お前たちのこんな強さは、いったい、何から来ているのだろうなあ。男女同権どころじゃない。これじゃ、あべこべに男のほうからお助けを乞(こ)わなくちゃいけねえ。いったい、なんだい? お前たちのその強さの本質は、さ。封建、といったってはじまらねえ。保守、といってみたってばかげている。どだいそんな、歴史的なものじゃあ無えような気がする。有史以前から、お前たちには、そんな強さがあったんだ。そうしてまた、これから、この地球に人類の存在するかぎり、いや、動物の存続する限り、お前たちは、永久に強いんだ。

(節子)(落ちついて)あなたは、はずかしくないのですか?

(野中)(呻(うめ)く)ううむ、ちえっ、ちくしょう! (顔を挙げて)全人類を代表してお前に言う。お前は、悪魔だ!

(節子)(冷く)なぜですか!

(野中) わからんのか? 人が死ぬほど恥かしがっているその現場に平気で乗り込んで来て、恥かしくありませんかと聞ける奴(やつ)あ悪魔だ。

(節子) あなたは、はずかしがっていません。

(野中) どうしてわかる? どうして、それがわかるんだ。

(節子)(無言)

(野中) イエス答をなし給わず、か。お前のその、何も物を言わぬという武器は、強いねえ。あんまり、いじめないでくれよ。ああ、頭が痛い。

(節子) これから、どうなさるのですか?

(野中) 死ぬんだ。死にゃあいいんだろう? どうせ僕は、野中家(け)の面(つら)よごしなんだから、死んで申しわけを致しますですよ。(崩れるように、砂の上にあぐらを掻(か)き)ああ、頭が痛い。切腹だ。切腹をして死んでしまうんだ。

(節子) ふざけている時ではございません。菊代さんを、あなたは、どうなさるおつもりです。

(野中) どうもこうも出来やしねえ。ああ、頭が痛い。(頭をかかえ込んで、砂の上に寝ころび)負けたんだよ、僕たちは。僕と菊代さんは、お前たちに叛逆(はんぎゃく)をたくらんだが、お前たちは意外に強くて、僕たちは惨敗を喫したんだ。押せども、引けども、お前たちは、びくともしねえ。

(節子) だって、あなたたちは、間違った事をしているのですもの。

(野中) 聖書にこれあり。赦(ゆる)さるる事の少き者は、その愛する事もまた少し。この意味がわかるか。間違いをした事がないという自信を持っている奴(やつ)に限って薄情だという事さ。罪多き者は、その愛深し。

(節子) 詭弁(きべん)ですわ。それでは、人間は、努めてたくさんの悪い事をしたほうがいいのですか?

(野中) そこだ! 問題は。(笑う)何が、そこだ! だ。僕はいま罪人なんだ。人を教える資格なんか無いのに、どうも、永く教員なんかしていると、教壇意識がつきまとっていけねえ。いったい、この国民学校の教員というものの正体は何だ。だいいち、どだい、学問が無い。外国語を自由に読める先生が、この津軽地方には、ひとりもいない。外国語どころか、源氏物語だって読めやしない。なんにも知らねえ癖(くせ)に、それでも、教壇に立って、自信ありげに何か教えていやがる。学問が無くても、人格が立派とでもいうんならまだしも、毎日の自分の食べものに追われて走り廻っている有様で、人格もクソもあるもんか。学童を愛する点に於いては、学童たちの父母(ちちはは)に及びもつかぬし、子供の遊び相手、として見ても、幼稚園の保姆(ほぼ)にはるかに劣る。校舎の番人としては、小使いのほうが先生よりも、ずっと役に立つし、そもそもこの、先生という言葉には、全然何も意味が無い。むしろ、軽蔑感を含んでいる言葉だ。どうせからかうつもりなら、いっそもう、閣下(かっか)とでも呼んでもらいたい。僕たちの社会的の地位たるや、ほとんどまるで乞食坊主と同じくらいのものなんだ。国民学校の先生になるという事はもう、世の中の廃残者、失敗者、落伍者(らくごしゃ)、変人(へんじん)、無能力者、そんなものでしか無い証拠だという事になっているんだ。僕たちは、乞食だ。先生という綽名(あだな)を附けられて、からかわれている乞食だ。おい、奥田先生だって、やっぱり同じ事なんだぜ。あきらめろ、あきらめろ。

(節子)(鋭く)なんですの? (幽(かす)かに笑い)へんな事をおっしゃいますわね。

(野中) 知ってるよ。お前のあこがれのひとは、誰だか。

(節子) まあ! そんな。よして下さい! 下劣ですわ。

(野中) なんでも無いじゃないか。人間は皆、あこがれのひとを二人や三人持っているものだ。で、どうなんだい? その後の進行状態は。

(節子) わたくしには、あなたのおっしゃる事が、ちっともわかりません。

(野中) よし、それじゃ、わかるように言ってやろう。お前は、きょう僕の帰る前に、奥田先生の部屋に行っていたね。

(節子)(はっきり)ええ、まいりました。奥田先生がおひとりで晩ごはんのお仕度(したく)をしていらっしゃるという事を母から聞いて、何かお手伝いでもしようかと思ってお部屋をのぞいてみました。

(野中) それは、ご親切な事だ。お前にもそれだけの愛情があるとは妙だ。いいことだ。美談だ。しかし、僕が外から声をかけたとたんに、お前はふっと姿をかき消したが、あれは、どういうご親切からなんだい?

(節子) いやだったからです。

(野中) へんだね。

(節子)(泣き声になり)いったい、なんとお答えしたらいいのです。

(野中) まあ、いいや。よそう。つまらん。どうせお前には、かないっこないんだ。ああ、あ。世は滔々(とうとう)として民主革命の行われつつあり、同胞ひとしく祖国再建のため、新しいスタートラインに並んで立って勇んでいるのに、僕ひとりは、なんという事だ。相も変らず酔いどれて、女房に焼きもちを焼いて、破廉恥(はれんち)の口争いをしたりして、まるで地獄だ。しかし、これもまた僕の現実。ああ、眠い。このまま眠って、永遠に眼が覚めなかったら、僕もたすかるのだがなあ。(眠った様子)

(節子)(野中の肩に手をかけて)もし、もし。(肩をゆすぶる)

(野中)(なかば、うわごとの如く)殺せ! うるさい! あっちへ行け!


奥田教師、上手(かみて)より、うろうろ登場。


(奥田) あ、おくさん! (寝ている野中を見ていよいよ驚き)どうしたんです、これあ。

(節子) あなたの後を追ってここまで来て、寝てしまいました。それよりも、菊代さんは? いかがでしたの?

(奥田) いや、それがね、あの子供たちを途中で見失ってしまいましてね。とにかく、僕ひとり警察の前まで行って、それとなく中の様子をうかがって見たんですが、ばかに静かで、べつに変った事も無いようなんです。へたに騒ぎ立てて恥をかいてもつまりませんし、さっきの生徒たちを捜して、もういちどよく聞きただそうと思って、引返して来たところなんです。ことによったら、あいつ、……。

(節子) え?

(奥田) いや、べつに、……。

(節子) 奥田先生! わたくしどもは、菊代さんに何か悪い事でもしたのでしょうか。

(奥田)(あらたまって)なぜですか?

(節子) ばくちで警察に挙げられたなんて、嘘(うそ)です。わたくしには、もうみな、わかりました。(急に泣き出す)あんまりですわ。あんまりですわ。なぜ、わたくしどもはこんなに、菊代さんにからかわれなければならないのです。

(奥田) すみません。実は、僕も、警察の前まで行って、すぐこれあ菊代に一ぱい食わされたなと思ったのですが、しかし、もしそうだとしても、なんのために、子供たちまで使って、こんな、ばからしい狂言を、……。

(節子) それは、わかっています。菊代さんは、野中をけしかけて酒や肴(さかな)を買わせて、そうしてわたくしや母にまでごちそうさせて、それから、そのお金は実は菊代さんがばくちでもうけたお金だという事を知らせて、いい気持でごちそうになっている母やわたくしがみっともなく狼狽(ろうばい)するさまを、かげでごらんになってあざ笑うつもりだったのでしょうけれど、でも、それにしても、策略があくどすぎます。あんまり、意地がわるすぎます。

(奥田) すると? あの金は?

(節子) ご存じじゃなかったのですか? 菊代さんのお金です。

(奥田) そうですか。いや、いかにも、あいつのやりそうないたずらだ。(笑う)

(節子) まだあります。野中にたきつけて、わたくしとあなたと、……。

(奥田)(まじめになり)しかし、おくさん。妹はばかな奴(やつ)ですが、そんな、くだらない事は言わない筈(はず)です。

(節子) でも、野中はさっき、わたくしを疑っているような、いやな事を言いました。

(奥田) それじゃあ、それは野中先生ひとりの空想です。野中先生は少しロマンチストですからね。いつか僕と議論した事がありました。野中先生のおっしゃるには、この世の中にいかにおびただしく裏切りが行われているか、おそらくは想像を絶するものだ、いかに近い肉親でも友人でも、かげでは必ず裏切って悪口や何かを言っているものだ、人間がもし自分の周囲に絶えず行われている自分に対する裏切りの実相を一つ残らず全部知ったならば、その人間は発狂するだろう、という事でした。しかし僕はそれに反対して、人間は現実よりも、その現実にからまる空想のために悩まされているものだ。空想は限りなくひろがるけれども、しかし、現実は案外たやすく処理できる小さい問題に過ぎないのだ。この世の中は、決して美しいところではないけれども、しかし、そんな無限に醜悪なところではない。おそろしいのは、空想の世界だ、とまあ言ったのですが、どうも、野中先生の空想には困ります。

(節子)(変った声で)でも、それが本当だったら?

(奥田)(どぎまぎして)え? 何がですか?

(節子) 野中のその空想が。

(奥田) おくさん! (怒ったように)何をおっしゃるのです。

(節子)(声を挙げて泣き)わたくしは今まで何一つ悪い事をした覚えがありません。それなのに、なぜみなさんがわたくしをこんなにいじめるのでしょう。わたくしは自身の楽しみは一つもせずに、野中の家のために努めて来ました。家の名誉を大事に守るというのは悪い事ですか? 教えて下さい。あすの生活の不安の無いように、辛抱してむだ遣(づか)いをつつしむというのは悪い事ですか? 田舎女は田舎女らしく、音楽会や映画にも行かず家(うち)の中で黙って針仕事をしている事は、わるい事ですか? 小説も読まず酒も飲まず行儀をよくして男のひとと間違いを起さないというのは、悪い事ですか? 野中が先刻、間違いをしない人間は薄情だと言いましたが、そんなら人間は間違いをしたほうが正しいのですか? 先生、わたくしは田舎くさくて頭の悪い女です。何もわかりません。教えて下さい。わたくしが先生を好きだったとしたら、かりにそうだったとしたら、かえってわたくしが正しいのですか? わたくしは口が下手(へた)です。よく言えないんです。わたくしは、言葉を知らないのです。ただ、わたくしは、こらえて来ました。辛抱して来ました。自分で自分のすきな事を言ったりおこなったりするのは悪い事だと思って来ました。先生、教えて下さい。わたくしはもう、何がどうなのか、わからなくなって来たのです。わたくしのどこがいけなくて、みんながわたくしをこんなにいじめるのですか。

(奥田) おくさん。善悪の彼岸という言葉がありますね。善と悪との向う岸です。倫理には、正しい事と正しくない事と、それからもう一つ何かあるんじゃないでしょうかね。おくさんのように、ただもう、物事を正、不正と二つにわけようとしても、わけ切れるものではないんじゃないですか?

(節子) よくわかりませんけれど、それでは、わたくしが何か間違いを起しても?

(奥田)(笑って)それあいけません。どだい、不自然ですよ。それこそ、おくさんの空想の領域です。おくさんは、野中先生をずいぶん大事にしていらっしゃる。それがまた、おくさんの生き甲斐(がい)なのでしょう? ばかばかしい空想はやめましょう。おくさん、今夜は、どうかしていますね。現実の問題にかえりましょう。(語調をあらためて)僕たちは、お宅から引越します。問題は、それだけです。僕は学校の宿直室へ行きますし、妹は、あれは、東京へまた帰ったほうがいいだろうと思います。


遠くから、はる、こうろうの花のえん、の合唱が聞える。学童たちの声にまじって、菊代らしき女の声もまじる。


間。


(節子)(冷静になり、顔を挙げて、はっきり)そうお願い致します。

(奥田)(かえってまごつき)なんですか?

(節子)(それにかまわず、遠くの歌声に耳を傾け)ああやって歌をうたって遊ぶのが、都会ふうで、そうして文化的とかいうもので、日本はこれから、男も女もみんな、菊代さんのようにならなければならないのでしょうか。わたくしのような、旧式な田舎女は、もう、だめなのでしょうか。わたくしには、やっぱりどうしても、わかりませんわ。なぜ、人間は、都会ふうでなければいけないのです。なぜ、田舎くさいのは、だめなんです。

(奥田) 人間がだめになったんですよ。張り合いが無くなったんですよ。大理想も大思潮も、タカが知れてる。そんな時代になったんですよ。僕は、いまでは、エゴイストです。いつのまにやら、そうなって来ました。菊代の事は、菊代自身が処理するでしょう。僕たち二十代の者は、或る点では、あなたたちよりもずっと大人(おとな)かも知れません。自己に就(つ)いての空想は、少しも持っていません。

(節子)(しずかに)それは、どんな意味ですの?

(奥田) 妹は妹、僕は僕、という事です。いや、人は人、僕は僕、と言ってもいいかも知れない。おくさん、あんまり他人の事は気にしないほうがいいですよ。

(節子) でも、菊代さんは、わたくしどもをいじめます。野中をそそのかして、わたくしどもの家庭を、……。

(奥田)(笑って)引越しますよ、すぐに。

(節子)(にくしみを含めて)たすかりますわ。


歌声すこしずつ近くなる。

風吹く。枯葉舞う。


(奥田) 寒くなりましたね。(寝ている野中のほうを顎(あご)でしゃくって)どうしますか? ずいぶん今夜は飲んだからなあ。

(節子) 悪いお酒じゃないんですか? 頭が痛い痛いと言っていましたけど。

(奥田) だいじょうぶでしょう。あれと同じ酒を、漁師たちが朝から飲んでいて、それでなんとも無いようですから。

(節子) でも、あの人たちと野中とでは、からだがまるで違いますもの。

(奥田) 試験台にはなりませんか。(笑う)どれ、僕が背負って行ってやろうかな?

(節子)(それをさえぎって、鋭く)いいえ。わたくしが致します。もう、お手数(てすう)はかけません。

(奥田) 他人は他人、旦那(だんな)は旦那ですか。(いや味なく笑う)そのほうがいいんです。それじゃ僕はちょっと、あの(と歌声のほうを指さし)チンピラの音楽団のほうへ行って、妹をつかまえて、事の真相を問いただしてみましょう。つまらない悪戯(いたずら)をしやがって。(言いながら気軽に上手(かみて)より退場)


風さらに強く吹く。

歌声いよいよ近づく。


(節子)(奥田を見送り、それから、しゃがんで野中の肩をゆすぶる)もし、もし。風邪(かぜ)をひきますよ。さ、一緒に帰りましょうね。(野中の手をとり)まあ、こんなに冷くなって。すみませんでしたわね。わたくしが悪かったのよ。あなた、どうなさったの? (顔を近寄せる)あなた! (狂乱の如く野中の顔、胸、脚など撫(な)でまわし)もし、あなた! (突然立ち上って上手に走り)奥田先生! 奥田せんせい! (また馳(は)せかえり、野中の死体に武者振りついて泣く)すみません、すみません。あなた、もういちど眼をあいて。わたくしは、心をいれかえたのよ。これからはお酒のお相手でも何でもしようと思っていましたのに、あなた! (号泣する)


風。枯葉。歌声。

――幕。



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Posted by 문학관 관리인 위어조자(謂語助者)

가정의 행복(家庭の幸福:かていのこうふく)

다자이 오사무(太宰 治) (1948)

일본어 원문


「官僚が悪い」という言葉は、所謂(いわゆる)「清く明るくほがらかに」などという言葉と同様に、いかにも間が抜けて陳腐で、馬鹿らしくさえ感ぜられて、私には「官僚」という種属の正体はどんなものなのか、また、それが、どんな具合いに悪いのか、どうも、色あざやかには実感せられなかったのである。問題外、関心無し、そんな気持に近かった。つまり、役人は威張る、それだけの事なのではなかろうかとさえ思っていた。しかし、民衆だって、ずるくて汚くて慾が深くて、裏切って、ろくでも無いのが多いのだから、謂(い)わばアイコとでも申すべきで、むしろ役人のほうは、その大半、幼にして学を好み、長ずるに及んで立志出郷、もっぱら六法全書の糞(くそ)暗記に努め、質素倹約、友人にケチと言われても馬耳東風、祖先を敬するの念厚く、亡父の命日にはお墓の掃除などして、大学の卒業証書は金色の額縁にいれて母の寝間の壁に飾り、まことにこれ父母に孝、兄弟には友ならず、朋友(ほうゆう)は相信ぜず、お役所に勤めても、ただもうわが身分の大過無きを期し、ひとを憎まず愛さず、にこりともせず、ひたすら公平、紳士の亀鑑、立派、立派、すこしは威張ったって、かまわない、と私は世の所謂お役人に同情さえしていたのである。

 しかるに先日、私は少しからだ具合いを悪くして、一日一ぱい寝床の中でうつらうつらしながら、ラジオというものを聞いてみた。私はこれまで十何年間、ラジオの機械を自分の家に取りつけた事が無い。ただ野暮ったくもったい振り、何の芸も機智も勇気も無く、図々しく厚かましく、へんにガアガア騒々しいものとばかり独断していたのである。空襲の時にも私は、窓をひらいて首をつき出し、隣家のラジオの、一機はどうして一機はどうしたとかいう報告を聞きとって、まず大丈夫、と家の者に言って、用をすましていたものである。

 いや、実は、あのラジオの機械というものは、少し高い。くれるというひとがあったら、それは、もらってもいいけれど、酒と煙草とおいしい副食物以外には、極端に倹約吝嗇(りんしょく)の私にとって、受信機購入など、とんでも無い大乱費だったのである。それなのに、昨年の秋、私がれいに依ってよそで二、三夜飲みつづけ、夕方、家は無事かと胸がドキドキして歩けないくらいの不安と恐怖とたたかいながら、やっと家の玄関前までたどりつき、大きい溜息(ためいき)を一つ吐いてから、ガラリと玄関の戸をあけて、

「ただいま!」

 それこそ、清く明るくほがらかに、帰宅の報知をするつもりが、むざんや、いつも声がしゃがれる。

「やあ、お父さんが帰って来た」

 と七歳の長女。

「まあ、お父さん、いったいどこへ行っていらしたんです」

 と赤ん坊を抱いてその母も出て来る。

 とっさに、うまい嘘(うそ)も思い浮ばず、

「あちこち、あちこち」

 と言い、

「皆、めしはすんだのか」

 などと、必死のごまかしの質問を発し、二重まわしを脱いで、部屋に一歩踏み込むと、箪笥(たんす)の上からラジオの声。

「買ったのかい? これを」

 私には外泊の弱味がある。怒る事が出来なかった。

「これは、マサ子のよ」

 と七歳の長女は得意顔で、

「お母さんと一緒に吉祥寺へ行って、買って来たのよ」

「それは、よかったねえ」

 と父は子供には、あいそを言い、それから母に向って小声で、

「高かったろう。いくらだった?」

 千いくらだったと母は答える。

「高い。いったいお前は、どこから、そんな大金を算段出来たの?」

 父は酒と煙草とおいしい副食物のために、いつもお金に窮して、それこそ、あちこち、あちこちの出版社から、ひどい借金をしてしまって、いきおい家庭は貧寒、母の財布には、せいぜい百円紙幣三、四枚、というのが、全くいつわりの無い実状なのである。

「お父さんの一晩のお酒代にも足りないのに、大金だなんて、……」

 母もさすがに呆れたのか、笑いながら陳弁するには、お父さんのお留守のあいだに雑誌社のかたが原稿料をとどけて下さったので、この折と吉祥寺へ行って、思い切って買ってしまいました、この受信機が一ばん安かったのです、マサ子も可哀想ですよ、来年は学校ですから、ラジオでもって、少し音楽の教育をしてやらなければなりません、また私だって、夜おそくまであなたの御帰宅を待ちながら、つくろいものなんかしている時、ラジオでも聞いていると、どんなに気がまぎれて助かるかわかりませんわ。

「めしにしよう」

 こんな経緯で、私の家にもラジオというものが、そなわったけれども、私は相かわらず、あちこち、あちこちなので、しみじみ聴取した事は、ほとんど無いのである。たまに私の作品が放送せられる時でも、私は、うっかり聞きのがす。

 つまり、一言にしていえば、私はラジオに期待していなかったのである。

 ところが先日、病気で寝ながら、ラジオの所謂「番組」の、はじめから終りまで、ほとんど全部を聞いてみた。聞いてみると、これもやはりアメリカの人たちの指導のおかげか、戦前、戦時中のあの野暮ったさは幾分消えて、なんと、なかなか賑(にぎ)やかなもので、突如として教会の鐘のごときものが鳴り出したり、琴の音が響いて来たり、また間断無く外国古典名曲のレコード、どうにもいろいろと工夫に富み、聴き手を飽かせまいという親切心から、幕間というものが一刻も無く、うっかり聞いているうちに昼になり、夜になり、一ページの読書も出来ないという仕掛けになっているのである。そうして、夜の八時だか九時だかに、私は妙なものを聴取した。

 街頭録音というものである。所謂政府の役人と、所謂民衆とが街頭に於いて互いに意見を述べ合うという趣向である。

 所謂民衆たちは、ほとんど怒っているような口調で、れいの官僚に食ってかかる。すると、官僚は、妙な笑い声を交えながら、実に幼稚な観念語(たとえば、研究中、ごもっともながらそこを何とか、日本再建、官も民も力を合せ、それはよく心掛けているつもり、民主々義の世の中、まさかそんな極端な、ですから政府は皆さんの御助力を願って、云々(うんぬん))そんな事ばかり言っている。つまり、その官僚は、はじめから終りまで一言も何も言っていないのと同じであった。所謂民衆たちは、いよいよ怒り、舌鋒(ぜっぽう)するどく、その役人に迫る。役人は、ますますさかんに、れいのいやらしい笑いを発して、厚顔無恥の阿呆(あほ)らしい一般概論をクソていねいに繰りかえすばかり。民衆のひとりは、とうとう泣き声になって、役人につめ寄る。

 寝床の中でそれを聞き、とうとう私も逆上した。もし私が、あの場に居合せたなら、そうして司会者から意見を求められたなら、きっとこう叫ぶ。

「私は税金を、おさめないつもりでいます。私は借金で暮しているのです。私は酒も飲みます。煙草も吸います。いずれも高い税金がついて、そのために私の借金は多くなるばかりなのです。この上また、あちこち金を借りに歩いて、税金をおさめる力が私には、ありません。それに私は病弱だから、副食物や注射液や薬品のためにも借金をします。私はいま、非常に困難な仕事をしているのです。少くとも、あなたよりは、苦しい仕事をしているのです。自分でも、ほとんど発狂しているのではないかと思うほど、仕事のことばかり考えつめているんです。酒も煙草も、また、おいしい副食物も、いまの日本人にはぜいたくだ、やめろと言う事になったら、日本に一人もいい芸術家がいなくなります。それだけは私、断言できます。おどかしているのではありません。あなたは、さっきから、政府だの、国家だの、さも一大事らしくもったい振って言っていますが、私たちを自殺にみちびくような政府や国家は、さっさと消えたほうがいいんです。誰も惜しいと思やしません。困るのは、あなたたちだけでしょう。何せ、クビになるんだから。何十年かの勤続も水泡に帰するんだから。そうして、あなたの妻子が泣くんだから。ところが、こっちはもう、仕事のために、ずっと前から妻子を泣かせどおしなんだ。好きで泣かせているんじゃない。仕事のために、どうしても、そこまで手がまわらないのだ。それを、まあ、何だい。ニヤニヤしながら、そこを何とか御都合していただくんですなあ、だなんて、とんでもない。首をくくらせる気か。おい、見っともないぞ。そのニヤニヤ笑いは、やめろ! あっちへ行け! みっともない。私は社会党の右派でも左派でもなければ、共産党員でもない。芸術家というものだ。覚えて置き給え。不潔なごまかしが、何よりもきらいなんだ。どだい、あなたは、なめていやがる。そんな当りさわりの無い、いい加減な事を言って、所謂民衆をなだめ、納得させる事が出来ると思っているのか。たった一言でいい、君の立場の実情を言え! 君の立場の実情を。……」

 そのような、頗(すこぶ)る泥臭い面罵(めんば)の言葉が、とめどなく、いくらでも、つぎつぎと胸に浮び、われながらあまり上品では無いと思いながら、憤怒の念がつのるばかりで、いよいよひとりで興奮し、おしまいには、とうとう涙が出て来た。

 所詮(しょせん)は、陰弁慶である。私は経済学には、まるで暗い。税の問題など、何もわからぬと言ってよい。その街頭録音の場に居合せて、おそるおそる質問を発し、たちまち役人に教えさとされ、

「さよか、すんません」

 という情無い結果になるかも知れない。けれども、私には、その役人のヘラヘラ笑いが気にいらなかったのだ。ご自分の言う事に確信の無い証拠だ。ごまかしている証拠だ。いい加減を言っている証拠だ。もしあの、ヘラヘラ笑いの答弁が、官僚の実体だとしたなら、官僚というものは、たしかに悪いものだ。あまりに、なめている。世の中を、なめ過ぎている。私はラジオを聞きながら、その役人の家に放火してやりたいくらいの極度の憎悪を感じたのである。

「おい! ラジオを消してくれ」

 それ以上、その役人のヘラヘラ笑いを、聞くに忍びなかった。私は税金を、おさめない。あんな役人が、あんなヘラヘラ笑いをしているうちは、おさめない。牢(ろう)へはいったって、かまわない。あんなごまかしを言っているうちは、おさめない、と狂うくらいに逆上し、そうしてただもう口惜しくて、涙が出るのである。

 けれども、やはり私は政治運動には興味が無い。自分の性格がそれに向かないばかりか、それに依って自分が救われるとも思っていない。ただ、それは、自分には、うっとうしい許(ばか)りだ。私の視線は、いつも人間の「家」のほうに向いている。

 その夜、私は前の日に医者から貰って置いた鎮静剤を飲み、少し落ちついてから、いまの日本の政治や経済の事は考えず、もっぱら先刻のお役人の生活形態に就いてのみ思いをめぐらしていた。

 あのいまのひとの、ヘラヘラ笑いは、しかし、所謂民衆を軽蔑(けいべつ)している笑いでは無い。決してそんな性質のものでは無かった。わが身と立場とを守る笑いだ。防禦(ぼうぎょ)の笑いだ。敵の鋭鋒を避ける笑いだ。つまり、ごまかしの笑いである。

 そうして、私の寝ながらの空想は、次のような展開をはじめたのである。

 彼はあの街頭の討論を終えて、ほっとして汗を拭き、それから急に不機嫌な顔になってあのひとの役所に引上げる。

「いかがでございました?」

 と下僚にたずねられ、彼は苦笑し、

「いや、もう、さんざんさ」

 と答える。

 討論の現場に居合せたもうひとりの下僚は、

「いえ、いえ、どうして、かいとう乱麻を断つ、というところでしたよ」

 とお世辞を言う。

「かいとうとは、怪しい刀(かたな)と書くんだろう?」

 と彼はやはり苦笑しながら言って、でも内心は、まんざらでない。

「冗談じゃない。どだい、あんな質問者とは、頭の構造がちがいますよ。何せ、こっちは千軍万馬の、……」

 すこしお世辞が過ぎたのに気づいて下僚は素早く話頭を転ずる。

「きょうの録音は、いつ放送になるんです?」

「知らん」

 知っているのだけれども、知らんと言ったほうが人物が大きく鷹揚(おうよう)に見える。彼は、きょうの出来事はすべて忘れたような顔をして、のろのろと執務をはじめる。

「とにかく、あの放送は、たのしみだなあ」

 下僚は、なおも小声でお世辞を言う。しかし、この下僚は、少しも楽しみだと思っていないし、実際その放送の夜には、カストリという奇妙な酒を、へんな屋台で飲み、ちょうど街頭討論放送の時刻に、さかんにげえげえゲロを吐いている。楽しみも何もあったものでない。

 たのしみにしているのは、れいのあの役人と、その家族である。

 いよいよ今夜は、放送である。役人は、その日は、いつもより一時間ほど早く帰宅する。そうして街頭録音の放送の三十分くらい前から家族全部、緊張して受信機の傍に集る。

「いまに、この箱から、お父さんのお声が聞えて来ますよ」

 夫人は末の小さいお嬢さんをだっこして、そう教えている。

 中学一年の男の子は、正坐して、そうしてきちんと両手を膝(ひざ)に置き、実に行儀よく放送の開始を待っている。この子は、容貌も端麗で、しかも学校がよく出来る。そうして、お父さんを心から尊敬している。

 放送開始。

 父は平然と煙草を吸いはじめる。しかし、火がすぐ消える。父は、それに気がつかず、さらにもう一度吸い、そのまま指の間にはさみ、自分の答弁に耳を傾ける。自分が予想していた以上に、自分の答弁が快調に録音せられている。まず、これでよし。大過無し。官庁に於ける評判もいいだろう。成功である。しかも、これは日本国中に、いま、放送せられているのだ。彼は自分の家族の顔を順々に見る。皆、誇りと満足に輝いている。

 家庭の幸福。家庭の平和。

 人生の最高の栄冠。

 皮肉でも何でも無く、まさしく、うるわしい風景ではあるが、ちょっと待て。

 私の空想の展開は、その時にわかに中断せられ、へんな考えが頭脳をかすめた。家庭の幸福。誰がそれを望まぬ人があろうか。私は、ふざけて言っているのでは無い。家庭の幸福は、或いは人生の最高の目標であり、栄冠であろう。最後の勝利かも知れない。

 しかし、それを得るために、彼は私を、口惜し泣きに泣かせた。

 私の寝ながらの空想は一転する。

 ふいと、次のような短篇小説のテーマが、思い浮んで来たのである。この小説には、もはや、あの役人は登場しない。もともとあの役人の身の上も、全く私の病中の空想の所産で、実際の見聞で無いのは勿論(もちろん)であるが、次の短篇小説の主人公もまた、私の幻想の中の人物に過ぎない。

 ……それは、全く幸福な、平和な家庭なんだ。主人公の名前を、かりに、津島修治、とでもして置こう。これは私の戸籍名なのであるが、下手に仮名(かめい)を用いて、うっかり偶然、実在の人の名に似ていたりして、そのひとに迷惑をかけるのも心苦しいから、そのような誤解の起らぬよう、私の戸籍名を提供するのである。

 津島の勤め先は、どこだっていい。所謂お役所でありさえすればいい。戸籍名なんて言葉が、いま出たから、それにちなんで町役場の戸籍係りという事にしてもよい。何だってかまわぬ。テーマは出来ているのだから、あとは津島の勤め先に応じて、筋書の肉附けを工夫して行けばよい。

 津島修治は、東京都下の或る町の役場に勤めていた。戸籍係りである。年齢は、三十歳。いつも、にこにこしている。美男子ではないが血色もよく、謂わば陽性の顔である。津島さんと話をしておれば苦労を忘れると、配給係りの老嬢が言った事があるそうだ。二十四歳で結婚し、長女は六歳、その次のは男の子で三歳。家族は、この二人の子供と妻と、それから、彼の老母と、彼と、五人である。そうして、とにかく、幸福な家庭なんだ。彼は、役所に於いては、これまで一つも間違いをし出かさず、模範的な戸籍係りであり、また、細君にとっては模範的な亭主であり、また、老母にとっては模範的な孝行息子であり、さらに、子供たちにとっても、模範的なパパであった。彼は、酒も煙草もやらない。我慢しているのでは無く、ほしくないのだ。細君がそれを全部、闇屋(やみや)に売って、老母や子供のよろこぶようなものを買う。ケチでは無いのだ。夫も妻も、家庭をたのしくするために、全力を尽しているのだ。もともと、この家族は、北多摩郡に本籍を有していたのであったが、亡父が中学校や女学校の校長として、あちこち転任になり、家族も共について歩いて、亡父が仙台の某中学校の校長になって三年目に病歿したので、津島は老母の里心を察し、亡父の遺産のほとんど全部を気前よく投じて、現在のこの武蔵野(むさしの)の一角に、八畳、六畳、四畳半、三畳の新築の文化住宅みたいなものを買い、自分は親戚(しんせき)の者の手引きで三鷹(みたか)町の役場に勤める事になったのである。さいわい、戦災にも遭わず、二人の子供は丸々と太り、老母と妻との折合いもよろしく、彼は日の出と共に起きて、井戸端で顔を洗い、その気分のすがすがしさ、思わずパンパンと太陽に向って柏手(かしわで)を打って礼拝するのである。老母妻子の笑顔を思えば、買い出しのお芋六貫も重くは無く、畑仕事、水汲(みずく)み、薪割(まきわ)り、絵本の朗読、子供の馬、積木の相手、アンヨは上手、つつましきながらも家庭は常に春の如く、かなり広い庭は、ことごとく打ちたがやされて畑になってはいるが、この主人、ただの興覚めの実利主義者とかいうものとは事ちがい、畑のぐるりに四季の草花や樹の花を品よく咲かせ、庭の隅の鶏舎の白色レグホンが、卵を産む度に家中に歓声が挙り、書きたてたらきりの無いほど、つまり、幸福な家庭なんだ。つい、こないだも、同僚から押しつけられて仕方無く引き受けた「たからくじ」二枚のうち、一枚が千円の当りくじだったが、もともと落ちついた人なので、あわてず騒がず、家族の者たちにもまた同僚にも告げ知らせず、それから数日経って出勤の途中、銀行に立ち寄って現金を受け取り、家庭の幸福のためには、ケチで無いどころか万金をも惜しまぬ気前のいいひとなのだから、彼の家のラジオ受信機が、ラジオ屋に見せても、「修繕の仕様が無い」と宣告されたほどに破損して、この二、三年間ただ茶箪笥の上の飾り物になっていて、老母も妻も、この廃物に対して時折、愚痴を言っていたのを思い出し、銀行から出たすぐその足でラジオ屋に行き、躊躇(ちゅうちょ)するところなく気軽に受信機の新品を買い求め、わが家のところ番地を教えて、それをとどけるように依頼し、何事も無かったような顔をして役場に行き執務をはじめる。

 けれども、さすがに内心は、浮き浮きしていたのである。老母や妻のおどろき、よろこびもさる事ながら、長女も、もの心地がついてから、はじめてわが家のラジオが歌いはじめるのを聞いてその興奮、お得意、また、坊やの眼をぱちくりさせながらの不審顔、一家の大笑い、手にとるようにわかるのだ。そこへ自分が帰って行って、「たからくじ」の秘密をはじめて打ち明ける。また、大笑い。ああ、早く帰宅の時間が来ればよい。平和な家庭の光を浴びたい。きょうの一日は、ばかに永い。

 しめた! 帰宅の時間だ。ばたばたと机上の書類を片づける。

 その時、いきせき切って、ひどく見すぼらしい身なりの女が出産とどけを持って彼の窓口に現われる。

「おねがいします」

「だめですよ。きょうはもう」

 津島はれいの、「苦労を忘れさせるような」にこにこ顔で答え、机の上を綺麗(きれい)に片づけ、空(から)のお弁当箱を持って立ち上る。

「お願いします」

「時計をごらん、時計を」

 津島は上機嫌で言って、その出産とどけを窓口の外に押し返す。

「おねがいします」

「あしたになさい、ね、あしたに」

 津島の語調は優しかった。

「きょうでなければ、あたし、困るんです」

 津島は、もう、そこにいなかった。

 ……見すぼらしい女の、出産にからむ悲劇。それには、さまざまの形態があるだろう。その女の、死なねばならなかったわけは、それは、私(太宰)にもはっきりわからないけれども、とにかく、その女は、その夜半に玉川上水に飛び込む。新聞の都下版の片隅に小さく出る。身元不明。津島には何の罪も無い。帰宅すべき時間に、帰宅したのだ。どだい、津島は、あの女の事など覚えていない。そうして相変らず、にこにこしながら家庭の幸福に全力を尽している。

 だいたいこんな筋書の短篇小説を、私は病中、眠られぬままに案出してみたのであるが、考えてみると、この主人公の津島修治は、何もことさらに役人で無くてもよさそうである。銀行員だって、医者だってよさそうである。けれども、私にこの小説を思いつかせたものは、かの役人のヘラヘラ笑いである。あのヘラヘラ笑いの拠って来る根元(こんげん)は何か。所謂「官僚の悪」の地軸は何か。所謂「官僚的」という気風の風洞は何か。私は、それをたどって行き、家庭のエゴイズム、とでもいうべき陰鬱な観念に突き当り、そうして、とうとう、次のような、おそろしい結論を得たのである。

 曰(いわ)く、家庭の幸福は諸悪の本(もと)。



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Posted by 문학관 관리인 위어조자(謂語助者)

비잔(眉山:びざん)

다자이 오사무(太宰 治) (1948)

일본어 원문


 これは、れいの飲食店閉鎖の命令が、未(いま)だ発せられない前のお話である。

 新宿辺も、こんどの戦火で、ずいぶん焼けたけれども、それこそ、ごたぶんにもれず最も早く復興したのは、飲み食いをする家であった。帝都座の裏の若松屋という、バラックではないが急ごしらえの二階建の家も、その一つであった。

「若松屋も、眉山(びざん)がいなけりゃいいんだけど。」

「イグザクトリイ。あいつは、うるさい。フウルというものだ。」

 そう言いながらも僕たちは、三日に一度はその若松屋に行き、そこの二階の六畳で、ぶっ倒れるまで飲み、そうして遂(つい)に雑魚寝(ざこね)という事になる。僕たちはその家では、特別にわがままが利(き)いた。何もお金を持たずに行って、後払いという自由も出来た。その理由を簡単に言えば、三鷹(みたか)の僕の家のすぐ近くに、やはり若松屋というさかなやがあって、そこのおやじが昔から僕と飲み友達でもあり、また僕の家の者たちとも親しくしていて、そいつが、「行ってごらんなさい、私の姉が新宿に新しく店を出しました。以前は築地(つきじ)でやっていたのですがね。あなたの事は、まえから姉に言っていたのです。泊って来たってかまやしません。」

 僕はすぐに出かけ、酔っぱらって、そうして、泊った。姉というのはもう、初老のあっさりしたおかみさんだった。

 何せ、借りが利くので重宝(ちょうほう)だった。僕は客をもてなすのに、たいていそこへ案内した。僕のところへ来る客は、自分もまあこれでも、小説家の端くれなので、小説家が多くならなければならぬ筈なのに、画家や音楽家の来訪はあっても、小説家は少かった。いや、ほとんど無いと言っても過言ではない状態であった。けれども、新宿の若松屋のおかみさんは、僕の連れて行く客は、全部みな小説家であると独(ひと)り合点(がてん)している様子で、殊(こと)にも、その家の女中さんのトシちゃんは、幼少の頃より、小説というものがメシよりも好きだったのだそうで、僕がその家の二階に客を案内するともう、こちら、どなた? と好奇の眼をかがやかして僕に尋ねる。

「林芙美子さんだ。」

 それは僕より五つも年上の頭の禿(は)げた洋画家であった。

「あら、だって、……」

 小説というものがメシよりも好きと法螺(ほら)を吹いているトシちゃんは、ひどく狼狽(ろうばい)して、

「林先生って、男の方なの?」

「そうだ。高浜虚子(きよこ)というおじいさんもいるし、川端龍子(りゅうこ)という口髭(くちひげ)をはやした立派な紳士もいる。」

「みんな小説家?」

「まあ、そうだ。」

 それ以来、その洋画家は、新宿の若松屋に於(お)いては、林先生という事になった。本当は二科の橋田新一郎氏であった。

 いちど僕は、ピアニストの川上六郎氏を、若松屋のその二階に案内した事があった。僕が下の御不浄に降りて行ったら、トシちゃんが、お銚子(ちょうし)を持って階段の上り口に立っていて、

「あのかた、どなた?」

「うるさいなあ。誰だっていいじゃないか。」

 僕も、さすがに閉口していた。

「ね、どなた?」

「川上っていうんだよ。」

 もはや向っ腹が立って来て、いつもの冗談も言いたく無く、つい本当の事を言った。

「ああ、わかった。川上眉山。」

 滑稽(こっけい)というよりは、彼女のあまりの無智にうんざりして、ぶん殴りたいような気にさえなり、

「馬鹿野郎!」

 と言ってやった。

 それ以来、僕たちは、面と向えば彼女をトシちゃんと呼んでいたが、かげでは、眉山と呼ぶようになった。そうしてまた、若松屋の事を眉山軒などと呼ぶ人も出て来た。

 眉山の年齢は、はたち前後とでもいうようなところで、その風采(ふうさい)は、背が低くて色が黒く、顔はひらべったく眼が細く、一つとしていいところが無かったけれども、眉(まゆ)だけは、ほっそりした三ヶ月型で美しく、そのためにもまた、眉山という彼女のあだ名は、ぴったりしている感じであった。

 けれども、その無智と図々(ずうずう)しさと騒がしさには、我慢できないものがあった。下にお客があっても、彼女は僕たちの二階のほうにばかり来ていて、そうして、何も知らんくせに自信たっぷりの顔つきで僕たちの話の中に割り込む。たとえば、こんな事もあった。

「でも、基本的人権というのは、……」

 と、誰かが言いかけると、

「え?」

 とすぐに出しゃばり、

「それは、どんなんです? やはり、アメリカのものなんですか? いつ、配給になるんです?」

 人絹(じんけん)と間違っているらしいのだ。あまりひどすぎて一座みな興が覚(さ)め、誰も笑わず、しかめつらになった。

 眉山ひとり、いかにも楽しげな笑顔で、

「だって、教えてくれないんですもの。」

「トシちゃん、下にお客さんが来ているらしいぜ。」

「かまいませんわ。」

「いや、君が、かまわなくたって、……」

 だんだん不愉快になるばかりであった。

「白痴じゃないですか、あれは。」

 僕たちは、眉山のいない時には、思い切り鬱憤(うっぷん)をはらした。

「いかに何でも、ひどすぎますよ。この家も、わるくはないが、どうもあの眉山がいるんじゃあ。」

「あれで案外、自惚(うぬぼ)れているんだぜ。僕たちにこんなに、きらわれているとは露知らず、かえって皆の人気者、……」

「わあ! たまらねえ。」

「いや、おおきにそうかも知れん。なんでも、あれは、貴族、……」

「へえ? それは初耳。めずらしい話だな。眉山みずからの御託宣ですか?」

「そうですとも。その貴族の一件でね、あいつ大失敗をやらかしてね、誰かが、あいつをだまして、ほんものの貴婦人は、おしっこをする時、しゃがまないものだと教えたのですね、すると、あの馬鹿が、こっそり御不浄でためしてみて、いやもう、四方八方に飛散し、御不浄は海、しかもあとは、知らん顔、御承知でしょうが、ここの御不浄は、裏の菓物屋さんと共同のものなんですから、菓物屋さんは怒り、下のおかみさんに抗議して、犯人はてっきり僕たち、酔っぱらいには困る、という事になり、僕たちが無実の罪を着せられたというにがにがしい経験もあるんです、しかし、いくら僕たちが酔っぱらっていたって、あんな大洪水の失礼は致しませんからね、不審に思って、いろいろせんさくの結果、眉山でした、かれは僕たちにあっさり白状したんです、御不浄の構造が悪いんだそうです。」

「どうしてまた、貴族だなんて。」

「いまの、はやり言葉じゃないんですか? 何でも、眉山の家は、静岡市の名門で、……」

「名門? ピンからキリまであるものだな。」

「住んでいた家が、ばかに大きかったんだそうです。戦災で全焼していまは落ちぶれたんだそうですけどね、何せ帝都座と同じくらいの大きさだったというんだから、おどろきますよ。よく聞いてみると、何、小学校なんです。その小学校の小使さんの娘なんですよ、あの眉山は。」

「うん、それで一つ思い出した事がある。あいつの階段の昇り降りが、いやに乱暴でしょう。昇る時は、ドスンドスン、降りる時はころげ落ちるみたいに、ダダダダダ。いやになりますよ、ダダダダダと降りてそのまま御不浄に飛び込んで扉をピシャリッでしょう。おかげで僕たちが、ほら、いつか、冤罪(えんざい)をこうむった事があったじゃありませんか。あの階段の下には、もう一部屋あって、おかみさんの親戚(しんせき)のひとが、歯の手術に上京して来ていてそこに寝ていたのですね。歯痛には、あのドスンドスンもダダダダも、ひびきますよ。おかみさんに言ったってね、私はあの二階のお客さんたちに殺されますって。ところが僕たちの仲間には、そんな乱暴な昇り降りするひとは無い。でも、おかみさんに僕が代表で注意をされたんです。面白くないから、僕は、おかみさんに言いましたよ、あれは眉山、いや、トシちゃんにきまっていますって。すると、傍でそれを聞いていた眉山は、薄笑いして、私は小さい時から、しっかりした階段を昇り降りして育って来ましたから、とむしろ得意そうな顔で言うんですね。その時は、僕は、女って浅間(あさま)しい虚栄の法螺(ほら)を吹くものだと、ただ呆(あき)れていたんですが、そうですか、学校育ちですか、それなら、法螺じゃありません、小学校のあの階段は頑丈ですからねえ。」

「聞けば聞くほど、いやになる。あすからもう、河岸(かし)をかえましょうよ。いい潮時ですよ。他にどこか、巣を捜しましょう。」

 そのような決意をして、よその飲み屋をあちこち覗(のぞ)いて歩いても、結局、また若松屋という事になるのである。何せ、借りが利くので、つい若松屋のほうに、足が向く。

 はじめは僕の案内でこの家へ来たれいの頭の禿(は)げた林先生すなわち洋画家の橋田氏なども、その後は、ひとりでやって来てこの家の常連の一人になったし、その他にも、二、三そんな人物が出来た。

 あたたかくなって、そろそろ桜の花がひらきはじめ、僕はその日、前進座の若手俳優の中村国男君と、眉山軒で逢って或る用談をすることになっていた。用談というのは、実は彼の縁談なのであるが、少しややこしく、僕の家では、ちょっと声をひそめて相談しなければならぬ事情もあったので、眉山軒で逢って互いに大声で論じ合うべく約束をしていたのである。中村国男君も、その頃はもう、眉山軒の半常連くらいのところになっていて、そうして眉山は、彼を中村武羅夫(むらお)氏だとばかり思い込んでいた。

 行ってみると、中村武羅夫先生はまだ来ていなくて、林先生の橋田新一郎氏が土間のテーブルで、ひとりでコップ酒を飲みニヤニヤしていた。

「壮観でしたよ。眉山がミソを踏んづけちゃってね。」

「ミソ?」

 僕は、カウンターに片肘(かたひじ)をのせて立っているおかみさんの顔を見た。

 おかみさんは、いかにも不機嫌そうに眉をひそめ、それから仕方無さそうに笑い出し、

「話にも何もなりやしないんですよ、あの子のそそっかしさったら。外からバタバタ眼つきをかえて駈(か)け込んで来て、いきなり、ずぶりですからね。」

「踏んだのか。」

「ええ、きょう配給になったばかりのおミソをお重箱に山もりにして、私も置きどころが悪かったのでしょうけれど、わざわざそれに片足をつっ込まなくてもいいじゃありませんか。しかも、それをぐいと引き抜いて、爪先立(つまさきだ)ちになってそのまま便所ですからね。どんなに、こらえ切れなくなっていたって、何もそれほどあわて無くてもよろしいじゃございませんか。お便所にミソの足跡なんか、ついていたひには、お客さまが何と、……」

 と言いかけて、さらに大声で笑った。

「お便所にミソは、まずいね。」

 と僕は笑いをこらえながら、

「しかし、御不浄へ行く前でよかった。御不浄から出て来た足では、たまらない。何せ眉山の大海(たいかい)といってね、有名なものなんだからね、その足でやられたんじゃ、ミソも変じてクソになるのは確かだ。」

「何だか、知りませんがね、とにかくあのおミソは使い物になりやしませんから、いまトシちゃんに捨てさせました。」

「全部か? そこが大事なところだ。時々、朝ここで、おみおつけのごちそうになる事があるからな。後学のために、おたずねする。」

「全部ですよ。そんなにお疑いなら、もう、うちではお客さまに、おみおつけは、お出し致しません。」

「そう願いたいね。トシちゃんは?」

「井戸端(いどばた)で足を洗っています。」

 と橋田氏は引き取り、

「とにかく壮烈なものでしたよ。私は見ていたんです。ミソ踏み眉山。吉右衛門(きちえもん)の当り芸になりそうです。」

「いや、芝居にはなりますまい。おミソの小道具がめんどうです。」

 橋田氏は、その日、用事があるとかで、すぐに帰り、僕は二階にあがって、中村先生を待っていた。

 ミソ踏み眉山は、お銚子を持ってドスンドスンとやって来た。

「君は、どこか、からだが悪いんじゃないか? 傍に寄るなよ、けがれるわい。御不浄にばかり行ってるじゃないか。」

「まさか。」

 と、たのしそうに笑い、

「私ね、小さい時、トシちゃんはお便所へいちども行った事が無いような顔をしているって、言われたものだわ。」

「貴族なんだそうだからね。……しかし、僕のいつわらざる実感を言えば、君はいつでもたったいま御不浄から出て来ましたって顔をしているが、……」

「まあ、ひどい。」

 でも、やはり笑っている。

「いつか、羽織の裾(すそ)を背中に背負ったままの姿で、ここへお銚子を持って来た事があったけれども、あんなのは、一目瞭然(いちもくりょうぜん)、というのだ、文学のほうではね。どだい、あんな姿で、お酌(しゃく)するなんて、失敬だよ。」

「あんな事ばかり。」

 平然たるものである。

「おい、君、汚いじゃないか。客の前で、爪の垢(あか)をほじくり出すなんて。こっちは、これでもお客だぜ。」

「あら、だって、あなたたちも、皆こうしていらっしゃるんでしょう? 皆さん、爪がきれいだわ。」

「ものが違うんだよ。いったい、君は、風呂へはいるのかね。正直に言ってごらん。」

「それあ、はいりますわよ。」

 と、あいまいな返事をして、

「私ね、さっき本屋へ行ったのよ。そうしてこれを買って来たの。あなたのお名前も出ていてよ。」

 ふところから、新刊の文芸雑誌を出して、パラパラ頁を繰って、その、僕の名前の出ているところを捜している様子である。

「やめろ!」

 こらえ切れず、僕は怒声を発した。打ち据えてやりたいくらいの憎悪(ぞうお)を感じた。

「そんなものを、読むもんじゃない。わかりやしないよ、お前には。何だってまた、そんなものを買って来るんだい。無駄だよ。」

「あら、だって、あなたのお名前が。」

「それじゃ、お前は、僕の名前の出ている本を、全部片っ端から買い集めることが出来るかい。出来やしないだろう。」

 へんな論理であったが、僕はムカついて、たまらなかった。その雑誌は、僕のところにも恵送せられて来ていたのであるが、それには僕の小説を、それこそ、クソミソに非難している論文が載っているのを僕は知っているのだ。それを、眉山がれいの、けろりとした顔をして読む。いや、そんな理由ばかりではなく、眉山ごときに、僕の名前や、作品を、少しでもいじられるのが、いやでいやで、堪え切れなかった。いや、案外、小説がメシより好き、なんて言っている連中には、こんな眉山級が多いのかも知れない。それに気附かず、作者は、汗水流し、妻子を犠牲にしてまで、そのような読者たちに奉仕しているのではあるまいか、と思えば、泣くにも泣けないほどの残念無念の情が胸にこみ上げて来るのだ。

「とにかく、その雑誌は、ひっこめてくれ。ひっこめないと、ぶん殴るぜ。」

「わるかったわね。」

 と、やっぱりニヤニヤ笑いながら、

「読まなけれあいいんでしょう?」

「どだい、買うのが馬鹿の証拠だ。」

「あら、私、馬鹿じゃないわよ。子供なのよ。」

「子供? お前が? へえ?」

 僕は二の句がつげず、しんから、にがり切った。

 それから数日後、僕はお酒の飲みすぎで、突然、からだの調子を悪くして、十日ほど寝込み、どうやら恢復(かいふく)したので、また酒を飲みに新宿に出かけた。

 黄昏(たそがれ)の頃だった。僕は新宿の駅前で、肩をたたかれ、振り向くと、れいの林先生の橋田氏が微醺(びくん)を帯びて笑って立っている。

「眉山軒ですか?」

「ええ、どうです、一緒に。」

 と、僕は橋田氏を誘った。

「いや、私はもう行って来たんです。」

「いいじゃありませんか、もう一回。」

「おからだを、悪くしたとか、……」

「もう大丈夫なんです。まいりましょう。」

「ええ。」

 橋田氏は、そのひとらしくも無く、なぜだか、ひどく渋々(しぶしぶ)応じた。

 裏通りを選んで歩きながら、僕は、ふいと思い出したみたいな口調でたずねた。

「ミソ踏み眉山は、相変らずですか?」

「いないんです。」

「え?」

「きょう行ってみたら、いないんです。あれは、死にますよ。」

 ぎょっとした。

「おかみから、いま聞いて来たんですけどね、」

 と橋田氏も、まじめな顔をして、

「あの子は、腎臓結核(じんぞうけっかく)だったんだそうです。もちろん、おかみにも、また、トシちゃんにも、そんな事とは気づかなかったが、妙にお小用が近いので、おかみがトシちゃんを病院に連れて行って、しらべてもらったらその始末で、しかも、もう両方の腎臓が犯されていて、手術も何もすべて手おくれで、あんまり永い事は無いらしいのですね。それで、おかみは、トシちゃんには何も知らせず、静岡の父親のもとにかえしてやったんだそうです。」

「そうですか。……いい子でしたがね。」

 思わず、溜息と共にその言葉が出て、僕は狼狽(ろうばい)し、自分で自分の口を覆(おお)いたいような心地がした。

「いい子でした。」

 と、橋田氏は、落ちついてしみじみ言い、

「いまどき、あんないい気性の子は、めったにありませんですよ。私たちのためにも、一生懸命つとめてくれましたからね。私たちが二階に泊って、午前二時でも三時でも眼がさめるとすぐ、下へ行って、トシちゃん、お酒、と言えば、その一ことで、ハイッと返事して、寒いのに、ちっともたいぎがらずにすぐ起きてお酒を持って来てくれましたね、あんな子は、めったにありません。」

 涙が出そうになったので、僕は、それをごまかそうとして、

「でも、ミソ踏み眉山なんて、あれは、あなたの命名でしたよ。」

「悪かったと思っているんです。腎臓結核は、おしっこが、ひどく近いものらしいですからね、ミソを踏んだり、階段をころげ落ちるようにして降りてお便所にはいるのも、無理がないんですよ。」

「眉山の大海(たいかい)も?」

「きまっていますよ、」

 と橋田氏は、僕の茶化すような質問に立腹したような口調で、

「貴族の立小便なんかじゃありませんよ。少しでも、ほんのちょっとでも永く、私たちの傍にいたくて、我慢に我慢をしていたせいですよ。階段をのぼる時の、ドスンドスンも、病気でからだが大儀で、それでも、無理して、私たちにつとめてくれていたんです。私たちみんな、ずいぶん世話を焼かせましたからね。」

 僕は立ちどまり、地団駄(じだんだ)踏みたい思いで、

「ほかへ行きましょう。あそこでは、飲めない。」

「同感です。」

 僕たちは、その日から、ふっと河岸(かし)をかえた。


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미남자와 담배(美男子と煙草:びだんしとたばこ)

다자이 오사무(太宰 治) (1948)

일본어 원문


 私は、独(ひと)りで、きょうまでたたかって来たつもりですが、何だかどうにも負けそうで、心細くてたまらなくなりました。けれども、まさか、いままで軽蔑(けいべつ)しつづけて来た者たちに、どうか仲間にいれて下さい、私が悪うございました、と今さら頼む事も出来ません。私は、やっぱり独りで、下等な酒など飲みながら、私のたたかいを、たたかい続けるよりほか無いんです。

 私のたたかい。それは、一言[#「一言」は底本では「一事」]で言えば、古いものとのたたかいでした。ありきたりの気取りに対するたたかいです。見えすいたお体裁(ていさい)に対するたたかいです。ケチくさい事、ケチくさい者へのたたかいです。

 私は、エホバにだって誓って言えます。私は、そのたたかいの為に、自分の持ち物全部を失いました。そうして、やはり私は独りで、いつも酒を飲まずには居られない気持で、そうして、どうやら、負けそうになって来ました。

 古い者は、意地が悪い。何のかのと、陳腐(ちんぷ)きわまる文学論だか、芸術論だか、恥かしげも無く並べやがって、以(もっ)て新しい必死の発芽を踏みにじり、しかも、その自分の罪悪に一向お気づきになっておらない様子なんだから、恐れいります。押せども、ひけども、動きやしません。ただもう、命が惜しくて、金が惜しくて、そうして、出世して妻子をよろこばせたくて、そのために徒党を組んで、やたらと仲間ぼめして、所謂(いわゆる)一致団結して孤影の者をいじめます。

 私は、負けそうになりました。

 先日、或るところで、下等な酒を飲んでいたら、そこへ年寄りの文学者が三人はいって来て、私がそのひとたちとは知合いでも何でも無いのに、いきなり私を取りかこみ、ひどくだらしない酔い方をして、私の小説に就(つ)いて全く見当ちがいの悪口を言うのでした。私は、いくら酒を飲んでも、乱れるのは大きらいのたちですから、その悪口も笑って聞き流していましたが、家へ帰って、おそい夕ごはんを食べながら、あまり口惜(くや)しくて、ぐしゃと嗚咽(おえつ)が出て、とまらなくなり、お茶碗(ちゃわん)も箸(はし)も、手放して、おいおい男泣きに泣いてしまって、お給仕していた女房に向い、

「ひとが、ひとが、こんな、いのちがけで必死で書いているのに、みんなが、軽いなぶりものにして、……あのひとたちは、先輩なんだ、僕より十も二十も上なんだ、それでいて、みんな力を合せて、僕を否定しようとしていて、……卑怯(ひきょう)だよ、ずるいよ、……もう、いい、僕だってもう遠慮しない、先輩の悪口を公然と言う、たたかう、……あんまり、ひどいよ。」

 などと、とりとめの無い事をつぶやきながら、いよいよ烈(はげ)しく泣いて、女房は呆(あき)れた顔をして、

「おやすみなさい、ね。」

 と言い、私を寝床に連れて行きましたが、寝てからも、そのくやし泣きの嗚咽が、なかなか、とまりませんでした。

 ああ、生きて行くという事は、いやな事だ。殊(こと)にも、男は、つらくて、哀(かな)しいものだ。とにかく、何でもたたかって、そうして、勝たなければならぬのですから。

 その、くやし泣きに泣いた日から、数日後、或る雑誌社の、若い記者が来て、私に向い、妙な事を言いました。

「上野の浮浪者を見に行きませんか?」

「浮浪者?」

「ええ、一緒の写真をとりたいのです。」

「僕が、浮浪者と一緒の?」

「そうです。」

 と答えて、落ちついています。

 なぜ、特に私を選んだのでしょう。太宰といえば、浮浪者。浮浪者といえば、太宰。何かそのような因果関係でもあるのでしょうか。

「参ります。」

 私は、泣きべその気持の時に、かえって反射的に相手に立向う性癖を持っているようです。

 私はすぐ立って背広に着換え、私の方から、その若い記者をせき立てるようにして家を出ました。

 冬の寒い朝でした。私はハンカチで水洟(みずばな)を押えながら、無言で歩いて、さすがに浮かぬ心地(ここち)でした。

 三鷹(みたか)駅から省線で東京駅迄(まで)行き、それから市電に乗換え、その若い記者に案内されて、先(ま)ず本社に立寄り、応接間に通されて、そうして早速ウイスキイの饗応にあずかりました。

 思うに、太宰はあれは小心者だから、ウイスキイでも飲ませて少し元気をつけさせなければ、浮浪者とろくに対談も出来ないに違いないという本社編輯部(へんしゅうぶ)の好意ある取計らいであったのかも知れませんが、率直に言いますと、そのウイスキイは甚(はなは)だ奇怪なしろものでありました。私も、これまでさまざまの怪しい酒を飲んで来た男で、何も決して上品ぶるわけではありませんが、しかし、ウイスキイの独り酒というのは初めてでした。ハイカラなレッテルなど貼(は)られ、ちゃんとした瓶(びん)でしたが、内容が濁っているのです。ウイスキイのドブロクとでも言いましょうか。

 けれども私はそれを飲みました。グイグイ飲みました。そうして、応接間に集って来ていた記者たちにも、飲みませんか、と言ってすすめました。しかし、皆うす笑いして飲まないのです。そこに集って来ていた記者たちは、たいていひどいお酒飲みなのを私は噂(うわさ)で聞いて知っているのでした。けれども、飲まないのです。さすがの酒豪たちも、ウイスキイのドブロクは敬遠の様子でした。

 私だけが酔っぱらい、

「なんだい、君たちは失敬じゃあないか。てめえたちが飲めない程の珍妙なウイスキイを、客にすすめるとは、ひどいじゃないか。」

 と笑いながら言って、記者たちは、もうそろそろ太宰も酔って来た、この勢いの消えないうちに、浮浪者と対面させなければならぬと、いわばチャンスを逃さず、私を自動車に乗せ、上野駅に連れて行き、浮浪者の巣と言われる地下道へ導くのでした。

 けれども、記者たちのこの用意周到の計画も、あまり成功とは言えないようでした。私は、地下道へ降りて何も見ずに、ただ真直(まっすぐ)に歩いて、そうして地下道の出口近くなって、焼鳥屋の前で、四人の少年が煙草を吸っているのを見掛け、ひどく嫌(いや)な気がして近寄り、

「煙草は、よし給(たま)え。煙草を吸うとかえっておなかが空(す)くものだ。よし給え。焼鳥が喰いたいなら、買ってやる。」

 少年たちは、吸い掛けの煙草を素直に捨てました。すべて拾歳前後の、ほんの子供なのです。私は焼鳥屋のおかみに向い、

「おい、この子たちに一本ずつ。」

 と言い、実に、へんな情なさを感じました。

 これでも、善行という事になるのだろうか、たまらねえ。私は唐突にヴァレリイの或(あ)る言葉を思い出し、さらに、たまらなくなりました。

 もし、私のその時の行いが俗物どもから、多少でも優しい仕草と見られたとしたら、私はヴァレリイにどんなに軽蔑されても致し方なかったんです。

 ヴァレリイの言葉、――善をなす場合には、いつも詫(わ)びながらしなければいけない。善ほど他人を傷(きずつ)けるものはないのだから。

 私は風邪(かぜ)をひいたような気持になり、背中を丸め、大股で地下道の外に出てしまいました。

 四五人の記者たちが、私の後を追いかけて来て、

「どうでした。まるで地獄でしょう。」

 別の一人が、

「とにかく、別世界だからな。」

 また別の一人が、

「驚いたでしょう? 御感想は?」

 私は声を出して笑いました。

「地獄? まさか。僕は少しも驚きませんでした。」

 そう言って上野公園の方に歩いて行き、私は少しずつおしゃべりになって行きました。

「実は、僕なんにも見て来なかったんです。自分自身の苦しさばかり考えて、ただ真直を見て、地下道を急いで通り抜けただけなんです。でも、君たちが特に僕を選んで地下道を見せた理由は、判(わか)った。それはね、僕が美男子であるという理由からに違いない。」

 みんな大笑いしました。

「いや、冗談じゃない。君たちには気がつかなかったかね。僕は、真直を見て歩いていても、あの薄暗い隅(すみ)に寝そべっている浮浪者の殆(ほとん)ど全部が、端正な顔立をした美男子ばかりだということを発見したんだ。つまり、美男子は地下道生活におちる可能性を多分に持っているということになる。君なんか色が白くて美男子だから、危いぞ、気をつけ給え。僕も、気をつけるがね。」

 また、みんながどっと笑いました。

 自惚(うぬぼ)れて、自惚れて、人がなんと言っても自惚れて、ふと気がついたらわが身は、地下道の隅に横たわり、もはや人間でなくなっているのです。私は、地下道を素通りしただけで、そのような戦慄(せんりつ)を、本気に感じたのでした。

「美男子の件はとに角、そのほかに何か発見出来ましたか。」

 と問われて私は、

「煙草です。あの美男子たちは、酒に酔っているようにも見えなかったが、煙草だけはたいてい吸っていましたね。煙草だって、安かないんだろう。煙草を買うお金があったら、莚(むしろ)一枚でも、下駄(げた)一足でも買えるんじゃないかしら。コンクリイトの上にじかに寝て、はだしで、そうして煙草をふかしている。人間は、いや、いまの人間は、どん底に落ちても、丸裸になっても、煙草を吸わなければならぬように出来ているのだろうね。ひとごとじゃない。どうも、僕にもそんな気持が思い当らぬこともない。いよいよこれは、僕の地下道行きは実現性の色を増して来たようだわい。」

 上野公園前の広場に出ました。さっきの四名の少年が冬の真昼の陽射(ひざし)を浴びて、それこそ嬉々として遊びたわむれていました。私は自然に、その少年たちの方にふらふら近寄ってしまいました。

「そのまま、そのまま。」

 ひとりの記者がカメラを私たちの方に向けて叫び、パチリと写真をうつしました。

「こんどは、笑って!」

 その記者が、レンズを覗(のぞ)きながら、またそう叫び、少年のひとりは、私の顔を見て、

「顔を見合せると、つい笑ってしまうものだなあ。」

 と言って笑い、私もつられて笑いました。

 天使が空を舞い、神の思召(おぼしめし)により、翼が消え失せ、落下傘(らっかさん)のように世界中の処々方々に舞い降りるのです。私は北国の雪の上に舞い降り、君は南国の蜜柑畑(みかんばたけ)に舞い降り、そうして、この少年たちは上野公園に舞い降りた、ただそれだけの違いなのだ、これからどんどん生長しても、少年たちよ、容貌(ようぼう)には必ず無関心に、煙草を吸わず、お酒もおまつり以外には飲まず、そうして、内気でちょっとおしゃれな娘さんに気永(きなが)に惚(ほ)れなさい。



 附記

 この時うつした写真を、あとで記者が持って来てくれた。笑い合っている写真と、それからもう一枚は、私が浮浪児たちの前にしゃがんで、ひとりの浮浪児の足をつかんでいる甚(はなは)だ妙なポーズの写真であった。もしこれが後日、何か雑誌にでも掲載された場合、太宰はキザな奴だ、キリスト気取りで、あのヨハネ伝の弟子(でし)の足を洗ってやる仕草を真似(まね)していやがる、げえっ、というような誤解を招くおそれなしとしないので一言弁明するが、私はただはだしで歩いている子供の足の裏がどんなになっているのだろうという好奇心だけであんな恰好(かっこう)をしただけだ。

 さらに一つ、笑い話を附け加えよう。その二枚の写真が届けられた時、私は女房を呼び、

「これが、上野の浮浪者だ。」

 と教えてやったら、女房は真面目(まじめ)に、

「はあ、これが浮浪者ですか。」

 と言い、つくづく写真を見ていたが、ふと私はその女房の見詰めている個所を見て驚き、

「お前は、何を感違いして見ているのだ。それは、おれだよ。お前の亭主じゃないか。浮浪者は、そっちの方だ。」

 女房は生真面目過ぎる程の性格の所有者で、冗談など言える女ではないのである。本気に私の姿を浮浪者のそれと見誤ったらしい。


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봄의 낙엽(春の枯葉)

1막 3장

다자이 오사무(太宰 治) (1948)

번역 : 홍성필


인물

노나카 야이치   초등학교 교사 36세

         세츠코   그의 처       31세

         시즈   세츠코의 생모 54세

오쿠다 요시오   초등학교 교사 노나카 집에 동거함. 28세

         키쿠요   요시오의 누이동생 23세

기타 학생 몇 명.


장소

쓰가루 반도 해안의 벽촌


1946년 4월



제1장


무대는 마을 초등학교 한 교실. 방과 후 오후 4시경. 정면에는 교단. 그 전방에 학생들 책상과 걸상이 20~30. 왼쪽 유리문에서 햇살이 비춘다. 오른쪽도 유리문으로부터 바다가 보인다. 전교생 150 명 정도 되는 학교 규모.

정면 칠판에는 다음과 같은 글이 난잡하고 무질서하게 적혀 있으며, 힘줘서 지운 곳도 있으나, 대개 읽을 수 있다. 수업 중에 교사 노나카가 쓰고 그대로인 것처럼 보인다.

그 글자들이란,

“四等國(사등국), 北海道(홋카이도), 本州(혼슈), 四國(시코쿠), 九州(큐슈), 四島國(사도국), 봄이 왔다. 멸망이냐, 독립이냐. 빛은 동북지방에서부터. 동북지방의 보수성. 보수와 봉건. 인플레이션. 정치와 경제. 어둠. 국민 상호간의 신뢰. 도덕. 문화. 민주주의. 의회. 선거권. 사랑. 사제. 착한 아이. 양심. 학문. 공부와 농경. 해산물.

등이다.


막이 열린다.

무대 잠시 공허.

갑자기 거친 발자국 소리가 나더니 “혼내는 게 아니야. 묻고 싶은 게 있어. 울지 않아도 돼.” 등의 목소리와 함께 오른쪽 문을 열고 초등학교 교사 노나카 야이치가 혼자 울고 있는 학생을 데리고 등장.


[노나카] (파랗게 질린 얼굴에 억지로 미소를 띠며) 무슨 혼을 내는 게 아니야. 그게 뭐냐. 벌써 고등과 2학년이나 되었으면서 그렇게 울고. 보기 안 좋다. 자아, 어서 눈물을 닦아. (노나카 자신이 허리에 차고 있던 수건을 학생에게 건네준다.)


[학생] (얌전히 수건으로 눈물을 닦는다.)


[노나카] (그 수건을 학생으로부터 건네받고 다시 자신의 허리에 차고는) 그래. 자아, 노래를 불러봐. 혼내지 않을 테니. 절대 혼내지 않을 거야. 지금 너희들이 저 바깥 운동장에서 함께 부르던 노래를 한 번 불러봐. 조용하게 불러도 상관없으니까 한 번 해보렴. 나무라는 게 아니야. 선생님은 그 노래를 몇 군데 잊어버려서 말이야. 너한테 배우려고 하는 거야. 그뿐이니까 마음 놓고, 자아, 어디 한 번 남자답게 들려줘. (말하면서 제일 앞줄 학생용 걸상에 앉는다. 즉, 관객에서 보면 뒤를 돌아보게 된다)


학생은 관객에 대해 정면을 바라보고 차렷 자세로 눈을 감고 조용히 부른다.

봄날 높은 누각(樓閣)에서의 꽃놀이

주고받던 술잔 생각 사무치누나

천대를 이어온 소나무 가지 사이로 비쳐들던

지난 날 영화로운 모습은 지금 어디에


[학생] (노래를 마치고는 고개를 숙인다)


[노나카] (책상에 턱을 궤고) 고맙다. 아니, 선생님은 말이야, 너희들도 알겠지만 노래는 잘 못하거든. 그 노래도 어렴풋이 기억하고 있어. 덕분에 이제 확실하게 생각났다. 슬픈 노래구나. 요즘 너희들은 자주 그 노래만 부르고 있는 것 같은데, 선생님께서 가르쳐주셨니?


[학생] (고개를 젓는다)


[노나카] 아무도 안 가르쳐줬는데 그냥 알게 됐어?


[학생] (가만히 있는다)


[노나카] 절대 혼내지 않을테니 마음속에 있는 걸 그대로 말해봐. 선생님도 지금 여러 가지 생각하고 있어. 아까도 저렇게 (라며 잠시 정면으로 보이는 칠판을 가리키고) 다양하게 칠판에 적고는 새로운 일본 모습이라는 것을 너희들에게 가르친다고는 하는데, 하지만 아무래도 가르친 다음에 왠지 모르게 무척 불안하고 쓸쓸해지거든. 선생님 스스로도 전혀 모르고 있는 게 아닐까 하기도 해. 오히려 너희들에게 배워야 할 점도 있지 않을까 하는 생각도 들어서 말이야. 그런데 어때? 너희들은 그 노래를 어떤 심정으로 부르고 있는지, 그걸 우선 솔직하게 선생님한테 말해줄 수 있겠니? 역시 무척이나 쓸쓸해서 그런 노래를 부르고 싶어지니? 아니면 무슨 장난기로 부르니? 응?


[학생] (가만히 있다)


[노나카] 무슨 말 한마디라도 해봐. 설마 너희들은 마음속으로 선생님을 비웃고 있는 건 아니겠지? (혼자 조용히 웃고는 일어선다) 이제 됐어. 돌아가도 돼. 하지만 마음을 우울하게 만드는 노래는 별로 안 부르는 게 좋겠다. 다른 학생들한테도 그렇게 전하도록. 아무튼 지금 우리들은 조금이라도 마음을 밝게 갖도록 노력해야만 하니까. 그럼 됐어. 돌아 가.


학생. 말없이 노나카 선생에게 고개를 숙이고 오른쪽 출입구로부터 퇴장. 노나카는 그 모습을 바라보고는 멍하니 있다. 이윽고 천천히 교단 쪽으로 걸어가, 교단 위로 오르고는 칠판지우개로 칠판 글씨를 하나하나 꼼꼼히 지운다.

지우며 이윽고 조용히 ‘봄날 높은 누각(樓閣)에서의 꽃놀이 주고받던 술잔 생각 사무치누나’ 라고 노래한다.

무대는 조금씩 어두워진다. 석양이 저물어가는 것이다.

몰래 조용히 웃고는 오쿠다 키쿠요. 오른쪽 출입구로부터 등장.


[키쿠요] 꽤 잘 부르시네요, 선생님.


[노나카] (놀라며 뒤돌아서서 키쿠요를 보고는 쓴 웃음을 지으며) 아아, 당신이었군요. (칠판을 다 지우고는 정면을 돌아보고) 놀리면 못 써요.


[키쿠요] 어머. 정말이에요. 정말로 잘 하시네요. 멋진 바리톤이세요.


[노나카] (점점 더 얼굴을 찡그리고 쓴 웃음을 지으며) 됐어요. 그만 두세요. 저희 집은 대대로 음치거든요. (말투를 바꾸고) 무슨 볼일이라도? 오쿠다 선생님이라면 방금 전 가신 것 같던데요.


[키쿠요] 아뇨. 오빠를 만나러 온 건 아니에요. (장난 기 섞이게 일부러 정중한 자세로) 오늘은 노나카 야이치 선생님을 뵈러 왔습니다.


[노나카] 아, 그래요? 집에서 매일 뵙고 있잖아요?


[키쿠요] 네에. 그래도 같은 집에 있으면 좀처럼 단둘이서 말할 기회가 없잖아요. 어머, 죄송. 유혹하고 있는 건 아니에요.


[노나카] 상관없습니다. 아니, 관둡시다. 오빠한테 혼나요. 당신 오빠는 고지식한 분이시라서 말이외다.


[키쿠요] 당신 부인께서도 고지식한 분이시라서 말이외다.


둘 웃는다. 노나카 교사 천천히 교단에서 내려와 왼쪽 유리문 쪽으로 다가가 바깥을 바라본다. 키쿠요는 학생용 책상 위에 앉는다. 아름다운 평상 일본 전통의상을 입고 있다.


[노나카] (키쿠요 쪽에 등을 보이며 바깥 풍경을 바라보면서) 벌써 봄이네요. 츠카루의 봄은 한꺼번에 갑자기 찾아오더군요.


[키쿠요] (차분하게) 정말 그래요. 조금씩 찾아오는 게 아니라 단번에 봄이 되더라고요. 그렇게 많이 쌓였던 눈도 순식간에 사라지고, 너무 신기해서 무서울 정도였어요. 저는 벌써 10년이나 쓰가루를 떠나 있었으니 쓰가루의 봄은 단번에 찾아온다는 사실을 모두 잊고 있기에, 그토록 산에 가득 쌓여있던 눈이 사라지는 건 5월 내내 걸릴 거라고 생각했었거든요. 그런데 글쎄. 녹나보다 했더니 열흘도 지나지 않아 깨끗이 사라졌잖아요. 4월 초에 이렇게 봄에 나는 풀잎들을 볼 수 있을 줄은 정말 생각지도 못했어요.


[노나카] (여전히 바깥 풍경을 바라보면서) 풀잎이요? 하지만 눈 밑에서 나타난 건 풀잎만은 아니에요. 저길 봐요. 모두 낙엽이에요. 작년 가을에 떨어진 낙엽이 그대로 다시 눈 밑에 나타나기 시작했군요. 의미가 없군요, 이 낙엽은. (조용히 웃는다) 오랜 겨울 동안 낮에도 밤에도 눈 밑에 깔려 참고 있으면서 무엇을 기다리고 있었을까. 소름이 끼칩니다. 누이 사라지고 저렇게 지저분한 모습을 나타냈다고 해서 되살아나는 것도 아니고 저건 그대로 썩어갈 뿐이죠. (키쿠요 쪽을 돌아보고 유리 문에 등을 기대고는 웃으며 농담 같은 말투로) 또다시 봄이 찾아 왔건만 저 지치고 지친 낙엽들에게는 무의미합니다. 무엇 때문에 눈 밑에서 오랫동안 참고 있었을까요. 눈이 나라졌다고 해도 이 낙엽들은 어쩔 수가 없습니다. 넌센스라는 거겠죠.


키쿠요, 소리 내어 웃다.


[노나카] (일부러 진지한 표정을 지으며) 아니, 웃을 일이 아니에요. 우리들도 저런 난센스 같은 낙엽일지도 모르니까요. 10년 동안, 그 이상 참으며 어쨌든 벌레처럼 간신히 살아온 것이겠지만, 그러나 어느새 낙엽처럼 떨어져 죽고 말았는지도 모릅니다. 이제부터는 썩어져갈 뿐 봄이 와도 여름이 와도 영원히 살아날 일은 없는데도 그것도 알지 못한 채 자기 딴에는 봄이 오는 것을 기다리거나 해서, 마치 이미 의미 없는 처지가 되고만 게 아닐까요.


[키쿠요] (단백하게) 의외로 감상적이시군요, 선생님은. 힘내세요. 선생님은 아직 젊잖으신데, 이제부터잖아요.


[노나카] (조금 심각하게 화를 내는 듯 얼굴을 찌푸리고) 무슨 말도 안 되는. 저는 벌써 서른여섯입니다. 도시 사람들과 달리 촌에서 서른여섯이라고 하면 이미 손주가 있을 나이예요. 놀리지 마세요.


[키쿠요] 그래도 선생님한테는 아직 아이가 한 명도 없잖아요? 그러니까 어딘지 모르게 젊어 보여요. 사모님도 그렇게 아름다우시고 저보다 젊게 보여요. 얼마나 차이가 나시나요?


[노나카] 누구하고요?


[키쿠요] 저랑요.


[노나카] (흥미가 없다는 듯이) 아내는 서른하나예요.


[키쿠요] 그렇다면 저랑 여덟 살이나 차이가 나네요. 정말 젊어 보이시네요. 좋은 집안 따님이셔서 관록도 있으시고 훌륭하세요. 선생님은 복도 많으세요. 저런 사모님이라면 양자를 두셔도 될 것 같더군요.


[노나카] (더욱 앉잖다는 듯이) 왜 당신은 그런 시시한 말만 하는 거죠? 이제 그런 얘기는 그만 합시다. 오늘은 제게 무슨 볼 일이라도 있어서 오셨나요?


[키쿠요] (태연하게) 돈을 가지고 왔어요.


[노나카] 돈이요?


[키쿠요] 그래요. (가슴 띠 속에서 흰 봉투를 꺼내고는 걸어가 노나카 교사 옆에 가서는) 선생님. 아무 말씀 마시고. 알았죠? 그냥 가만히 받아 주세요!


[노나카] (무의식인 듯 뿌리치고) 이, 이게 뭐예요?


[키쿠요] 괜찮아요, 선생님. 아무렇지도 않게 받아주세요. 그리고 좋을 대로 써주세요. 아무한테도 말씀하시면 안 돼요.


[노나카] (팔짱을 끼고 쓴 웃음을 짓는다) 알겠습니다. 그렇지만 저도 참 타락했군요. 키쿠요 씨. 알았으니까 그 봉투는 일단 집어넣으세요.


키쿠요. 봉투를 만지작거리다가 그것을 옆에 있는 학생 책상 위에 살며시 놓는다.


[노나카] 아시는 바와 같이 저희 집은 가난합니다. 매우 궁핍하죠. 어떤 사람이든 저희 집에서 사글세로 같은 지붕 아래 살아보면, 시골 교사라고 하는 치사하고 딱한 일상생활에 진저리가 날 것입니다. 특히 최근 동경에서 막 피난 온 젊은 여자분들 눈에는 도저히 참을 수 없는 지옥처럼 보일 지도 모릅니다. 그러나 걱정할 필요 없습니다. 당신들의 동정은 감사하지만 그러나 저희 가정에도 또한 저희 가정만의 자존심이 있습니다. 오히려 저희들은 당신들을 동정심을 느낄 정도입니다. 그런 돈 같은, 그런, 그런 걱정은 다음부터 절대 하지 말아주세요. 저희들은 당신들로부터 매달 받고 있는 사글세조차도 비싸다고 생각합니다. 안타깝게 생각하고 있어요. 자아, 이제 아셨으면 그런 돈 같은 건 집어넣어 주세요. 함께 돌아갑시다. 키쿠요 씨! 그러나 당신은 (지긋이 키쿠요 얼굴을 바라보며) 좋은 분이시군요. 호의만은 뼈저리도록 고맙게 받겠습니다. (살짝 웃으며) 악수합시다.


노나카 교사, 오른손을 내민다. 찰싹 하고 작은 소리가 들릴 정도로 세게 키쿠요는 그 노나카 손바닥을 때린다.


[키쿠요] (조소하는 표정으로) 아아, 멋 부리긴요. 착각하지 마세요. 시시해보여요. 저는 다 알고 있어요. 모두 알고 있죠. 그렇게 말해도 당신들이 사실은 돈이 갖고 싶은 거예요. 폼 잡으실 필요 없어요. 당신도, 사모님도, 그리고 어머님도 모두 돈이 갖고 싶은 거예요. 너무너무 갖고 싶어 어쩔 줄을 몰라 하는 거예요. 그러면서도 당신들은 가난하지 않지요. 가난하다, 가난하다 하지만 가난하지 않아요. 제대로 된 집도 있고 땅도 있으며 옷도 갖가지로 많이 가지고 있죠. 그래도 돈이 갖고 싶은 거예요. 욕심이 많은 거예요. 구두쇠죠. 돈 보다도 더 좋은 것이 이 세상에는 없다고 생각하는 거라구요. 그에 비해 참, 당신들의 생활은 어떤가요? 오빠는 예전부터 여기에 살고 있었으니 그렇다고 치더라도, 저는 아버지와 둘이서 동경을 나와 전쟁이 시작하기 전에도 편하지 않았으며, 드디어 전쟁이 시작하고는 저도 아버지 공장에 나가 직공들과 함께 일하기 시작했을 무렵부터 벌써 저희들은 살았는지 죽었는지 뭐가 뭔지도 모르는 채로 정신없이 하루하루를 보내며, 그러는 사이에 깨끗이 모든 것이 타버리고는 지금 우리들이 가지고 있는 거라고는 예전에 이쪽으로 옮겨놓았던 짐짝 다섯 개뿐. 정말로 그것뿐이에요. 아버지가 홀로 동경에 머물면서 고생하고 저만 오빠한테 신세지러 왔지만 정말로 저한테는 아무 것도 없어요. 아무 것도 없으니 하는 수 없이 이런 보기 흉하게 화려한 옷 같은 걸 짐짝에서 꺼내 입고 다니지만, 시골 사람들 눈에는 저희들이 엄청난 사치라도 하는 것처럼 보고 있지 않을까요? 그런데 그건 정반대예요. 얌전한 평상복은 모두 타버려서 이런 열여섯 일곱에 입었던 옷밖에 안 남아 있기에 할 수 없이 입고 있는 거예요. 돈도 역시 마찬가지예요. 저희들은 이제 아무 것도 없다구요. 오빠는 그렇게 고지식하니 어쩌면 돈을 어느 정도 모았는지는 모르지만, 저희들은 이제 아무 것도 없어요. 들어온 돈은 모두 그 자리에서 써버리고, 아버지나 저는 10년 동안 동경에서 그런 생활을 해왔지요. 하지만 저는 그 동안 단 한 번이라도 돈이 갖고 싶다고 생각한 적은 없었어요. 없으면 없는 대로 어떻게 해서든 이겨내 해왔거든요. 하지만 시골에서는 그럴 수가 없잖아요. 시골에서는 인간의 가치를 현찰이 있는지 없는지로 평가하더군요. 그것만이 표준인 거예요. 이제 농담도 아무 것도 없이 냉담하고도 침착하게 그렇다고 믿고 있는 걸 보면 끔찍해요. 오싹할 때가 있어요. 아무리 고상하게 모르는 척해도 속으로는 역시 그러니까 짜증나요. 만약 제게 돈 한 푼 없다는 걸 알면 당신 사모님도, 어머님도, 그리고 당신도 얼마나 싫은 표정을 지을까요? 아뇨. 분명 그러실 거예요. 진심으로 저라는 여자를 경멸하고 지저부한 밥맛없이 볼 게 틀림없다구요. 저는 경솔하게 자신의 가난한 처지를 말할 수도 없어요. 당신들과는 달라요. 당신들은 자신들을 스스로 가난하다 뭐라 해도 그야 제대로 된 재산이 있다는 건 누구나 알고 있으니 물가가 비싸 곤란하다거나 장차 어떻게 하면 좋을까 해도 그건 애교라도 되겠지만, 그걸 만약 제가 말하면 어떻게 될까요? 농담도 애교도 되지 않아요. 그저 치사하고 비참한, 못난 인종들이라며 경계하게 될 거예요. 바보 같애. 그래서 저희들은 돈을 힘 닿는 데까지 펑펑 써보여야만 하는 거예요. 그러면 또 당신들은 동경에서 살다온 인간들은 씀씀이가 헤프다고 하고, 그렇다고 당신들처럼 자린고비처럼 생활하면 정말 가난한 사람의, 처참하고 마치 무슨 송충이나 걸음뱅이 쳐다보듯 하는데, 대체 당신 사모님은 뭐가 잘나서 그렇게 으쓱대요? 무슨 우리들과는 인종이 달라요? 무척이나 어깨에 힘을 주고 제가 농담을 해도 웃지 않고 항상 저희들보다 높은 곳에 있는 사람처럼 하던데 그건 대체 뭐죠? 미인이라구? 웃기지 말아요. 동경 삼류 하숙집 어두컴컴한 곳에서 장부 뒤지는 사람 중에 저런 수세미 절여놓은 것처럼 생긴 아줌마가 있어요. 자는 알고 있어요. 저런 사람이야말로 어느 누구보다도 제일 돈을 좋아하지요. 욕심이 많거든요. 쫀쫀한 거예요. 남편보다도 부모보다도 돈만을 존경하고 있는 거죠. 나는 알 수 있어요. 선생님, 그 돈은 어서 사모님께 갖다 드리세요. 선생님, 제 편이 되어줘요. 저는 복수하고 싶은 거예요. 선생님, 그 봉투에는 당신네 사모님이 제일 좋아하는 게 들어있어요. 모두 새 돈이에요. 제가 혼자서 번 돈이니까 아무 걱정할 필요 없어요.


두 세 학생이 휘파람을 불고 있다. ‘봄날 높은 누각(樓閣)에서의 꽃놀이’ 곡 합창이다.


[키쿠요] (그 휘파람 소리에 귀를 기울이며) 어머, 제 친구들이 마중 왔네. 가야 해요. 그럼 부탁했어요. 아셨죠? 사모님한테는 제가 줬다고 하지 말고 선생님이 알아서 잘 둘러대서 사모님한테 드리세요. 그 으쓱대는 사모님이 어떤 표정을 지을까요? 아아, 재미있네요.


키쿠요 오른쪽 출입구 쪽으로 뛰어간다. 노나카 교사, 순간 정신을 차린 듯 불러 세운다.


[노나카] 잠깐 기다려요, 키쿠요 씨. 어딜 가시는 거예요?


키쿠요, 입구 쪽에 서서는 노나카 교사 쪽으로 휙 돌아선다. 휘파람은 계속 들려온다.


[키쿠요] (해맑은 목소리로) 친구한테요.


[노나카] 그럼 저 노래는 당신이 가르쳐준 거군요?


[키쿠요] (오히려 자랑스럽다는 듯이) 그래요. 저희들은 음악회를 열 거예요. 음악회를 열어서 돈을 벌 거라구요. 새 돈을 벌 거예요. ‘봄날 높은 누각에서의 꽃놀이’도, 그리고 ‘당 나라 사람 오키치’도, 그리고 파란 눈을 한 외국사람 노래도 모두 제가 가르쳐줬어요. 오늘은 이제부터 모두 절에서 모여 연습해요. 집에 들어가는 시간이 늦어질 테니 오빠한테 그렇게 전해주세요. 일본 문화를 위해서라고 하면서 말이에요.


키쿠요 킥킥 웃으며 퇴장. 휘파람소리는 계속 들려온다. 무대는 다시 조금 어두워진다.

노나카 교사, 키쿠요를 두 세 발자국 좇아가서는 멈춰선 후 뒤돌아 책상 위에 놓인 봉투를 꺼내어 윗도리 주머니 속에 넣고는 잠시 생각하고 다시 꺼내서 봉투 속을 본다. 큰 지폐를 한 장, 두 장 하고 묵묵히 센다. 열 장. 주위를 돌아본다. 다시 센다.


- 무대, 조용히 회전한다.


제2장


무대는 초등학교 교사 노나카 야이치 집 안쪽 여섯 첩(疊) 방. 여기는 오쿠다 요시오, 키쿠요 남매가 사용하고 있다.

방 전방에는 모래가 깔린 마당. 풀도 꽃도 없다. 지저부한 이른바 ‘봄의 낙엽’들만이 여기저기 흩어져 있다.

무대 멈춘다.

야이치의 장모인 시즈. 마당에 있는 바지랑대에서 많은 빨래를 걷고 있는 중.

키쿠요의 오빠 오쿠다 요시오는 여섯 첩 방 툇마루에 쭈그리고 않아 화로에 대고 부채질을 하며 무언가를 찌면서 곁에 무슨 책을 두고 읽고 있다.

해는 많이 기울고 희미해졌다.

제1장과 같은 날.


[시즈] (빨래를 걷고는 그것을 두 팔로 한 아름 안은 채 오른쪽으로 사라지려하다가 문득 툇마루 쪽을 보고는 멈춰 서서) 어머, 오쿠다 선생님, 냄비가 넘쳐요.


[오쿠다] (서둘러 냄비 뚜껑을 들고 시즈 쪽을 보며 쓴 웃음을 짓고는) 여동생이 또 오늘도 어딘가로 뛰쳐나가 돌아오지 않으니, 이것 참.


[시즈] 저런 저런. 그럼 오빠도 힘들겠네요. (웃으며 툇마루 쪽으로 다가선다) 뭘 끓이세요?


[오쿠다] (서둘러 다시 냄비뚜껑을 닫고는) 아니, 이건 보여드릴 수 없어요. 닥치는 대로 집어넣고 끓이고는 두 눈 딱 감고 삼켜버릴 작정입니다.


[시즈] (소리 내어 웃고는) 정말 남자들이 밥 해먹는 건 딱해서 못 봐주겠군요. 나중에 장아찌라도 갖다 드릴게요.


[오쿠다] (진지하게) 아뇨. 아무 것도 필요 없습니다. 학생시절부터 십여 년간 이런 생활만 해왔기에 오히려 여동생과 함께 지내며 걔가 해주는 멋 떨어진 요리 같은 걸 먹는 건 불쾌할 정도입니다. (책을 들고 일어서서 방으로 들어가고는 전등을 켠다. 그리고는 툇마루 쪽을 바라보는 책상 앞에 앉아 책상다리를 하고 앉고는, 즉 관객을 정면으로 바라보며 앉아 책을 책상 위에 놓고는 무의식적으로 책장을 이리저리 넘기며 무뚝뚝하게) 여자가 만든 요리 같은 걸 전 한 번도 맛있다고 생각해본 적이 없어요.


[시즈] (빨래를 툇마루에 얌전히 놓고 자기도 툇마루에 앉으며) 어머, 그래요? (느긋하게 웃고는 천천히) 어머님이 돌아가시고 벌써 몇 년이나 됐죠?


[오쿠다] (그리 대수롭지 않다는 듯이) 제가 여기 초등학교에 들어간 다음 해 여름에 돌아가셨으니 벌써 20년이나 되는군요.


[시즈] 벌써 그렇게 됐군요. 저희들도 어머니 장례식 저희들도 어머니 장례식 때는 잘 기억하고 있지요. (빨래를 한 장 한 장 개면서) 지금 그 여동생이 아버님 손에 끌려 아장아장 걸으며 분향하고 있는 모습을 아무리 해도 잊을 수가 없습니다. 그걸 보고 저희들은, “아아 어머니란 어린 아이를 남기고는 죽을 래야 죽을 수도 없다”고 생각했죠.


[오쿠다] (냉정하게) 하지만 어머니는 자살했습니다.


[시즈] (얼굴을 들며) 아니, 그런, 이봐요. 절대 그런.


[오쿠다] 노나카 선생님으로부터 들었습니다. 겉으로는 심장마비라고 되어 있으나 분명 자살이다, 집에서 일하던, 피부가 검은 요리사와 정을 통하고, 소문이 나빠지니 자살했다, 그래서 우리 집에서는 여관을 그만 두고 여기 땅을 팔아치운 다음 아오모리로 가서, 내가 아오모리에 있는 사범학교에 들어가자, 이번에는 아버지는 나를 혼자 버려두고 남동생과 둘이 동경으로 가버렸다, 정말 아버지는 이 쓰가루 지방에는 있고 싶지 않았던 것 같다며 노나카 선생님이 말씀하시더군요.


[시즈] 어머, 그 분은 그렇게 끔찍한 말씀을 하시다니요. 정말 모두 뜬금없는 소리예요. 무엇보다 당신 어머님이 돌아가셨을 무렵에는 그 사람은 아직 이 마을에 오지도 않았어요. 그 사람이 저희 집에 양자로 온지는 아직 10년도 안 된 걸요. 그 전에는 그 사람은 자신이 태어난 쿠로이시(黑石) 집에 있으면서 쿠로이시 초등학교에서 선생님을 하고 있었으며, 이 마을에 그렇게 20년이나 된 옛날 이야기들을 알 리가 없잖아요. 말도 안 됩니다.


[오쿠다] (대수롭지 않다는 듯이) 아뇨. 하지만 새로 이사 온 사람들은 유독 그 지역에 대한 비밀에 민감한 법입니다.


[시즈] (쓸쓸하게 웃고는) 거짓말이에요. 그런 말도 안 되는 일이 있을 리가 없잖아요. (문득 말투를 바꾸고는) 그 분은 그 때 술을 드시고 있지 않았나요? 당신한테 그 말을 했을 때 말이에요.


[오쿠다] (허공을 바라보며) 예, 취해있었습니다.


[시즈] 그렇죠? (자신감 있게) 분명 그랬을 거예요. 그 사람은 젊었을 때 철학인지 문학인지를 한 적이 있다면서, 그 때문에 심한 신경쇠약 증세를 보이더니, 그게 아직 완전히 낫지 않았나보죠. 지금도 술을 마시면 마치 미친 사람처럼 이상한 말을 하며 자기가 꿈에서 본 일들을 그대로 실제 있었던 것처럼 몇 번이고 되풀이 하시니 저희들은 항상 골치를 썩고 있어요. 그런데 피부가 검은 요리사와 어쩌구 저쩌구라니 그것, 참.


[오쿠다] (씁쓸하게 웃으면서) 그래도 그 색이 검은 요리사는 분명 우리 집에 있었지요? 하코다테 출신인가 하고 좀 끼가 있어 보이는……. 어린 마음에도 기억이 납니다.


[시즈] (약간 날카롭게) 그만 두세요. 말도 안 돼. 정신 차리세요.


[오쿠다] 저는 괜찮습니다. 과거사 같은 건 어떻더라도 상관 없으니까요.


[시즈] 괜찮긴요. 무엇보다 그 사람도 참 무례하군요. 지금 오쿠다 집안의 종손한테 그런 끔찍한 말을 하다니. 악마가 따로 없군요.


[오쿠다] 악마는 좀 심했군요. (쾌활하게 웃는다)


[시즈] (급하게) 악마이고말고요. 악마 이상인지도 몰라요. 당신은 그 사람의 진짜 끔찍함을 아직도 모르시는 거예요. 술을 마시면 이건 무슨 마치 정신병자이고, 고약하다고 할까요. 잘 모르는 사람한테는 무척 친절한 것 같은데 집안사람들한테는 정말 냉혹하다고 해야 할지 잔인하다고해야 할지. 아니, 정말이에요. 글쎄 불과 얼마 전에도…….


[오쿠다] (말을 가로막듯이) 하지만 노나카 선생님은 좋은 분이세요. (웃으며) 저 같은 사람이 이런 말을 하는 건 그야말로 실례일지 모르겠지만, 이건 어머님도, 그리고 사모님도 한 번 다시 생각해봐야 할 부분이 있지 않을까요?


[시즈] 어머나! (빨래들을 밀어놓고 오쿠다 쪽으로 몸을 비틀어서는) 예를 들자면요? 예를 들면 그건 어떤 점 말이죠?


[오쿠다] 예를 들면……. 글쎄……. (말을 더듬는다)


[시즈] (힘 있게) 전 이제 그래서 짜증이 나요. 누구 하나 우리의 남모를 고통을 몰라준다니까요. 양자를 맞이한 집 사람들이 신경 쓰는 걸 보면 그건 정말 대단하다고요. 특히 저런, 뭐, 한 마디로 말하자면 일도 안 하고 매사에 덜 떨어진 인간을 양자로 받아들여 이 노나카 집안의 대를 물려주고, 세상 사람들한테 웃음거리가 되지 않도록 어떻게든 저희들의 힘으로 그 사람의 흠집을 감춰주고 생각해서, 남들한테는 그 사람의 단점은 한 마디도 꺼내지 않고, 오히려 거짓말을 해가며 그 사람을 칭찬해왔는데도 그 사람은 정말 무슨 생각을 하고 있는지, 고집쟁이라고나 하는 걸까요. 착한 점은 하나도 없으면서 그래도 내심 자신이 나온 쿠로이시에 있는 야마모토 집안이 너무나도 자랑스러워하고……. 그야 물론 쿠로이시에 있는 야마모토 집안은 큰 도시에서 유지라서 여기 시골 어촌에 있는 가난한 집과는 비교도 되지 않을 만큼 크고 훌륭한 집은 분명하지만, 그깟 유지라고 해봤자 요즘은 다들 빚더미에 앉았다고 하잖아요. 옛날부터 그 집은 중개인들이 말하는 것처럼 대단하지도 않고, 구두쇠라고 해야 할지, 인정머리 없다고 해야 할지, 아무튼 저희들 생각과는 전혀 다른 생각을 가지고 있는 것 같아, 그 사람이 여기에 오고 8년 내내 갈아입을 옷 하나, 십원 딱지 하나 보내온 적이 없어요. 그런 대접을 받으면서도 그 사람은 역시 태어난 집에 미련이 있는지, 언제였더라…… 그 쿠로이시 씨의 형님이 무슨 의원에 당선됐을 때도 그 사람이 좋아하는 꼴 하고는……. 너무나 한심해서 정나미가 떨어졌습니다. 의원이라는 게 뭐가 그리 대단한 거라고요. 저희 노나카 집안에서는 그야 뭐 이런 촌구석 가난한 집이지만, 그래도 남들한테 흉한 꼴은 안 보이고 살아왔고, 조상 대대 이 고장을 위해 노력했고요. 특히 저희 집 양반은 아시는 바와 같이 여기 쓰가루 지방에서 모범교원으로 훈장까지 받았고, 더구나 제 죽은 큰 녀석은 동경제국대학 의대까지 들어가고, 벌써 10년 이상이나 된 옛날 얘기지만요. 그 녀석이 졸업을 앞두고 죽었을 때는 동경제국대학 교수님이나 수많은 학생들한테서까지 많은 위로장을 받았고요, 그리고 이런 촌에까지 손수 와주신 교수님도 계셨어요. 정말 그 놈이 살아 있었다면, 그 놈만 살아 있었다면. (울다) 지금쯤은 이제 그 놈도 훌륭한 의사선생님이 되어 저희들도 지금 같은 이런 고생을 안 해도……(계속 눈물 섞인 넋두리가 이어진다)


[오쿠다] (상관없다는 투로) 하지만 그런 말씀을 아무리 해도……. 어머님. 제가 말한 ‘다시 생각해봐야 할 부분’이란 말하자면 바로 그런 거예요. 여기 노나카씨 댁 가장은 지금 그 노나카 선생님이시잖아? 지나간 일보다도 현재가 중요하지 않을까요. 제게는 양자라는 것은 본래 어떤 모습이어야 하는지 그 도덕상의 볼질은 잘 모르겠지만, 그래도 그 집처럼 거실 정면에 그렇게 큰 아버님 사진과 오라버니 사진을 보란 듯이 걸어놓거나 하면, 노나카 선생님도 꽤 마음이 약하신 분이니 왠지 불안해 하지 않을까요?


[시즈] (얼굴을 들고) 그건 그 사람이 모자라서 그런 거예요. 부족해서 그런 거라고요. 저희가 그 두 장의 사진을 나란히 걸어놓은 건 그 사람도 돌아가신 아버님이나 오라버니 같은 사람이 되어 달라는, 그러니까 격려하는 의미로, 그래서…….


[오쿠다] 그러니까 그게 (웃으며) 아니, 이런 말을 계속 해도 끝이 없군요. (일어서서 뒷마루 쪽으로 나가 냄비를 화로 위에서 내려놓고는 대신 쇠병을 올려놓는다. 이 동작을 하면서 혼잣말처럼) 이제부터도 평생동안 노나카 집안이다, 야마모토 집안이다 하며 서로 고집을 부려가며, 그리고 어떻게 될까? 난 모르겠어. 정말 모르겠어.


[시즈] (김이 샜다는 표정으로) 당신도 이제 색시를 얻으면 알게 되겠죠. (일어서서 옷깃을 오므리고) 아이 추워. 눈이 녹이도 역시 저녁이 되면 추워지네요. (서둘러 빨래를 끌어안고) 실례했습니다.


바람이 일어나고 모래바람이 일어난다. 봄의 낙엽도 마당 구석에서 휘날린다.

시즈 오른쪽으로 퇴장.


[오쿠다] (툇마루에 서서 그것을 바라보며) 짠지인지 뭔지를 갖다 준다더니 저 모습을 보면 믿을 게 못돼. (혼자 웃고는) 자, 밥을 먹어볼까.


오쿠다, 냄비를 방안으로 가지고 들어가고 미닫이를 닫는다. 미닫이문에 오쿠다가 일어서 왔다 갔다 하며 식사 준비를 하는 모습의 그림자가 비친다. 그 오쿠다 그림자 뒷편에 여자 그림자가 떠오른다.

그 여자 그림자는 가만히 선 채로 움직이지 않는다. 바깥은 해 진 저녁.

국민학교 교사인 노나카 야이치, 갈지자를 그리며 왼쪽에서부터 걸어 들어온다. 오른손에 댓병을 들고 있다. 이미 절반을 마셨다. 나머지 절반을 가지고 온 것처럼 보인다. 큰 광어를 끈으로 묶어서 들고 있다.


[노나카] 오쿠다 선생님. 아아, 계시는군. 어? 키쿠요 씨도 계시네. 이것 참 잘 됐어. 거하게 한 번 마셔보자고. 술도 있고 안주도 있어.


미닫이에 비치던 여자 그림자가 쓰윽 사라진다.

동지에 미닫이가 열리고는 오쿠다가 웃으며 얼굴을 내민다.


[오쿠다] 아, 다녀오셨어요? (툇마루로 나간다) 기분이 좋으신가보네요. 오늘은 어디에 초대 받으셨었나보죠?


[노나카] 초대? 초대는 무슨. (툇마루에 덜컥 앉는다) 아무리 우리 국민학교 선생이 항상 가난하다고는 하지만 말이오. 절대 힘 있는 자들의 부스러기들은 취하지 않는다 이 말이오. 이봐요, 키쿠요 씨, 그렇죠? (팔을 뻗어 미닫이를 죄우로 힘껏 열어 제친다) 키쿠요 씨! 어? 안 계신가?


[오쿠다] 동생은 아직 안 들어왔어요. 아직 그 문화회겠죠.


[노나카] (조금 차분하게) 그렇지. 그건 나도 알고 있는데……. 그런데 지금 분명히…….


[오쿠다] (조용히) 오늘은 많이 취하셨나보네요. 자, 어서 들어오지 않으시겠어요?


[노나카] (갑자기 또다시 힘을 내어) 아아, 들어가야죠. (샌들 같은 것을 벗고는 툇마루 위에서 비틀거리며) 오늘은 어디 한 번 거하게 마셔봅시다. 이번에 교원 대이동에 있어서 자네도 나도 잘리지 않고 일단 무사했지. 이를 축하하는 의미에서 말이야 (댓병과 안주를 두 손에 들고 방으로 들어가서는 방 오른쪽 미닫이를 열고는) 어이, 이봐, 세츠코!

(안채를 향해 부른다)

노나카의 처 세츠코 등장. 그러나 미닫이 바깥쪽에 앉아 있으므로 관객한테서는 보이지 않는다.


[노나카] (그 미닫이 바깥에 있는 세츠코에게 광어 건네며) 방금 전 바닷가에서 잡힌 광어야. 회를 떠주게. 오쿠다 선생님과 오늘 밤 여기서 연회를 열거야. 알았어? 회를 빨리 듬뿍 갖다줘. 듬뿍이야. 아, 잠깐, 잠깐. 한 마리는 회로, 나머지 한 마리는 구웠으면 좋겠다. 째째하게 아끼면 안돼. 너희들도 먹어라. 알았어? 어머니한테도 질컷 드시게 하라고.


세츠코, 말없이 조용히 미닫이를 닫는다.


[노나카] (싱글싱글 웃으며 댓병을 든 채로 오쿠다 책상 옆에 앉더니) 아무래도 어촌에서 선생님을 하면서 회를 못 먹는다는 건 너무나 딱하다지.


[오쿠다] (방 중앙으로 들고 온 냄비나 밥그릇을 다시 구석으로 치우면서) 생선은 어때요? 화폐개혁이 있고 좀 싸졌나요?


[노나카] (씁쓸하게 웃으며) 싸지기는. 어부들의 입김이라는 게 대단해. 광어 한 마리 가격이 우리들 한 달 치 월급과 거의 맞먹으니 말이야. 요즘 어부들은 아이들이 용돈을 조르면 아무렇지도 않게 100엔짜리 지폐도 준다더구먼.


[오쿠다] 음. 그렇다는군요. (방 중앙에 놓인 작은 식탁도 구석으로 치우며) 아이들에게 그렇게 큰돈을 주는 건 안 좋다고 생각해요. 아이들 사이에서는 요즘 도박이 유행이라잖아요.


[노나카] 그런 것 같아. 이도저도 엉망진창이야. (말투를 바꾸고) 자네, 그 식탁은 여기에 놔두는 게 좋겠어. 돈 얘기 같은 건 재미없다. 마시자. 물컵 두 개를 빌려주게.


오쿠다, 다시 그 작은 식탁을 방 중앙으로 옮겨오고 물컵 두 개를 가지러 툇마루 쪽으로 나온다.


[노나카] (그러는 동안 문득 오쿠다가 읽다 만 책상 옆에 있는 책을 집고는) 프랑스 혁명사? 뭐야, 이런 걸 읽고 있나? 관둬, 관둬. 역사는 되풀이되지 않아. (가볍게 책을 바닥 위로 내던진다) 역사는 되풀이된다니, 무슨 소릴, 그건 자네, 변증법을 몰라서 그래, 뭐, 이러면서 말이야, 나도 어디 한 번 사회당에라도 들어가 출세해볼까? 쓸데없는 소리. 마시자! 마시고 회포를 풀어보자. 그대 무력한 국민학교 교사여!


둘이서 작은 식탁을 사이에 두고는 책상다리를 하고 두 물컵에 댓병에 든 술을 따른다.


[노나카] 건배! (죽 들이킨다)


[오쿠다] (마시다가 만다) 뭐예요, 이건? 휘발류 같은 냄새가 나는군요. (그대로 물컵을 식탁 위에 놓는다)


[노나카] 선토리(SUNTORY).


[오쿠다] 네?


[노나카] 선토리 위스키. (라고 말하면서 댓병을 눈높이까지 들어올리고 전등빛에 비추어보며) 무색투명한 선토리 위스키. 댓병 150엔.


[오쿠다] 말도 안돼요.


[노나카] 아니, 그게 재미있는 점이야. 나도 알고 있어. 이건 약품용 알콜에 물을 섞었을 뿐이지. 그런데 말이야. 내게 이걸 선토리 위스키라고 하고 150엔으로 팔아준 사람은 말이야, 잘 들어. 이 마을 술주정뱅이 어부인데, 이 양반 자신도 이걸 선토리 위스키라는 이름의 진짜 고급 술인줄 알고 믿어 의심치 않으니 재미있지 않나. 그러니까 그 어부는 아오모리 근처에 생선을 팔러 갔다가 돌아오는 길에 아오모리에 있는 암시장 장사꾼한테 속아 댓병으로 세 병, 아니, 네 병인지도 몰라. 선토리 위스키라고 하는 고급품을 사 들여와서는, 그리고 오늘 아침부터 근처에 사는 술친구들을 끌어 모아 술잔치를 벌이고 있었는데, 거기에 내가 생선을 사러 얼굴을 내밀었다 이거야. 그러자마자 그들이 나를 잡고는, 당신이라면 분명 알테지만 이건 ‘선토리’라고 해서 우리들이 입에 대기는 조금 아까운 술이다, 꼭 선생님께 한 잔 드리고 싶다, 이러면서 큰 사발에 가득 채우고는 들이대더라고. 보니까 이처럼 무색투명. 더구나 이 냄새. 아무리 나라도 잠깐 주저했지. 혹시 그 메틸알콜일지도 모르지 말이야. 하지만 난 그 어부들의 조금도 의심 없고 자랑스럽다는 표정을 보고는 참을 수 없어 죽음을 결심했지. 음. 죽을 결심을 했어. 이 어리석고 철없는 그리고 서글픈 어부들과 함께 죽고자 각오한 거야. 난 마셨어. 그리 맛은 나쁘지 않아. 더구나 기분 좋게 취하기까지 했거든. 그래서 난 그들로부터 댓병 하나를 달라고 하고는 그들과 함께 거하게 마셨지. 역시 선토리는 좋다, 선토리를 마시면 다른 술은 맛이 없어 못 마시겠다, 뭐, 이런 칭찬까지 해가면서 말이야. 그런데 이상하게 서글프더군. (말하면서 자기가 술을 따르고는 마신다) 아, 그렇지. 담배도 있어. 피워보게. 많이 있거든. (윗도리에서 까치담배를 한 줌 꺼내고는 식탁 위에 놓는다) 역시 그 어부들한테서 얻어논 거야. 정말 그 친구들한테는 없는 게 없더구먼.


[오쿠다] (거의 무표정으로 담배 한 까지를 들고는) 감사합니다. (바지 주머니에서 성냥을 꺼내고는 담배에 불을 붙인다)


[노나카] 다 주지. 다 줄게. 나한테는 아직 많이 있거든. (계속 술을 자작하며 마신다)

당신이

아니랍니다

당신이

아니에요

당신을

기다리고

있던 게 아니에요

라는 노래를 알고 있나? 이건 말이야 ‘문을 열면’이라는 요즘 유행가인데 자네는 모르나? 들어본 적이 없어? 이거 뜻밖이군. 게으르기 짝이 없어 프랑스혁명사보다는 현대 유행가 쪽이 적어도 우리에게는 중요하지 않나? 그래도 자네, 자네는 국민학교 교사이면서 말이야. (말하면서 또 술을 자작하고 마신다) 현대 유행가 하나 모른다니 말이야, 자네.


[오쿠다] 그렇게 드셔도 괜찮으세요?


[노나카] 괜찮아. 괜찮고말고. 자네, 이건 말이야 산토리 위스키라는 고급품 아닌가. 걱정할 것 없어. 자네도 괜히 멋부리지 말고 한 먹음 맛이라도 보라고.

당신이

아니랍니다

당신이

아니에요

당신을

기다리고

있던 게 아니에요

좀 괜찮지? 이건 실연에 대한 노래라더군. 가엾잖나. 한 잔 하라고. (댓병을 집어든다)


[오쿠다] (이를 막으며) 아니, 저는 아직 여기 한 잔 있습니다. (씁쓸하게 웃고는 살짝 입을 물컵에 대고는 다시 그것을 식탁 위에 놓고) 이건 좀.


[노나카] 목숨이 아까운가? (웃는다)


오른쪽 미닫이가 열린다.

노나카의 처인 세츠코, 큰 접시 두 개를 들고 들어온다. 한 접시에는 회가, 다른 한 쪽에는 생선구이.


[노나카] 어, 왔구먼, 왔어. 이거 정말 호화롭구나. 근데 너무많지 않나?


[세츠코] (웃지도 않고 식탁 위를 치우고는 그 두 접시를 놓고서) 이게 전부입니다.


[노나카] 전부? (얼굴을 들어 세츠코 얼굴을 본다) 어머님은? 안 잡수신데?


[세츠코] (진지하게) 그게, 저희들은 이미 저녁을 먹었습니다.


[노나카] (분연히) 그런가? (갑자기 식탁을 뒤집어엎는다) 모처럼의 광어 아닌가. 어머님한테도 너한테도 먹어줬으면 해서 사 왔던 거야. 그걸 뭐? 더러운 것 취급하듯이 한입도 먹어주지 않는다니 이건, 이러면 너무하잖아? (울먹인다)


세츠코, 말없이 주변에 흩어진 안주들을 접시에 주워 담는다.


[노나카] 그만 둬! 줍지 말란 말이야. 그건 다 버려버려! 주워서 다시 먹는다니, 비참하지 않나? 너무 비참하다고. 조금은 내 마음도 헤아려주지 그래? (윗도리 속주머니에서 흰 봉투를 꺼내고는 세츠코 손 맡으로 던져주고는) 아직 7, 8백 엔은 남아 있을 거야. 새로 나온 돈이야. 그걸로 안주를 사와. 지금 당장 사오라고. 쩨쩨하게 굴지 마. 도미라도 참치라도 어부 집에 있는 건 몽땅 사와. 간 김에 진베에 집에도 들러서 이 산토리 위스키가 남아 있으면 한 병 더 사가지고 와. 이제부터 나는 다시 마실 거야. 그리고 꼭 어머님과 너한테 안주를 먹여주고 말테야.


[세츠코] (봉투는 쳐다보지도 않고 묵묵히 고개를 숙이고 있다. 이윽고 조용히 얼굴을 들더니) 저, 물어볼 게 있어요.


[노나카] (당황하며) 뭐야? 불만이라도 있는 거야?


[세츠코] (긴장한 목소리로) 당신은 도대체…….


이 때 무대 왼쪽에서 마당 쪽으로 학생 두 명이 뛰어들어오며 “선생님! 오쿠다 선생님!” 하고 소리친다.

오쿠다 선생, 툇마루로 나온다. 학생 두 명, 헐떡거리며 오쿠다 선생에게 무언가를 속삭인다.


[오쿠다] (그것을 듣고는) 그렇군. 알았어. 바로 갈게. (방으로 들어가 벽에 걸어 두었던 자신의 윗도리를 입으며 노나카에게) 여동생이 경찰에게 잡혔답니다. 도박이에요. 마작도박을 학교 애들한테 가르쳐주고 있었답니다. 그렇게 되지나 않을까 짐작은 했었습니다. 잠깐 경찰서에 다녀오겠습니다. (살짝 고개를 숙이고 툇마루로 나와 신발을 찾는다)


[노나카] (비틀거리며 일어선다) 나도 갈게.


[오쿠다] (신발을 신으며) 안 돼요. 선생님은 지금 걸으실 수 없어요. (학생들에게) 자, 가자.


오쿠다 선생, 학생 두 명과 함께 무대 왼쪽으로 달려간다.


[노나카] (몽유병자처럼 거의 무표정으로 걸어가더니 툇마루에서 버선발로 내려오더니) 나도 갈게.


노나카 선생, 거의 걸을 수 없으나 비틀비틀 거리며 버선발로 오쿠다 선생 뒤를 좇는다.

세츠코, 앉은 채로 있었으나 문득 바닥에 떨어진 흰 봉투를 보고는 집어 들고 일어서서 툇마루로 나와 신발을 찾고 노나카의 샌들을 신고는 말없이 뒤를 좇는다.



- 무대 회전



제3장


무대는 달밤의 바닷가. 모래사장에 어선이 세 척이 올라와 있다. 그 주변에 한 무리의 죽은 갈대들이 서 있다.

배경은 아오모리 만(灣).

무대, 멈춘다.

한줄기 바람이 불고 어선 부근에 많은 봄의 낙엽들이 휘날린다.

어느새 앞 장면의 모습대로 노나카 선생, 소리 없이 객석 뒤편에서 무대로 연결된 통로로 등장.

조금 떨어져 그림자처럼 세츠코가 고개를 숙인 채 따라온다.


[노나카] (무대 중앙까지 와서 지친 것처럼 곁에 서 있는 어부한테 쓰러지듯 기댄다) 아아, 머리가 아파. 아아, 죽겠다.


세츠코, 말없이 노나카에게 다가가고는 주위를 돌아보고, 그리고 흰 봉투를 살며시 노나카에게 준다. 봉투는 달빛을 받아 날카롭게 빛난다.


[노나카] (힘없이 한 손으로 뿌리치며) 그건 네가 키쿠요 씨한테 줘라.


세츠코 동작을 멈추고 가만히 노나카 얼굴을 바라본다.


[노나카] 싫으면 됐어. (세츠코 손에서 거칠게 빼앗고 자신의 윗도리 주머니에 쑤셔넣고는) 내가 돌려주지. (갑자기 또 다시 힘이 빠지고는) 근데 넌 참 강해……. 졌어. 졌다고. 난 졌단 말이야. 네 그 강함은 대체 어디서 오는 걸까. 남녀평등 정도가 아니야. 이렇게 되면 남자 쪽에서 도와달라 그래야 해. 대체 뭐야? 네 그 힘의 본질 말이야. 봉건……이라고 해도 아니고, 보수……라고 해봤자 웃길 따름이지. 도무지 그런 역사적인 게 아닌 것 같다고. 유사이전 너희들한테는 그런 힘이 있었어. 그리고 또한 이제부터 이 지구에 인류가 존재하는 한, 아니, 동물이 존속하는 한 너네들은 영원히 강할 거야.


[세츠코] (침착하게) 당신은 부끄럽지도 않아요?


[노나카] (신음소리를 낸며) 우우욱. 쳇. 젠장할! (얼굴을 들고) 전인류를 대표해서 네게 말하노라. 넌 악마야!


[세츠코] (차갑게) 왜죠?


[노나카] 몰라서 묻나? 사람이 죽을만큼 부끄러워 하고 있는그 현장에 태연하게 다가와서는 부끄럽지 않냐고 물을 수 있는 놈은 악마야.


[세츠코] 당신은 부끄러워하고 있지 않아요.


[노나카] 어떻게 알지? 어떻게 그걸 아냐고.


[세츠코] …….


[노나카] ‘예수는 말씀이 없으셨다’냐? 넌 그 아무 말도 안 한다는 무기는 강해. 너무 괴롭히지 마. 아아, 머리가 아프다.


[세츠코] 이제부터 어쩔 생각이세요?


[노나카] 죽을 거야. 죽으면 될 거 아냐? 어차피 난 노나카 집안에 먹칠을 할 뿐이니까 죽음으로 사과해 드리리이다. (허물어지듯 모래 위에서 책상다리를 하고 앉고는) 아아, 머리가 아파. 할복이야. 할복하고 죽어버릴 거야.


[세츠코] 장난할 때가 아니에요. 키쿠요 씨를 당신은 어쩔 생각이세요?


[노나카] 뭘 어떻게 한단 말이야. 아아, 머리가 아파. (머리를 움켜쥐고 모래 위에 뒹굴며) 졌단 말이야. 우리들은. 나와 키쿠요 씨는 너희들한테 대한 반역을 꾀했지만, 너희들은 의외로 강해서 우리들은 참패를 하고 말았어. 밀어 봐도 당겨 봐도 너희들은 꿈쩍 달싹하지 않아.


[세츠코] 왜냐하면 당신들은 잘못된 일을 하고 있잖아요.


[노나카] 성경에서 가라사대, 사함을 받은 일이 적은 자는 적게 사랑하느니라. 이 뜻을 이해해? 잘못한 일이 없다고 자신하고 있는 자가 무정하다는 소리지. 그의 많은 죄가 사하여졌도다 이는 그의 사랑함이 많음이라.


[세츠코] 궤변이에요. 그렇다면 인간은 열심히 많은 죄를 짓는 게 좋다는 뜻인가요?


[노나카] 문제는 그거야! (웃는다) 뭐가 ‘그거야!’냐. 난 지금 죄인이야. 사람을 가르칠 자격이 없는데도 오랫동안 학교 선생을 하고 있으면 교단의식이 따라다녀서 안 돼. 대체 이 국민학교 교사라는 것의 정체는 뭐야? 일단 도무지 학문이 없어. 외국어를 자유롭게 읽을 수 있는 선생이 이 쓰가루 지방에는 하나도 없어. 외국어는커녕 겐지모노가타리(源氏物語:일본 고전문학 중 하나 - 역자 주)조차도 읽지 못해. 아무것도 모르는 주제에 그래도 교단에 서서 잘난 척하면서 뭔가를 가르치고 있어. 학문이 없어서 인격이 훌륭하다면 또 모를까, 매일 자기 먹을거리를 좇아다니고 있는 꼴이니 인격이고 뭐고 있긴 뭐가 있어? 학생을 사랑한다는 것에 대해서는 학부모들한테 못 미치고, 아이들의 놀이상대로 봐서도 유치원 선생들보다 훨씬 못 해. 학교 경비를 하더라도 급사들이 선생들보다 훨씬 도움이 되며, 무엇보다 선생이라는 말에는 아무런 의미가 없어. 오히려 경멸감까지 내포된 말이야. 어차피 놀릴 거라면 아예 ‘각하’라고 불러줬으면 좋겠어. 우리 사회적 지위란 마치 무슨 땡중 같은 거라니까. 국민학교 선생이 된다는 건 이미 이 세상에서의 패배자, 실패자, 낙오자, 변태, 무능력자, 그런 것에 불과하다는 증거가 되어 버렸다고. 우리들은 거지야. 선생이라는 별명을 붙여가며 놀림을 당하는 거지라고. 이봐, 오쿠다 선생님도 역시 같은 처지야. 포기해. 포기하라니까.


[세츠코] (날카롭게) 뭐라고요? (슬쩍 웃으며) 이상한 말씀을 하시는군요.


[노나카] 알고 있어. 네가 사모하는 사람이 누구인지 말이야.


[세츠코] 어머! 그런. 집어치우세요. 저질이에요.


[노나카] 그러면 또 어때. 인간은 모두 사모하는 사람을 둘이나 셋 정도는 가지고 있는 법이야. 그런데 어때? 그 후의 진척상황은?


[세츠코] 저는 당신이 하시는 말씀을 전혀 모르겠습니다.


[노나카] 좋아. 그럼 알아들을 수 있게 말을 해주지. 넌 오늘 내가 돌아오기 전 오쿠다 선생 방에 갔었지?


[세츠코] (단호하게) 네. 갔었어요. 오쿠다 선생님이 혼자 저녁을 차리고 계시다는 걸 어머니한테 들어서, 뭔가 도움이라도 드리려고 방에 들렸었죠.


[노나카] 그것 참 친절하시군. 너한테도 그 정도의 애정이 있다니 신기하다. 좋은 일이야. 미담이지. 하지만 내가 바깥에서 말을 걸자마자 갑자기 자취를 감추던데, 그건 어떤 친절이지?


[세츠코] 싫었기 때문이에요.


[노나카] 이상하네.


[세츠코] (울먹이며) 도대체 어떻게 대답하란 말이에요?


[노나카] 아냐. 좋아. 관두자. 재미없어. 어차피 너한테는 못 당한다니까. 아아, 아. 세상은 도도하게 민주혁명이 이루어지고, 동포들은 모두 조국 재건을 위해 새롭게 출발선상에 줄지어 서서 힘을 내고 있는데, 나는 도대체 뭔가. 여전히 술에 취하고 마누라한테 질투하며 파렴치한 말다툼이나 벌이고 있다니 마치 지옥이야. 아니, 이것도 또한 나의 현실. 아아, 졸리다. 이대로 잠이 들어 영원히 눈을 뜨지 않는다면 얼마나 좋을까. (잠이 든 것처럼 보인다)


[세츠코] (노나카 어깨에 손을 걸고) 이봐요. 이봐요. (어깨를 흔든다)


[노나카] (거의 잠고대처럼) 죽여! 시끄러! 저리 가!


오쿠다 선생, 오른쪽에서 천천히 등장.


[오쿠다] 아, 사모님! (자고 있는 노나카를 보고 더욱 놀라며) 이게 대체 어떻게 된 거예요?


[세츠코] 당신 뒤를 좇아서 여기까지 와서는 잠이 들고 말았어요. 그것보다 키쿠요 씨는? 어떠셨어요?


[오쿠다] 아니, 께 말이에요. 그 아이들을 도중에 놓쳤어요. 아무튼 저 혼자 경찰 앞에까지 가서 슬쩍 안을 들여다보았는데 너무 조용하고 특별히 이상한 점도 없는 것 같더군요. 괜히 소란을 피우다가 창피를 당할 수도 없고, 아까 그 학생들을 찾아 다시 한 번 자세히 물어보려고 되돌아오는 참이에요. 어쩌면 그 자식…….


[세츠코] 네?


[오쿠다] 아, 아뇨…….


[세츠코] 오쿠다 선생님! 저희들은 키쿠요 씨한네 무슨 나쁜 일이라도 했나요?


[오쿠다] (정색을 하고) 왜요?


[세츠코] 도박으로 경찰에 잡혔다는 건 거짓말이에요. 저는 이제 모두 알았어요. (갑자기 울기 시작한다) 너무해요. 너무하다고요. 왜 우리들은 이렇게 키쿠요 씨한테 놀림을 당해야 하죠?


[오쿠다] 죄송합니다. 실은 저도 경찰서 앞에까지 갔다가 곧바로 이건 키쿠요한테 한방 먹었다고 생각했지만, 그러나 그렇다고 해도 무엇 때문에 아이들까지 써서 이런 말도 안 되는 연극을…….


[세츠코] 그건 알고 있습니다. 키쿠요 씨는 제 남편을 꼬셔서 술이나 안주를 사게 하고, 그리고 저나 어머니한테 대접을 한 후, 그리고 그 돈은 사실은 키쿠요 씨가 도박으로 딴 돈이라는 사실을 알려서, 기분 좋아하고 있는 어머니나 제가 당황하는 모습을 몰래 훔쳐보면서 비웃으려고 했겠지만, 그래도 잔꾀가 잔인합니다. 너무나도 비겁해요.


[오쿠다] 그럼 그 돈은?


[세츠코] 모르고 계셨나요? 키쿠요 씨 돈이에요.


[오쿠다] 그렇군요. 아니, 가만히 보면 그 녀석 다운 짓이군요. (웃는다)


[세츠코] 아직 더 있어요. 노나카 씨한테 이간질을 해서 저와 선생님을…….


[오쿠다] (심각하게) 하지만 사모님. 제 누이는 바보 같는 녀석이지만 그런 쓸데없는 소리는 하지 않았을 거예요.


[세츠코] 하지만 이 사람은 방금 전 저를 의심하고 있는 듯한 이상한 말을 했어요.


[오쿠다] 그렇다면 그건 노나카 선생님 혼자만의 공상이에요. 노나카 선생님은 조금 로맨티스트시니까요. 언젠가 저와 토론한 적이 있었습니다. 노나카 선생님의 말씀에 의하면 이 세상에 얼마나 많은 배신이 행해지고 있는지는 아마도 상상을 초월할 것이다, 아무리 가끼운 가족이나 친구라도 뒤에서는 반드시 배신을 하고 욕이나 뒷말을 하고 있을 것이다, 인간이 만약 자신 주위에 끊임없이 이루어지고 있는 자신에 대한 배신의 실상을 남김없이 모두 알아차렸다면 그 인간은 발광하고 말 것이다, 이런 내용이었습니다. 그러나 저는 그 말에 반대하며, 인간은 현실보다도 그 현실에 얽힌 공상 때문에 번민하는 것이다, 공상은 끊임없이 펼쳐지지만, 그러나 현실은 의외로 쉽게 처리할 수 있는 작은 문제에 지나지 않는다, 이 세상에는 절대 아름다운 곳은 아니지만, 그러나 그토록 한없이 추악한 곳 또한 아니다, 무서운 것은 공상의 세계다, 뭐, 이렇게 말했었는데, 아무래도 노나카 선생님 공상을 들으면 당황합니다.


[세츠코] (이상한 목소리로) 하지만 그게 진짜라면요?


[오쿠다] (어쩔 줄을 몰라 하며) 네? 뭐가요?


[세츠코] 이 사람의 그 공상이.


[오쿠다] 사모님! (화가 난 것처럼) 무슨 말씀을 하시는 거예요?


[세츠코] (소리 내며 울면서) 저는 지금까지 무엇 하나 나쁜 짓을 한 기억이 없어요. 그래도 왜 다른 사람들이 저를 이렇게 괴롭히는 걸까요? 저는 제 즐거움은 하나도 하지 않은 채 노나카 집안을 위해서 노력해 왔어요. 가문의 명예를 소중하게 지킨다는 것이 나쁜 일인가요? 가르쳐주세요. 내일 생활에 대한 불안함이 없도록 참고 낭비를 억제한다는 것은 나쁜 일인가요? 시골 여자는 시골 여자답게 음악회나 영화도 보러가지 않고 집안에서 묵묵히 바느질을 하고 있는 것은 나쁜 일인가요? 제 남편이 방금 전 잘못을 저지르지 않는 사람은 무정하다고 했는데, 그렇다면 사람은 잘못을 저지르는 것이 옳은 건가요? 선생님, 저는 촌스럽고 머리가 나쁜 여자예요. 아무 것도 모른다고요. 가르쳐주세요. 제가 선생님을 좋아한다고 한다면, 가령 그렇다고 한다면 오히려 제가 옳은 건가요? 저는 말주변이 없어요. 말을 잘 할 수가 없어요. 저는 말을 모릅니다. 그저 저는 참아왔어요. 인내해 왔습니다. 저는 제가 하고 싶은 말을 하거나 화를 내거나 하는 것은 나쁜 일이라고 생각해 왔어요. 선생님, 가르쳐주세요. 저는 이제 뭐가 뭔지 도무지 알 수 없게 되었어요. 제 어디가 나쁘기에 모두가 저를 이렇게 괴롭히는 거죠?


[오쿠다] 사모님. ‘선악의 피안(彼岸)’이라는 말이 있죠? 선과 악의 중간입니다. 윤리에는 옳은 일과 옳지 않은 일, 그리고 또 하나가 있는 게 아닐까요? 사모님처럼 그저 사물을 정 ․ 부정으로 나누려 해도 나눌 수 있는 건 아니잖아요?


[세츠코] 잘 모르겠지만, 그렇다면 제가 무슨 잘못을 저질러도?


[오쿠다] (웃으며) 그건 안 되죠. 무엇보다 부자연스럽습니다. 그야말로 사모님의 공상의 영역입니다. 사모님은 노나카 선생임을 매우 아끼고 계십니다. 그게 또한 사모님의 삶에 있어서 보람 아닌가요? 말도 안 되는 공상은 그만 합시다. 사모님, 오늘 밤은 좀 이상하시군요. 현실 문제로 돌아갑시다. (다시 침착한 말투로) 저희들은 댁에서 다른 곳으로 이사를 가겠습니다. 문제는 그 뿐입니다. 저는 학교 숙직실로 갈 거고, 누이 그 녀석은 다시 동경으로 돌아가는 편이 나을 것 같습니다.


멀리서 ‘봄날 높은 누각(樓閣)에서’ 라는 합창이 들려온다. 학생들 목소리에 섞여 키쿠요 같은 여자 목소리도 섞여 있다.

틈.


[세츠코] (침착하게 얼굴을 들고 또박또박) 그렇게 해주시길 당부드립니다.


[오쿠다] (오히려 당황하며) 뭐라고요?


[세츠코] (무시하며 멀리서 들려오는 노랫소리에 귀를 기울이며) 저렇게 노래 부르며 노는 것이 세련되고, 그리고 문화적이라고 하는 거고, 일본은 이제부터 남녀 모두 키쿠요 씨처럼 되어야 하나요? 저 같은 구식 시골 여자는 이제 안 되나요? 저는 아무래도 잘 모르겠어요. 왜 사람은 세련되어야 하죠? 왜 촌스러운 건 안 되는거죠?


[오쿠다] 인간이 타락한 거예요. 보람이 없어진 거죠. 큰 이상도 큰 사상도 뻔한, 그런 시대가 된 겁니다. 전 지금은 이기주의자입니다. 어느새 그렇게 되고 말았습니다. 키쿠요 일은 키쿠요 자신이 처리하겠죠. 저희들 20대 사람들은 어떻게 보면 사모님 세대보다 훨씬 어른일지도 모릅니다. 자신에 대한 공상은 조금도 갖고 있지 않거든요.


[세츠코] (조용히) 그건 무슨 뜻이죠?


[오쿠다] 누이는 누이, 나는 나라는 뜻입니다. 아니, 사람은 사람, 나는 나라고 해도 될지 모르겠습니다. 사모님, 너무 다른 사람 일은 신경 쓰지 않는 게 좋을 겁니다.


[세츠코] 하지만 키쿠요 씨는 저희들을 괴롭혀요. 이 사람을 이간질 시켜서 저희 가정을…….


[오쿠다] (웃으며) 이사할 거예요. 곧바로.


[세츠코] (증오를 품으며) 그렇게 해주시면 고맙죠.


노랫소리가 조금씩 가까워진다.

바람이 분다. 낙엽이 흩날린다.


[오쿠다] 쌀쌀해졌군요. (자고 있는 노나카 쪽을 턱으로 가리키며) 어떻게 하시겠어요? 오늘은 꽤 드셨으니까요.


[세츠코] 나쁜 술 아닌가요? 머리가 많이 아프다고 하던데.


[오쿠다] 괜찮겠죠. 그것과 똑같은 술을 어부들이 아침부터 마셔도 아무렇지도 않다고 하니까요.


[세츠코] 하지만 그 사람들과 이 사람은 몸이 전혀 다르잖아요.


[오쿠다] 시험대가 되지 않을까요? (웃는다) 어디, 제가 업어드릴까요?


[세츠코] (이를 뿌리치고 날카롭게) 아니요. 제가 하겠어요. 이제 더 이상 폐를 끼치진 않을 거예요.


[오쿠다] 남은 남, 남편은 남편이군요. (비웃듯이 웃는다) 그게 좋겠죠. 그럼 저는 잠깐 저기 (라고 노랫소리가 나는 쪽을 가리키며) 양아치들 음악단 쪽에 가서 누이를 잡아들이고는 이 일의 신상을 캐묻도록 하죠. 쓸데없는 장난을 치고는, (말하면서 경쾌하게 오른쪽으로 퇴장)


바람은 더욱 강하게 분다.

노랫소리가 점점 더 가까워진다.


[세츠코] (오쿠다가 가는 것을 지켜보고서는 쭈그리고 앉아 노나카의 어깨를 흔든다) 이봐요. 여보. 감기 걸리겠어요. 자, 같이 돌아갑시다. (노나카 손을 잡고) 어머, 이렇게 차가워지다니. 미안해요. 내가 잘못했어요. 당신 왜 그래요? (얼굴을 가까이 댄다) 여보! (미친 듯이 노나카의 얼굴, 가슴, 다리 등을 더듬으며) 이봐요, 여보! (갑자기 일어나서 오른쪽으로 달려가서는) 오쿠다 선생님! 오쿠다 선생님! (다시 달려와서 노나카 시신을 부등켜안고 운다) 미안해요. 잘못했어요. 여보, 다시 한 번 눈을 떠봐요. 전 이제 마음을 고쳐먹었어요. 이제는 술 상대든 뭐든 하려고 했는데……. 여보! (통곡한다)


바람. 낙엽. 노랫소리.


- 막


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Posted by 문학관 관리인 위어조자(謂語助者)

가정의 행복(家庭の幸福)

다자이 오사무(太宰 治) (1948)

번역 : 홍성필


 '관료가 나쁘다'는 말은 이른바 '밝고 명랑하고 씩씩하게'라는 말처럼 그야말로 어딘가가 좀 부족한 듯하기도 하고 진부하여 바보같이 느껴져서, 내게는 '관료'라는 족속의 정체는 어떤 것인지, 또한 그것이 어떻게 나쁜 건지 도무지 실감나게 느껴지지 않는다. 논외, 관심 밖, 이런 심정에 가까웠다. 즉, 관료는 목에 힘을 준다, 그것만이 아닐까 하는 생각마저도 든다. 그러나 민중들도 치사하고 더럽고 욕심 많고, 배신도 하며 쓸모 없는 인간들도 많으므로 말하자면 피장파장이라고도 할 수 있으며, 오히려 관리들은 대부분 어렸을 때부터 학업에 전념하여 커감에 따라 입신출세, 오로지 육법전서를 달달 외우며 근검절약, 친구한테 구두쇠라는 말을 듣더라도 마이동풍, 조상을 한없이 존경하며 아버지 제삿날은 벌초를 게을리 하지 않고, 대학 졸업장은 금빛액자에 넣어두어 어머니 침실 벽에 걸어놓고, 그야말로 부모님께는 효, 형제에게는 친구처럼 대하지 않으며 친구끼리는 무턱대고 믿지 아니하고, 공직으로 근무해도 그저 자신이 실수하지 않기를 바라고, 사람을 미워하지도 사랑하지도 않고, 웃지도 않으며, 그저 공평, 신사의 귀감, 훌륭해, 훌륭하고 말고, 조금 목에 힘을 줘도 그 정도는 상관없어, 라고 나는 이 사회의 이른바 관리들을 동정하기까지 했다.


 그런데 며칠 전, 나는 건강상태가 좋지 않아 하루종일 침상에 누워 졸면서 라디오라는 것을 들어보았다. 나는 지금까지 십 몇 년간 라디오라는 기계를 자신의 집에 들여놓은 적이 없다. 그저 풍류도 없고 아깝기도 하며, 아무런 재주도 재치도 용기도 없고, 치사하고 뻔뻔하고, 쓸데없이 직직거리며 시끄럽기만 한 것으로 알고 있었다. 공습이 있었을 때에도 나는 창문을 열어 고개를 내밀고는 옆집 라디오에서 비행기 한 대는 어떻게 됐고, 한 대는 어떻게 됐다는 보고를 듣고서, 일단 괜찮다며 집에 있는 사람들에게 말하고는 치워버렸다.


아니, 사실 그 라디오라는 기계는 조금 비싸다. 준다는 사람이 있다면 그야 받아도 무방하겠으나, 술과 담배, 그리고 맛있는 간식 이외에는 극단적으로 인색한 내게 있어서 수신기 구입 같은 건 말도 안 되는 낭비였던 것이다. 그런데도 작년 가을, 내가 여느 때처럼 밖에서 이틀 사흘 밤 동안 연달아 마시고 저녁 무렵 집이 무사할까 하고 가슴을 두근거리며, 걷지도 못할 정도의 불안감과 공포심과 싸우면서 간신히 집 현관 앞까지 와서는 크게 한 숨을 쉰 후 드르륵 하고 현관문을 열고서,


 "다녀왔습니다!"


 그야말로 밝고 명랑하고 씩씩하게 귀가인사를 할 생각이었으나 비참하게도 항상 목소리가 쉬어있다.


 "어, 아빠 오셨네요."


 라고 7살 짜리 장녀.


 "어머, 아빠, 대체 어디 갔었던 거예요?"


 라며 아기를 안고 그 엄마도 따라나온다.


 갑자기 그럴듯한 거짓말도 떠오르지 않아,


 "여기저기, 여기저기."


 라고 말하고는,


 "다들 밥은 먹었냐?"


 라면서 필사적으로 얼버무리기 위한 질문을 하고는 윗도리를 벗고 방으로 한 발자국 들어서자 옷장 위에서 들려오는 라디오 소리.


 "이걸, 샀어?"


 나는 외박했다는 약점이 있기에 화를 낼 수가 없었다.


 "이건 마사코 거예요."


 라며 일곱 살 짜리 장녀는 자랑스럽다는 표정으로,


 "엄마랑 같이 키치죠지(吉祥寺)에 가서 사왔어요."


 "그것 참 잘 했구나."


 라고 아버지는 대충 말해놓고서 그 다음에 아이 엄마한테 가서는 작은 목소리로,


 "비쌌지? 얼마 줬는데?"


 천엔 정도였다고 아이 엄마는 대답한다.


 "비싸. 대체 너는 어디서 그렇게 큰돈을 마련했어?"


 아버지는 술과 담배와 맛있는 간식 때문에 항상 돈이 모자라서, 그야말로 여기저기 여기저기에 있는 출판사로부터 큰 빚을 졌기에, 결국 가정은 궁핍하고 아이 엄마 지갑에는 기껏해야 100엔 짜리 지폐 서너 장이라는 것이 전혀 거짓 없는 실상인 것이다.


 "아빠의 하룻밤 술값도 안 되는데 큰돈이라뇨……."


 아이 엄마도 과연 어이가 없는지 웃으면서 변명하기를, 아빠가 집을 비운 사이에 잡지사 분이 원고료를 주셔서, 때는 이때다 싶어 키치죠지에 가서 큰맘먹고 샀어요, 이 수신기가 제일 쌌어요, 마사코도 불쌍하죠, 내년에는 학교에 들어가니까 라디오로 조금 음악교육도 시켜야 해요, 또한 저도 밤늦도록 당신의 귀가를 기다리면서 바느질을 하고 있을 때에 라디오라도 들으면 얼마나 위안이 되는지 몰라요.


 "밥 먹자."


 이런 경위로 우리 집에도 라디오라는 것이 생겼으나, 나는 여전히 '여기저기, 여기저기'였기에 제대로 들은 일은 거의 없었다. 간혹 내 작품이 방송될 때에도 나는 깜빡 놓치고 만다.


 즉, 한 마디로 말해서 나는 라디오에 대해 기대를 하지 않았던 것이다.


 그런데 며칠 전, 몸이 아파 누우면서 라디오의 이른바 '방송'을 처음부터 끝까지 거의 전부를 들어보았다. 들어보자 이것도 역시 미국사람들의 가르침 덕분인지, 전쟁 전이나 전쟁중의 시시함은 어느 정도 사라지고, 예상외로 꽤나 재미있어, 갑자기 교회 종소리 같은 것이 울리기도 하고, 가야금 소리가 들리거나, 또한 곧바로 외국 고전 명곡 레코드 등, 상당히 여러 모로 신경을 써서 듣는 이로 하여금 싫증이 안 나도록 쉬는 시간이 전혀 없어, 듣다보면 낮이 되고 밤이 되어, 한 페이지도 독서를 못하도록 되어있는 것이다. 그리하여 밤 8시던가 9시던가에 묘한 것을 들었다.


 가두녹음(街頭錄音)이라는 것이다. 이른바 정부 관리와 이른바 민중이 서로 길거리에서 서로의 의견을 나눈다는 내용이다.


 이른바 민중들은 거의 화가 난 듯한 말투로 그 관리한테 대든다. 그러자 관리는 묘한 웃음소리를 섞어가며, 실로 유치한 관념어 (예컨대 연구중, 옳으신 말씀입니다만 널리 양해를 바라며, 일본재건, 관-민이 힘을 합하여, 그 점은 저희도 잘 알고 있습니다만, 민주주의의 나라에서, 설마 그런 극단적인, 그러므로 정부는 여러분의 협조를 바라며 등등) 같은 말만 하고 있다. 즉, 그 관료는 처음부터 끝까지 한 마디도 안 하는 것과 같다. 이른바 민중들은 드디어 화가 나서 거친 말투로 관리에게 대든다. 관리는 전보다도 자주 그 징그러운 웃음소리를 내어가며 후안무치(厚顔無恥)의 멍청한 일반론을 쓸데없이 친절하게 되풀이할 뿐이다. 민중 중 하나는 결국 울먹이며 관리에게 항의한다.


 침상에서 그것을 듣고 결국 나도 흥분했다. 만약 저 자리에 있었다면, 그리고 사회자가 의견을 물어보면 분명 이렇게 소리친다.


 "나는 세금을 내지 않을 생각이오. 나는 빚을 내어 살아가오. 저는 술도 마십니다. 담배도 태우지요. 모두 높은 세금이 붙어있어, 그 때문에 제 빚은 더욱 늘어갈 따름이오. 그것도 모자라서 여기저기 돈을 꾸러 다니는 처지라서 세금을 낼 힘이 내게는 없소. 더구나 나는 몸이 약해서 간식이나 주사약이나 약품 때문에 빚도 지고 있소. 나는 지금 매우 어려운 일을 하고 있소. 적어도 당신보다는 어려운 일을 하고 있소. 나 스스로도 거의 미칠 지경으로 일에 대해서만 생각하고 있소. 술도 담배도, 또한 맛있는 간식도 지금의 일본인에게는 사치다, 집어치워라, 라고 하신다면 일본에 좋은 예술가는 한 사람도 남김없이 사라질 게요. 그것만은 내가 단언할 수 있소. 협박하고 있는 것이 아니오. 당신은 아까부터 정부가 어떻다는 둥 국가가 어떻다는 둥 그야말로 거창하게 말하고 있으나, 우리들을 자살로 몰아가는 정부나 국가는 얼렁얼렁 사라지는 편이 낫소. 누구도 아깝다고 생각하지 않소. 곤란한 건 당신들뿐이오. 그도 그럴 것이 짤리기 때문이지. 수십 년 근속도 수포로 돌아가는 거니까 말이오. 그리고 당신의 처자식이 슬퍼하니까 말이오. 그런데 이쪽은 일 때문에 훨씬 전부터 계속 처자식을 울리고 있소. 좋아서 울리는 게 아니오. 일 때문에 아무리 노력해도 거기까지 신경을 쓸 수가 없기 때문이오. 그런데 당신들은 도대체 뭐요? 징그럽게 웃어가며 '그 점을 양해해주시기 바랍니다'라니 무슨 말이 그렇소. 목매다는 꼴을 보고 싶어서 그런가? 보기 싫소. 그 징그러운 웃음은, 집어 치워! 저리 가! 창피한 줄 알아라. 나는 사회당의 우파도 좌파도 아니며 공산당원도 아니오. 예술가라는 사람이오. 기억해 두게나. 불결한 속임수를 무엇보다도 싫어하오. 이봐, 당신은 깔보고 있어. 그런 아무 내용도 없는 말들을 대충 늘어놓고 이른바 민중들을 달래고 납득시킬 수 있다고 생각하나. 단 한 마디라도 좋소, 자네 입장의 실상을 말해! 자네 입장의 실상을……."


 지극히 지저분하고 심한 그런 말들이 한없이 연이어 가슴속에서 끓어오르고, 스스로 생각하기에도 그리 고상하지 못하다고 느껴지면서도 분노가 쌓여가며, 점점 혼자서 흥분하고 막판에는 결국 눈물이 흘러나왔다.


 어차피 안보이니까 하는 말이다. 나는 경제학에 대해서는 깜깜하다. 세금문제 같은 건 아무 것도 모른다 해도 과언이 아니다. 그 가두녹음의 현장에 있어 조심조심 질문을 했다가 관리의 설명을 듣고는,


 "그런가요? 죄송합니다."


 라는 식의 비참한 결과가 될지도 모른다. 하지만 내게는 그 관리의 징그러운 웃음이 마음에 들지 않았다. 자신이 하는 말에 대해 확신이 없다는 증거다. 속이고 있다는 증거다. 대충 하는 말이라는 증거다. 만약 그 징그러운 웃음의 답변이 관료의 실체라면, 관료라는 건 분명 나쁜 것이다. 너무나도 사람을 우습게 안다. 세상을 너무나도 우습게 안다. 나는 라디오를 들으며 그 관리의 집에 불이라도 질러버리고 싶은 극도의 증오를 느꼈다.


 "이봐! 라디오 좀 꺼주게."


 더 이상 그 관리의 징그러운 웃음을 들어줄 수 없었다. 나는 세금을 내지 않으리라. 저런 관리가 저런 징그러운 웃음을 짓고 있는 동안에는, 내지 않으리라. 감옥에 갇혀도 좋다. 저런 식으로 사람을 속이는 동안에는 내지 않으리라, 라고 미칠 정도로 흥분하여 그저 억울해서 눈물이 흐르는 것이다.


 하지만 나 또한 정치운동에는 흥미가 없다. 자신의 성격이 거기에 적합하지 않을 뿐더러, 그것에 의해 자신이 위로 받을 수 있다는 생각도 없다. 단지 그것은, 자신에게는 답답할 따름이다. 내 시선은 항상 인간의 '집' 쪽으로 향해있다.


 그날 밤, 나는 전날에 의사로부터 받은 진정제를 먹고, 조금 차분해졌을 때 지금 일본의 정치나 경제에 대해서는 생각하지 않고 오로지 그 관리의 생활형태에 대해서만 상상의 나래를 펼쳐 나아갔다.


 그 사람이 했던 징그러운 웃음은, 그러나 이른바 민중을 경멸하는 웃음은 아니다. 절대로 그런 성질의 것이 아니었다. 자기 자신과 입장을 지키는 웃음이다. 방어적 웃음이다. 적의 공격을 피하는 웃음이다. 즉, 얼버무리는 웃음인 것이다.


 그리하여 누운 채로 하는 내 공상은 다음과 같이 전개되기 시작했다.


 그는 그 가두토론을 마치고 숨을 돌리며 땀을 닦아내고는, 갑자기 기분이 언짢다는 표정을 지으며 사무실로 돌아간다.


 "어떠셨습니까?"


 부하관료의 질문에 대해 그는 씁쓸하게 웃고는,


 "애 좀 먹었지."


 라고 대답한다.


 토론 현장에 있었던 또 하나의 부하관료는,


 "아뇨, 천만에요. 가두로 일도양단, 속 시원하게 처치하다, 그 수준이던데요."


 라며 아부를 떤다.


 "'가두'란 '괴상한 칼'라고 쓰지?" (일어로 '街頭'와 ''怪刀'는 발음이 비슷하다 - 역자 주)


 라고 그는 역시 씁쓸하게 웃으며 말하지만, 속으로 그리 기분이 나쁘지만은 않다.


 "그것 참, 기본적으로 저런 질문자들과는 머리의 구조가 다릅니다. 아무렴 이쪽은 천군만마(千軍萬馬)의……."


 조금 아부가 지나쳤다는 것을 알아차리고서 부하관료는 재빨리 화제를 돌린다.


 "오늘 녹음은 언제 방송되죠?"


 "몰라."


 알고는 있으나 모른다고 하는 편이 훨씬 더 폼이 난다. 그는 오늘 일을 모두 잊었다는 듯이 천천히 집무를 시작한다.


 "아무튼 기대되는군요."


 부하관료는 여전히 작은 소리로 아부를 한다. 그러나 이 부하관료는 전혀 기대된다는 생각을 하고 있지 않으며, 실제로 그 방송이 있는 날 밤에는, '카스토리'라는 이상한 술을 이상한 술집에서 마시고는, 마침 가두토론방송 시간에 한창 토해내고 있다. 기대 같은 건 눈곱만큼도 없다.


 기대하고 있는 건 그 관료와 가족들이다.


 드디어 오늘밤은 방송이 있는 날이다. 관리는 그날 평소보다 1시간 정도 일찍 퇴근한다. 그리고 가두녹음방송이 시작하기 30분전부터 가족 전부가 긴장하며 수신기 곁으로 모인다.


 "조금 있으면 이 상자에서 아빠 목소리가 들릴 거란다."


 부인은 막내딸을 안고서 가르쳐준다.


 중학교 1학년 사내아이는 정좌를 하고, 두 손을 무릎 위에 올려놓고는, 실로 예의바르게 방송이 시작하는 것을 기다린다. 이 아이는 용모도 준수하고 공부도 잘 한다. 그리고 아버지를 진심으로 존경하고 있다.


 방송 시작.


 아버지는 태연히 담배를 태우기 시작한다. 그러나 불이 금새 꺼진다. 아버지는 그것도 모르고 또 한 번 빨아들이고는 그대로 손가락 사이에 끼어두고, 자신의 답변에 귀를 기울인다. 자신의 예상보다 녹음상태가 좋다. 일단 됐다. 실수 없음. 관청에서의 평가도 괜찮을 테지. 성공이다. 더구나 이는 국내 전역에 지금 방송되고 있는 것이다. 그는 자신의 가족 표정을 차례로 훑어본다. 모두 자부심과 만족으로 빛나고 있다.


 가정의 행복. 가정의 평화.


 인생 최고의 영광이다.


 비꼬는 것이 아니라 그야말로 아름다운 모습이긴 하나, 잠깐.


 내 공상의 전개는 그때 문득 중단되어 이상한 생각이 머리를 스쳐지나갔다. 가정의 행복. 누가 그것을 원치 않는 사람이 있을까. 나는 장난 삼아 하는 말이 아니다. 가정의 행복은 어쩌면 인생 최고의 목표요, 영광이리라. 최후의 승리일지도 모른다.


 하지만, 그것을 얻기 위해 그는 나로 하여금 억울한 울음을 터뜨리게 만들었다.


 누워서 하는 내 공상은 돌변한다.


 문득 다음과 같은 단편소설의 주제가 떠오른 것이다. 이 소설에 더 이상 그 관리는 등장하지 않는다. 본래 그 관리의 신상도 모두 몸이 안 좋아 누워있는 나로부터 나온 것이므로, 실제로 보고 들은 것이 아니라는 건 물론이지만, 다음 단편소설의 주인공 또한 내 상상 속의 인물에 지나지 않는다.


 ……그건 매우 행복하고 평화로운 가정이다. 주인공의 이름을 가령 츠시마 슈지(津島修治)라고 해둔다. 이는 내 호적상의 이름인데, 어설프게 가명을 썼다가 우연히 실제인물과 이름이 비슷하여 폐를 끼치게 되면 괴로우므로, 이런 오해가 일어나지 않도록 내 호적상의 이름을 제공하는 것이다.


 츠시마가 근무하는 곳은 어디라도 좋다. 이른바 관청이라면 된다. 호적상의 이름이라는 말이 지금 나왔으니, 동사무소 호적담당 직원이라고 해도 좋다. 무엇이라도 좋다. 주제는 이미 되어있으니까, 그 다음은 츠시마의 근무처에 따라 줄거리에 살을 붙여 가면 된다.


 츠시마 슈지는 도쿄 근방에 있는 어느 동네의 동사무소에서 근무하고 있었다. 호적 담당이다. 나이는 서른. 항상 웃음을 잃지 않는다. 미남은 아니지만 혈색이 좋고, 말하자면 밝은 얼굴이다. 츠시마 씨와 대화를 나누면 힘든 일도 잊게 된다며 배급담당 나이 든 여직원이 말했다고도 한다. 스물 넷에 결혼하여 장녀는 여섯 살, 그 다음에는 사내아이로서 세 살. 가족은 이 두 아이와 처, 그리고 그의 노모(老母)와 그였으며, 모두 다섯 명이다. 이렇게 아무튼 행복한 가정이다. 그는 동사무소에 있어서 지금까지 단 한번도 실수를 하지 않은 모범적인 호적담당 직원이고, 부인에게 있어서도 모범적인 남편이며, 또한 나이 든 모친에게 있어서는 효심 지극한 모범적인 아들이었고, 나아가 아이들에게 있어서도 모범적인 아빠였다. 그는 술도 담배도 안 한다. 억지로 참는 것이 아니라 하고 싶지 않은 것이다. 부인도 그것을 모두 '야시장'에 팔아 나이 든 모친과 아이들이 좋아할 만한 것들을 산다. 구두쇠라서가 아니다. 남편도 부인도 가정을 즐겁게 만들기 위해 최선을 다하고 있는 것이다. 본래 이 가족은 키타타마군(北多摩郡)에 본적을 두고 있었으나, 타계한 부친이 중학교나 여학교의 교장으로서 여기저기 전근하여, 가족들도 함께 따라다니다가, 아버지가 센다이(仙臺)에 있는 모 중학교 교장이 되고 3년째에 병으로 돌아가셨기에 츠시마는 나이 든 어머니의 고향에 대한 마음을 고려하여 돌아가신 아버지의 유산 대부분을 흔쾌히 처분하고는 현재 무사시노(武藏野)의 일각에 8평, 6평, 4.5평, 3평 짜리 방이 있는 신축 문화주택 같은 것을 사서, 자신은 친척 소개로 미타카쵸 (三鷹町) 동사무소에서 근무하게 된 것이다. 다행이 전쟁 피해도 당하지 않아 두 아이는 포동포동 살이 쪘고, 노모와 부인의 사이도 좋았으며, 그는 일출과 함께 일어나 우물가에서 얼굴을 씻고는 너무나도 기분이 상쾌하여 자신도 모르게 손뼉을 치고 태양을 향해 기도를 드리는 것이다. 어머니와 부인, 처자식의 웃는 얼굴을 생각하노라면 고구마 여섯 관을 사올 때에도 무겁지 않고, 밭일, 물 길러 오는 일, 장작 깨기, 그림책 읽어주기, 아이를 등에 앉혀 놓고 말 태워주기, 벽돌 놀이 상대, 걸음마 놀이, 풍요롭지는 않더라도 가정은 항상 봄과도 같았고, 꽤 넓은 마당은 모두 파헤쳐져 밭이 되고 말았으나, 이 남편은 그저 매력 없는 실리주의자와는 달리 밭 주변에 계절에 따른 화초나 나무를 꽃피우게끔 가꾸어놓고 마당 구석 닭장에는 흰색 레그혼(닭의 품종 - 역자 주)이 알을 낳을 때마다 집안에는 환호성이 울리며, 모두 다 적을 수 없을 정도로, 즉 행복한 가정이라는 말이다. 불과 얼마 전에도 동료가 강제로 준 복권 두 장 중 한 장에서 천 엔이 당첨되었으나 본래 차분한 사람이었기에 서두르지도 난리를 피우지도 않은 채, 가족이나 동료들에게도 말하지 않고, 그로부터 며칠이 지난 후 출근하는 길에 은행에 들러 현금을 받고는, 가정의 행복을 위해서는 구두쇠이기는커녕 천금도 아끼지 않는 심성이었기에, 집에 있는 라디오 수신기가 전파상한테 가져다주어도 '수리할 수가 없다'는 말을 들을 정도로 망가져서 2~3년 동안 옷장 위에서 장식품처럼 되어, 노모도 부인도 망가진 폐물(廢物)에 대해 가끔 잔소리를 했던 것이 생각나, 은행에서 나오자마자 그 길로 라디오 가게에 가서 주저하지 않고 새 수신기를 사서, 집 번지수를 알려주고 그것을 배달해주도록 부탁한 후, 아무 일도 없었다는 듯이 출근하여 근무하기 시작한다.


 하지만 역시 마음속으로는 매우 즐거웠던 것이다. 노모나 부인이 놀라며 기뻐하는 것은 물론이거니와, 큰딸도 어느 정도 큰 이후로 처음으로 집안에서 라디오가 노래하는 모습을 보고 흥분하면서도 자랑스러워하고, 또한 아들도 눈을 말똥말똥 뜨고는 이상한 듯 쳐다보는 표정을 보고 크게 웃는 온 가족의 모습이 눈에 선한 것이다. 그러고 있을 무렵 자신이 귀가하여 '복권'에 대한 비밀을 털어놓기 시작한다. 다시 큰 웃음이 터져 나온다. 아아, 빨리 퇴근시간이 되었으면 좋겠다. 평화로운 가정의 빛을 쬐고 싶다. 오늘 하루는 무척이나 길다.


 됐다! 퇴근시간이다. 서둘러 책상 위의 서류를 정리한다.


 그때 허겁지겁 볼품없는 복장을 한 여성이 출산신고서를 들고 그가 있는 창구에 온다.


 "부탁드립니다."


 "오늘은 더 이상 안됩니다."


 츠시마는 그 '힘든 일을 잊게 하는' 밝은 얼굴로 대답하고서 책상 위를 깨끗하게 치우고는 빈 도시락을 들고 일어선다.


 "부탁드립니다."


 "시계를 보세요, 시계를."


 츠시마는 경쾌하게 말하고서 출산신고서를 되돌려준다.


 "부탁드립니다."


 "내일 하세요. 아셨죠?"


 츠시마의 말투는 부드러웠다.


 "오늘이 아니면 전 곤란해요."


 츠시마는 이미 그 자리에 없었다.


 ……볼품없는 여성의 출산에 얽힌 비극. 거기에는 여러 형태가 있으리라. 그 여자의 죽어야만 했던 이유는, 나 (다자이) 에게도 자세히는 모르지만, 아무튼 그 여자는 그날 밤 타마가와 죠스이(玉川上水)에 뛰어든다. 신문의 도쿄 교외판 구석에 작게 실린다. 신원 불명. 츠시마에게는 아무런 죄도 없다. 퇴근해야 하는 시간에 퇴근한 것이다. 츠시마는 전혀 그 여자에 대해 기억하고 있지 않다. 그리고 여전히 방긋방긋 웃으며 가정의 행복을 위해 최선을 다한다.


 대체적으로 이런 줄거리의 단편소설을 나는 병을 앓으며 잠을 청하지 못한 채 상상해보았으나, 생각해보면 이 주인공인 츠시마 슈지는 굳이 공무원이 아니라도 될 것 같다. 은행원이라도, 의사라도 괜찮을 듯싶다. 하지만 나로 하여금 이 소설을 떠오르게 만든 건 그 관리의 징그러운 웃음이다. 그 징그러운 웃음의 근원지는 어디일까. 이른바 '관료의 악'의 핵심은 무엇일까. 이른바 '관료적'이라는 기풍의 원인은 어디인가. 나는 그것을 짚어가며 가정의 에고이즘이라고도 할 수 있는 음울한 관념에 부딪혀, 그리하여 결국 다음과 같은 무서운 결론을 얻은 것이다.


 결론인 즉, 가정의 행복은 모든 악의 근원이다. 




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Posted by 문학관 관리인 위어조자(謂語助者)

비잔(眉山)

다자이 오사무(太宰 治) (1948)

번역 : 홍성필


 이는 그 음식점 폐쇄령이 아직 내리지 않았을 무렵의 이야기이다.


 신쥬쿠(新宿) 주변에도 이번 전쟁으로 많이 불에 타고 말았으나, 가장 신속하게 복구된 곳은 먹고 마시는 집이었다. 테이토자(帝都座) 뒤에 있는 와카마츠야(若松屋)이라는, 판잣집은 아니지만 급조된 2층집도 그 중 하나였다.


 “와카마츠야도, 비잔(眉山)만 없으면 좋을 텐데 말이야.”


 “Exactly. 그 녀석은 너무 시끄러워. Fool 바로 그 자체지.”


 그렇게 말하면서도 우리들은 사흘에 한 번꼴로 그 와카마츠야를 찾아 가서는 그 곳 2층 타타미 6조 방에서 나가떨어질 때까지 마시고, 그리하여 결국은 새우잠을 자게 된다. 그 집은 우리들에게 특별히 모든 요구를 들어주었다. 돈도 뭐도 안 가지고 가서는, 후불처리도 마음대로 할 수 있었다. 그 이유를 말하자면 미타카(三鷹)에 있는 우리 집 바로 근처에 역시 와카마츠야라고 하는 생선가게가 있어, 그곳 주인이 예부터 나와는 술친구이기도 하며, 또한 우리 가족들과도 친하게 지내고 있어, 그 주인이, “한 번 가보세요. 내 누님이 신쥬쿠에서 새로 가게를 냈습니다. 예전에는 츠키지(築地)에서 하고 있었지요. 당신에 대해서는 예전부터 누님한테 말을 하고는 있었거든요.  하룻밤 묵어도 상관없습니다.”


 나는 그 길로 바로 가서 취하고는 그리고 묵었다. 누님이라는 분은 벌써 나이가 어느 정도 든, 깔끔한 여주인이었다.


 무엇보다 외상이 되는 점이 매우 편리했다. 나는 손님들을 접대할 경우 대부분 그 곳으로 안내했다. 내게 오는 손님들은, 내가 이렇긴 해도 소설가 나부랭이이므로 소설가가 많아야할 텐데, 화가나 음악가들이 내방할 때는 있어도 소설가는 드물었다. 아니, 거의 없다고 해도 과언이 아닌 상태였다. 그래도 신쥬쿠에 있는 와카마츠야 여주인은 내가 데리고 가는 손님들이 모두 소설가라고 혼자 생각하고 있는 듯, 특히 그 집에서 일하는 여종업원 토시 짱은 어렸을 때부터 소설을 밥보다 좋아했다고 하여, 내가 그 집 2층으로 손님을 안내하면 벌써 저 분은 누구냐면서 눈을 반짝이며 내게 묻는다.


 “하야시 후미코(林芙美子) 씨야.”


 그는 나보다도 다섯이나 나이가 많은, 머리가 벗어진 서양화가였다.


 “어머? 하지만…….”


 소설이라는 것이 밥보다도 좋다며 허풍을 치는 토시 짱은 매우 당황하며,


 “하야시 선생님이라는 분이 남자예요?”


 “그래. 타카하마 쿄오코(高浜虛子)라는 할아버지도 있고, 카와바타 류우코(川端龍子)라는, 콧수염 난 훌륭한 신사도 있어. (사실은 모두 여류 소설가임 - 역자 주)”


 “모두 소설가예요?”


 “뭐, 그렇지.”


 그날 이후 그 서양화가는 신쥬쿠에 있는 화카마츠야에 있어서 하야시 선생님이 되었다. 사실은 니카 회(二科會 : 미술단체 - 역자 주)에 있는 하시다 신이치로(橋田新一郞) 씨였다.


 한 번은 내가 피아니스트 카와카미 로쿠로(川上六郞) 씨를 와카마츠야에 있는 그 2층으로 안내한 적이 있다. 내가 아래층에 있는 화장실로 내려갔더니, 토시 짱이 술병을 들고는 계단 밑에 서 있으면서,


 “저 분은 누구세요?”


 “시끄러 죽겠네. 누구면 어떻냐.”


 나도 과연 짜증이 났다.


 “에이, 누구신데요?”


 “카와카미라고 해.”


 이미 화가 치밀어 올라 평소처럼 농담도 하기 싫어져, 나도 모르게 사실대로 말을 했다.


 “아아, 알았다. 카와카미 비잔(川上眉山). (추리작가 - 역자 주)”


 웃기다기 보다는 참을 수 없는 그녀의 무지함이 한심하여 두들겨 패주고 싶은 심정으로,


 “에잇, 멍청아!”


 라고 소리쳐줬다.


 그날 이후 우리들은, 얼굴을 맞대고는 그녀를 토시 짱이라 부르고 있었으나, 뒤에서는 비잔이라고 부르게 되었다. 그리고 또한 와카마츠야를 ‘비잔 집’이라고 부르는 사람들도 생겨나기 시작했다.


 비잔 나이는 스물 전후이며, 그 외모는 키가 작고 검은 피부에, 얼굴은 납작하고 눈이 가늘었으며 어디 하나 좋은 점이 없었으나 눈썹만은 가냘프게 초승달 모양으로 아름다워, 그 때문에도 비잔(眉山)이라는 그녀의 별명이 딱 맞는 것처럼 느껴졌다.


 그러나 그 무지함과 뻔뻔함, 그리고 소란스러움에는 견딜 수 없는 부분이 있었다. 아래층에 손님이 있어도 그녀는 우리들이 있는 2층으로만 찾아와, 그러고는 아무 것도 모르는 주제에 자신감 넘치는 표정으로 우리들 화제에 끼어들어온다. 예를 들자면 이런 일도 있었다.


 “하지만 기본적 인권이라는 건…….”


 하고 누가 말하자,


 “네?”


 라며 곧바로 나서서는,


 “그건 어떻게 생긴 거예요? 역시 미국 건가요? 언제 배급되죠?”


 인견(人絹)으로 잘못 들은 듯하다. (일어에서 ‘人權’과 ‘人絹’은 같은 발음 - 역자 주) 너무 지나치기에 함께 앉아 있던 모두가 흥이 깨져서는 아무도 웃지 않았으며 얼굴을 찌푸렸다.


 비잔 혼자서 매우 재미있다는 듯 웃는 얼굴로,


 “아무도 안 가르쳐주잖아요.”


 “토시 짱, 아래에 손님 온 것 같은데?”


 “상관없어요.”


 “아니, 너는 상관없더라도…….”


 점점 불쾌해질 따름이었다.


 “쟤는 백치가 아닐까요?”


 우리들은 비잔이 없을 때 마음껏 울분을 토해냈다.


 “아무리 그래도 그렇지 너무하잖아요. 이 집도 나쁘진 않지만, 저 비잔이 있으면 역시 좀 그렇죠?”


 “그래도 자기 딴에는 꽤 잘난 줄 알아요. 우리들이 이렇게 미워하고 있을 줄은 꿈에도 모르고, 오히려 모두의 귀염둥이…….”


 “으악! 못 참겠어.”


 “근데 정말 그런지도 모르지. 내가 듣기로 저 친구는 귀족…….”


 “네에? 그건 금시초문입니다. 묘한 이야기로군요. 비잔이 자기가 그러던가요?”


 “그럼요. 그 귀족이라는 것 때문에, 저 녀석, 큰 실수를 저질렀거든요. 누군가가 저 녀석을 속이고 하는 말이, 진짜 귀부인은 오줌을 눌 때 앉지 않는다고 가르쳐줬어요. 그러자 저 멍청이가 남몰래 화장실에서 시험해본 거예요. 그랬더니 이거야 원, 사방팔방으로 다 튀어서 화장실은 물바다가 되고, 그러고는 나 몰라라 하고 있었다니까요. 알고 계시겠지만 여기 화장실은 뒤쪽에 있는 과일가게와 공동으로 쓰고 있는데, 과일가게 주인이 화를 내서, 아래 여주인한테 항의하고, 하마터면 범인은 우리들, 주정뱅이들은 못 말린다, 이렇게 되어 우리들이 누명을 쓴 불쾌한 일도 있었습니다. 그런데 아무리 우리들이 취했다고 해도 그렇게 대홍수를 만들어놓는 실수는 안 하잖아요. 아무래도 이상해서 여기저기 알아보았더니, 비잔이었어요. 그 녀석은 우리들한테 단번에 자백하더군요. 화장실 구조가 나쁘답디다.”


 “그런데 왜 또 귀족이라고…….”


 “요즘 유행하는 말 아닐까요? 듣기에 비잔 집안은 시즈오카(靜岡) 시에서 명문으로…….”


 “명문? 별 희한한 명문도 다 있네.”


 “살고 있던 집이 어마어마하게 컸대요. 전쟁 때 모두 불타서 몰락했다지만요. 글쎄, 테이토자(帝都座)만큼 컸다고 하니 놀랍죠. 그런데 자세히 들어보니까 무슨 초등학교라고 해요. 저 비잔은 그 초등학교 급사 딸이었던 거예요.”


 “음, 그래서 하나 생각난 게 있다. 저 녀석이 계단을 오르내릴 때 너무 험악하죠? 올라갈 때는 쿵쾅쿵쾅, 내려갈 때는 굴러 떨어지듯이 퉁탕퉁탕 하고 내려가서, 그대로 화장실로 뛰어 들어가고서는 문을 쾅 닫아버립니다. 덕분에 우리들이, 언제였죠? 우리가 억울하게 당한 적이 있잖아요? 저 계단 밑에는 방이 또 하나 있어, 여주인 친척이 이빨 수술을 하러 상경해 와서는 그 방에서 자고 있었는데, 치통에는 그 쿵쾅쿵쾅도 퉁탕퉁탕도 울리잖아요. 여주인한테 그랬다고 하더라구요. 2층 손님들이 자기를 죽인다면서요. 그런데 우리들 식구들한테는 그 정도로 난폭하게 오르내리는 사람은 없죠. 하지만 여주인한테는 제가 대표로 한 마디 들었어요. 기분이 안 좋아서 저는 여주인한테 말했죠. 그건 비잔, 아니, 토시 짱이 분명하다고 말이에요. 그러자 옆에서 그 말을 듣고 있던 비잔은 웃으면서, 자기는 어렸을 때 튼튼한 계단을 오르내리며 자라왔다면서, 오히려 자랑스럽다는 듯이 말하는 거예요. 그 때 저는, 여자란 참으로 한심하고도 허영심에 찬 허풍을 떤다며 어이없어 했는데, 그랬군요. 학교에서 자랐군요. 그렇다면 허풍은 아닙니다. 초등학교에 있는 계단은 튼튼하니까 말이에요.”


 “들으면 들을수록 불쾌하네. 이제 내일부터 단골집을 바꿉시다. 바꿀 때도 됐어요. 어디 다른 아지트를 찾읍시다.”


 그러기로 다짐하고 다른 술집을 여기저기 들르면서 걸어 봐도 결국 다시 와카마츠야로 오게 된다. 무엇보다 외상이 되므로 나도 모르게 이쪽으로 오고 만다.


 처음에는 내 안내로 이 집으로 온 그 대머리 하야시 선생, 즉 서양화가 하시다 씨도 그 후로부터는 혼자 와서 이 집 단골 중 하나가 되었으며, 그 밖에도 두세 명 그런 사람들이 생겨났었다.


 날도 풀리고, 이제 서서히 벚꽃이 피기 시작하여 나는 그날, 젠신자(前進座)에 있는 젊은 배우 나카무라 쿠니오(中村國男) 군과 비잔집에서 만나 볼일을 보기로 되어 있었다. 볼일이란, 사실은 그의 중매 때문인데 조금 복잡하여, 우리 집에서는 조금 목소리를 낮춰가며 의논해야하는 사정도 있었기에 비잔 집에서 만나 서로 큰 소리로 말하고자 약속한 것이었다. 나카무라 쿠니오 군도 그 때는 이미 비잔 집에서 거의 단골이었으므로, 그리하여 비잔는 그를 나카무라 무라오 씨 (中村武羅夫 : 작가 - 역자 주) 라고 생각하고 있었다.


 그곳에 가보니 나카무라 무라오 선생은 아직 도착하지 않았으며, 하야시 선생, 즉 하시다 신이치로 씨가 가게 탁자에서 혼자 술을 마시며 싱글벙글 웃고 있었다.


 “가관이었어요. 비잔이 된장을 밟아버렸어요.”


 “된장을요?”


 나는 카운터에 한쪽 팔꿈치를 올려놓고 서 있는 여주인 얼굴을 보았다.


 여주인은 매우 불쾌한 듯이 미간을 찡그리고는 다시 하는 수 없다는 듯 웃으면서,


 “저 아이가 덤벙거리는 건 말도 마세요. 바깥에서부터 눈을 부릅뜨고 헐레벌떡 뛰어 들어오더니 갑자기 철퍼덕 했다니까요.”


 “밟은 거예요?”


 “네. 오늘 막 배급 받은 된장을 그릇에 가득 담아두었는데, 저도 놓는 곳이 안 좋긴 했겠지만, 하필이면 거기에 발을 집어넣을 건 없잖아요. 거기다가 발을 뽑더니 뒤꿈치만 들고 그대로 화장실로 달려가더라니까요. 아무리 못 참겠다고 하더라도 그렇게 서두를 필요야 없잖아요. 화장실에 된장 묻은 발자국이라도 있으면 손님들이 뭐라고 …….”


 말을 하다 말고는 크게 웃었다. 


 “화장실에 된장은 곤란하겠네요.”


 나는 웃음을 참으며,


 “하지만 화장실 가기 전이라 다행이네. 화장실 갔다가 나온 발이라면 문제지. ‘비잔의 물바다’라고 해서 워낙 유명하니까 말이야. 그 발로 밟았다면 분명 된장도 똥이 되고 말 거야.”


 “무슨 말씀인지는 모르겠지만, 아무튼 그 된장은 쓸 수 없어요. 지금 토시 짱한테 버리고 오라고 했습니다.”


 “전부요? 이게 중요한 건데. 가끔 아침에 여기 와서 된장국을 얻어먹을 때가 있는데, 알아둬야 할 것 같아서 묻는 건데 말이에요.”


 “전부예요. 그렇게 의심나신다면 이제 저희 집에서는 손님한테 된장국은 안 내놓겠습니다.”


 “그래주면 고맙겠네요. 토시 짱은요?”


 “우물가에서 발을 씻고 있습니다.”


 라고 하시다 씨는 말하고는,


 “아무튼 장렬했습니다. 저는 보고 있었거든요. 된장 밟는 비잔. 카부키 연극으로 만들면 볼만 하겠던 걸요?”


 “아니, 볼만 하긴요. 된장 준비하는 게 큰 일일 거예요.”


 하시다 씨는 그날 볼일이 있다면서 곧 돌아가고 나는 2층으로 올라가 나카무라 선생을 기다렸다.


 된장 밟은 비잔은 술병을 들고 쿵쾅쿵쾅 올라왔다.


 “자네는 어디 몸이 안 좋은 게 아니야? 가까이 오지 말라구. 병 옮을라. 맨날 화장실만 가잖아?”


 “설마요.”


 하고 즐겁다는 듯이 웃고는,


 “저 있잖아요. 어렸을 때는, 토시 짱은 화장실 같은 곳에는 한 번도 간 적이 없는 듯한 얼굴이라는 말을 듣곤 했어요.”


 “귀족이라면서. ……근데 가식 없는 내 느낌을 솔직히 말하자면, 자네는 언제 봐도 방금 화장실에서 나왔습니다, 하는 얼굴인데…….”


 “어머, 너무해.”


 그래도 역시 웃고 있다.


 “언제였던가, 윗도리 소매를 등으로 돌린 채로 여기에 술을 가지고 온 적이 있었는데, 그런 건 일목요연이라고 하는 거야. 문학적으로는 말이야. 그런 꼴로 술을 따르다니, 예의가 아니지 않나.”


 “맨날 그런 소리만 하셔.”


 태연하기 짝이 없다.


 “이봐, 자네. 더럽지 않나. 손님 앞에서 손톱 때를 후벼 내다니. 나는 이레 봬도 손님이라구.”


 “어머, 하지만 당신들도 모두 이렇게 하고 있지 않아요? 다들 손톱이 깨끗한 걸요.”


 “그게 어디 같나? 대체 자네는 목욕탕에 들어가나? 솔직하게 말해봐.”


 “그야 들어가죠.”


 라며 애매한 대답을 하고는,


 “저 있잖아요. 아까 책방에 갔다 왔어요. 거기서 이걸 샀거든요. 당신 성함도 나와있더라구요.”


 주머니에서 신간 문예잡지를 꺼내들고는 여기저기 펼쳐들며 내 이름이 나온 곳을 찾고 있는 듯하다.


 “집어 치워!”


 참다못해 나는 소리 질렀다. 패주고 싶을 만큼 증오를 느꼈다.


 “그런 건 읽는 게 아니야. 넌 알지도 못하잖아. 왜 또 그런 걸 사오고 그래? 낭비야.”


 “어머, 하지만 당신 이름이.”


 “그럼 넌 내 이름이 나온 책을 몽땅 다 사 모을 수 있을 것 같애? 없잖아?”


 이상한 논리였으나 나는 화가 치밀어 올랐다. 그 잡지는 내게도 보내왔으나, 거기에는 내 소설을 철저하게 비난하는 논문이 실려 있다는 사실을 나는 알고 있었다. 그것을 비잔이 여느 때처럼 아무렇지도 않은 얼굴로 읽는다니. 아니, 그런 이유뿐만이 아니라, 비잔 같은 녀석이 내 이름이나 작품을 조금이라도 만진다는 사실이 참을 수 없을 만큼 싫었다. 아니, 의외로 소설이 밥보다 좋다고 하는 인간들은 이런 비잔 같은 종족들이 많을지도 모른다. 그것도 모르고 작가는 피땀 흘려가며 처자들을 희생까지 시켜가면서 그런 독자들에게 봉사하고 있는 것이 아닐까, 하는 생각을 하자 울음도 안 나올 만큼 어굴함이 끓어오르는 것이었다.


 “아무튼 그 잡지는 치워주게. 안 치우면 후려 팬다.”


 “죄송하게 됐네요.”


 역시 웃으면서,


 “안 읽으면 되잖아요.”


 “애초부터 산다는 게 바보인 증거야.”


 “어머, 전 바보가 아니에요. 어린 거라구요.”


 “어려? 네가? 허어.”


 더 이상 말을 이을 수 없어 매우 불쾌했다.


 그로부터 며칠 후, 나는 음주가 지나친 탓에 갑자기 몸 상태가 좋지 않아 열흘쯤 앓아누워 있다가, 어느 정도 회복되었기에 다시 술을 마시러 신쥬쿠로 나갔다.


 황혼 무렵이었다. 신쥬쿠 역전에서 누가 내 어깨를 두드리기에 돌아보자, 그 하야시 선생 즉, 하시다 씨가 취기 어린 모습으로 웃으며 서 있다.


 “비잔 집에 가시나요?”


 “네. 함께 어떠세요?”


 라고 나는 하시다 씨에게 권했다.


 “아뇨. 저는 벌써 다녀왔습니다.”


 “그래도 어때요? 다시 한 번.”


 “몸이 안 좋으시다고 하던데…….”


 “이제 괜찮아졌어요. 갑시다.”


 “네에.”


 하시다 씨는 평소답지 않게 왠지 무척 마지못하다는 듯이 응했다.


 뒷골목을 둘이서 걸으며 나는 문득 생각난 듯이 물었다.


 “된장 밟는 비잔은 여전하던가요?”


 “없더군요.”


 “네?”


 “오늘 가보니 없더라구요. 그 아이는 죽을 겁니다.”


 깜짝 놀랐다.


 “여주인한테서 지금 듣고 오는 길이거든요.”


 라고 하시다 씨도 진지한 얼굴로,


 “그 아이는 신장결핵이었데요. 물론 여주인도, 그리고 토시 짱도 그런 일은 몰랐지만 너무 자주 화장실에 가니까 여주인이 토시 짱을 병원으로 데려가서 진찰해보니 그렇게 되어, 더구나 이미 양쪽 모두 망가져서 수술이고 뭐고 늦어서, 그리 오래 살지는 못할 것 같데요. 그래서 여주인은, 토시 짱한테는 아무 것도 알리지 않고 시즈오카에 계신 아버님 댁으로 돌려보냈다더군요.”


 “그랬군요……. 착한 아이였는데.”


 나도 모르게 한 숨과 함께 그 말이 튀어나와, 나는 당황해서 자기 입을 막고 싶었다.


 “착한 아이였습니다.”


 하시다 씨는 차분하게 말하고서,


 “요즘 세상에 그렇게 마음씨 좋은 아이는 보기 힘들어요. 우리들을 위해서도 열심히 일해 줬으니까요. 우리들이 2층에 묵으면서 새벽 2시건 3시건 간에 눈을 뜨면 아래로 내려가서, 토시 짱, 술, 하고 한 마디만 하면 ‘네!’하고 대답하고는, 추운데도 전혀 귀찮아하지도 않으면서 곧바로 일어나 술을 가져와주었으니 말이에요. 그런 아이는 좀처럼 없습니다.”


 눈물이 나려 했기에 나는 얼버무리려고,


 “하지만 ‘된장 밟는 비잔’은, 그건 당신이 붙여준 거였죠?”


 “미안하다고 생각해요. 신장결핵은 화장실에 자주 간다고 하더군요. 된장을 밟고, 계단을 굴러 떨어지듯 화장실에 들어가는 것도 이유가 있었던 거예요.”


 “‘비잔의 물바다’도?”


 “물론이죠.”


 라고 하시다 씨는 내가 비꼬는 것 같은 질문에 화가 난 듯한 어투로,


 “귀족 흉내 같은 걸 내려고 한 게 아니에요. 조금이라도, 아주 조금이라도 더 오랫동안 우리들 곁에 있고 싶어서 참고 또 참았기 때문이에요. 계단을 올라갈 때 쿵쾅쿵쾅 거린 것도 병으로 몸이 불편해서, 그래도 무리를 해가며 우리들을 위해 일해 주었던 거예요. 우리들 모두 무척이나 속을 썩였죠.”


 나는 멈춰 서서 발을 동동 구르고 싶은 심정으로,


 “다른 곳으로 갑시다. 거기서는 마실 수 없겠어요.”


 “동감입니다.”


 우리들은 그날로 단골집을 바꾸었다.

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