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달려라 메로스(走れメロス:はしれめろす)

다자이 오사무(太宰 治) (1940)

일본어 원문


 メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此(こ)のシラクスの市にやって来た。メロスには父も、母も無い。女房も無い。十六の、内気な妹と二人暮しだ。この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿(はなむこ)として迎える事になっていた。結婚式も間近かなのである。メロスは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。メロスには竹馬の友があった。セリヌンティウスである。今は此のシラクスの市で、石工をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちにメロスは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。のんきなメロスも、だんだん不安になって来た。路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈(はず)だが、と質問した。若い衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老爺(ろうや)に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。メロスは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。

「王様は、人を殺します。」

「なぜ殺すのだ。」

「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」

「たくさんの人を殺したのか。」

「はい、はじめは王様の妹婿さまを。それから、御自身のお世嗣(よつぎ)を。それから、妹さまを。それから、妹さまの御子さまを。それから、皇后さまを。それから、賢臣のアレキス様を。」

「おどろいた。国王は乱心か。」

「いいえ、乱心ではございませぬ。人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮しをしている者には、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。御命令を拒めば十字架にかけられて、殺されます。きょうは、六人殺されました。」

 聞いて、メロスは激怒した。「呆(あき)れた王だ。生かして置けぬ。」

 メロスは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。たちまち彼は、巡邏(じゅんら)の警吏に捕縛された。調べられて、メロスの懐中からは短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。メロスは、王の前に引き出された。

「この短刀で何をするつもりであったか。言え!」暴君ディオニスは静かに、けれども威厳を以(もっ)て問いつめた。その王の顔は蒼白(そうはく)で、眉間(みけん)の皺(しわ)は、刻み込まれたように深かった。

「市を暴君の手から救うのだ。」とメロスは悪びれずに答えた。

「おまえがか?」王は、憫笑(びんしょう)した。「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」

「言うな!」とメロスは、いきり立って反駁(はんばく)した。「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。王は、民の忠誠をさえ疑って居られる。」

「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ。人の心は、あてにならない。人間は、もともと私慾のかたまりさ。信じては、ならぬ。」暴君は落着いて呟(つぶや)き、ほっと溜息(ためいき)をついた。「わしだって、平和を望んでいるのだが。」

「なんの為の平和だ。自分の地位を守る為か。」こんどはメロスが嘲笑した。「罪の無い人を殺して、何が平和だ。」

「だまれ、下賤(げせん)の者。」王は、さっと顔を挙げて報いた。「口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、いまに、磔(はりつけ)になってから、泣いて詫(わ)びたって聞かぬぞ。」

「ああ、王は悧巧(りこう)だ。自惚(うぬぼ)れているがよい。私は、ちゃんと死ぬる覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」と言いかけて、メロスは足もとに視線を落し瞬時ためらい、「ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい。たった一人の妹に、亭主を持たせてやりたいのです。三日のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来ます。」

「ばかな。」と暴君は、嗄(しわが)れた声で低く笑った。「とんでもない嘘(うそ)を言うわい。逃がした小鳥が帰って来るというのか。」

「そうです。帰って来るのです。」メロスは必死で言い張った。「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許して下さい。妹が、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にセリヌンティウスという石工がいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人を絞め殺して下さい。たのむ、そうして下さい。」

 それを聞いて王は、残虐な気持で、そっと北叟笑(ほくそえ)んだ。生意気なことを言うわい。どうせ帰って来ないにきまっている。この嘘つきに騙(だま)された振りして、放してやるのも面白い。そうして身代りの男を、三日目に殺してやるのも気味がいい。人は、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代りの男を磔刑に処してやるのだ。世の中の、正直者とかいう奴輩(やつばら)にうんと見せつけてやりたいものさ。

「願いを、聞いた。その身代りを呼ぶがよい。三日目には日没までに帰って来い。おくれたら、その身代りを、きっと殺すぞ。ちょっとおくれて来るがいい。おまえの罪は、永遠にゆるしてやろうぞ。」

「なに、何をおっしゃる。」

「はは。いのちが大事だったら、おくれて来い。おまえの心は、わかっているぞ。」

 メロスは口惜しく、地団駄(じだんだ)踏んだ。ものも言いたくなくなった。

 竹馬の友、セリヌンティウスは、深夜、王城に召された。暴君ディオニスの面前で、佳(よ)き友と佳き友は、二年ぶりで相逢うた。メロスは、友に一切の事情を語った。セリヌンティウスは無言で首肯(うなず)き、メロスをひしと抱きしめた。友と友の間は、それでよかった。セリヌンティウスは、縄打たれた。メロスは、すぐに出発した。初夏、満天の星である。

 メロスはその夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで、村へ到着したのは、翌(あく)る日の午前、陽は既に高く昇って、村人たちは野に出て仕事をはじめていた。メロスの十六の妹も、きょうは兄の代りに羊群の番をしていた。よろめいて歩いて来る兄の、疲労困憊(こんぱい)の姿を見つけて驚いた。そうして、うるさく兄に質問を浴びせた。

「なんでも無い。」メロスは無理に笑おうと努めた。「市に用事を残して来た。またすぐ市に行かなければならぬ。あす、おまえの結婚式を挙げる。早いほうがよかろう。」

 妹は頬をあからめた。

「うれしいか。綺麗(きれい)な衣裳も買って来た。さあ、これから行って、村の人たちに知らせて来い。結婚式は、あすだと。」

 メロスは、また、よろよろと歩き出し、家へ帰って神々の祭壇を飾り、祝宴の席を調え、間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。

 眼が覚めたのは夜だった。メロスは起きてすぐ、花婿の家を訪れた。そうして、少し事情があるから、結婚式を明日にしてくれ、と頼んだ。婿の牧人は驚き、それはいけない、こちらには未だ何の仕度も出来ていない、葡萄(ぶどう)の季節まで待ってくれ、と答えた。メロスは、待つことは出来ぬ、どうか明日にしてくれ給え、と更に押してたのんだ。婿の牧人も頑強であった。なかなか承諾してくれない。夜明けまで議論をつづけて、やっと、どうにか婿をなだめ、すかして、説き伏せた。結婚式は、真昼に行われた。新郎新婦の、神々への宣誓が済んだころ、黒雲が空を覆い、ぽつりぽつり雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。祝宴に列席していた村人たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、狭い家の中で、むんむん蒸し暑いのも怺(こら)え、陽気に歌をうたい、手を拍(う)った。メロスも、満面に喜色を湛(たた)え、しばらくは、王とのあの約束をさえ忘れていた。祝宴は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになり、人々は、外の豪雨を全く気にしなくなった。メロスは、一生このままここにいたい、と思った。この佳い人たちと生涯暮して行きたいと願ったが、いまは、自分のからだで、自分のものでは無い。ままならぬ事である。メロスは、わが身に鞭打ち、ついに出発を決意した。あすの日没までには、まだ十分の時が在る。ちょっと一眠りして、それからすぐに出発しよう、と考えた。その頃には、雨も小降りになっていよう。少しでも永くこの家に愚図愚図とどまっていたかった。メロスほどの男にも、やはり未練の情というものは在る。今宵呆然、歓喜に酔っているらしい花嫁に近寄り、

「おめでとう。私は疲れてしまったから、ちょっとご免こうむって眠りたい。眼が覚めたら、すぐに市に出かける。大切な用事があるのだ。私がいなくても、もうおまえには優しい亭主があるのだから、決して寂しい事は無い。おまえの兄の、一ばんきらいなものは、人を疑う事と、それから、嘘をつく事だ。おまえも、それは、知っているね。亭主との間に、どんな秘密でも作ってはならぬ。おまえに言いたいのは、それだけだ。おまえの兄は、たぶん偉い男なのだから、おまえもその誇りを持っていろ。」

 花嫁は、夢見心地で首肯(うなず)いた。メロスは、それから花婿の肩をたたいて、

「仕度の無いのはお互さまさ。私の家にも、宝といっては、妹と羊だけだ。他には、何も無い。全部あげよう。もう一つ、メロスの弟になったことを誇ってくれ。」

 花婿は揉(も)み手して、てれていた。メロスは笑って村人たちにも会釈(えしゃく)して、宴席から立ち去り、羊小屋にもぐり込んで、死んだように深く眠った。

 眼が覚めたのは翌る日の薄明の頃である。メロスは跳ね起き、南無三、寝過したか、いや、まだまだ大丈夫、これからすぐに出発すれば、約束の刻限までには十分間に合う。きょうは是非とも、あの王に、人の信実の存するところを見せてやろう。そうして笑って磔の台に上ってやる。メロスは、悠々と身仕度をはじめた。雨も、いくぶん小降りになっている様子である。身仕度は出来た。さて、メロスは、ぶるんと両腕を大きく振って、雨中、矢の如く走り出た。

 私は、今宵、殺される。殺される為に走るのだ。身代りの友を救う為に走るのだ。王の奸佞(かんねい)邪智を打ち破る為に走るのだ。走らなければならぬ。そうして、私は殺される。若い時から名誉を守れ。さらば、ふるさと。若いメロスは、つらかった。幾度か、立ちどまりそうになった。えい、えいと大声挙げて自身を叱りながら走った。村を出て、野を横切り、森をくぐり抜け、隣村に着いた頃には、雨も止(や)み、日は高く昇って、そろそろ暑くなって来た。メロスは額(ひたい)の汗をこぶしで払い、ここまで来れば大丈夫、もはや故郷への未練は無い。妹たちは、きっと佳い夫婦になるだろう。私には、いま、なんの気がかりも無い筈だ。まっすぐに王城に行き着けば、それでよいのだ。そんなに急ぐ必要も無い。ゆっくり歩こう、と持ちまえの呑気(のんき)さを取り返し、好きな小歌をいい声で歌い出した。ぶらぶら歩いて二里行き三里行き、そろそろ全里程の半ばに到達した頃、降って湧(わ)いた災難、メロスの足は、はたと、とまった。見よ、前方の川を。きのうの豪雨で山の水源地は氾濫(はんらん)し、濁流滔々(とうとう)と下流に集り、猛勢一挙に橋を破壊し、どうどうと響きをあげる激流が、木葉微塵(こっぱみじん)に橋桁(はしげた)を跳ね飛ばしていた。彼は茫然と、立ちすくんだ。あちこちと眺めまわし、また、声を限りに呼びたててみたが、繋舟(けいしゅう)は残らず浪に浚(さら)われて影なく、渡守りの姿も見えない。流れはいよいよ、ふくれ上り、海のようになっている。メロスは川岸にうずくまり、男泣きに泣きながらゼウスに手を挙げて哀願した。「ああ、鎮(しず)めたまえ、荒れ狂う流れを! 時は刻々に過ぎて行きます。太陽も既に真昼時です。あれが沈んでしまわぬうちに、王城に行き着くことが出来なかったら、あの佳い友達が、私のために死ぬのです。」

 濁流は、メロスの叫びをせせら笑う如く、ますます激しく躍り狂う。浪は浪を呑み、捲き、煽(あお)り立て、そうして時は、刻一刻と消えて行く。今はメロスも覚悟した。泳ぎ切るより他に無い。ああ、神々も照覧あれ! 濁流にも負けぬ愛と誠の偉大な力を、いまこそ発揮して見せる。メロスは、ざんぶと流れに飛び込み、百匹の大蛇のようにのた打ち荒れ狂う浪を相手に、必死の闘争を開始した。満身の力を腕にこめて、押し寄せ渦巻き引きずる流れを、なんのこれしきと掻(か)きわけ掻きわけ、めくらめっぽう獅子奮迅の人の子の姿には、神も哀れと思ったか、ついに憐愍(れんびん)を垂れてくれた。押し流されつつも、見事、対岸の樹木の幹に、すがりつく事が出来たのである。ありがたい。メロスは馬のように大きな胴震いを一つして、すぐにまた先きを急いだ。一刻といえども、むだには出来ない。陽は既に西に傾きかけている。ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠をのぼり、のぼり切って、ほっとした時、突然、目の前に一隊の山賊が躍り出た。

「待て。」

「何をするのだ。私は陽の沈まぬうちに王城へ行かなければならぬ。放せ。」

「どっこい放さぬ。持ちもの全部を置いて行け。」

「私にはいのちの他には何も無い。その、たった一つの命も、これから王にくれてやるのだ。」

「その、いのちが欲しいのだ。」

「さては、王の命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな。」

 山賊たちは、ものも言わず一斉に棍棒(こんぼう)を振り挙げた。メロスはひょいと、からだを折り曲げ、飛鳥の如く身近かの一人に襲いかかり、その棍棒を奪い取って、

「気の毒だが正義のためだ!」と猛然一撃、たちまち、三人を殴り倒し、残る者のひるむ隙(すき)に、さっさと走って峠を下った。一気に峠を駈け降りたが、流石(さすが)に疲労し、折から午後の灼熱(しゃくねつ)の太陽がまともに、かっと照って来て、メロスは幾度となく眩暈(めまい)を感じ、これではならぬ、と気を取り直しては、よろよろ二、三歩あるいて、ついに、がくりと膝を折った。立ち上る事が出来ぬのだ。天を仰いで、くやし泣きに泣き出した。ああ、あ、濁流を泳ぎ切り、山賊を三人も撃ち倒し韋駄天(いだてん)、ここまで突破して来たメロスよ。真の勇者、メロスよ。今、ここで、疲れ切って動けなくなるとは情無い。愛する友は、おまえを信じたばかりに、やがて殺されなければならぬ。おまえは、稀代(きたい)の不信の人間、まさしく王の思う壺(つぼ)だぞ、と自分を叱ってみるのだが、全身萎(な)えて、もはや芋虫(いもむし)ほどにも前進かなわぬ。路傍の草原にごろりと寝ころがった。身体疲労すれば、精神も共にやられる。もう、どうでもいいという、勇者に不似合いな不貞腐(ふてくさ)れた根性が、心の隅に巣喰った。私は、これほど努力したのだ。約束を破る心は、みじんも無かった。神も照覧、私は精一ぱいに努めて来たのだ。動けなくなるまで走って来たのだ。私は不信の徒では無い。ああ、できる事なら私の胸を截(た)ち割って、真紅の心臓をお目に掛けたい。愛と信実の血液だけで動いているこの心臓を見せてやりたい。けれども私は、この大事な時に、精も根も尽きたのだ。私は、よくよく不幸な男だ。私は、きっと笑われる。私の一家も笑われる。私は友を欺(あざむ)いた。中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。ああ、もう、どうでもいい。これが、私の定った運命なのかも知れない。セリヌンティウスよ、ゆるしてくれ。君は、いつでも私を信じた。私も君を、欺かなかった。私たちは、本当に佳い友と友であったのだ。いちどだって、暗い疑惑の雲を、お互い胸に宿したことは無かった。いまだって、君は私を無心に待っているだろう。ああ、待っているだろう。ありがとう、セリヌンティウス。よくも私を信じてくれた。それを思えば、たまらない。友と友の間の信実は、この世で一ばん誇るべき宝なのだからな。セリヌンティウス、私は走ったのだ。君を欺くつもりは、みじんも無かった。信じてくれ! 私は急ぎに急いでここまで来たのだ。濁流を突破した。山賊の囲みからも、するりと抜けて一気に峠を駈け降りて来たのだ。私だから、出来たのだよ。ああ、この上、私に望み給うな。放って置いてくれ。どうでも、いいのだ。私は負けたのだ。だらしが無い。笑ってくれ。王は私に、ちょっとおくれて来い、と耳打ちした。おくれたら、身代りを殺して、私を助けてくれると約束した。私は王の卑劣を憎んだ。けれども、今になってみると、私は王の言うままになっている。私は、おくれて行くだろう。王は、ひとり合点して私を笑い、そうして事も無く私を放免するだろう。そうなったら、私は、死ぬよりつらい。私は、永遠に裏切者だ。地上で最も、不名誉の人種だ。セリヌンティウスよ、私も死ぬぞ。君と一緒に死なせてくれ。君だけは私を信じてくれるにちがい無い。いや、それも私の、ひとりよがりか? ああ、もういっそ、悪徳者として生き伸びてやろうか。村には私の家が在る。羊も居る。妹夫婦は、まさか私を村から追い出すような事はしないだろう。正義だの、信実だの、愛だの、考えてみれば、くだらない。人を殺して自分が生きる。それが人間世界の定法ではなかったか。ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切り者だ。どうとも、勝手にするがよい。やんぬる哉(かな)。――四肢を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。

 ふと耳に、潺々(せんせん)、水の流れる音が聞えた。そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。すぐ足もとで、水が流れているらしい。よろよろ起き上って、見ると、岩の裂目から滾々(こんこん)と、何か小さく囁(ささや)きながら清水が湧き出ているのである。その泉に吸い込まれるようにメロスは身をかがめた。水を両手で掬(すく)って、一くち飲んだ。ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。歩ける。行こう。肉体の疲労恢復(かいふく)と共に、わずかながら希望が生れた。義務遂行の希望である。わが身を殺して、名誉を守る希望である。斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。日没までには、まだ間がある。私を、待っている人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。私は、信じられている。私の命なぞは、問題ではない。死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ! メロス。

 私は信頼されている。私は信頼されている。先刻の、あの悪魔の囁きは、あれは夢だ。悪い夢だ。忘れてしまえ。五臓が疲れているときは、ふいとあんな悪い夢を見るものだ。メロス、おまえの恥ではない。やはり、おまえは真の勇者だ。再び立って走れるようになったではないか。ありがたい! 私は、正義の士として死ぬ事が出来るぞ。ああ、陽が沈む。ずんずん沈む。待ってくれ、ゼウスよ。私は生れた時から正直な男であった。正直な男のままにして死なせて下さい。

 路行く人を押しのけ、跳(は)ねとばし、メロスは黒い風のように走った。野原で酒宴の、その宴席のまっただ中を駈け抜け、酒宴の人たちを仰天させ、犬を蹴(け)とばし、小川を飛び越え、少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った。一団の旅人と颯(さ)っとすれちがった瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。「いまごろは、あの男も、磔にかかっているよ。」ああ、その男、その男のために私は、いまこんなに走っているのだ。その男を死なせてはならない。急げ、メロス。おくれてはならぬ。愛と誠の力を、いまこそ知らせてやるがよい。風態なんかは、どうでもいい。メロスは、いまは、ほとんど全裸体であった。呼吸も出来ず、二度、三度、口から血が噴き出た。見える。はるか向うに小さく、シラクスの市の塔楼が見える。塔楼は、夕陽を受けてきらきら光っている。

「ああ、メロス様。」うめくような声が、風と共に聞えた。

「誰だ。」メロスは走りながら尋ねた。

「フィロストラトスでございます。貴方のお友達セリヌンティウス様の弟子でございます。」その若い石工も、メロスの後について走りながら叫んだ。「もう、駄目でございます。むだでございます。走るのは、やめて下さい。もう、あの方(かた)をお助けになることは出来ません。」

「いや、まだ陽は沈まぬ。」

「ちょうど今、あの方が死刑になるところです。ああ、あなたは遅かった。おうらみ申します。ほんの少し、もうちょっとでも、早かったなら!」

「いや、まだ陽は沈まぬ。」メロスは胸の張り裂ける思いで、赤く大きい夕陽ばかりを見つめていた。走るより他は無い。

「やめて下さい。走るのは、やめて下さい。いまはご自分のお命が大事です。あの方は、あなたを信じて居りました。刑場に引き出されても、平気でいました。王様が、さんざんあの方をからかっても、メロスは来ます、とだけ答え、強い信念を持ちつづけている様子でございました。」

「それだから、走るのだ。信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ。ついて来い! フィロストラトス。」

「ああ、あなたは気が狂ったか。それでは、うんと走るがいい。ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。走るがいい。」

 言うにや及ぶ。まだ陽は沈まぬ。最後の死力を尽して、メロスは走った。メロスの頭は、からっぽだ。何一つ考えていない。ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走った。陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、メロスは疾風の如く刑場に突入した。間に合った。

「待て。その人を殺してはならぬ。メロスが帰って来た。約束のとおり、いま、帰って来た。」と大声で刑場の群衆にむかって叫んだつもりであったが、喉(のど)がつぶれて嗄(しわが)れた声が幽(かす)かに出たばかり、群衆は、ひとりとして彼の到着に気がつかない。すでに磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれたセリヌンティウスは、徐々に釣り上げられてゆく。メロスはそれを目撃して最後の勇、先刻、濁流を泳いだように群衆を掻きわけ、掻きわけ、

「私だ、刑吏! 殺されるのは、私だ。メロスだ。彼を人質にした私は、ここにいる!」と、かすれた声で精一ぱいに叫びながら、ついに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の両足に、齧(かじ)りついた。群衆は、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。セリヌンティウスの縄は、ほどかれたのである。

「セリヌンティウス。」メロスは眼に涙を浮べて言った。「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。君が若(も)し私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」

 セリヌンティウスは、すべてを察した様子で首肯(うなず)き、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。殴ってから優しく微笑(ほほえ)み、

「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生れて、はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」

 メロスは腕に唸(うな)りをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。

「ありがとう、友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。

 群衆の中からも、歔欷(きょき)の声が聞えた。暴君ディオニスは、群衆の背後から二人の様を、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。

「おまえらの望みは叶(かな)ったぞ。おまえらは、わしの心に勝ったのだ。信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」

 どっと群衆の間に、歓声が起った。

「万歳、王様万歳。」

 ひとりの少女が、緋(ひ)のマントをメロスに捧げた。メロスは、まごついた。佳き友は、気をきかせて教えてやった。

「メロス、君は、まっぱだかじゃないか。早くそのマントを着るがいい。この可愛い娘さんは、メロスの裸体を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ。」

 勇者は、ひどく赤面した。

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Posted by 문학관 관리인 위어조자(謂語助者)

직소(駆込み訴え:かけこみうったえ)

다자이 오사무(太宰 治) (1940)

일본어 원문


 申し上げます。申し上げます。旦那さま。あの人は、酷(ひど)い。酷い。はい。厭(いや)な奴です。悪い人です。ああ。我慢ならない。生かして置けねえ。

 はい、はい。落ちついて申し上げます。あの人を、生かして置いてはなりません。世の中の仇(かたき)です。はい、何もかも、すっかり、全部、申し上げます。私は、あの人の居所(いどころ)を知っています。すぐに御案内申します。ずたずたに切りさいなんで、殺して下さい。あの人は、私の師です。主です。けれども私と同じ年です。三十四であります。私は、あの人よりたった二月(ふたつき)おそく生れただけなのです。たいした違いが無い筈だ。人と人との間に、そんなにひどい差別は無い筈だ。それなのに私はきょう迄(まで)あの人に、どれほど意地悪くこき使われて来たことか。どんなに嘲弄(ちょうろう)されて来たことか。ああ、もう、いやだ。堪えられるところ迄は、堪えて来たのだ。怒る時に怒らなければ、人間の甲斐がありません。私は今まであの人を、どんなにこっそり庇(かば)ってあげたか。誰も、ご存じ無いのです。あの人ご自身だって、それに気がついていないのだ。いや、あの人は知っているのだ。ちゃんと知っています。知っているからこそ、尚更あの人は私を意地悪く軽蔑(けいべつ)するのだ。あの人は傲慢(ごうまん)だ。私から大きに世話を受けているので、それがご自身に口惜(くや)しいのだ。あの人は、阿呆なくらいに自惚(うぬぼ)れ屋だ。私などから世話を受けている、ということを、何かご自身の、ひどい引目(ひけめ)ででもあるかのように思い込んでいなさるのです。あの人は、なんでもご自身で出来るかのように、ひとから見られたくてたまらないのだ。ばかな話だ。世の中はそんなものじゃ無いんだ。この世に暮して行くからには、どうしても誰かに、ぺこぺこ頭を下げなければいけないのだし、そうして歩一歩、苦労して人を抑えてゆくより他に仕様がないのだ。あの人に一体、何が出来ましょう。なんにも出来やしないのです。私から見れば青二才だ。私がもし居らなかったらあの人は、もう、とうの昔、あの無能でとんまの弟子たちと、どこかの野原でのたれ死(じに)していたに違いない。「狐には穴あり、鳥には塒(ねぐら)、されども人の子には枕するところ無し」それ、それ、それだ。ちゃんと白状していやがるのだ。ペテロに何が出来ますか。ヤコブ、ヨハネ、アンデレ、トマス、痴(こけ)の集り、ぞろぞろあの人について歩いて、脊筋が寒くなるような、甘ったるいお世辞を申し、天国だなんて馬鹿げたことを夢中で信じて熱狂し、その天国が近づいたなら、あいつらみんな右大臣、左大臣にでもなるつもりなのか、馬鹿な奴らだ。その日のパンにも困っていて、私がやりくりしてあげないことには、みんな飢え死してしまうだけじゃないのか。私はあの人に説教させ、群集からこっそり賽銭(さいせん)を巻き上げ、また、村の物持ちから供物を取り立て、宿舎の世話から日常衣食の購求まで、煩をいとわず、してあげていたのに、あの人はもとより弟子の馬鹿どもまで、私に一言のお礼も言わない。お礼を言わぬどころか、あの人は、私のこんな隠れた日々の苦労をも知らぬ振りして、いつでも大変な贅沢(ぜいたく)を言い、五つのパンと魚が二つ在るきりの時でさえ、目前の大群集みなに食物を与えよ、などと無理難題を言いつけなさって、私は陰で実に苦しいやり繰りをして、どうやら、その命じられた食いものを、まあ、買い調えることが出来るのです。謂(い)わば、私はあの人の奇蹟の手伝いを、危い手品の助手を、これまで幾度となく勤めて来たのだ。私はこう見えても、決して吝嗇(りんしょく)の男じゃ無い。それどころか私は、よっぽど高い趣味家なのです。私はあの人を、美しい人だと思っている。私から見れば、子供のように慾が無く、私が日々のパンを得るために、お金をせっせと貯(た)めたっても、すぐにそれを一厘残さず、むだな事に使わせてしまって。けれども私は、それを恨みに思いません。あの人は美しい人なのだ。私は、もともと貧しい商人ではありますが、それでも精神家というものを理解していると思っています。だから、あの人が、私の辛苦して貯めて置いた粒々の小金を、どんなに馬鹿らしくむだ使いしても、私は、なんとも思いません。思いませんけれども、それならば、たまには私にも、優しい言葉の一つ位は掛けてくれてもよさそうなのに、あの人は、いつでも私に意地悪くしむけるのです。一度、あの人が、春の海辺をぶらぶら歩きながら、ふと、私の名を呼び、「おまえにも、お世話になるね。おまえの寂しさは、わかっている。けれども、そんなにいつも不機嫌な顔をしていては、いけない。寂しいときに、寂しそうな面容(おももち)をするのは、それは偽善者のすることなのだ。寂しさを人にわかって貰おうとして、ことさらに顔色を変えて見せているだけなのだ。まことに神を信じているならば、おまえは、寂しい時でも素知らぬ振りして顔を綺麗に洗い、頭に膏(あぶら)を塗り、微笑(ほほえ)んでいなさるがよい。わからないかね。寂しさを、人にわかって貰わなくても、どこか眼に見えないところにいるお前の誠の父だけが、わかっていて下さったなら、それでよいではないか。そうではないかね。寂しさは、誰にだって在るのだよ」そうおっしゃってくれて、私はそれを聞いてなぜだか声出して泣きたくなり、いいえ、私は天の父にわかって戴かなくても、また世間の者に知られなくても、ただ、あなたお一人さえ、おわかりになっていて下さったら、それでもう、よいのです。私はあなたを愛しています。ほかの弟子たちが、どんなに深くあなたを愛していたって、それとは較べものにならないほどに愛しています。誰よりも愛しています。ペテロやヤコブたちは、ただ、あなたについて歩いて、何かいいこともあるかと、そればかりを考えているのです。けれども、私だけは知っています。あなたについて歩いたって、なんの得するところも無いということを知っています。それでいながら、私はあなたから離れることが出来ません。どうしたのでしょう。あなたが此の世にいなくなったら、私もすぐに死にます。生きていることが出来ません。私には、いつでも一人でこっそり考えていることが在るんです。それはあなたが、くだらない弟子たち全部から離れて、また天の父の御教えとやらを説かれることもお止(よ)しになり、つつましい民のひとりとして、お母のマリヤ様と、私と、それだけで静かな一生を、永く暮して行くことであります。私の村には、まだ私の小さい家が残って在ります。年老いた父も母も居ります。ずいぶん広い桃畠(ももばたけ)もあります。春、いまごろは、桃の花が咲いて見事であります。一生、安楽にお暮しできます。私がいつでもお傍について、御奉公申し上げたく思います。よい奥さまをおもらいなさいまし。そう私が言ったら、あの人は、薄くお笑いになり、「ペテロやシモンは漁人(すなどり)だ。美しい桃の畠も無い。ヤコブもヨハネも赤貧の漁人だ。あのひとたちには、そんな、一生を安楽に暮せるような土地が、どこにも無いのだ」と低く独りごとのように呟(つぶや)いて、また海辺を静かに歩きつづけたのでしたが、後にもさきにも、あの人と、しんみりお話できたのは、そのとき一度だけで、あとは、決して私に打ち解けて下さったことが無かった。私はあの人を愛している。あの人が死ねば、私も一緒に死ぬのだ。あの人は、誰のものでもない。私のものだ。あの人を他人に手渡すくらいなら、手渡すまえに、私はあの人を殺してあげる。父を捨て、母を捨て、生れた土地を捨てて、私はきょう迄、あの人について歩いて来たのだ。私は天国を信じない。神も信じない。あの人の復活も信じない。なんであの人が、イスラエルの王なものか。馬鹿な弟子どもは、あの人を神の御子だと信じていて、そうして神の国の福音とかいうものを、あの人から伝え聞いては、浅間しくも、欣喜雀躍(きんきじゃくやく)している。今にがっかりするのが、私にはわかっています。おのれを高うする者は卑(ひく)うせられ、おのれを卑うする者は高うせられると、あの人は約束なさったが、世の中、そんなに甘くいってたまるものか。あの人は嘘つきだ。言うこと言うこと、一から十まで出鱈目(でたらめ)だ。私はてんで信じていない。けれども私は、あの人の美しさだけは信じている。あんな美しい人はこの世に無い。私はあの人の美しさを、純粋に愛している。それだけだ。私は、なんの報酬も考えていない。あの人について歩いて、やがて天国が近づき、その時こそは、あっぱれ右大臣、左大臣になってやろうなどと、そんなさもしい根性は持っていない。私は、ただ、あの人から離れたくないのだ。ただ、あの人の傍にいて、あの人の声を聞き、あの人の姿を眺めて居ればそれでよいのだ。そうして、出来ればあの人に説教などを止してもらい、私とたった二人きりで一生永く生きていてもらいたいのだ。あああ、そうなったら! 私はどんなに仕合せだろう。私は今の、此の、現世の喜びだけを信じる。次の世の審判など、私は少しも怖れていない。あの人は、私の此の無報酬の、純粋の愛情を、どうして受け取って下さらぬのか。ああ、あの人を殺して下さい。旦那さま。私はあの人の居所を知って居ります。御案内申し上げます。あの人は私を賤(いや)しめ、憎悪して居ります。私は、きらわれて居ります。私はあの人や、弟子たちのパンのお世話を申し、日日の飢渇から救ってあげているのに、どうして私を、あんなに意地悪く軽蔑するのでしょう。お聞き下さい。六日まえのことでした。あの人はベタニヤのシモンの家で食事をなさっていたとき、あの村のマルタ奴(め)の妹のマリヤが、ナルドの香油を一ぱい満たして在る石膏(せっこう)の壺をかかえて饗宴の室にこっそり這入(はい)って来て、だしぬけに、その油をあの人の頭にざぶと注いで御足まで濡らしてしまって、それでも、その失礼を詫(わ)びるどころか、落ちついてしゃがみ、マリヤ自身の髪の毛で、あの人の濡れた両足をていねいに拭ってあげて、香油の匂いが室に立ちこもり、まことに異様な風景でありましたので、私は、なんだか無性に腹が立って来て、失礼なことをするな! と、その妹娘に怒鳴ってやりました。これ、このようにお着物が濡れてしまったではないか、それに、こんな高価な油をぶちまけてしまって、もったいないと思わないか、なんというお前は馬鹿な奴だ。これだけの油だったら、三百デナリもするではないか、この油を売って、三百デナリ儲(もう)けて、その金をば貧乏人に施してやったら、どんなに貧乏人が喜ぶか知れない。無駄なことをしては困るね、と私は、さんざ叱ってやりました。すると、あの人は、私のほうを屹(き)っと見て、「この女を叱ってはいけない。この女のひとは、大変いいことをしてくれたのだ。貧しい人にお金を施すのは、おまえたちには、これからあとあと、いくらでも出来ることではないか。私には、もう施しが出来なくなっているのだ。そのわけは言うまい。この女のひとだけは知っている。この女が私のからだに香油を注いだのは、私の葬いの備えをしてくれたのだ。おまえたちも覚えて置くがよい。全世界、どこの土地でも、私の短い一生を言い伝えられる処には、必ず、この女の今日の仕草も記念として語り伝えられるであろう」そう言い結んだ時に、あの人の青白い頬は幾分、上気して赤くなっていました。私は、あの人の言葉を信じません。れいに依って大袈裟(おおげさ)なお芝居であると思い、平気で聞き流すことが出来ましたが、それよりも、その時、あの人の声に、また、あの人の瞳の色に、いままで嘗(か)つて無かった程の異様なものが感じられ、私は瞬時戸惑いして、更にあの人の幽(かす)かに赤らんだ頬と、うすく涙に潤んでいる瞳とを、つくづく見直し、はッと思い当ることがありました。ああ、いまわしい、口に出すさえ無念至極のことであります。あの人は、こんな貧しい百姓女に恋、では無いが、まさか、そんな事は絶対に無いのですが、でも、危い、それに似たあやしい感情を抱いたのではないか? あの人ともあろうものが。あんな無智な百姓女ふぜいに、そよとでも特殊な愛を感じたとあれば、それは、なんという失態。取りかえしの出来ぬ大醜聞。私は、ひとの恥辱となるような感情を嗅(か)ぎわけるのが、生れつき巧みな男であります。自分でもそれを下品な嗅覚(きゅうかく)だと思い、いやでありますが、ちらと一目見ただけで、人の弱点を、あやまたず見届けてしまう鋭敏の才能を持って居ります。あの人が、たとえ微弱にでも、あの無学の百姓女に、特別の感情を動かしたということは、やっぱり間違いありません。私の眼には狂いが無い筈だ。たしかにそうだ。ああ、我慢ならない。堪忍ならない。私は、あの人も、こんな体(てい)たらくでは、もはや駄目だと思いました。醜態の極だと思いました。あの人はこれまで、どんなに女に好かれても、いつでも美しく、水のように静かであった。いささかも取り乱すことが無かったのだ。ヤキがまわった。だらしが無え。あの人だってまだ若いのだし、それは無理もないと言えるかも知れぬけれど、そんなら私だって同じ年だ。しかも、あの人より二月(ふたつき)おそく生れているのだ。若さに変りは無い筈だ。それでも私は堪えている。あの人ひとりに心を捧げ、これ迄どんな女にも心を動かしたことは無いのだ。マルタの妹のマリヤは、姉のマルタが骨組頑丈で牛のように大きく、気象も荒く、どたばた立ち働くのだけが取柄で、なんの見どころも無い百姓女でありますが、あれは違って骨も細く、皮膚は透きとおる程の青白さで、手足もふっくらして小さく、湖水のように深く澄んだ大きい眼が、いつも夢みるように、うっとり遠くを眺めていて、あの村では皆、不思議がっているほどの気高い娘でありました。私だって思っていたのだ。町へ出たとき、何か白絹でも、こっそり買って来てやろうと思っていたのだ。ああ、もう、わからなくなりました。私は何を言っているのだ。そうだ、私は口惜しいのです。なんのわけだか、わからない。地団駄踏むほど無念なのです。あの人が若いなら、私だって若い。私は才能ある、家も畠もある立派な青年です。それでも私は、あの人のために私の特権全部を捨てて来たのです。だまされた。あの人は、嘘つきだ。旦那さま。あの人は、私の女をとったのだ。いや、ちがった! あの女が、私からあの人を奪ったのだ。ああ、それもちがう。私の言うことは、みんな出鱈目だ。一言も信じないで下さい。わからなくなりました。ごめん下さいまし。ついつい根も葉も無いことを申しました。そんな浅墓な事実なぞ、みじんも無いのです。醜いことを口走りました。だけれども、私は、口惜しいのです。胸を掻きむしりたいほど、口惜しかったのです。なんのわけだか、わかりませぬ。ああ、ジェラシィというのは、なんてやりきれない悪徳だ。私がこんなに、命を捨てるほどの思いであの人を慕い、きょうまでつき随(したが)って来たのに、私には一つの優しい言葉も下さらず、かえってあんな賤しい百姓女の身の上を、御頬を染めて迄かばっておやりなさった。ああ、やっぱり、あの人はだらしない。ヤキがまわった。もう、あの人には見込みがない。凡夫だ。ただの人だ。死んだって惜しくはない。そう思ったら私は、ふいと恐ろしいことを考えるようになりました。悪魔に魅(み)こまれたのかも知れませぬ。そのとき以来、あの人を、いっそ私の手で殺してあげようと思いました。いずれは殺されるお方にちがいない。またあの人だって、無理に自分を殺させるように仕向けているみたいな様子が、ちらちら見える。私の手で殺してあげる。他人の手で殺させたくはない。あの人を殺して私も死ぬ。旦那さま、泣いたりしてお恥ずかしゅう思います。はい、もう泣きませぬ。はい、はい。落ちついて申し上げます。そのあくる日、私たちは愈愈(いよいよ)あこがれのエルサレムに向い、出発いたしました。大群集、老いも若きも、あの人のあとにつき従い、やがて、エルサレムの宮が間近になったころ、あの人は、一匹の老いぼれた驢馬(ろば)を道ばたで見つけて、微笑してそれに打ち乗り、これこそは、「シオンの娘よ、懼(おそ)るな、視よ、なんじの王は驢馬(ろば)の子に乗りて来り給う」と予言されてある通りの形なのだと、弟子たちに晴れがましい顔をして教えましたが、私ひとりは、なんだか浮かぬ気持でありました。なんという、あわれな姿であったでしょう。待ちに待った過越(すぎこし)の祭、エルサレム宮に乗り込む、これが、あのダビデの御子の姿であったのか。あの人の一生の念願とした晴れの姿は、この老いぼれた驢馬に跨(またが)り、とぼとぼ進むあわれな景観であったのか。私には、もはや、憐憫(れんびん)以外のものは感じられなくなりました。実に悲惨な、愚かしい茶番狂言を見ているような気がして、ああ、もう、この人も落目だ。一日生き延びれば、生き延びただけ、あさはかな醜態をさらすだけだ。花は、しぼまぬうちこそ、花である。美しい間に、剪(き)らなければならぬ。あの人を、一ばん愛しているのは私だ。どのように人から憎まれてもいい。一日も早くあの人を殺してあげなければならぬと、私は、いよいよ此のつらい決心を固めるだけでありました。群集は、刻一刻とその数を増し、あの人の通る道々に、赤、青、黄、色とりどりの彼等の着物をほうり投げ、あるいは棕櫚(しゅろ)の枝を伐(き)って、その行く道に敷きつめてあげて、歓呼にどよめき迎えるのでした。かつ前にゆき、あとに従い、右から、左から、まつわりつくようにして果ては大浪の如く、驢馬とあの人をゆさぶり、ゆさぶり、「ダビデの子にホサナ、讃(ほ)むべきかな、主の御名によりて来る者、いと高き処にて、ホサナ」と熱狂して口々に歌うのでした。ペテロやヨハネやバルトロマイ、そのほか全部の弟子共は、ばかなやつ、すでに天国を目のまえに見たかのように、まるで凱旋(がいせん)の将軍につき従っているかのように、有頂天の歓喜で互いに抱き合い、涙に濡れた接吻を交し、一徹者のペテロなど、ヨハネを抱きかかえたまま、わあわあ大声で嬉し泣きに泣き崩れていました。その有様を見ているうちに、さすがに私も、この弟子たちと一緒に艱難(かんなん)を冒して布教に歩いて来た、その忍苦困窮の日々を思い出し、不覚にも、目がしらが熱くなって来ました。かくしてあの人は宮に入り、驢馬から降りて、何思ったか、縄を拾い之(これ)を振りまわし、宮の境内の、両替する者の台やら、鳩売る者の腰掛けやらを打ち倒し、また、売り物に出ている牛、羊をも、その縄の鞭(むち)でもって全部、宮から追い出して、境内にいる大勢の商人たちに向い、「おまえたち、みな出て失せろ、私の父の家を、商いの家にしてはならぬ」と甲高(かんだか)い声で怒鳴るのでした。あの優しいお方が、こんな酔っぱらいのような、つまらぬ乱暴を働くとは、どうしても少し気がふれているとしか、私には思われませんでした。傍の人もみな驚いて、これはどうしたことですか、とあの人に訊ねると、あの人の息せき切って答えるには、「おまえたち、この宮をこわしてしまえ、私は三日の間に、また建て直してあげるから」ということだったので、さすが愚直の弟子たちも、あまりに無鉄砲なその言葉には、信じかねて、ぽかんとしてしまいました。けれども私は知っていました。所詮(しょせん)はあの人の、幼い強がりにちがいない。あの人の信仰とやらでもって、万事成らざるは無しという気概のほどを、人々に見せたかったのに違いないのです。それにしても、縄の鞭を振りあげて、無力な商人を追い廻したりなんかして、なんて、まあ、けちな強がりなんでしょう。あなたに出来る精一ぱいの反抗は、たったそれだけなのですか、鳩売りの腰掛けを蹴散(けち)らすだけのことなのですか、と私は憫笑(びんしょう)しておたずねしてみたいとさえ思いました。もはやこの人は駄目なのです。破れかぶれなのです。自重自愛を忘れてしまった。自分の力では、この上もう何も出来ぬということを此の頃そろそろ知り始めた様子ゆえ、あまりボロの出ぬうちに、わざと祭司長に捕えられ、この世からおさらばしたくなって来たのでありましょう。私は、それを思った時、はっきりあの人を諦(あきら)めることが出来ました。そうして、あんな気取り屋の坊ちゃんを、これまで一途(いちず)に愛して来た私自身の愚かさをも、容易に笑うことが出来ました。やがてあの人は宮に集る大群の民を前にして、これまで述べた言葉のうちで一ばんひどい、無礼傲慢(ごうまん)の暴言を、滅茶苦茶に、わめき散らしてしまったのです。左様、たしかに、やけくそです。私はその姿を薄汚くさえ思いました。殺されたがって、うずうずしていやがる。「禍害(わざわい)なるかな、偽善なる学者、パリサイ人よ、汝らは酒杯(さかずき)と皿との外を潔くす、然れども内は貪慾(どんよく)と放縦とにて満つるなり。禍害なるかな、偽善なる学者、パリサイ人よ、汝らは白く塗りたる墓に似たり、外は美しく見ゆれども、内は死人の骨とさまざまの穢(けがれ)とに満つ。斯(かく)のごとく汝らも外は正しく見ゆれども、内は偽善と不法とにて満つるなり。蛇よ、蝮(まむし)の裔(すえ)よ、なんじら争(いか)で、ゲヘナの刑罰を避け得んや。ああエルサレム、エルサレム、予言者たちを殺し、遣(つかわ)されたる人々を石にて撃つ者よ、牝鶏(めんどり)のその雛(ひな)を翼の下に集むるごとく、我なんじの子らを集めんと為(せ)しこと幾度ぞや、然(さ)れど、汝らは好まざりき」馬鹿なことです。噴飯ものだ。口真似するのさえ、いまわしい。たいへんな事を言う奴だ。あの人は、狂ったのです。まだそのほかに、饑饉(ききん)があるの、地震が起るの、星は空より堕(お)ち、月は光を放たず、地に満つ人の死骸(しがい)のまわりに、それをついばむ鷲(わし)が集るの、人はそのとき哀哭(なげき)、切歯(はがみ)することがあろうだの、実に、とんでも無い暴言を口から出まかせに言い放ったのです。なんという思慮のないことを、言うのでしょう。思い上りも甚しい。ばかだ。身のほど知らぬ。いい気なものだ。もはや、あの人の罪は、まぬかれぬ。必ず十字架。それにきまった。

 祭司長や民の長老たちが、大祭司カヤパの中庭にこっそり集って、あの人を殺すことを決議したとか、私はそれを、きのう町の物売りから聞きました。もし群集の目前であの人を捕えたならば、あるいは群集が暴動を起すかも知れないから、あの人と弟子たちとだけの居るところを見つけて役所に知らせてくれた者には銀三十を与えるということをも、耳にしました。もはや猶予の時ではない。あの人は、どうせ死ぬのだ。ほかの人の手で、下役たちに引き渡すよりは、私が、それを為(な)そう。きょうまで私の、あの人に捧げた一すじなる愛情の、これが最後の挨拶だ。私の義務です。私があの人を売ってやる。つらい立場だ。誰がこの私のひたむきの愛の行為を、正当に理解してくれることか。いや、誰に理解されなくてもいいのだ。私の愛は純粋の愛だ。人に理解してもらう為の愛では無い。そんなさもしい愛では無いのだ。私は永遠に、人の憎しみを買うだろう。けれども、この純粋の愛の貪慾のまえには、どんな刑罰も、どんな地獄の業火も問題でない。私は私の生き方を生き抜く。身震いするほどに固く決意しました。私は、ひそかによき折を、うかがっていたのであります。いよいよ、お祭りの当日になりました。私たち師弟十三人は丘の上の古い料理屋の、薄暗い二階座敷を借りてお祭りの宴会を開くことにいたしました。みんな食卓に着いて、いざお祭りの夕餐(ゆうげ)を始めようとしたとき、あの人は、つと立ち上り、黙って上衣を脱いだので、私たちは一体なにをお始めなさるのだろうと不審に思って見ているうちに、あの人は卓の上の水甕(みずがめ)を手にとり、その水甕の水を、部屋の隅に在った小さい盥(たらい)に注ぎ入れ、それから純白の手巾をご自身の腰にまとい、盥の水で弟子たちの足を順々に洗って下さったのであります。弟子たちには、その理由がわからず、度を失って、うろうろするばかりでありましたけれど、私には何やら、あの人の秘めた思いがわかるような気持でありました。あの人は、寂しいのだ。極度に気が弱って、いまは、無智な頑迷の弟子たちにさえ縋(すが)りつきたい気持になっているのにちがいない。可哀想に。あの人は自分の逃れ難い運命を知っていたのだ。その有様を見ているうちに、私は、突然、強力な嗚咽(おえつ)が喉(のど)につき上げて来るのを覚えた。矢庭にあの人を抱きしめ、共に泣きたく思いました。おう可哀想に、あなたを罪してなるものか。あなたは、いつでも優しかった。あなたは、いつでも正しかった。あなたは、いつでも貧しい者の味方だった。そうしてあなたは、いつでも光るばかりに美しかった。あなたは、まさしく神の御子だ。私はそれを知っています。おゆるし下さい。私はあなたを売ろうとして此の二、三日、機会をねらっていたのです。もう今はいやだ。あなたを売るなんて、なんという私は無法なことを考えていたのでしょう。御安心なさいまし。もう今からは、五百の役人、千の兵隊が来たとても、あなたのおからだに指一本ふれさせることは無い。あなたは、いま、つけねらわれているのです。危い。いますぐ、ここから逃げましょう。ペテロも来い、ヤコブも来い、ヨハネも来い、みんな来い。われらの優しい主を護り、一生永く暮して行こう、と心の底からの愛の言葉が、口に出しては言えなかったけれど、胸に沸きかえって居りました。きょうまで感じたことの無かった一種崇高な霊感に打たれ、熱いお詫びの涙が気持よく頬を伝って流れて、やがてあの人は私の足をも静かに、ていねいに洗って下され、腰にまとって在った手巾で柔かく拭いて、ああ、そのときの感触は。そうだ、私はあのとき、天国を見たのかも知れない。私の次には、ピリポの足を、その次にはアンデレの足を、そうして、次に、ペテロの足を洗って下さる順番になったのですが、ペテロは、あのように愚かな正直者でありますから、不審の気持を隠して置くことが出来ず、主よ、あなたはどうして私の足などお洗いになるのです。と多少不満げに口を尖(とが)らして尋ねました。あの人は、「ああ、私のすることは、おまえには、わかるまい。あとで、思い当ることもあるだろう」と穏かに言いさとし、ペテロの足もとにしゃがんだのだが、ペテロは尚も頑強にそれを拒んで、いいえ、いけません。永遠に私の足などお洗いになってはなりませぬ。もったいない、とその足をひっこめて言い張りました。すると、あの人は少し声を張り上げて、「私がもし、おまえの足を洗わないなら、おまえと私とは、もう何の関係も無いことになるのだ」と随分、思い切った強いことを言いましたので、ペテロは大あわてにあわて、ああ、ごめんなさい、それならば、私の足だけでなく、手も頭も思う存分に洗って下さい、と平身低頭して頼みいりましたので、私は思わず噴き出してしまい、ほかの弟子たちも、そっと微笑(ほほえ)み、なんだか部屋が明るくなったようでした。あの人も少し笑いながら、「ペテロよ、足だけ洗えば、もうそれで、おまえの全身は潔(きよ)いのだ、ああ、おまえだけでなく、ヤコブも、ヨハネも、みんな汚れの無い、潔いからだになったのだ。けれども」と言いかけてすっと腰を伸ばし、瞬時、苦痛に耐えかねるような、とても悲しい眼つきをなされ、すぐにその眼をぎゅっと固くつぶり、つぶったままで言いました。「みんなが潔ければいいのだが」はッと思った。やられた! 私のことを言っているのだ。私があの人を売ろうとたくらんでいた寸刻以前までの暗い気持を見抜いていたのだ。けれども、その時は、ちがっていたのだ。断然、私は、ちがっていたのだ! 私は潔くなっていたのだ。私の心は変っていたのだ。ああ、あの人はそれを知らない。それを知らない。ちがう! ちがいます、と喉まで出かかった絶叫を、私の弱い卑屈な心が、唾(つば)を呑みこむように、呑みくだしてしまった。言えない。何も言えない。あの人からそう言われてみれば、私はやはり潔くなっていないのかも知れないと気弱く肯定する僻(ひが)んだ気持が頭をもたげ、とみるみるその卑屈の反省が、醜く、黒くふくれあがり、私の五臓六腑(ろっぷ)を駈けめぐって、逆にむらむら憤怒(ふんぬ)の念が炎を挙げて噴出したのだ。ええっ、だめだ。私は、だめだ。あの人に心の底から、きらわれている。売ろう。売ろう。あの人を、殺そう。そうして私も共に死ぬのだ、と前からの決意に再び眼覚め、私はいまは完全に、復讐(ふくしゅう)の鬼になりました。あの人は、私の内心の、ふたたび三たび、どんでん返して変化した大動乱には、お気づきなさることの無かった様子で、やがて上衣をまとい服装を正し、ゆったりと席に坐り、実に蒼(あお)ざめた顔をして、「私がおまえたちの足を洗ってやったわけを知っているか。おまえたちは私を主と称(たた)え、また師と称えているようだが、それは間違いないことだ。私はおまえたちの主、または師なのに、それでもなお、おまえたちの足を洗ってやったのだから、おまえたちもこれからは互いに仲好く足を洗い合ってやるように心がけなければなるまい。私は、おまえたちと、いつ迄(まで)も一緒にいることが出来ないかも知れぬから、いま、この機会に、おまえたちに模範を示してやったのだ。私のやったとおりに、おまえたちも行うように心がけなければならぬ。師は必ず弟子より優れたものなのだから、よく私の言うことを聞いて忘れぬようになさい」ひどく物憂そうな口調で言って、音無しく食事を始め、ふっと、「おまえたちのうちの、一人が、私を売る」と顔を伏せ、呻(うめ)くような、歔欷(きょき)なさるような苦しげの声で言い出したので、弟子たちすべて、のけぞらんばかりに驚き、一斉に席を蹴って立ち、あの人のまわりに集っておのおの、主よ、私のことですか、主よ、それは私のことですかと、罵(ののし)り騒ぎ、あの人は死ぬる人のように幽かに首を振り、「私がいま、その人に一つまみのパンを与えます。その人は、ずいぶん不仕合せな男なのです。ほんとうに、その人は、生れて来なかったほうが、よかった」と意外にはっきりした語調で言って、一つまみのパンをとり腕をのばし、あやまたず私の口にひたと押し当てました。私も、もうすでに度胸がついていたのだ。恥じるよりは憎んだ。あの人の今更ながらの意地悪さを憎んだ。このように弟子たち皆の前で公然と私を辱かしめるのが、あの人の之(これ)までの仕来りなのだ。火と水と。永遠に解け合う事の無い宿命が、私とあいつとの間に在るのだ。犬か猫に与えるように、一つまみのパン屑を私の口に押し入れて、それがあいつのせめてもの腹いせだったのか。ははん。ばかな奴だ。旦那さま、あいつは私に、おまえの為(な)すことを速かに為せと言いました。私はすぐに料亭から走り出て、夕闇の道をひた走りに走り、ただいまここに参りました。そうして急ぎ、このとおり訴え申し上げました。さあ、あの人を罰して下さい。どうとも勝手に、罰して下さい。捕えて、棒で殴って素裸にして殺すがよい。もう、もう私は我慢ならない。あれは、いやな奴です。ひどい人だ。私を今まで、あんなにいじめた。はははは、ちきしょうめ。あの人はいま、ケデロンの小川の彼方、ゲッセマネの園にいます。もうはや、あの二階座敷の夕餐もすみ、弟子たちと共にゲッセマネの園に行き、いまごろは、きっと天へお祈りを捧げている時刻です。弟子たちのほかには誰も居りません。今なら難なくあの人を捕えることが出来ます。ああ、小鳥が啼(な)いて、うるさい。今夜はどうしてこんなに夜鳥の声が耳につくのでしょう。私がここへ駈け込む途中の森でも、小鳥がピイチク啼いて居りました。夜に囀(さえず)る小鳥は、めずらしい。私は子供のような好奇心でもって、その小鳥の正体を一目(ひとめ)見たいと思いました。立ちどまって首をかしげ、樹々の梢(こずえ)をすかして見ました。ああ、私はつまらないことを言っています。ごめん下さい。旦那さま、お仕度は出来ましたか。ああ楽しい。いい気持。今夜は私にとっても最後の夜だ。旦那さま、旦那さま、今夜これから私とあの人と立派に肩を接して立ち並ぶ光景を、よく見て置いて下さいまし。私は今夜あの人と、ちゃんと肩を並べて立ってみせます。あの人を怖(おそ)れることは無いんだ。卑下することは無いんだ。私はあの人と同じ年だ。同じ、すぐれた若いものだ。ああ、小鳥の声が、うるさい。耳についてうるさい。どうして、こんなに小鳥が騒ぎまわっているのだろう。ピイチクピイチク、何を騒いでいるのでしょう。おや、そのお金は? 私に下さるのですか、あの、私に、三十銀。なる程、はははは。いや、お断り申しましょう。殴られぬうちに、その金ひっこめたらいいでしょう。金が欲しくて訴え出たのでは無いんだ。ひっこめろ! いいえ、ごめんなさい、いただきましょう。そうだ、私は商人だったのだ。金銭ゆえに、私は優美なあの人から、いつも軽蔑されて来たのだっけ。いただきましょう。私は所詮、商人だ。いやしめられている金銭で、あの人に見事、復讐(ふくしゅう)してやるのだ。これが私に、一ばんふさわしい復讐の手段だ。ざまあみろ! 銀三十で、あいつは売られる。私は、ちっとも泣いてやしない。私は、あの人を愛していない。はじめから、みじんも愛していなかった。はい、旦那さま。私は嘘ばかり申し上げました。私は、金が欲しさにあの人について歩いていたのです。おお、それにちがい無い。あの人が、ちっとも私に儲けさせてくれないと今夜見極めがついたから、そこは商人、素速く寝返りを打ったのだ。金。世の中は金だけだ。銀三十、なんと素晴らしい。いただきましょう。私は、けちな商人です。欲しくてならぬ。はい、有難う存じます。はい、はい。申しおくれました。私の名は、商人のユダ。へっへ。イスカリオテのユダ。



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Posted by 문학관 관리인 위어조자(謂語助者)

일등(一燈:いっとう)

다자이 오사무(太宰 治) (1940)

일본어 원문


 芸術家というものは、つくづく困った種族である。鳥籠(とりかご)一つを、必死にかかえて、うろうろしている。その鳥籠を取りあげられたら、彼は舌を噛(か)んで死ぬだろう。なるべくなら、取りあげないで、ほしいのである。

 誰だって、それは、考えている。何とかして、明るく生きたいと精一ぱいに努めている。昔から、芸術の一等品というものは、つねに世の人に希望を与え、怺(こら)えて生きて行く力を貸してくれるものに、きまっていた。私たちの、すべての努力は、その一等品を創る事にのみ向けられていた筈(はず)だ。至難の事業である。けれども、何とかして、そこに、到達したい。右往も左往も出来ない窮極の場所に坐って、私たちは、その事に努めていた筈である。それを続けて行くより他は無い。持物は、神から貰った鳥籠一つだけである。つねに、それだけである。

 大君の辺(へ)にこそ、とは日本のひと全部の、ひそかな祈願の筈である。さして行く笠置(かさぎ)の山、と仰(おお)せられては、藤原季房ならずとも、泣き伏すにきまっている。あまりの事に、はにかんで、言えないだけなのである。わかり切った事である。鳴かぬ蛍(ほたる)は、何とかと言うではないか。これだけ言ってさえも、なんだか、ひどく残念な気がするのである。

 けれども、いまは、はにかんでばかりも居られない。黙って、まごついて、それ故に、非国民などと言われては、これ以上に残念の事は無い。たまったものでない。私は、私の流儀で、この機会に貧者一燈を、更にはっきり、ともして置きます。

 八年前の話である。神田の宿の薄暗い一室で、私は兄に、ひどく叱られていた。昭和八年十二月二十三日の夕暮の事である。私は、その翌年の春、大学を卒業する筈になっていたのだが、試験には一つも出席せず、卒業論文も提出せず、てんで卒業の見込みの無い事が、田舎(いなか)の長兄に見破られ、神田の、兄の定宿に呼びつけられて、それこそ目の玉が飛び出る程に激しく叱られていたのである。癇癖(かんぺき)の強い兄である。こんな場合は、目前の、間抜けた弟の一挙手一投足、ことごとくが気にいらなくなってしまうのである。私が両膝をそろえて、きちんと坐り、火鉢から余程はなれて震えていると、

「なんだ。おまえは、大臣の前にでも坐っているつもりなのか。」と言って、機嫌が悪い。

 あまり卑下していても、いけないのである。それでは、と膝を崩して、やや顔を上げ、少し笑って見せると、こんどは、横着(おうちゃく)な奴だと言って叱られる。これはならぬと、あわてて膝を固くして、うなだれると、意気地が無いと言って叱られる。どんなにしても、だめであった。私は、私自身を持て余した。兄の怒りは、募(つの)る一方である。

 幽(かす)かに、表の街路のほうから、人のざわめきが聞えて来る。しばらくして、宿の廊下が、急にどたばた騒がしくなり、女中さんたちの囁(ささや)き、低い笑声も聞える。私は、兄の叱咤(しった)の言よりも、そのほうに、そっと耳をすましていた。ふっと一言、聴取出来た。私は、敢然(かんぜん)と顔を挙げ、

「提燈(ちょうちん)行列です。」と兄に報告した。

 兄は一瞬、へんな顔をした。とたんに、群集のバンザイが、部屋の障子(しょうじ)が破れるばかりに強く響いた。

 皇太子殿下、昭和八年十二月二十三日御誕生。その、国を挙げてのよろこびの日に、私ひとりは、先刻から兄に叱られ、私は二重に悲しく、やりきれなくていたのである。兄は、落ちつき払って、卓上電話を取り上げ、帳場に、自動車を言いつけた。私は、しめた、と思った。

 兄は、けれども少しも笑わずに顔をそむけ、立ち上ってドテラを脱ぎ、ひとりで外出の仕度をはじめた。

「街へ出て見よう。」

「はあ。」ずるい弟は、しんから嬉しかった。

 街は、暮れかけていた。兄は、自動車の窓から、街の奉祝の有様を、むさぼるように眺めていた。国旗の洪水である。おさえにおさえて、どっと爆発した歓喜の情が、よくわかるのである。バンザイ以外に、表現が無い。しばらくして兄は、

「よかった!」と一言、小さい声で呟(つぶや)いて、深く肩で息をした。それから、そっと眼鏡(めがね)をはずした。

 私は、危く噴き出しそうになった。大正十四年、私が中学校三年の時、照宮さまがお生まれになった。そのころは、私も学校の成績が悪くなかったので、この兄の一ばんのお気に入りであった。父に早く死なれたので、兄と私の関係は、父子のようなものであった。私は冬季休暇で、生家に帰り、嫂(あによめ)と、つい先日の御誕生のことを話し合い、どういうものだか涙が出て困ったという述懐(じゅっかい)に於て一致した。あの時、私は床屋にいて散髪の最中であったのだが、知らせの花火の音を聞いているうちに我慢出来なくなり、非常に困ったのである。嫂も、あの時、針仕事をしていたのだそうであるが、花火の音を聞いたら、針仕事を続けることが出来なくなって、困ってしまったそうである。兄は、私たちの述懐を傍で聞いていて、

「おれは、泣かなかった。」と強がったのである。

「そうでしょうか。」

「そうかなあ。」嫂も、私も、てんで信用しなかった。

「泣きませんでした。」兄は、笑いながら主張した。

 その兄が、いま、そっと眼鏡をはずしたのである。私は噴き出しそうなのを怺(こら)えて、顔をそむけ、見ない振りをした。

 兄は、京橋の手前で、自動車から降りた。

 銀座は、たいへんな人出であった。逢う人、逢う人、みんなにこにこ笑っている。

「よかった。日本は、もう、これでいいのだよ。よかった。」と兄は、ほとんど一歩毎に呟いて、ひとり首肯(うなず)き、先刻の怒りは、残りなく失念してしまっている様子であった。ずるい弟は、全く蘇生の思いで、その兄の後を、足が地につかぬ感じで、ぴょんぴょん附いて歩いた。

 A新聞社の前では、大勢の人が立ちどまり、ちらちら光って走る電光ニュウスの片仮名を一字一字、小さい声をたてて読んでいる。兄も、私も、その人ごみのうしろに永いこと立ちどまり、繰り返し繰り返し綴(つづ)られる同じ文章を、何度でも飽きずに読むのである。

 とうとう兄は、銀座裏の、おでんやに入った。兄は私にも酒を、すすめた。

「よかった。これで、もう、いいのだ。」兄は、そう言ってハンケチで顔の汗を、やたらに拭いた。

 おでんやでも、大騒ぎであった。モオニングの紳士が、ひどくいい機嫌ではいって来て、

「やあ、諸君、おめでとう!」と言った。

 兄も笑顔で、その紳士を迎えた。その紳士は、御誕生のことを聞くや、すぐさまモオニングを着て、近所にお礼まわりに歩いたというのである。

「お礼まわりは、へんですね。」と私は、兄に小声で言ったら、兄は酒を噴き出した。

 日本全国、どんな山奥の村でも、いまごろは国旗を建て皆にこにこしながら提燈行列をして、バンザイを叫んでいるのだろうと思ったら、私は、その有様が眼に見えるようで、その遠い小さい美しさに、うっとりした。

「皇室典範に拠れば、――」と、れいの紳士が大声で言いはじめた。

「皇室典範とは、また、大きく出たじゃないか。」こんどは兄が、私に小声で言って、心の底から嬉しそうに笑い咽(むせ)んだ。

 そのおでんやを出て、また、別のところへ行き、私たちは、その夜おそくまで、奉祝の上機嫌な市民の中を、もまれて歩いた。提燈行列の火の波が、幾組も幾組も、私たちの目の前を、ゆらゆら通過した。兄は、ついに、群集と共にバンザイを叫んだ。あんなに浮かれた兄を、見た事が無い。

 あのように純一な、こだわらず、蒼穹(そうきゅう)にもとどく程の全国民の歓喜と感謝の声を聞く事は、これからは、なかなかむずかしいだろうと思われる。願わくは、いま一度。誰に言われずとも、しばらくは、辛抱(しんぼう)せずばなるまい。




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Posted by 문학관 관리인 위어조자(謂語助者)

여인훈계(女人訓戒)

다자이 오사무(太宰 治) (1940)

번역 : 홍성필


 타츠노 유타카(辰野 隆) 선생님이 쓰신 “프랑스 문학 이야기”라는 책에는 다음과 같은 흥미로운 글이 있다.


 “1884년이라고 하니 그리 오래된 일은 아니다. 오베르뉴 지방 끌레르몽 페랑 시에 사는 시브레 박사라고 하는 안과 명의가 있었다. 그는 동착적인 연구에 의해 인간의 눈은 짐승 눈과 바꾸기 쉬우며, 유독 짐승 중에서도 돼지와 토끼눈이 가장 사람 눈과 가깝다는 사실을 실험적으로 증명했다. 그는 어느 소경인 여인에게 이 놀라운 수술을 시도한 것이다. 접안재료로서 돼지 눈은 아무래도 좀 불쾌하므로 토끼눈을 쓰기로 했다. 실제로 기적이 일어나고 그 여인은 그날부터 세상을 지팡이로 더듬을 필요가 없어졌다. 오디푸스 왕이 버린 빛의 세상을 그녀는 토끼눈으로 회복할 수 있었던 것이다. 이 사건은 상당한 화젯거리였는지 당시 신문에도 실렸다고 한다. 그러나 며칠 후 그 접안을 봉합한 곳에 염증이 생겨 ― 아마도 수술 당시 소독이 불완전했을 것이라는 설이 다수를 점하고 있다 ― 그녀는 또다시 소경이 되고 말았다고 한다. 당시 그녀와 가까웠던 사람이 훗날 다음과 같은 말을 남겼다.


 ― 나는 두 가지 기적을 목격했다. 첫째는 말할 것도 없이 전설 속 기적과 같은 의미에서의 기적이 신앙에 의하지 않고 과학적 실험에 의해 이루어졌다는 사실이다. 그러나 이는 그다지 놀랄 일이 아니다. 두 번째 기적이 내게는 더욱 놀라웠다. 그것은 그녀가 토끼눈을 가지고 있었던 며칠 동안, 그녀는 사냥꾼을 보면 반드시 도망쳤다는 현상이다.”


 이상이 그 선생님 글인데 이렇게 옮겨 놓고 보니 어쩐지 군데군데 선생님의 교묘한 신비적인 날조도 가미되어 있는 듯한 감이 없지 않다. 돼지 눈이 가장 사람 눈에 가깝다는 점 등은 아무래도 너무나 통쾌하다. 그러나 아무튼 이는 진지한 기사이다. 일단 그대로 믿지 않는다면 선생님에 대해 실례이다. 나는 전부를 그대로 믿기로 한다. 이 불가사의한 보고 중에서 특히 중요한 점은 그 마지막 한 줄에 있다. 그녀가 사냥꾼을 보면 반드시 도망쳤다는 사실에 대해서 나는 지금 생각해보고자 한다. 그녀의 접안 재료는 토끼눈이다. 아마도 병원에서 기르고 있던 집토끼임이 분명하다. 집토끼가 사냥꾼을 무서워할 리가 없다. 사냥꾼을 본 적조차 없었을 것이다. 산속에 사는 야생 토끼라면 어쩌면 사냥꾼에 대한 두려움도 알고 있어 이를 멀리 하는 것도 또한 당연하다고 여겨지나, 설마 박사님이 애써 산속 깊숙이 들어가 야생 토끼를 힘들게 포획하여 이를 가지고 실험에 쓰지는 않았을 것이다. 병원에서 사육된 집토끼였음이 분명하다. 아직 사냥꾼을 본 적도 없는 그 토끼 눈이 왜 갑자기 사냥꾼을 알아보고 이를 두려워하게 되었는가. 여기에 사소한 문제가 있다.


 대수로울 것 없다. 답은 간단하다. 사냥꾼을 두려워한 것은 토끼 눈이 아니라 그 토끼 눈을 가지고 있던 그녀였다. 토끼 눈은 아무 것도 모른다. 그러나 토끼 눈을 가지고 있던 그녀는 사냥꾼이라는  직업을 잘 알고 있었다. 토끼 눈을 갖기 전부터 사냥꾼의 잔인한 성격에 대해서는 들어서 알고 있었던 것이다. 아마도 그녀 집 근처에 실력 좋은 사냥꾼이 살고 있어, 그 사냥꾼은 유독 야생토끼 사냥을 잘 하여 오늘은 열 마리, 오늘은 열다섯 마리, 산에서 잡아왔다는 이야기를 그 사냥꾼으로부터 직접 또는 그 사냥꾼 부인으로부터 듣고 있었던 게 아닐까 한다. 그렇다면 해결은 쉽다. 그녀는 집토끼 눈을 갖고 그 빛나는 세계를 볼 수 있었으며 그녀 자신이 토끼 눈을 매우 아끼고 싶다는 마음 때문에 예전부터 들어왔던 사냥꾼이라는 토끼의 적을 증오하고 두려워하여 결국에는 그를 노골적으로 회피하게 된 것이다. 즉, 토끼 눈이 그녀를 토끼로 만든 것이 아니라, 그녀가 토끼 눈을 사랑하는 나머지 스스로 자진하여 그녀 쪽에서부터 토끼가 되어준 것이다. 여성에게는 이와 같은 육체도착이 매우 자주 보이는 듯하다. 동물과의 육체교류를 태연하게 긍정하고 있다. 어떤 영어학원 여학생이 ‘L’이라는 발음을 정확하게 발음하고 싶은 나머지 우설스프를 일주일에 두 번씩 먹고 있다는 이야기도 또한 이와 비슷하다. 서양인이 ‘L’이라는 발음을 그렇게 정확히, 그것도 어렵지 않게 하고 있는 이유는 옛날부터 육식을 했기 때문이다. 쇠고기를 먹고 있으므로 소 세포가 어느새 인간에게 이식되어 소처럼 혓바닥이 어느 정도 길어진 것이다. 그렇기에 그녀도 ‘L’ 발음을 정확하게 내기 위한 목적을 가지고 지금 일주일에 두 번씩 우설스프를 열심히 먹고 있다고 한다. 우설스프는 주지하시는 바와 같이 소 혓바닥으로 만들어진 스프이다. 우족 같은 것보다 직접 혓바닥에 효험이 있다고 생각한 듯하다. 놀라운 점은 최근 들어 눈에 띄게 그녀의 혀는 길어지고 ‘L’ 발음도 서양인들과 비슷해졌다는 현상이다. 이 이야기는 나도 전해들은 것이므로 직접 그 용감한 여학생을 뵌 적은 없기에 지금 여러분들께 보고함에 있어서는 조금 자신감이 없으나 하지만 나는 이런 일이 있을 수 있다고 생각한다. 여성 세포의 동화력은 실로 놀랍다. 여우 목도리를 하면 갑자기 거짓말쟁이가 되는 부인이 있었다. 평소는 매우 겸손하고 얌전한 부인인데 일단 여우 목도리를 하고 외출을 하면 언제 그랬냐는 듯이 교활한 거짓말쟁이가 된다. 여우는 내가 동물원에서 자세히 관찰해본 바에 의해도 절대 교활하거나 악한 성질을 가진 동물은 아니었다. 오히려 내성적이고 얌전한 동물이다. 여우가 변신한다니, 여우한테 있어서는 당치도 않는 누명이라고 생각한다. 만약 변신할 수 있다면 굳이 그런 좁아터진 우리 안에서 볼품없이 어슬렁거리며 살아갈 필요가 없다. 도마뱀으로라도 변신하여 스르륵 우리 속으로부터 도망칠 수 있을 것이다. 그걸 할 수 없다는 점을 보면 여우는 변신할 수 있는 동물이 아니다. 근거 없는 과대망상이다. 그 부인도 또한 여우는 사람을 속인다고 맹신하고 있는 듯 누가 부탁하지 않는데도 목도리를 쓸 때마다 애써 거짓말쟁이가 돼 보여준다. 참으로 수고가 많다. 여우가 부인을 거짓말쟁이로 만든 것이 아니라 부인 쪽에서부터 그 부인의 공상 속에 있는 여우와 동화되고 있는 것이다. 이 경우도 위에서 본 맹인 여성 이야기와 유사한 점이 있다고 생각한다. 그 토끼 눈은 조금도 사냥꾼을 두려워하지 않을 뿐만 아니라 사냥꾼이라는 것을 본 적도 없는데도 토끼 눈을 가진 여성 쪽에서 애써 사냥꾼을 두려워한다. 여우가 사람을 속이는 것도 아닌데 그 목도리를 가진 부인이 애써 사람을 속인다. 그 심리상태는 두 여인 모두 거의 비슷하다. 전자는 실제 토끼 이상으로 토끼가 되고, 후자는 실제 여우 이상으로 여우가 되면서도 태연하다. 기괴한 노릇이다. 여성들이 갖는 피부촉감의 과민성이 지나쳐서 수습할 수 없는 지경에 이른 촉각을 이와 같은 두 세 사실로도 분명하게 입증할 수 있다. 어떤 영화배우는 피부색을 희게 하기 위해 오징어 회를 열심히 먹었다고 한다. 어디까지나 이를 섭취하면 오징어 세포가 그녀의 육체 세포와 동화되어 유연하고 투명한 흰색 피부를 가질 수 있을 것이라는 어리석은 미신이다. 그런데 불쾌하게도 그녀는 그 시도에서 성공을 거두었다는 풍문이다. 이제 이 지경까지 오면 뭐가 뭔지 모르겠다. 여성을 가엾게 여기는 수밖에 없다.


 뭐든 될 수 있는 것이다. 북방에 있는 등대지기 부인이 등대에 부딪혀 죽은 갈매기 깃털들을 모아 작은 흰 조끼를 만들었는데, 정숙하고 귀여운 부인이었으나 그 조끼를 옷 밑에 입고 나서부터는 갑자기 침착함을 잃고, 그 성격이 들뜨더니 남편 동료와 부적절한 관계를 맺고서 결국 어느 겨울밤, 등대 꼭대기에서 새 날개처럼 두 팔을 벌리고는 바위에 몰아치는 파도를 향해 몸을 날렸다는 외국 이야기가 있으나 이 부인도 스스로 자진하여 가엾은 갈매기가 되어버린 것이리라. 이 얼마나 비참한 일인가. 일본에도 예부터 고양이가 노파로 변하여 집안에 소란을 일으킨다는 이야기가 적지 않게 전해져 내려온다. 하지만 그것도 또한 생각해보면 고양이가 노파로 변한 것이 아니라 노파가 정신이 이상해져서 고양이로 변한 것이 분명하다. 비참한 노릇이다. 귀를 살짝 만지면 움찔하고 그 노파 귀가 움직인다지 않는가. 유부를 좋아하고 쥐를 잡는다는 이야기도 어쩌면 과장이 아닌지도 모른다. 여성 세포는 매우 쉽게 동물과 동화될 수 있다. 이야기가 점점 암울해지기 시작하여 마음에 들지는 않지만, 나는 요즘 인어라는 것에 대한 실재성에 대해 깊이 생각하고 있다. ‘인어’란 옛날부터 항상 여성이다. 남자인 인어가 나타났다는 소리는 아직 들어보지 못했다. 항상 여성인 것 같다. 여기에 해결을 위한 실마리가 숨어 있다. 나는 이렇지 않을까 생각해본다. 어느 날 밤 그녀가 매우 거대고 징그러운 생선을, 몸가짐도 뒤로하고 다 먹어버리고는 나중에 왠지 그 생선 모습이 마음에 남는다. 여성 마음에 깊이 남는다는 것은 즉 서서히 육체 세포에 변화가 시작된 증거이다. 순식간에 가속이 붙어 가슴이 타들어가듯 바다가 그리워지고, 맨발로 집을 뛰쳐나가 첨벙첨벙 거리며 바다로 돌진한다. 가슴에 우툴두툴 비늘이 나기 시작하고는 몸을 꿈틀거리며 헤엄쳐 나아가자 안타깝게도 그 몸은 기이한 인어. 이런 식이 아닐까 한다. 여성은 선천적으로 그 육체 세포에 의해 물에 잘 뜨고 수영을 잘 한다고 한다.


 교훈. “여성은 몸가짐을 잘해야 한다.”




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Posted by 문학관 관리인 위어조자(謂語助者)

달려라 메로스(走れメロス)

다자이 오사무(太宰 治) (1940)

번역 : 홍성필


 메로스는 격분했다. 반드시 그 사악하고 포악한 왕을 제거해버려야만 한다고 결심했다. 메로스는 정치를 모른다. 메로스는 마을의 목동이다. 피리를 불고 양들과 놀면서 지내왔다. 그러나 사악한 것에 대해서는 남들보다 민감했다. 오늘 미명에 메로스는 마을을 출발하여 들을 넘고 산을 넘어 백 리 떨어진 이 시라크스 시에 도착했다. 메로스에게는 아버지도 어머니도 없다. 열 여섯을 먹은 내성적인 누이동생과 단 둘이서 살고 있다. 이 누이동생은 마을에 있는 어느 건실한 목동을 머지않아 신랑으로 맞이하기로 되어 있었다. 결혼식이 코앞에 닥쳐 있었다. 메로스는 이를 위해 신부가 입을 옷이나 축하연 때 대접할 음식들을 사들이기 위해 머나먼 도시까지 온 것이다. 우선 그 물건들을 사 모은 후, 큰 길을 터벅터벅 걷고 있었다. 메로스에게는 죽마고우가 있었다 세리눈티우스다. 지금 이곳 시라크스 시에서 석공을 하고 있다. 그 친구를 지금부터 찾아가는 참이다. 오랫동안 만나지 않았으므로 만남이 매우 기대된다. 걷고 있는 사이에 메로스는 동네 모습이 조금 이상하게 여겨졌다. 너무 조용하다. 이미 해도 저물어 동네가 어두운 것은 당연하나, 그렇지만 어딘지 모르게 밤이기 때문만은 아닌 듯 도시 전체가 너무나도 쓸쓸하다. 평소에는 둔한 메로스도 점점 불안해지기 시작했다. 길거리에서 만난 젊은이들을 잡아 세워놓고 무슨 일이 있었는가, 2년 전 이곳에 왔을 때에는 밤에도 모두가 노래를 부르며 동네는 활기찼었는데, 하고 물었다. 젊은이들은 고개를 저으며 대답하지 않았다. 잠시 걸어가자 노인을 만나, 이번에는 더욱 강한 말투로 물었다. 노인은 대답하지 않았다. 메로스는 두 손으로 노인의 몸을 흔들며 계속 물었다. 노인은 주변을 신경 쓰듯 낮은 목소리로 짧게 대답했다.


 “왕은, 사람을 죽입니다.”


 “왜 죽이는 거요?”


 “나쁜 마음을 가지고 있기 때문이라고는 하는데, 아무도 그런 나쁜 마음을 가지고 있진 않습니다.”


 “많은 사람을 죽이는 거요?”


 “예, 처음에는 왕의 매제님을, 그리고 자신의 대를 이을 세자를, 그리고 누이동생, 그리고 누이동생님의 자제분을, 그리고 황후님을, 그리고 현신(賢臣) 알레키스님을.”


 “참 놀랍소. 국왕께서는 제정신이시오?”


 “예, 정신은 온전하십니다. 사람을 믿을 수가 없으시다는 것입니다. 요즘은 신하들의 마음조차도 의심하시어 조금이라도 화려한 생활을 하고 있는 자들에게 인질 하나씩을 내 놓으라는 명을 내리셨습니다. 명을 거절하면 십자가에 달려 죽고 맙니다. 오늘은 여섯 명이 죽었습니다.”


 이를 듣고 메로스는 격분했다. “어이 없는 왕이외다. 살려 둘 수가 없소.”


 메로스는 단순한 사나이였다. 구입해온 짐을 진 채로 저벅저벅 왕궁으로 들어갔다. 순식간에 그는 순찰을 돌던 형리(刑吏)에 의해 포박당했다. 조사를 받고는 메로스의 품속에서 단검(短劍)이 나왔기에 소란이 커지고 말았다. 메로스는 왕 앞으로 끌려갔다.


 “이 단도(短刀)로 무엇을 할 셈이었는가. 말하라!” 폭군 디오니스는 조용히 그러나 위엄 있는 목소리로 집요하게 물었다. 그 왕의 얼굴은 창백하고 미간에 난 주름은 칼로 파낸 것처럼 깊었다.


 “이 도시를 폭군의 손으로부터 구해낼 것이오.” 라고 메로스는 당당하게 대답했다.


 “네가 말이냐?” 왕은 비웃었다. “모자란 녀석 같으니라고. 네게 어찌 내 고독을 알 수 있겠느냐.”


 “닥치시오!” 메로스는 분을 내며 반박했다. “사람의 마음을 의심하는 것은 그 어느 것보다도 수치스러운 악행이오. 왕은 백성들의 충심조차 의심하고 계시오.”


 “의심하는 것이 정당한 일이라고 내게 가르쳐준 것은 네놈들이다. 사람의 마음에는 믿음이 가질 않는다. 인간은 본래 사리사욕 덩어리다. 믿어서는 안돼.”폭군은 차분하게 말하고서 짧은 한숨을 내쉬었다. “이런 나도 평화를 원하는데 말이다.”


 “무엇을 위한 평화란 말이오. 자신의 지위를 지키기 위함이오?” 이번에는 메로스가 조소했다. “죄 없는 사람을 죽이고서 무엇이 평화란 말이오.”


 “입 닥쳐라 천한 놈아.” 왕은 재빨리 고개를 돌려 말했다. “입으로는 어떤 깨끗한 소리도 말할 수 있지. 내게는 그 깊은 속이 다 들여다 보인단 말이다. 네놈도 이제 사형대에 달리고서 울부짖어봤자 소용없으니 그리 알아라.”


 “그러시군. 왕께서는 똑똑하시오. 자기만 잘난 줄 아시는구려. 나는 벌써 죽을 각오가 되어 있는데 말이오. 절대 목숨을 살려달라 애원하진 않을 것이오. 다만…….”말을 마치지 못하고 고개를 숙이고서 조금 망설이고는, “다만 내게 은혜를 베푸시려거든 처형까지 사흘간의 기간을 주시오. 단 하나뿐인 누이동생에게 신랑을 갖게 하고 싶사옵니다. 사흘 중에 저는 동네에서 결혼식을 올려주고 반드시 이 곳으로 돌아오겠사옵니다.”


 “말도 안 되는 소릴.” 폭군은 쉰 목소리로 낮게 웃었다. “어이없는 거짓을 지껄이고 있구나. 풀어준 새가 다시 돌아오기라도 한단 말이더냐.”


 “그렇사옵니다. 돌아온단 말입니다.” 메로스는 필사적으로 대답했다. “저는 약속을 지킬 것이옵니다. 제게 사흘만 시간을 주시옵소서. 제 누이는 제가 돌아오기만을 기다리고 있사옵니다. 그렇게 저를 믿지 못하시겠다면, 좋습니다, 이 도시에 세리눈티우스라는 석공이 있사옵니다. 저와는 둘도 없는 친구입니다. 그 놈을 인질로 이곳에 두고 가지요. 제가 도망치고 사흘째 해가 질 때까지 이곳에 돌아오지 않는다면 그 친구를 목 졸라 죽여주시옵소서. 제발 그리 하옵소서.”


 그 말을 듣고 왕은 잔인한 마음이 들어 슬며시 미소를 지었다. 건방진 소리를 한다. 어차피 안 돌아올 것이 분명하다. 이런 거짓말쟁이에게 속는 척 하고 풀어주는 것도 재미있겠군. 그렇게 해서 대신 다른 놈을 사흘째 되는 날에 죽이는 것도 볼만 하겠지. 사람은 이러니 믿을 수 없다며 나는 슬픈 표정을 지으며 그 친구 놈을 나무에 매달려 죽게 만드는 것이다. 이 세상에서 정직한 놈이라는 인간들에게 좋은 구경거리가 되겠어.


 “소원을 들어주마. 그 인질을 불러오너라. 사흘째 되는 날 해가 지기 전에 돌아오라. 늦는 날에는 그 인질을 분명 죽이겠다. 조금 늦게 오너라. 네 죄는 영원히 사해주마.”


 “무슨 말씀을 하시오.”


 “하하. 목숨이 아깝거든 늦게 오라는 말이다. 네 마음 속은 내가 훤히 들여다보인다.”


 메로스는 억울하여 발버둥을 쳤다. 아무 말도 하고 싶지 않았다.


 죽마고우 세리눈티우스는 심야, 궁궐로 불려 들어갔다. 폭군 디오니스의 면전에서 좋은 벗과 좋은 벗은 2년 만에 서로 만났다. 메로스는 친구에게 모든 사정을 털어놓았다. 세리눈티우스는 말없이 고개를 끄덕이고는 메로스를 힘껏 끌어안았다. 친구와 친구 사이에 있어서는 그것만으로 충분했다. 세리눈티우스는 포박당했다. 메로스는 곧바로 출발했다. 초여름, 하늘에는 별들로 가득 찬 밤이었다.


 메로스는 그날 밤 한 숨도 자지 않고 백 리 길을 허겁지겁 서둘러, 마을에 도착한 것은 이튿날 오전, 해는 이미 높이 떠올랐으며 마을사람들은 들에 나와 일을 시작하고 있었다. 열 여섯 먹은 메로스의 누이동생이 오늘은 오라버니를 대신하여 양떼를 돌보고 있었다. 비틀거리며 걸어오는 오라버니의 기진맥진한 모습을 보고는 놀랐다. 그러고서 소란스럽게 오라버니에게 사정을 캐물었다.


 “아무것도 아니야.” 메로스는 억지로 웃으려 애를 썼다. “마을에 볼일을 남겨두고 왔어. 다시 바로 돌아가야만 해. 내일 네 결혼식을 올린다. 빠른 편이 좋겠지.”


 누이동생의 얼굴이 빨갛게 물들었다.


 “기쁘냐? 예쁜 옷도 사왔다. 자, 이제 가서 마을사람들에게 알리고 오너라. 결혼식은 내일이라고.”


 메로스는 다시 비틀비틀 걷기 시작하여 집으로 돌아가서는 신들에게 바칠 재단을 장식하고 축하연에 쓸 자리들을 정리하고 나자마자 그대로 바닥에 쓰러져 숨도 못 쉴 정도로 깊은 잠 속으로 빠져들어갔다.


 잠에서 깨어난 것은 밤이었다. 메로스는 곧바로 일어나 신랑 집을 찾아갔다. 그리고 조금 사정이 있어서 그러니 결혼식을 내일로 해달라고 부탁했다. 목동인 신랑은 매우 놀라며, 그건 곤란하다, 이쪽은 아직 아무런 준비도 되어있지 않다, 포도를 추수할 계절까지 기다려달라고 대답했다. 메로스는, 기다릴 수가 없다, 어떻게든 내일로 해달라며 간곡히 부탁했다. 목동인 신랑도 완강했다. 좀처럼 승낙해주지 않는다. 새벽까지 논쟁을 벌이다가 겨우 간신히 신랑을 달래며 설득했다. 결혼식은 한낮에 거행되었다. 신랑신부가 신에 대한 선서를 마쳤을 무렵, 먹구름이 하늘을 덮더니 부슬부슬 비가 내리기 시작하여, 이윽고 마차가 떠내려갈 정도로 큰 비가 내리기 시작했다. 축하연에 모여든 마을사람들은 무언가 불길한 예감이 들었으나, 그래도 각각 마음을 가다듬고 좁은 집안에서 찜통 같은 더위도 견디며, 유쾌하게 노래를 부르고 손뼉을 쳤다. 메로스도 만면에 희색을 띄우며, 잠시 동안은 왕과 맺었던 그 약속조차도 잊고 있었다. 축하연은 밤이 되자 절정에 이르러, 사람들은 바깥에 쏟아지는 큰 비도 전혀 신경을 쓰지 않았다. 메로스는 평생 이대로 있고 싶다고 생각했다. 이 좋은 사람들과 한평생 살아가길 원했으나, 지금은 내 몸이 내 것이 아니다. 돌이킬 수 없는 일이다. 메로스는 마음을 굳게 먹고 마침내 출발을 결심했다. 내일 해가 저물 때까지는 아직 시간이 충분하다. 잠깐 눈을 붙이고, 그리고 나서 곧바로 출발하자고 생각했다. 그때쯤이면 빗줄기도 가늘어졌을 것이다. 조금이라도 오랫동안 이 집에 머물고 있고 싶었다. 메로스 정도 되는 사나이도 역시 미련이라는 것은 있다. 오늘밤 마음껏 환희에 취해있는 신부에게 다가가서,


 “축하해. 나는 피곤하니 잠깐 실례해서 잠을 청해보겠다. 깨어나면 곧바로 마을로 나가겠어. 중요한 일이 있으니 말이야. 내가 없어도 이제 너에게는 착한 남편이 있으니 절대 쓸쓸할 일은 없을 거야. 네 오라버니가 제일 싫어하는 건 사람을 의심하는 일과, 그리고 거짓말을 하는 것이야. 그건 알고 있겠지? 남편과의 사이에 어떤 비밀도 만들어서는 안돼. 네게 말하고 싶은 건, 그것뿐이다.  네 오라버니는 훌륭한 놈이니 너도 그것을 자랑스럽게 생각하고 있겠지?”


 신부는 비몽사몽간에 고개를 끄덕였다. 메로스는 그러고서 신랑의 어깨를 끌어안고,


 “준비가 안된 건 서로 마찬가지일세. 우리 집에도 보물이라고는 누이동생과 양들 뿐이네. 그것들 말고는 아무 것도 없다. 모두 주리라. 그리고 한 가지. 메로스의 매제가 된 것을 자랑스럽게 여겨주게나.”


 신부는 두 손을 만지작거리며 수줍어하고 있었다. 메로스는 웃으며 동네사람들에게 인사를 하고 연석에서 물러나와 양떼들의 우리 속으로 들어가 죽은 듯이 깊이 잠들었다.


 눈이 뜬 것은 이튿날 새벽 무렵이었다. 메로스는 튕겨 오르는 몸을 일으켜, 큰일이다, 늦잠을 잤나, 아니, 아직까지는 괜찮다, 이제부터 곧바로 출발하면 약속시간까지 충분히 갈 수 있다. 오늘은 반드시 그 왕에게 사람에게 신실함이 존재한다는 것을 보여주리라. 그리고는 웃으며 십자가의 단위에 올라가주마. 메로스는 서둘러 채비를 하기 시작했다. 빗줄기도 어느 정도 가늘어졌다. 준비는 다 됐다. 이제 메로스는 두 팔을 크게 휘두르고서 빗속을 쏜살같이 달리기 시작했다.


 나는 오늘밤 죽임을 당한다. 죽임을 당하기 위해 달리는 것이다. 나 대신 잡혀있는 친구를 구하기 위해서 달리는 것이다. 왕의 사악함을 타파하기 위해 달리는 것이다. 달려야만 한다. 그러고서 나는 죽임을 당한다. 젊었을 때부터 명예를 지켜라. 잘 일거라 내 고향아. 젊은 메로스는 마음이 쓰렸다. 몇 번이고 멈춰 설뻔했다. 에잇, 에잇 하면서 큰 소리로 자신을 꾸짖으며 달렸다. 동네를 빠져 나와 들판을 가로질러 숲 속을 뚫고 이웃동네에 다다랐을 무렵에는 비도 그치고 해도 높이 떠있었다. 서서히 더워지기 시작했다. 메로스는 이마에 흐르는 땀을 주먹으로 닦아내며, 여기까지 왔으니 이제 됐다, 이미 고향에 대한 미련은 없다. 누이동생들은 분명 좋은 부부가 되리라 내게는 지금 아무런 마음에 걸리는 것이 없으리라. 곧바로 궁궐에 도달하면 그걸로 되는 것이다. 그렇게 서두를 필요도 없다. 천천히 걷자, 하고 본래의 여유를 되찾아, 즐겨 부르던 노래도 좋은 목소리로 부르기 시작했다. 터벅터벅 걸어 이십 리, 삼십 리 가며, 거의 절반 정도까지 왔을 무렵, 갑자기 들이닥친 재난, 메로스의 두 다리는 그 자리에 멈춰 섰다. 보라, 앞에 놓인 강을. 어제 있었던 폭우로 산에 있던 저수지가 범람하여 흙탕물이 하류로 모여들어 맹렬하게 휘몰아쳐 단번에 다리를 쳐부수고 요란한 소리를 내며 거친 물줄기가 사정없이 다리 축을 박살내고 있었다. 그는 넋을 잃고 멈춰 섰다. 여기저기를 돌아보며, 또한 목청껏 소리쳐보았으나 나룻배는 남김없이 파도가 삼켜버리고 흔적조차 남아있지 않았다. 뱃사공도 찾아볼 수 없다. 강물은 점점 부풀어올라 바다와도 같다. 메로스는 강가에 주저앉아 사나이의 울음을 터뜨리며 제우스를 향해 손을 들고 애원했다. “아아, 가라앉혀주소서, 미친 듯이 흘러가는 저 강물을! 시간은 점점 지나가고 있습니다. 태양도 이미 중천에 떠올랐습니다. 저것이 지기 전에 궁궐에 도착하지 못한다면, 저 좋은 나의 벗이 저 때문에 죽게 되고 맙니다.”


 탁류는 메로스의 외침을 조소라도 하듯 점점 격렬하게 춤을 춘다. 파도는 파도를 삼키고 소용돌이 치며 부풀어 오르고, 그리하여 시간은 시시각각 흘러와서는 사라져간다. 이제 메로스는 각오했다. 헤엄치는 것 외에 다른 방법이 없다. 아아, 신들이시여, 나를 지켜주소서! 탁류에도 지지 않는 사랑과 참된 위대한 힘을, 이제야 발휘해 보이리라. 메로스는 텀벙 강물로 뛰어들어 백 마리의 큰 구렁이와도 같이 발광하는 파도를 상대로 필사적인 투쟁을 시작했다. 온 전신의 힘을 팔에 담아, 밀려와서는 잡아당기는 소용돌이를, 이 정도에 질소냐 하며 헤치고 헤쳐나가, 눈 먼 사자 새끼의 분투하는 모습에 신도 불쌍히 여겼는지, 드디어 은혜를 베풀어 주셨다. 밀려나면서도 드디어 건너편 나무 미끼를 잡아낼 수 있었다. 감사하다. 메로스는 말처럼 크게 몸을 떨고서 곧바로 다시 길을 재촉했다. 한 시라도 낭비할 수 없다. 해는 이미 서쪽으로 저물기 시작했다. 헉헉 거친 숨을 내몰아 쉬며 계곡을 오르고 올라, 한 숨 돌렸을 때 갑자기 눈앞에 산적 일단이 튀어나왔다.


 “게 섰거라”


 “무슨 짓이냐. 나는 해가 지기 전까지 궁궐에 가야 한다. 놔라!”


 “그럴 수야 없지. 가지고 있는 것을 모두 다 놓고 가라.”


 “내게는 지금 목숨 말고 아무 것도 없다. 이 하나뿐인 목숨도 이제 왕에게 줘버릴 작정이다.”


 “그 목숨을 내놓으라는 게다.”


 “그렇다면 왕의 명령으로 나를 이 곳에서 기다리고 있었구만”


 산적들은 말을 하지 않은 채, 한 번에 곤봉을 휘둘러댔다. 메로스는 가볍게 몸을 굽혀, 나는 새와 같이 곁에 있던 한 놈에게 덤벼들어 그 곤봉을 빼앗고는,


 “안됐지만 정의를 위해서다!” 라고 맹렬하게 일 격. 순식간에 세 명을 때려눕혀놓고, 다른 자들이 당황하는 순간 재빨리 계곡을 내려갔다. 단번에 계곡을 뛰어내려갔으나 과연 피곤하여, 얼마 전부터 태양열이 너무나도 뜨거워져, 메로스는 몇 번이고 현기증을 느끼며, 이대로는 안 된다며 정신을 가다듬고서 비틀비틀 두 세 발자국 걷고는 덜커덕 무릎을 굽힌다. 일어날 수가 없었다. 하늘을 우러러 억울한 눈물을 터뜨렸다. 오오, 오, 탁류를 헤엄쳐 나와 산적들을 셋이나 때려눕히고 이 곳까지 온 메로스여. 참된 용사 메로스여. 지금 여기 지쳐서 움직일 수 없다니 억울하다. 사랑하는 벗은 너를 믿었기에 이제 죽음을 당해야 한다. 너는 희대의 믿지 못할 인간. 그야말로 왕의 속셈에 넘어가고 만다, 하며 자신을 꾸짖어보지만, 온몸에서 힘이 빠져 이제는 송충이만큼도 앞으로 갈 수가 없다. 길바닥 초원에 몸을 던졌다. 육신이 지치면 정신도 함께 가눌 수가 없다. 이제 어떻게든 되라, 용사에게는 어울리지 않는 심통이 마음 구석에서 싹트기 시작했다. 아는 이토록 노력했다. 약속을 깰 생각은 조금도 없었다. 신께서도 보아 알고 계시듯, 나는 최선을 다해 왔다. 움직이지 못할 때까지 달려왔단 말이다. 나는 신의 없는 인간이 아니다. 아아, 될 수만 있다면 지금 내 가슴을 갈라내어 붉은 빛 심장을 보여주고 싶다. 그러나 나는 이렇게 중요한 때에 모든 힘이 바닥나고 말았다. 나는 가면 갈수록 불행한 인간이다. 나는 아마도 조롱을 당하겠지. 내 집안도 조롱을 당할 것이다. 나는 내 친구를 속였다. 도중에 쓰러지는 것은 처음부터 아무것도 안 한 것과 마찬가지다. 아아, 이제 어떻게 되도 좋다. 이것이 내게 정해진 운명인지도 모른다. 세리눈티우스여, 용서하라. 자네는 언제나 나를 믿었다. 나도 자네를 속이지 않았다. 우리들은 진실로 좋은 친구 사이였다. 단 한 번이라도 어두운 의혹의 구름을 서로의 마음 속에 둔 적이 없었다. 지금조차도 자네는 나를 애타게 기다리고 있겠지. 아아, 기다리고 있겠지. 고맙다, 세리눈티우스. 정말 나를 잘 믿어주었다. 그것을 생각하면 참을 수가 없다. 친구와 친구 사이의 신실함은 이 세상에서 가장 자랑스러워할 보물이니 말이다. 세리눈티우스, 나는 달려왔단다. 자네를 속일 생각은 조금도 없었다. 믿어주게! 나는 최선을 다해 서둘러 이곳까지 왔다. 탁류도 돌파했다. 산적들로부터도 재빨리 빠져 나와 단번에 고개를 달려내려 왔단다. 나였으니까 할 수 있었던 거라네. 아아, 더 이상 나에게 바라질 말아주게. 내버려 달란 말일세. 이제 나는 모르네. 나는 지고 말았어. 한심하지. 웃어주게. 왕은 내게 조금 늦게 오라며 속삭였다. 늦으면 인질을 죽이고 나를 살려주겠다고 약속했다. 나는 왕의 비열함을 증오했다. 그러나 지금에 와서 생각해보면 나는 왕이 말한 대로 되고 말았다. 나는 늦게 도착하겠지. 왕은 혼자 생각하고 나를 비웃고는, 그리고 말한 대로 나를 방면하리라. 그렇게 되면 나는 죽는 것보다 마음이 아프다. 나는 영원한 배신자다. 지상에서 가장 불명예스러운 인종이다. 세리눈티우스여, 나도 죽으리라. 자네와 함께 죽게 해주게. 자네만은 나를 틀림없이 믿어주겠지. 아니, 그것도 나 혼자만의 생각인가? 아아, 이렇게 된 바에야 악인으로 살아남을까. 마을에는 내 집이 있다. 양도 있고 누이동생 부부는 설마 나를 마을에서 내쫓지는 않겠지. 정의다, 신실함이다, 사랑이다, 생각해보면 다 쓸데 없다. 사람을 죽이고 내가 산다. 그것이 인간세계의 법칙 아니었던가. 아아, 이도 저도 부질없다. 나는 추한 배신자다. 어떻게든 마음대로 하라고 해라. 아아……사지를 내던지고 점점 의식을 잃어가고 말았다.


 문득 귀에 콸콸 물 흐르는 소리가 들렸다. 조심스럽게 고개를 들어 숨죽이고 귀를 기울였다. 발 밑에서 물이 흐르고 있는 것 같다. 비틀비틀 일어나 보았더니 바위 틈새에서 조금씩 무언가 작게 속삭이면서 깨끗한 물이 쏟아져 나오고 있었다. 그 샘에 빨려들 듯 메로스는 몸을 구부렸다. 물을 두 손으로 떠서 한 모금 마셨다. 휴우, 하고 긴 한숨이 나오고는 꿈에서 깨어난 듯했다. 걸을 수 있다. 가자. 육체의 피로회복과 함께 약간이나마 희망이 보였다. 의무수행의 희망이다. 나를 죽이고 명예를 지키는 희망이다. 기울어져가는 태양은 붉은 빛을 우거진 나뭇잎을 사이로 비추고, 잎사귀도 나뭇가지도 불타오르듯 빛나고 있다. 일몰까지는 아직 시간이 있다. 나를, 기다리고 있는 사람이 있는 것이다. 조금도 의심 없이 조용히 기대해주는 사람이 있는 것이다. 나는, 믿음을 받고 있다. 내 목숨 따위는 문제가 아니다. 죽음으로 사죄를, 라는 배부른 소리를 할 겨를이 없다. 나는 신뢰에 보답해야만 한다. 지금은 단지 그것뿐. 달려라! 메로스.


 나는 신뢰 받고 있다. 나는 신뢰 받고 있다. 조금 전 그 악마의 속삭임은, 그것은 꿈이다. 악몽이다. 잊어버려라. 오장육부가 지쳐있을 때에는 문득 그런 악몽을 꾸곤 하는 것이다. 메로스, 네 수치가 아니다. 역시 어는 참된 용사다. 또다시 달릴 수 있게 되지 않았는가. 이렇게 감사할 수가! 나는 정의의 사나이로서 죽을 수가 있다. 아아, 해가 진다. 점점 진다. 기다려라, 제우스여. 나는 태어났을 때부터 정직한 놈이었다. 정직한 놈으로서 죽게 해주시오.


 길 가는 사람들을 밀어내고 걷어차며, 메로스는 검은 바람처럼 달렸다. 들판에서 벌어지는 축하연 그 한 가운데를 뚫고, 거기 모인 사람들을 놀라게 만들고, 개를 걷어차고, 작은 강을 뛰어넘으며, 조금씩 저물어가는 태양보다 열 배나 빠르게 달렸다. 한 무리의 나그네들과 재빨리 마주친 순간, 불길한 대화가 들려왔다. “지금쯤은 그 녀석도 십자가에 걸려있겠지.” 아아, 그 녀석, 그 녀석을 위해 나는 지금 이렇게 달리고 있다. 그 녀석을 죽여서는 안 된다. 서둘러라, 메로스. 늦어서는 안 된다. 사랑과 참된 힘을 지금이야말로 알려주리라. 옷차림 같은 건 문제가 안 된다. 메로스는, 지금은 거의 알몸이었다. 호흡도 할 수 없고 두 세 번 입에서 피를 토했다. 보인다. 저멀리 작게 시라크스 시의 건물들이 보인다. 건물은 석양을 받아 반짝반짝 빛난다.


 “아아, 메로스님” 신음과도 같은 목소리가 바람과 함께 들려왔다.


 “누구냐.” 메로스는 달리면서 물었다.


 “필로스토라토스이옵니다. 당신의 친구 세리눈티우스님의 제자입니다.” 그 젊은 석공도 메로스를 뒤따라 달리며 소리쳤다. “이미 늦었습니다. 부질없는 일입니다. 달리는 것을 멈춰주십시오. 이제 저 분을 살릴 수는 없습니다.”


 “아니, 아직 해는 지지 않는다.”


 “마침 지금 그 분의 사형이 집행되는 참입니다. 아아, 당신은 늦었습니다. 원망스럽습니다. 조금만, 아주 조금만 더 빨랐더라면!”


 “아니, 아직 해는 지지 않는다.” 메로스는 가슴이 찢어지는 심정으로 붉고 큰 석양만을 바라보고 있었다. 달리는 수밖에 도리가 없다.


 “그만 하십시오. 달리는 건 이제 그만 하십시오. 지금은 본인의 생명이 중요합니다. 그 분께서는, 당신을 믿고 계셨습니다. 형장에 끌려가면서도 태연하셨습니다. 왕이 그토록 그 분을 조롱해도, 메로스는 옵니다, 하고만 대답하시고 강한 신념으로 기다리고 계신 모습이셨습니다.


 “그렇기 때문에 달리는 것이다. 나를 믿어주고 있기에 달리는 것이다. 늦는다, 늦지 않는다의 문제가 아니야. 사람의 목숨도 문제가 아니라구. 나는 왠지 더욱 무섭고 큰 것을 위해 달리고 있다. 따라오너라, 필로스토라토스.”


 “아아, 당신은 제정신이 아닙니다. 그렇다면 마음껏 뛰십시오. 어쩌면 늦지 않을지도 모릅니다. 원하신다면, 달리십시오.”


 무슨 말이 필요하랴. 아직 해는 지지 않는다. 마지막까지 사력을 다해 메로스는 달렸다. 메로스의 머리는 텅 비어있다. 아무 생각도 안 한다. 그저 정체 모를 큰 힘에 끌려가듯 달렸다. 해는 점점 지평선 너머로 저물어가고, 그야말로 마지막 한 조각 남았던 빛마저 사라지려던, 순간 메로스는 질풍과도 같이 형장으로 뛰어들었다. 안 늦었다.


 “멈추시오. 그 사람을 죽여서는 안돼. 메로스가 돌아왔소. 약속대로 지금 돌아왔소.” 라며 큰 소리로 형장에 모인 군중들을 향해 외쳤다고 생각했으나, 목소리는 안 터지고 쉰 소리가 약간 나왔을 뿐, 군중들은 누구 하나 그가 도착한 사실을 모른다. 이미 나무기둥은 높이 세워져, 끈에 묶인 세리눈티우스는 점점 끌어올려진다. 메로스는 그것을 목격하고 최후의 힘, 얼마 전 탁류를 헤엄치듯 군중들을 헤치고 또 헤쳐나가며,


 “나요, 형리! 죽는 건 나란 말이오. 메로스요. 그를 인질로 만든 내가 여기 있소!” 라고 쉰 목소리로 힘껏 외치며, 마침내 사형대 위에 올라, 끌어올려가는 친구의 두 다리에 매달렸다. 군중들은 웅성거렸다. 훌륭하다. 용서하라고 소리쳤다. 세리눈티우스를 묶었던 끈이 풀려진 것이다.


 “세리눈티우스.” 메로스는 눈에 눈물을 글썽이며 말했다. “나를 쳐라. 힘껏 내 얼굴을 쳐라. 나는 도중에 한 번 악몽을 꾸었다. 자네가 만약 나를 치지 않는다면 나는 자네와 포옹할 자격조차 없다. 쳐라.”


 세리눈티우스는 모든 것을 알아차린 듯 고개를 끄덕이며, 형장 가득히 울려 퍼질 정도로 메로스의 오른쪽 볼을 쳤다. 치고는 부드럽게 웃으며,


 “메로스, 나를 쳐라. 똑같이 큰 소리가 날 정도로 나를 쳐라. 나는 이 사흘 동안, 단 한번 순간 자네를 의심했다. 태어나서 처음으로 자네를 의심했다. 자네가 나를 치지 않는다면, 나는 자네와 포옹할 수 없다.”


 메로스는 힘껏 팔에 힘을 실어 세리눈티우스의 얼굴을 쳤다.


 “고맙다, 친구여.” 둘이 동시에 말하고는 힘껏 끌어안고, 그리고 기쁨에 넘쳐 큰 소리로 울었다.


 군중들에게서도 환희의 소리가 들려왔다. 폭군 디오니스는 군중들 뒤편에서 둘의 모습을 가만히 바라보고 있었으나, 이윽고 조용히 다가와서는 얼굴에 주홍빛을 띄우며 이렇게 말했다.


 “자네들의 소원은 이루어졌다. 자네들은 내 마음을 이긴 것이다. 신실함이란 절대 공허한 망상이 아니었다. 내 부탁을 들어주겠나. 나를 자네들의 친구로 삼아주게. 제발 내 소원이니 자네들의 친구가 되게 해주게.”


 군중들 사이에서 큰 환호성이 일었다.


 “만세, 국왕 만세.”


 한 소녀가 붉은빛 망토를 메로스에게 건네주었다. 메로스는 당황했다. 좋은 벗은 이 모습을 보고 가르쳐주었다.


 “메로스, 자네는 알몸이잖아. 어서 그 망토를 입게나. 이 귀여운 아가씨는 메로스의 알몸이 많은 사람들에게 보여지는 걸 원하지 않는 거라네.”


 용사의 얼굴은 빨갛게 물들었다.




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Posted by 문학관 관리인 위어조자(謂語助者)

직소(駆込み訴え)

다자이 오사무(太宰 治) (1940)

번역 : 홍성필


 말씀드리겠습니다. 나으리. 그 사람은, 너무합니다. 너무합니다. 예. 못된 놈입니다. 나쁜 사람입니다. 아아, 참을 수가 없습니다. 도저히 살려둘 수가 없습니다.

 예, 예. 차분히 말씀드리겠습니다. 그 사람을 살려두어서는 안됩니다. 이 세상의 원수입니다. 예, 모든 것을 전부 말씀드리겠습니다. 저는 그 사람이 있는 곳을 알고 있습니다. 지금 당장 안내해드리겠습니다. 산산조각을 내어 죽여주십시오. 그 사람은 제 스승입니다. 주인입니다. 하지만 저와 동갑입니다. 서른 넷입니다. 저는 그 사람보다 불과 두 달 늦게 태어났을 뿐입니다. 대단한 차이는 없을 것입니다. 사람과 사람 사이에 그런 큰 차별은 없을 것입니다. 그런데도 저를 얼마나 짓궂게 부려먹었는지요, 얼마나 조롱 당했는지요. 아아, 이젠 족합니다. 참을 만큼 참아왔습니다. 화를 낼 때에 화를 낼 수 없다면 살아가는 보람도 없습니다. 저는 지금까지 그 사람을 얼마나 남모르게 감싸왔는지 모릅니다. 아니, 그 사람은 알고 있습니다. 분명 모든 것을 알고 있습니다. 그렇기에 더욱 그 사람은 저를 짓궂게 경멸하는 것입니다. 그 사람은 오만합니다. 제게 신세를 많이 졌기에, 그게 스스로 느끼기에 안타까운 것입니다. 그 사람은 멍청할 정도로 자아도취가 심합니다. 저 같은 사람에게 신세를 지고 있다는 사실을, 무슨, 자신의 큰 단점인 것처럼 생각하고 계십니다. 그 사람은 모든지 스스로 할 수 있는 것처럼 보이고 싶어 안달입니다. 어리석은 말입니다. 세상은 그런 게 아닙니다. 이 세상에서 살아가기 위해서는 아무래도 누군가에게 굽실굽실해야만 하며, 그렇게 해서 한 걸음 한 걸음 고생해가며 사람을 억누를 수밖에 없는 것입니다. 그 사람에게 대체 무슨 일을 할 수 있을까요. 아무 것도 할 수 없습니다. 제 눈에는 새파란 애송이에 불과합니다. 제가 만약 없었다면 그 사람은 벌써 이미 예전에 그 무능하고 멍청한 제자들과 어딘가에서 굶어죽었음이 분명합니다. "여우도 굴이 있고 공중의 새도 거처가 있으되 오직 인자는 머리 둘 곳이 없다." 그래요. 그것 보세요. 제대로 말하고 있습니다. 베드로가 뭘 할 수 있겠습니까? 야고보, 요한, 안드레, 도마, 얼간이들이 모여 어슬렁어슬렁 그 사람을 따라 다니며, 소름끼치는 달콤한 아부나 떨면서 천국이 어쨌다는 둥 바보 같은 걸 정말로 믿으며 열광하여, 그 천국이 가까이 왔다면 저놈들은 모두 우의정이나 좌의정이라도 되려는 건지. 멍청한 놈들입니다. 그 날도 역시 빵도 없어 어쩔 줄을 몰라할 때, 제가 그 사람에게 설교를 시키고는 군중으로부터 몰래 헌금을 받아내어, 또한 동네 부자한테서 물건들을 걷어들여가며 묵을 곳까지 마련해주고 먹을 것과 입을 것까지 빈틈없이 준비해줬더니, 그 사람은 고사하고 멍청한 제자들마저도 고맙다는 말 한마디 없습니다. 고맙다고 말하기는커녕 그 사람은 저의 이처럼 나날이 계속되는 고생을 모르는 척하고 언제나 말도 안 되는 주문을 하여, 다섯 개의 빵과 물고기가 두 마리밖에 없을 때조차도 눈앞에 있는 군중들에게 음식을 나눠주라는 둥의 억지를 부려, 간신히 사올 수가 있었던 것입니다. 말하자면 저는 그 사람이 하는 기적을 도와주는, 위험한 마술의 조수를 지금까지 몇 번이고 해왔습니다. 저는 이래봬도 절대 인색한 놈이 아닙니다. 아니, 오히려 저는 대단한 호사가입니다. 저는 그 사람을 아름다운 사람이라고 생각합니다. 제가 보기에는 어린아이처럼 욕심이 없고, 제가 하루하루 빵을 얻기 위해 돈을 열심히 모아도, 곧 그것들을 한 푼도 안 남기고 헛되게 써버리고 말이죠. 하지만 저는 그것을 억울하게 생각하지 않습니다. 그 사람은 아름다운 사람인 것입니다. 저는 본래 가난한 상인이었으나 그래도 '정신적인 인물'이라는 것을 이해하고 있는 사람입니다. 그래서 그 사람이 제가 고생해가며 모아놓은 자그마한 돈들을 아무리 어이없이 낭비해도 저는 아무렇지도 않습니다. 아무렇지도 않습니다만, 그렇다면 제게 가끔 부드러운 말 한마디를 건네주어도 될 듯싶은데도, 그 사람은 항상 짓궂게 굽니다. 한 번, 그 사람이 봄날에 해변을 걸으며 문득 제 이름을 부르고는 "네게도 신세를 많이 진다. 너의 쓸쓸함은 나도 알고 있다. 하지만 항상 성난 표정을 짓고 있으면 안 된다. 쓸쓸할 때에 쓸쓸한 표정을 짓는 일은 위선자나 하는 일이다. 쓸쓸함을 사람들이 알아보도록 더욱 어두운 안색을 하고 있을 뿐이다. 진실로 하나님을 믿는다면 너는 쓸쓸할 때에도 아무렇지도 않은 표정을 지으며 깨끗하게 씻고 머리에 기름을 바르고는 미소를 지어야 한다. 모르겠는가. 쓸쓸함을 사람들이 알아주지 않더라도 어딘가 보이지 않는 곳에 있는 네 진실된 아버지만이 알아주시면 그것으로 족하지 않느냐. 안 그런가? 쓸쓸함은 누구에게나 있다." 라고 말씀해 주셔서, 저는 소리를 내어 엉엉 울어버리고 싶어, 아뇨, 저는 하늘에 계신 아버지가 알아주시지 않더라도 단지 당신 한 사람만이 알아주신다면 그것으로 충분합니다. 저는 당신을 사랑합니다. 다른 제자들이 아무리 깊이 당신을 사랑한다 하더라도 그것과는 비교도 안될 정도로 사랑합니다. 누구보다도 사랑합니다. 베드로나 야고보 같은 이들은 그저 당신을 따라 다니며 무언가 좋은 일이라도 있을까 하고, 그런 것만 생각합니다. 그러나 저만은 알고 있습니다. 당신을 따라다녀 봤자 전혀 얻는 것도 없다는 사실을 알고 있습니다. 그럼에도 불구하고 저는 당신 곁을 떠날 수가 없습니다. 어떻게 된 일일까요. 당신이 이 세상에서 사라지면 저도 곧바로 죽겠습니다. 살아갈 수가 없습니다. 제게는 항상 혼자서 생각하고 있는 것이 있습니다. 그것은 당신이 멍청한 모든 제자들 곁을 떠나, 또한 하늘에 계신 아버지의 말씀 같은 것을 가르치지 않으며, 소박한 백성의 하나로서 어머님이신 마리아님과 저, 이 셋이서 조용히 한 평생을 오랫동안 살아가는 일입니다. 제 마을에는 아직 제 작은 집이 남아있습니다. 나이든 아버지와 어머니도 계십니다. 매우 넓은 복숭아밭도 있습니다. 봄, 지금쯤은 복숭아꽃이 펴서 경치가 훌륭합니다. 평생 편히 살아가실 수 있습니다. 제가 항상 곁에 있으면서 모시고자 합니다. 좋은 부인을 맞이하십시오. 제가 그렇게 말씀드리자 그 사람은 살며시 웃으시며, "베드로나 시몬은 어부다. 아름다운 복숭아밭도 없다. 야고보도 요한도 가난한 어부다. 그들에게는 그런, 평생을 안락하게 지낼만한 땅이, 어디에도 없다." 라고 낮은 목소리로 혼잣말처럼 중얼거리고는, 다시 해변을 조용히 걸어가는 것이었습니다만, 전에도 후에도 그 사람과 편안히 말을 나눌 수 있었던 건 그 때 한 번 뿐이며, 그 이후에는 절대 제게 마음을 열었던 적이 없었습니다. 저는 그 사람을 사랑합니다. 그 사람이 죽으면 저도 함께 죽을 것입니다. 그 사람은 누구의 것도 아닙니다. 제 것입니다. 그 사람을 다른 사람에게 건네주어야 한다면, 건네주기 전에 제가 그 사람을 죽여드리겠습니다. 아버지를 버리고 어머니를 버리고, 태어난 땅을 버리고 저는 오늘까지 그 사람을 따라 걸어왔습니다. 저는 천국을 믿지 않습니다. 하나님도 믿지 않습니다. 그 사람의 부활도 믿지 않습니다. 왜 그 사람이 이스라엘의 왕이란 말입니까. 멍청한 제자들은 그 사람을 하나님의 아들이라 믿고, 그리고 하나님 나라의 복음이라는 것을 그 사람으로부터 전해듣고는 흔희작약(欣喜雀躍)하고 있습니다. 머지않아 실망할 것이라는 사실을 저는 알고 있습니다. 자기를 높이는 자는 낮아지고 자기를 낮추는 자는 높아지리라고 그 사람은 약속했으나 이 세상은 결코 그렇게 호락호락한 것이 아닙니다. 그 사람은 거짓말쟁이입니다. 말하는 것, 하나부터 열까지 엉터리입니다. 저는 전혀 믿지 않습니다. 하지만 저는 그 사람의 아름다움만은 믿고 있습니다. 그토록 아름다운 사람은 이 세상에 없습니다. 그 사람의 아름다움을 순수하게 사랑하고 있습니다. 그 뿐입니다. 저는 아무런 보수도 바라지 않습니다. 그 사람을 따라 걸으며, 천국이 가까웠고, 그 때 가서는 훌륭히 우의정이나 좌의정이 되고자 하는 생각도, 그런 천박한 욕심도 없습니다. 저는 그저 그 사람 곁을 떠나고 싶지 않은 것뿐입니다. 그저 그 사람 곁에 있어, 그 사람의 목소리를 듣고 그 사람의 모습을 바라보고 있으면 그것으로 좋습니다. 그리고는 가능하다면 그 사람이 설교하는 것을 멈추고 저와 단둘이서 평생 오랫동안 살아가기를 원하는 것입니다. 아아아, 그렇게만 된다면! 저는 얼마나 행복할까요. 저는 지금 이 현세의 기쁨만을 믿습니다. 다음 세상의 심판 같은 것을 저는 조금도 두려워하지 않습니다. 그 사람은 저의 이 대가를 바라지 않는, 순수한 애정을 왜 받아주시지 않는지요. 아아, 그 사람을 죽여주십시오. 나으리. 저는 그 사람이 있는 곳을 알고 있습니다. 안내해드리지요. 그 사람은 저를 능욕하고 증오하고 있습니다. 저는 미움을 받고 있습니다. 저는 그 사람이나 제자들의 빵을 마련하고 하루하루 굶주림으로부터 건져내고 있는데도 왜 저를 그토록 짓궂게 경멸하는지요. 들어주십시오. 엿새전 일이었습니다. 그 사람이 베다니에 있는 시몬 집에서 식사를 하고 계실 때, 그 마을에 사는 마르다 녀석의 누이동생인 마리아가 나드 향유를 가득 채운 석고로 된 통을 그 사람 머리 위에 확 퍼부어 발까지 적시고는, 그래놓고서도 사과하기는커녕 차분히 앉고서 마리아 자신의 머리카락으로 그 사람의 젖은 두 발을 정성껏 닦아주었으며, 향유의 냄새가 집안에 가득 차고 매우 기이한 분위기였기에 저는 왠지 매우 화가 나서, 실례되는 짓을 하지 말아라! 하고 그 계집에게 소리쳤습니다. 이걸 보게, 이처럼 옷이 젖어버리지 않았느냐, 더구나 이렇게 비싼 기름을 퍼붓다니 아깝다고 생각하지 않느냐, 어쩌면 너는 그리도 어리석은가. 이 정도의 기름이라면 삼 백 데나리온이나 하지 않겠느냐, 이 기름을 삼 백 데나리온에 팔아, 그 돈으로 하여금 가난한 자들에게 주었더라면 얼마나 기뻐했는지 모른다. 아까운 짓을 하면 곤란해, 라며 저는 한참 혼을 내주었습니다. 그러자 그 사람은 저를 노려보며 "이 여자를 괴롭게 하지 말라. 이 여자는 내게 매우 좋은 일을 한 것이다. 가난한 자들에게 돈을 주는 일은, 너희들은 지금부터 얼마든지 할 수 있는 일이 아니냐. 내게는 더 이상 대접을 할 수 없게 되리라. 그 이유는 말하지 않겠다. 이 여자만은 알고 있다. 이 여자가 내 몸에 이 향유를 부은 것은 내 장사 지낼 준비를 위함이다. 너희들도 잘 기억해두어라. 전세계 어느 곳에서나 나의 짧은 일생을 전할 곳에서는 반드시 이 여자가 오늘 행한 일도 기념하여 전해지리라." 라고 말을 맺었을 때에 그 사람의 창백한 볼은 어느 정도 상기되어 붉어져 있었습니다. 저는 그 사람의 말을 믿지 않습니다. 여느 때와 같은 과장된 연극이라 생각하고 태연하게 흘러들을 수 있었으나, 그것보다도 그 때 그 사람의 목소리에, 다시, 그 사람의 눈빛에 지금까지 없었던 기이한 것이 느껴져, 저는 순간 당황하여, 나아가 그 사람의 살며시 붉어진 볼과 약간 눈물이 고인 눈을 잠시 보고는 문득 알아차린 것이 있었습니다. 아아, 말도 안됩니다, 입에 담는 것조차 안타까울 따름입니다. 그 사람은, 이런 가난한 시골여자에게 사랑, 은 아니지만, 설마 그런 일은 절대 없습니다만, 하지만 위험한, 그것과 닮은 이상한 감정을 가진 것이 아닐까. 그처럼 위대한 사람이, 한 낯 무지한 시골여자에게 한순간이라도 특수한 사랑을 느꼈다면, 그건 일대 실수이자 돌이킬 수 없는 큰 추문. 저는 사람의 치욕적인 감정을 선천적으로 잘 알아차립니다. 스스로 생각하기에도 그런 점을 저질적인 후각이라고 여겨져 싫어합니다만, 한 번 슬쩍 보기만 해도 사람의 약점을 남김없이 가려내고 마는 예민한 재능을 가지고 있습니다. 그 사람은 아무리 약간이라도 그 배우지 못한 시골여자에게 특별한 감정을 느꼈다는 일은 역시 틀림없습니다. 제 눈이 잘못 봤을 리가 없습니다. 분명 그렇습니다. 아아, 참을 수가 없습니다. 견딜 수가 없습니다. 저는 그 사람도 이런 꼴을 보이기 시작하면 이제 끝장이라고 생각했습니다. 추태의 극치라고 여겨졌습니다. 그 사람은 지금까지 아무리 여성들이 사모해도 항상 아름답고 물처럼 고요했습니다. 조금도 흐트러지지 않았습니다. 하지만 이제 끝입니다. 갈 데까지 간 것 같았습니다. 그 사람도 아직 젊은 나이이며, 그 정도는 이상한 일이 아니라고 말할지는 모르지만, 그렇다면 저도 동갑입니다. 더구나 그 사람보다 두 달 늦게 태어났습니다. 젊음에 차이는 없을 것입니다. 그래도 저는 인내하고 있습니다. 그 사람 하나만 바라보고 이토록 어느 여자에게도 마음이 동한 적은 없습니다. 마르다의 동생 마리아는 언니 마르다가 몸집이 좋고 소처럼 크며 성격도 거칠고 성급할 줄밖에 모르는, 전혀 장점이라고는 찾아볼 수 없는 시골여자인데 반해, 그녀는 전혀 달라 몸집도 가냘프고 피부는 투명할 정도로 창백하여 손발도 통통하며 작고, 마치 호수처럼 깊고 맑은 큰 눈이, 항상 꿈꾸듯 멍하니 멀리를 바라보는 듯하며, 마을에서는 모두가 이상하게 느낄 정도로 품위 있는 여자였습니다. 저도 생각했습니다. 읍내에 나갔을 때 흰 비단이라도 몰래 사와 주려고 했습니다. 아아, 이제 더 이상 저도 알 수 없습니다. 저는 대체 무슨 말을 하고 있는지요. 그렇습니다. 저는 안타까운 겁니다. 왜인지는 잘 모르겠습니다. 발을 동동 구를 정도로 안타깝기 짝이 없습니다. 그 사람이 젊다면 저도 젊습니다. 저는 재능도 있으며 집도, 밭도 있는 훌륭한 청년입니다. 그래도 저는 그 사람을 위해 제 특권을 모두 버려왔습니다. 속았습니다. 그 사람은 거짓말쟁이입니다. 나으리. 그 사람은 제 여자를 빼앗아갔습니다. 아니, 아닙니다! 그 여자가 저로부터 그 사람을 빼앗은 것입니다. 아아, 그것도 아닙니다. 제가 드리는 말씀은 모두 엉터리입니다. 한 마디도 믿지 말아 주십시오. 모르겠습니다. 죄송합니다. 저도 모르게 터무니없는 말씀을 드렸습니다. 그런 경박스러운 사실 같은 건 전혀 없습니다. 추한 말씀을 드렸습니다. 그렇지만 저는 안타깝습니다. 가슴을 쥐어뜯고 싶을 정도로 안타까웠단 말씀입니다. 왜인지는 모르겠습니다. 아아, 질투란 어쩌면 이토록 괴롭고도 사악한 감정일까요. 제가 이토록 목숨을 버릴 정도로 그 사람을 사모하고, 오늘까지 모셔왔는데도 제게는 단 한마디 부드러운 말씀을 건네주지도 않은 채, 오히려 저런 미천한 시골여자에 대해 얼굴을 상기시켜가며 감싸주고 말입니다. 아아, 역시 그 사람은 무기력합니다. 갈 데까지 갔습니다. 이제 그 사람한테는 가망이 없습니다. 평범한 사람입니다. 그냥 사람일뿐입니다. 죽어도 아쉬울 건 없습니다. 그런 생각을 하자 문득 끔찍한 일을 생각하게 되었습니다. 악마가 씌었는지도 모릅니다. 그 때 이후로 그 사람을 아예 제 손으로 죽여버리려는 생각이 들었습니다. 언젠가는 죽임을 당할 분이 틀림없습니다. 또한 그 사람도 억지로 자신이 죽임을 당하려는 것처럼 종종 보일 때도 있습니다. 제 손으로 죽입니다. 다른 사람의 손으로 죽임을 당하게 하기 싫습니다. 그 사람을 죽이고 저도 죽습니다. 나으리, 눈물을 보여 대단히 송구스럽습니다. 예, 이제 울지 않겠습니다. 예, 예. 차분히 말씀드리겠습니다. 그 다음 날, 저희들은 드디어 꿈에도 그리던 예루살렘을 향해 출발했습니다. 대군중, 노소를 불문하고 모두가 그 사람을 따랐으며, 이윽고 예루살렘 성이 가까워지자 그 사람은 한 마리 늙은 당나귀를 길가에서 발견하고는 미소를 지으며 그것을 타고서, 이는 바로 "시온 딸이여, 두려워 말라. 보라 네 왕이 나귀새끼를 타고 온다"라는 예언 대로라며 밝은 표정으로 가르쳤으나, 저는 혼자 우울한 표정을 짓고 있었습니다. 어쩌면 그리도 딱한 몰골입니까. 기다리고 기다린 유월절에 예루살렘으로 입성하는, 이것이 그 다윗 자손의 모습이었는가. 그 사람이 평생동안 염원했던 모습이란, 이 늙은 나귀를 타고 터벅터벅 걸어가는 딱한 모습이었는가. 제게는 더 이상 연민 외에 아무 것도 느낄 수 없었습니다. 실로 비참한, 멍청한 삼류연극이라도 보고 있는 듯하여, 아아, 이제 이 사람도 다 살았다. 하루를 살면 하루를 산만큼 경박한 추태를 보일 뿐이다. 꽃은 지기 전이라야 꽃이다. 아름다울 때 잘라야만 한다. 그 사람을 가장 사랑하고 있는 건 나다. 아무리 사람들로부터 미움을 받아도 좋다. 하루라도 빨리 그 사람을 죽여야만 한다며, 저는 드디어 이처럼 가슴아픈 결심을 굳힐 따름이었습니다. 군중은 시시각각 그 수가 늘어나고, 그 사람이 지나가는 길 위에 빨강, 파랑, 노랑, 가지각색으로 그들의 옷을 던졌으며, 어떤 이는 종려가지를 가져와 그 가는 길에 깔고는 환호를 지르며 맞이하는 것이었습니다. 앞에서 가고 뒤에서 따르며 좌우로부터 휘어 감듯이 몰려오더니, 나아가서는 파도처럼 나귀와 그 사람을 붙잡고 흔들며 "호산나 다윗의 자손이여, 찬송하리로다, 주의 이름으로 오시는 이여 가장 높은 곳에서 호산나" 하고 열광하며 노래하는 것이었습니다. 베드로나 요한, 바돌로매, 그밖에 다른 제자들은 멍청하게도 이미 천국을 눈앞에서 보는 것처럼, 마치 개선하는 장군 곁을 따르는 것처럼 기뻐 날뛰고 환호성을 지르며 서로 껴안으면서 눈물 젖은 입맞춤을 하고, 고지식한 베드로는 요한을 끌어안으며 큰 소리로 엉엉 울어대는 판입니다. 그런 모습을 보고 있었더니 저도 그 제자들과 함께 여러 난관을 뚫고 포교를 위해 걸어온, 고난의 세월이 머리에 떠올라 저도 모르게 눈시울이 뜨거워졌습니다. 그리하여 그 사람은 성전으로 들어가 당나귀에서 내리고는 무슨 생각을 했는지, 끈을 줍고서 그것을 휘두르며 성전에서 돈 바꾸는 자들의 상과 비둘기파는 자들의 의자를 둘러엎고, 소와 양한테도 그 끈으로 만든 채찍을 들고서 전부 성전에서 쫓아내고는 성전 안에 있는 많은 상인에게 말하기를 "모두 썩 나가라. 내 아버지의 집으로 장사하는 집을 만들지 말라"며 큰 소리로 외치는 것이었습니다. 그 온화한 분이 이처럼 술주정뱅이처럼 부질없이 난리를 피운다는 것은 아무리 생각해도 정신이 나갔다고 밖에는 생각되지 않았습니다. 곁에 있는 사람들도 모두 놀라 어떻게 된 일인지 그에게 묻자, 그는 거친 숨을 내쉬며 "너희들, 이 성전을 헐어버려라. 내가 사흘 안에 다시 세워주리라"고 하기에, 과연 우직한 제자들도 너무나도 어이없는 말을 듣고서 믿어지지 않는 표정으로 멍하니 서 있었습니다. 하지만 저는 알고 있었습니다. 어차피 그 사람의 유치한 허세임이 분명하다. 그 사람의 신앙으로써 안 되는 일이 없다는 것을 사람들에게 보여주고 싶었음이 분명합니다. 그래도 그렇지, 끈으로 된 채찍을 휘두르며 힘없는 상인들을 쫓아내다니, 참으로 딱한 허세입니다. 기껏 해서 당신이 할 수 있는 저항이란 이 정도뿐입니까. 비둘기파는 이의 의자를 걷어찰 정도입니까, 하며 저는 비웃으며 물어보려고까지 했습니다. 이미 이 사람은 안됩니다. 자포자기인 상태입니다. 자중자애(自重自愛)를 잊어버렸습니다. 자신의 힘으로는 더 이상 아무 것도 할 수 없다는 사실을 서서히 깨우치기 시작한 듯하여, 더 이상 체면이 깎이기 전에 일부러 제사장에게 잡혀 이 세상과 작별을 고하고 싶었겠지요. 저는 그것을 떠올렸을 때 분명 그 사람을 포기할 수 있었습니다. 또한 그런 허영심에 가득 찬 도련님을 지금까지 일편단심 사랑해온 저의 어리석음도 쉽사리 웃어버릴 수가 있었습니다. 이윽고 그 사람은 성전에 모인 군중들을 앞에 두고 지금까지 했던 말 중 가장 심하고, 오만 무례한 폭언을 닥치는 대로 소리치는 것입니다. 그렇습니다. 분명 자포자기입니다. 저는 그 모습이 추잡하게까지 비쳐졌습니다. 죽고싶어 안달이다. "화 있을진저 외식(外飾)하는 서기관들과 바리새인들이여 잔과 대접의 겉은 깨끗이 하되 그 안에는 탐욕과 방탕으로 가득하게 하는도다. 화 있을진저 외식(外飾)하는 서기관들과 바리새인들이여 회칠한 무덤 같으니 겉으로는 아름답게 보이나 그 안에는 죽은 사람의 뼈와 모든 더러운 것이 가득하도다. 이와 같이 너희도 겉으로는 사람에게 옳게 보이되 안으로는 외식과 불법이 가득하도다. 뱀들아, 독사의 새끼들아. 너희가 어떻게 지옥의 판결을 피하겠느냐. 예루살렘아, 예루살렘아 선지자들을 죽이고 네게 파송된 자들을 돌로 치는 자여. 암탉이 그 새끼를 날개 아래 모음같이 내가 네 자녀를 모으려 한 일이 몇 번이냐. 그러나 너희가 원치 아니 하였도다." 어리석은 일입니다. 웃음을 참을 수가 없었습니다. 흉내내는 것조차 불결합니다. 큰일날 소리를 하는 놈이다. 그 사람은 돌았습니다. 또한 그 외에도 기근이 있다는 둥, 지진이 일어난다는 둥, 별들이 하늘에서 떨어지며 달이 빛을 내지 아니하고, 땅에는 사람의 시체가 넘치며 그것을 쪼아먹는 독수리가 모인다는 둥, 사람들은 그 때 통곡하며 이를 갊이 있으리라는 둥, 실로 터무니없는 폭언을 서슴지 않는 것입니다. 어쩌면 저렇게도 사려 깊지 않은 말들을 늘어놓는 것일까요. 잘난 척 하는 것도 한도가 있습니다. 자기 주제도 모르고 말입니다. 속 편한 소리를 합니다. 이미 그 사람의 죄는 피할 수 없습니다. 분명 십자가. 이제 확실합니다.


 제사장이나 장로들이 대제사장 가야바의 아문에 몰래 모여 그 사람을 죽이는 일에 대해 결의했다고 하더군요. 저는 그것을 어제 동네 장사꾼으로부터 들었습니다. 만약 군중의 눈앞에서 그 사람을 사로잡으면, 어쩌면 군중이 폭동을 일으킬 지도 모르므로 그 사람과 제자들만이 있는 곳을 발견하여 신고한 자에게는 은 삼십을 준다는 것을 들었습니다. 이제 시간이 없습니다. 그 사람은 어차피 죽습니다. 다른 사람들의 손에 의해 잡히기 전에 내가 하자. 오늘까지 저의, 그 사람에게 바친 일편단심의 애정에 대한 이것이 마지막 인사말입니다. 제 의무입니다. 내가 그 사람을 팔아버리자. 가슴아픈 처지입니다. 누가 제 꾸준한 사랑의 행위를 정당하게 이해해 줄까요. 아니, 아무도 이해해주지 않아도 상관없습니다. 제 사랑은 순수한 사랑입니다. 사람들이 이해해주기를 바라는 사랑이 아닙니다. 그런 천박한 사랑이 결코 아닙니다. 저는 영원히 그 사람으로부터 증오를 받겠지요. 하지만 이 순수한 사랑 앞에서는 어떠한 형벌도, 어떠한 지옥의 노여움도 문제되지 않습니다. 저는 저의 사는 방식대로 일관성 있게 살아가렵니다. 소름이 끼칠 정도로 굳게 결심했습니다. 저는 몰래 기회를 엿보고 있었습니다. 드디어 유월절 당일이었습니다. 저희들 스승과 제자 열 세 명은 동산 위 낡은 요릿집의 침침한 이층을 빌려 명절 연회를 열기로 하였습니다. 모두 식탁에 앉아 막 잔치를 시작하려던 참에 그 사람은 겉옷을 벗은 것입니다. 저희들은 대체 무엇을 하려는가 하고 지켜보고 있었더니, 그 사람은 탁상 위에 있던 물통을 들고서는, 그 물통 안에 든 물을 구석에 있던 작은 대야에 붓고서, 흰 수건을 가져다가 자신의 허리에 두르고 대야의 물로 제자들의 다리를 차례차례 씻어주셨던 것입니다. 제자들에게는 그 이유를 알 수 없어 넋을 잃고는 우왕좌왕할 뿐이었으나, 제게는 왠지 그 사람의 숨겨진 마음을 알 수 있을 듯했습니다. 그 사람은 쓸쓸했던 것입니다. 극도로 마음이 쇠약해져서 이제는 완고하고 무지한 제자들에게까지 의지하고 싶은 심정이었음이 분명합니다. 불쌍하게도 그 사람은 자신의 피할 수 없는 운명을 알고 있었던 것입니다. 그 모습을 보고 있노라니 저는 갑자기 강력한 오열이 목구멍을 뚫고 올라오는 것을 느꼈습니다. 갑자기 그를 끌어안고 함께 울고 싶어졌습니다. 아아, 불쌍하게도, 당신이 죄를 지은 건 하나도 없습니다. 당신은 항상 좋은 사람이었습니다. 당신은 항상 옳았습니다. 당신은 항상 가난한 자의 편이었습니다. 그리고 당신은 언제나 빛을 발할 정도로 아름다웠습니다. 당신은 분명 하나님의 아들입니다. 저는 그것을 알고 있습니다. 용서하십시오. 저는 당신을 팔려고 근래 이 삼일 동안 기회를 노리고 있었습니다. 이제 지금은 싫습니다. 당신을 팔다니, 저는 무슨 그런 당치도 않은 생각을 했었던지요. 안심해주세요. 이제 지금부터는 오 백의 관리, 천의 군대가 온다해도 당신의 몸에 손가락 하나 대지 못합니다. 놈들은 당신을 노리고 있습니다. 위험합니다. 지금 당장 여기서 도망칩시다. 베드로도 오라, 야고보도 오라, 요한도 오라, 모두 오라, 우리의 선한 주를 지키고 평생 오래도록 살자며, 마음속으로부터 사랑의 말이, 말로는 하지 못했으나 가슴속에 끓어올라왔습니다. 그날 그때까지 느껴보지 못했던 일종의 숭고한 영감에 감명을 받아 뜨거운 회개의 눈물이 은혜롭게 볼을 따라 흘러, 이윽고 그 사람은 제 발도 조용히 정성껏 씻어주고, 허리에 둘렀던 수건으로 부드럽게 닦아주어, 아아, 그 때의 촉감이란. 그렇습니다. 저는 그 때 천국을 보았는지도 모릅니다. 저 다음에 빌립의 발을, 그 다음에 안드레의 발을, 그리고 다음에 베드로의 발을 씻어주는 차례였으나, 베드로는 그처럼 우직한 자였으므로 수상한 마음을 숨겨둘 수가 없어, 주여, 당신은 왜 제 발 같은 것을 씻으려 하십니까, 하고 다소 불만스럽게 입술을 내밀며 물었습니다. 그 사람은, "나의 하는 것을 네가 이제는 알지 못하나 이 후에는 알리라." 하고 은유적으로 말한 뒤에 베드로 발 밑에 앉았으나 베드로는 기꺼이 거절하며, 아뇨, 안됩니다. 영원히 제 발 같은 것을 씻으시면 안 됩니다. 너무도 황송합니다, 라며 그 발을 오므렸습니다. 그러자 그 사람은 조금 큰 목소리로 "내가 너를 씻기지 아니하면 네가 나와 상관이 없느니라." 하며, 매우 강하게 말씀을 하시기에, 베드로는 허둥지둥 대며 아아, 잘못했습니다, 그렇다면 제 발만이 아니라 손과 머리도 마음껏 씻어 주십시오, 하고 머리를 깊이 숙여가며 부탁을 드리기에 저도 모르게 웃음이 터져 나왔으며, 다른 제자들도 몰래 미소를 지어, 어딘지 모르게 방안이 밝아진 듯했습니다. 그 사람도 조금 웃으며 "베드로야, 발만 씻으면 이제 그것으로 네 온몸은 깨끗해졌다. 아아, 너뿐만이 아니라 야고보도 요한도 모두 흠 없는 깨끗한 몸이 된 것이다. 그러나," 라고 말을 하려다가 문득 허리를 피고 순간 고통을 참는 듯이, 매우 슬픈 눈을 하시고는, 곧 그 눈을 세게 감더니, 감은 채로 말했습니다. "모두가 깨끗하면 좋으련만." 저는 놀랐습니다. 당했다! 나에 대해 말하고 있는 것이다. 내가 그 사람을 팔려던, 불과 몇 분전까지의 어두운 마음을 꿰뚫어보고 있었던 것이다. 하지만, 그 때는 아니었습니다. 절대 나는 아니었어! 나는 깨끗했었습니다. 내 마음은 변해있었습니다. 아아, 그 사람은 그걸 모릅니다. 그걸 몰라! 아니! 아닙니다, 하고 목구멍까지 나오려던 절규를 저는 약하고 비굴한 마음이 침을 삼키듯 삼켜버렸습니다. 말할 수 없습니다. 아무런 말도 할 수 없습니다. 그 사람으로부터 그런 말을 들으니, 저는 역시 깨끗해지지 않았는지도 모른다는, 나약하게 긍정하는 마음이 고개를 들더니 점점 그 비굴한 반성이 추악하고 흑암처럼 부풀어올라 저의 오장육부를 휘몰아쳐, 반대로 점차 분노의 불길이 타오르기 시작한 것입니다. 에이, 안되겠다. 나는 안 된다. 그 사람에게 철저히 경멸 당하고 있다. 팔자. 팔자. 그 사람을 죽이자. 그리고 나도 함께 죽는 것이다, 하고 전부터 마음먹었던 결의가 다시금 눈을 뜨고는, 저는 지금 완전히 복수의 악귀가 되었습니다. 그 사람은 내 마음이 두 세 번이나 뒤집히며 변화한 대동란은 모르는 듯, 이윽고 윗도리를 입고 복장을 바로 하여 편안히 자리에 앉으시며 실로 창백한 얼굴로 "내가 너희에게 행한 것을 너희가 아느냐. 너희가 나를 주라 또는 선생이라 하니 너희 말이 옳다. 나는 너희들의 주 또는 선생임에도 너희 발을 씻겼으니 너희도 서로 사이좋게 발을 씻도록 해야 한다. 내가 너희들과 언제까지나 함께 있을 수가 없으므로 이번 기회에 본을 보인 것이다. 내가 너희에게 행한 것같이 너희도 행하여야 한다. 스승은 반드시 제자보다 크니 내가 하는 말을 잘 듣고 잊지 않도록 하라." 매우 우울한 듯한 말투로 소리 없이 식사를 시작하고, 문득 "너희들 중 한 명이 나를 판다."며 고개를 숙여 신음하는 듯하기도 흐느끼는 듯하기도 하듯이 괴로운 목소리로 말했기에 제자들 모두 크게 놀라 자리를 박차고 일어나 그 사람 주변에 모여 각각 주여, 저입니까, 주여, 그건 저를 말씀하십니까, 하고 난리를 치고, 그 사람은 죽는 사람처럼 슬며시 고개를 흔들고는 "내가 지금 그 사람에게 한 조각 빵을 주노라. 그 사람은 매우 불행한 사람이로다. 그 사람은 차라리 나지 아니하였더면 제게 좋을 뻔하였느니라." 하고 의외로 분명한 어투로 말한 다음 한 조각 빵을 들고 팔을 뻗은 후, 망설임 없이 제 입에 갖다댔습니다. 저는 이미 마음을 정한 상태였습니다. 수치스러워하기 보다는 증오했습니다. 이제 와서 하는 그의 행동을 증오했습니다. 이처럼 모든 제자들 앞에서 공연히 모욕을 주는 것이 그 사람이 하는 지금까지의 복수입니다. 불과 물이 영원히 함께 될 수 없는 숙명이 나와 저 놈 사이에 있는 것입니다. 개가 고양이에게 주듯 한 조각의 빵을 내 입에 갖다대고는, 그것은 그 놈이 할 수 있는 최대한의 복수였던가요. 흥. 어리석은 놈 같으니라구. 나으리, 녀석은 지금 제게, 네 하는 일을 속히 하라고 했습니다. 저는 곧바로 식당에서 뛰쳐나와 어둠 속을 그저 달리고는 지금 이곳에 왔습니다. 그리고 서둘러 이처럼 말씀드리고 있는 것입니다. 자, 그 사람을 벌하여주십시오. 어떻게 하든 마음대로 벌하여 주십시오. 잡아 몽둥이로 쳐서 벌거벗겨 죽이시죠. 이제, 이제 더 이상 저는 참을 수가 없습니다. 저건, 나쁜 놈입니다. 못된 사람입니다. 저를 지금까지 그토록 괴롭혔습니다. 하하하하, 젠장할. 그 사람은 지금 기드론 시내 끝 겟세마네 동산에 있습니다. 이제 그 이층에서 있는 만찬도 끝났으며 제자들과 함께 겟세마네 동산에 가서, 지금쯤은 분명 하늘에 기도를 드리고 있을 시간입니다. 제자들 외에는 아무도 없습니다. 지금 가시면 아무런 어려움 없이 그를 잡을 수 있습니다. 아아, 새들이 울어 시끄럽군요. 오늘밤은 왜 이토록 밤에 새들의 울음소리가 귀에 거슬리는지 모르겠습니다. 제가 이리로 달려오는 도중에도 숲 속에서 새들이 지저귀고 있었습니다. 밤에 지저귀는 새는 보기 드뭅니다. 저는 어린아이와도 같은 호기심을 가지고 그 새들의 정체를 한 번 보고 싶다고 생각했습니다. 멈추어 서서 고개를 기울이고는 나무들의 가지 사이를 보았습니다. 아아, 저는 지금 쓸데없는 소리를 하고 있습니다. 죄송합니다. 나으리, 준비는 되셨습니까. 아아, 즐겁습니다. 기분이 좋군요. 오늘밤은 제게 있어서도 마지막 밤입니다. 나으리, 나으리, 오늘밤 이제부터 저와 그 사람이 훌륭히 어깨를 나란히 선 광경을 잘 보아두십시오. 저는 오늘밤 보라는 듯이 어깨를 나란히 하고 서겠습니다. 그 사람을 두려워할 필요는 없습니다. 비하할 필요는 없습니다. 저는 그 사람과 동갑입니다. 같은, 훌륭한 젊은이입니다. 아아, 새 소리가 시끄럽군요. 너무도 귀에 거슬려 시끄럽습니다. 왜 이토록 새들이 소란을 피우는 것일까요. 지지배배, 지지배배. 무슨 소란을 떠는 것일까요. 아니, 그 돈은? 제게 주시는 건가요? 저, 제게 은 삼십. 그렇군요, 하하하하. 아니, 사양하겠습니다. 얻어맞기 전에 그 손을 치우십시오. 돈이 좋아 고소한 것이 아닙니다. 손 치워! 아니, 죄송합니다. 받겠습니다. 그렇습니다, 저는 상인이었습니다. 돈 때문에 저는 우아한 그 사람으로부터 항상 경멸을 당해왔었지요. 받겠습니다. 저는 어차피 상인입니다. 미움을 받고 있는 금전으로써 그 사람에게 훌륭히 복수를 하는 것입니다. 이것이 제게 가장 어울리는 복수의 수단입니다. 꼴 좋다! 은 삼십으로 녀석은 팔립니다. 저는 전혀 울지 않습니다. 저는 그 사람을 사랑하지 않습니다. 처음부터 조금도 사랑하지 않았습니다. 예, 나으리. 저는 거짓말만 말씀드렸습니다. 저는 돈이 갖고 싶어 그 사람을 따라다녔습니다. 오오, 분명 그렇습니다. 그 사람이 전혀 제게 돈을 벌게 해주지 않는다고 오늘 확신했기에 상인답게 재빨리 돌아선 것입니다. 돈. 세상은 돈뿐입니다. 은 삼십. 매우 훌륭합니다. 받겠습니다. 저는 그저 상인일 따름입니다. 갖고 싶어 어쩔 줄을 모릅니다. 예, 감사합니다. 예, 예. 늦었군요. 제 이름은 상인인 유다. 헷헤. 가룟 유다라고 합니다. 




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Posted by 문학관 관리인 위어조자(謂語助者)

일등(一燈)

다자이 오사무(太宰 治) (1940)

번역 : 홍성필


 예술가라고 하는 것은 참으로 난감한 종족이다. 기를 쓰고 새장 하나를 들고 우왕좌왕한다. 그 새장을 빼앗기면 그들은 혀를 깨물고 죽을 것이다. 가능하다면 빼앗지 말아주었으면 하고 있다.


 누구라도 그런 생각은 하고 있다. 어떻게든 밝게 살아가고 싶다며 열심히 노력한다. 옛부터 예술에서 일등품이란 늘 세상 사람들에게 희망을 주고 인내하며 살아갈 힘을 주는 것이었다. 우리들 중에서 모든 노력은 그 일등품을 만드는 일만을 향해있었을 것이다. 어려운 작업이다. 그래도 어떻게 해서는 그곳에 도달하고 싶다. 꼼짝도 할 수 없는 벼랑 끝에 앉아 우리들은 그 일을 위해 노력해왔을 터였다. 그것을 계속해가는 수밖에 없다. 가진 것이라고는 신으로부터 받은 새장 하나뿐이다. 언제나 그뿐이었다.


 ‘대군(大君:천황을 가리킴) 곁에서’(‘우미 유카바(海行かば)’라는 일본 군가의 한 소절 - 역자 주)란 일본국민 모두가 가지고 있는 간절한 소망일 것이다. ‘받치고 갈 우산도 없다’(‘적을 막을 방법이 없다’는 뜻을 가진 일본 옛 시의 한 소절이며 고다이고 천황(後 醍 西胡 天 皇)이 읊었다 - 역자 주)는 말씀을 들으면 후지와라노 스에후사(藤原季房)가 아니더라도 분명 그 자리에 엎드려 울음을 터뜨릴 것이다.


 그러나 지금은 이런저런 말을 하고 있을 때가 아니다. 묵묵히 그리고 좌충우돌하며 지내야 한다. 그러기에 ‘비국민’ 딱지까지 붙으면 이것보다 서러운 일은 없다. 말도 안 된다. 나는 내 방식으로 이 기회에 빈자일등(貧者一燈)을 더욱 환하게 밝혀 둘 것이다. 


 8년 전 이야기이다. 칸다(神田)에 있는 어두컴컴한 방에서 나는 형으로부터 심한 꾸중을 들었다. 1933년 12월 23일 저녁 무렵이다. 나는 이듬해 봄에 대학을 졸업하기로 되어 있었으나 시험은 하나도 보지 않은 채 졸업논문도 내지 않고, 졸업을 전혀 할 수 없다는 사실이 본가 큰 형님에게 탄로 났기에 칸다에서 형님이 묵고 있는 하숙집으로 불려가서 그야말로 혼찌검이 날 정도로 꾸중을 들었던 것이다. 고집이 센 형님이다. 이럴 때에는 눈앞에 있는 조금 모자란 동생의 일거수일투족이 마음에 들지 않게 된다. 나는 정자세로 무릎을 가지런히 꿇고 난로로부터 제법 떨어진 곳에서 떨고 있었더니,


 “뭐야. 넌 장관 앞에라도 앉아있는 줄 알아?” 라고 말하고는 심기가 편치 않다.


 너무 자기 자신을 비하해도 안 좋은 것이다. 그렇다고 책상다리를 하고는 얼굴을 살짝 들어 조금 웃어보이자 이번에는 건방진 놈이라고 혼이 난다. 이러면 안 되겠다며 서둘러 무릎을 꿇고 고개를 숙이자 남자답지 못하다고 야단을 맞는다. 어떻게 해도 혼이 났다. 나는 스스로 어떻게 해야 할지를 몰랐다. 형님의 화는 쌓여갈 뿐이었다.


 희미하게 바깥 거리에서 사람들이 웅성거리는 소리가 들려온다. 잠시 후 하숙집 복도가 갑자기 쿵쾅쿵쾅 소란스러워지고 식모들의 속삭임, 작은 웃음소리도 들려온다. 나는 형님의 질타보다 그 쪽으로 살며시 귀를 기울이고 있었다. 문득 한 마디를 들을 수 있었다. 나는 놀라 고개를 들어,


 “전등행렬이에요.” 라고 형님에게 보고했다.


 형님은 순간 이상한 표정을 지었다. 갑자기 방안 창호지가 찢어질 정도로 군중들의 만세소리가 크게 울려 퍼졌다.


 황태자 전하, 1933년 12월 23일 출생. 온 나라가 기쁨에 휩싸여 있는 날에 나는 아까부터 형님으로부터 꾸중을 듣고 있다는 생각을 하니 이중으로 슬퍼져서 감당할 수 없었다. 형님은 침착하게 전화를 들고서는 프론트에 자동차 한 대를 부탁했다. 나는 다행이다 싶었다.


 형님은 그러나 전혀 웃지도 않고는 얼굴을 돌리고 도테라를 벗고서 홀로 외출준비를 시작했다.


 “거리로 나가보자.”


 “네에.” 치사한 남동생은 너무나도 기뻤다.


 거리는 해가 저물어가고 있었다. 형님은 차창 밖으로 거리에서의 봉축행렬(奉祝行列)을 정신없이 바라보고 있었다. 국기의 홍수이다. 참고 억누르고 있다가 봇물 터지듯 폭발한 환희의 감정이 쏟아져 나오는 듯했다. 만세 외에는 표현할 방법이 없다. 잠지 후 형님은,


 “다행이다!” 라고 한 마디, 조용히 말하고서 깊은 한숨을 내쉬었다. 그리고는 살며시 안경을 벗었다. 


 나는 하마터면 웃음을 터뜨릴 뻔했다. 1925년, 내가 중학교 3학년일 때 테루노미야(照宮:훗날 쇼와(昭和)천황의 첫 딸 역자 주)님께서 태어나셨다. 그 무렵 나는 학교 성적이 그리 나쁘지 않았기 때문에 이 큰 형님으로부터 귀여움을 많이 받았다. 어린 나이에 아버지를 잃었기에 형님과 나와의 관계는 부자지간과도 같았다. 나는 겨울방학 때 생가로 돌아가서 형수님과 불과 며칠 전 있었던 테루노미야님의 출생에 대하여 말하고는 무슨 영문인지 눈물이 쏟아져서 나와 어쩔 줄을 몰랐다는 경험이 일치했다. 그 때 나는 이발소에 있어서 머리를 깎고 있었으나 소식을 알리는 불꽃놀이 소리를 듣고 있노라니 울음을 참을 수 없어 매우 난처했었다. 형수님도 그 시간에 바느질을 하고 계셨다는데 불꽃놀이 소리를 듣자 더 이상 바느질을 계속할 수 없어 곤란했었다고 하셨다. 형님은 우리들의 대화를 옆에서 듣고 있으면서,


 “나는 울지 않았어.” 라며 허세를 부렸던 것이다.


 “정말로요?”


 “글쎄.” 형수님도 나도 전혀 믿지 않았다.


 “울지 않았다니까.” 형님은 웃으면서 자기주장을 꺾지 않았다.


 그런 형님이 지금 조용히 안경을 벗은 것이다. 나는 터져 나오려는 웃음을 참으며 얼굴을 돌리고는 안 보는 척을 했다.


 형님은 쿄바시(京橋) 바로 앞에서 내렸다.


 긴자(銀座)는 사람들로 가득 차 있었다. 마주치는 사람들마다 모두 환하게 웃고 있다.


 “다행이야. 일본은 이제 잘된 거야. 정말 잘됐어.” 형님은 거의 한발자국 걸을 때마다 중얼거리고는 고개를 끄덕이고, 방금 전에 있었던 노여움은 벌써 어딘가로 사라진 듯했다. 치사한 동생은 죽다 살아난 심정으로 그 형님 뒤를 가벼운 마음으로 졸졸 따라갔다.


 A신문사 앞에서는 많은 사람들이 멈춰 서서 반짝반짝 빛나는 전광판 뉴스를 한 글자 한 글자씩 작은 소리를 내며 읽어간다. 형님도 나도 그 군중들 뒤편에 오랫동안 서 있으면서 전광판에 비춰지는 글자들을 차례대로 몇 번이고 되풀이해가며 같은 문장을 싫증도 내지 않고 읽고 있는 것이었다.


 그리고 형님은 긴자 뒤쪽에 있는 오뎅 집으로 들어갔다. 형님은 내게도 술을 권했다.


 “정말 잘 됐어. 이걸로 이제 된 거야.” 형님은 그렇게 말하고 손수건으로 얼굴에 흐르는 땀을 연신 닦아냈다.


 오뎅 집도 큰 난리였다. 턱시도를 차려입은 신사가 매우 흥겹다는 듯이 들어와서는,


 “자아, 여러분. 정말 축하해요!” 라고 말했다.


 형도 웃으며 그 신사를 맞았다. 그 신사는 출생하셨다는 소식을 듣고 바로 턱시도를 입고는 이웃에게 축하인사를 돌았다는 것이다.


 “축하인사를 도는 건 좀 묘하네요.” 라고 조용히 말하자 형님은 술을 마시다가 엎질렀다.


 일본 전국 어느 산골짜기에도 지금쯤은 국기를 세우고 모두 방긋방긋 웃으며 전등행렬을 하고 만세를 부르고 있을 것이라는 생각을 하자 나는 그 모습이 눈앞에 떠오르는 것 같아, 멀리 보이는 작은 아름다움을 상상하며 넋을 잃고 있었다.


 “황실전범(皇室典範)에 의하면…….” 방금 전 그 신사가 큰 소리로 말하기 시작했다.


 “황실전범이라니, 거창하게 나왔군.” 이번에는 형님이 내게 조용히 말하고는 진심으로 기쁜 듯 정신없이 웃었다.


 그 오뎅 집을 나선 후 다시 다른 곳으로 들어가, 그날 밤 늦게까지 봉축행사로 넘쳐나는 시민들 속을 헤치며 걸었다. 전등행렬이 그려내는 불빛들이 파도를 이루며 끝없이 우리 눈앞을 천천히 지나가갔다. 형님은 자신도 모르게 군중들과 함께 만세를 소리쳤다. 그처럼 들떠있던 형님을 본 적이 없다.


 그처럼 순수하고 허름 없고 하늘을 찌를 듯한 전 국민적 환희와 감사의 목소리를 듣는 일은 이제부터 좀처럼 없으리라. 바라건대 다시 한 번. 누가 무슨 말을 하지 않더라도 당분간은 인내의 나날을 보내야 할 것이다.

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Posted by 문학관 관리인 위어조자(謂語助者)


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