혈우병(血友病)

고사카이 후보쿠 (小酒井 不木) (1927)

일본어 원문


「たとい間違った信念でもかまいません、その信念を守って、精神を緊張させたならば、その緊張の続くかぎり、生命を保つことが出来ると思います」

 医師の村尾氏は、春の夜の漫談会の席上で、不老長寿法が話題に上(のぼ)ったとき、極めて真面目な顔をして、こう語りはじめました。

「今から十年ほど前、私が現在のところで開業して間もない頃でした。ある夏の日の朝、私は、同じ町内の下山(しもやま)という家から、急病人が出来たから、すぐ来てくれといって招かれました。この家は老婦人と、それにつかえる老婆との二人ぐらしでしたが、主人たる隠居さんを私は一度も見たことがなく、又その家から往診に招かれたこともありませんでした。何でもその隠居さんは非常な高齢で、しかも敬虔(けいけん)なクリスチャンだということでしたから、町内の人たちは、色々な噂をたてましたが、隠居さんは、あまり世間と交際しなかったので、誰もその家の内情を知るものはありませんでした。ところが、今その隠居さんが、急病にかかったからと、召使の老婆が往診を頼みに来ましたので、私は半ば好奇心をもってすぐさま出かけたのであります。

 先方へ行くと、驚いたことに、隠居の老婦人は、奥座敷の坐蒲団(ざぶとん)の上に端然として坐って居ました。けれども、私が一層驚いたのは、隠居さんの風(ふうぼう)です。通常老人の年齢を推量することは困難なものですけれど、私は隠居さんが、九十歳以上にはなって居るだろうと直覚しました。といえば、大てい皆さんにも想像がつくだろうと思いますが、頭髪には一本の黒い毛もなく、顔には深い皺が縦横に刻まれて居て、どことなく一種のすご味がただよい、いわば、神々(こうごう)しいようなところがありました。然(しか)し、私にとっては、はじめて見た顔ですけれど、明かに、はげしい憂いの表情が読まれました。

 ――どうなさいました? どこがお悪いのですか。と、挨拶の後(のち)私はたずねました。

 老婦人は無言のままじっと私の顔をながめました。その眼は異様に輝いて、もし、それが妙齢の女であったならば、恋に燃ゆるとしか思われない光りを帯びて居ましたから、私はぎょッとしたのです。

 ――先生、私はもう、死なねばなりません。とても、先生のお手でも、私の死を防ぐことは出来ぬと思いましたけれど、この年になっても、やはりこの世に未練がありますから、とに角御よびしたので御座います。

 老婦人は、高齢に似ず、はっきりとした口調で語りました。もし、それが秋の夜ででもありましたら、恐らく私は座に堪えぬほど恐怖を感じただろうと思います。

 ――一たい、どうしたというのですか。

 ――御わかりにならぬのも無理はありません。では、どうか一通り、わけを御ききになって下さいませ。実は、私の家には恐ろしい病気の血統(ちすじ)があるので御座います。一口に申しますと、身体のどこかに傷を受けて血が出ますと、普通の人ならば、間もなく血はとまりますのに、私の一家のものは、その血がいつまでもとまらずに、身体の中にあるだけ出てしまって死んで行くという奇病をもって居るので御座います。私の知っております限りでは、祖父も父も叔父も皆同じ病で死にました。又、私の二人の兄も、二十歳前後に、同じ病で死にました。祖父の代から、私の家には男ばかりが生れまして、私には、父方の叔母もなければ、又、姉も妹もありませんでした。二人の兄が死んで、(もうその頃には父もすでに亡き人でしたが)私が一人娘として残ったとき、母は何とかして、私を、その恐ろしい病からのがれしめたいとひそかに切支丹(きりしたん)に帰依(きえ)して、神様にお祈りをしたので御座います。

 私が一人ぼっちになったのは、私の十三の時でした。母は、神様に向って、どうぞ、私が、世の常の女でないようにと祈りました。申すまでもなく、普通の女でありましたならば、二三年のうちに、月のものが初まれば、そのまま血がとまらずに死んで行かねばならぬからであります。傷さえしなければ、死をふせぐことが出来ますけれど、この自然に起こる傷は如何(いかん)ともいたし方がありませんから、ただ、神さまに御すがりするより外はなかったのであります。

 私も、母から、その訳をきかされて心から神さまにおいのりをしました。兄が顔に小さな傷をして、医術の施しようがなく、そこから出る血を灰にすわせて、だんだん蒼ざめて死んで行った姿は、今もまだ私の眼の前にちらつきます。ああ、恐ろしいことです。恐ろしいことです。

 すると、神様は私たちの願いをお叶(かな)え下さって、私は十七歳になっても二十歳になっても月のものを見ませんでした。二十五歳になっても、やはり変りはありませんでしたから、もう母も大丈夫だと安心したことでしょう。その年の夏に私一人をこの世に残して死んで行きました。臨終に至るまで、母は私に向って、決してお前は嫁いではならぬ、嫁げば子を生むときに死んでしまう、下山家は、お前が死ぬと共に断絶する訳だから、せめて百五十歳までお前は生きのびてくれと申しました。

 なにゆえに母が百五十歳までと申したかを私は存じません。とにかく私は母の遺訓をかたく守って、毎日神様に御祈りをして今日に至りました。少しの傷もせぬように、一時の油断もなく暮して来ました。そうして、幸に一度も病気をせず、又、月のものを見ないですんだのであります。私は宝暦×年の今月今日に生れましたから、今日で丁度、満百五十歳になるので御座います。

 こういって老婦人は、さびしそうな薄笑いをにッとうかべながら、じっと私の顔を見つめました。私は再びぎょッとしました。満百五十歳という言葉にももちろん驚きましたが、それよりも気味の悪いのは、老婦人の眼の光りでありました。

 ――ところが、と、隠居さんは続けました。その眼が一層輝いたので、私は何となく身体がぞくぞくして来ました。――今朝、突然、私の月のものを見たので御座います。先生、私の驚きをお察し下さい。私はもう死なねばなりません。けれども先生、どうした訳か、月のものが初まってから、昨日までよりも一層、この世に未練が出来て来ました。私は死にたくないので御座います。先生、どうか、出来ることなら、私を、死ぬことから救って下さいませ。御願いで御座います。

 百五十歳の老婦人はこういって、私のそばに、にじり寄って来ました。いままでのその緊張して居た態度が急に崩れて来ました。私はそのとき、何ともいえぬ不快な感じを起こしましたが、漸(ようや)く冷静な心になっていいました。

 ――決して、御心配なさるにはおよびません。あなたの家に伝わる病気は血友病と名(なづ)けるものでありますが、この病気はその家系のうち、男子のみが罹(かか)って、女子には決して起こらないのです。たといあなたの十五六歳のときに月のものがはじまっても、あなたは決して、それで死ぬことはなかったのです。あなたの信仰なさる神様は、女には月のものがあるからという御つもりで、女を血友病には罹らせぬように工夫して下さったのです。ですから、たとい、今日、月のものがはじまりましても、やがて血は必ずとまります。あなたは、それで、死のうと思ったとて実は死ねないのです。

 私の話しつつある間、老婦人の顔に、一種の獣性を帯(お)んだ表情がうかびましたが、だんだんそれが露骨になって行くのを私は見のがさなかったのです。そうして、私が語り終るなり、あッという間もなく、百五十歳の隠居さんはその皺くちゃの両腕をのばして、私の頸(くび)にいだきつきました。

 あまりのことに私はわれを忘れて老婦人をはげしくつきのけました。

 数秒の後、気がついて見ると、私の前に、老婦人いや、老婦人の死体が、干瓢(かんぴょう)のように見苦しく横たわって居(お)りました。


 こう語って村尾氏は一息つき、ハンカチを取り出して頸筋を拭いてから、更に続けました。

「まったく、思いもよらぬ経験をしましたよ。何のために、老婦人が私にとびかかって来たのか、もとよりわかりませんが、あの恐ろしさは一生涯忘れることが出来ません。老婦人は月経がはじまったといいますけれど、或はほかの病気だったかも知れません。何しろ、百五十歳というのですから。けれども、世の中には、とても想像のつかぬ事実があることを、私たちは否定してならぬと思います。然し、いずれにしても、精神の緊張がゆるむと人間は一たまりもなく崩れるものだということが、これによってはっきりとわかりました。そうして、もし私の言葉が、老婦人の精神の緊張をゆるめたとすれば私が間接にあのお婆さんを殺したことになるかも知れません……」



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신체검사 (체격검사 : 体格検査)

고사카이 후보쿠 (1927)

일본어 원문


       一


「また入学試験で、若い人達は骨身を削っているようですねえ」

 客の藤岡さんは、しんみりした口調で言いました。

「実にかわいそうなことです。心身過労の結果、高等学校などでは、折角入学してもすぐ病気になって再び起つことが出来ないものが沢山あるそうです。どうも困った現象です」と、私は答えました。

「思いつめたあまり自殺するものさえあるそうですが、そういうことをきくと、学問そのものが呪わしくなります」と藤岡さんは、極めて真面目な顔をして言いました。

 小学校時代の同窓であった藤岡さんは、二十四五年振りに私を訪ねて下さったのですが、ふと、話の序(ついで)に、入学試験のことに及んだのです。

 今年の寒さはいつまでも続いて、彼岸(ひがん)が過ぎたというのに、冬装束を脱することの出来ぬ有様ですけれど、硝子(ガラス)戸越しに書斎にはいって来る太陽の光は、何となく春めいた暖かい感じを起させました。

 藤岡さんは、小学校時代には随分元気がよく、極めて快活な人でありましたが、その快活さは今でも変りません。しかし、入学試験の話になってから、藤岡さんは、急に、曇ったような表情をしました。

 私は先刻からそれを不審に思いました。と、その私の不審に気づいたものか、

「実は私も入学試験ではひどい目に逢いましたよ」と、説明するように、藤岡さんは言いました。

「ええ?」と、私はいささか驚きました。「ひどい目といって、どんなことなのですか」

「いやもう、まったく御話しにならぬような馬鹿々々しいことです。私は小学校を出るなり、東京のI中学にはいりましたが、中学を卒業すると、陸軍士官学校を志望したのです。ところが、身体検査で見ごとにはねられました。……」

「あなたのようないい御体格の人が? どこかお悪かったのですか?」

「いいえ、それがまったく、つまらぬことなのですよ。で、その翌年、再び志願しましたところ、今度は別の原因で又もや見ごとにはねられました。それからもう、軍人になることは断念して商人になってしまいました」

 私は藤岡さんのこの言葉をきいて、急に好奇心に駆られました。一たいどうした原因でこの立派な身体の持主が二度も体格検査に合格しなかったか、ききたくてなりませんでした。

 で、私は、お差支えがなかったら、不合格になられた顛末をお話し下さるように懇望しました。

「そうですねえ」と藤岡さんはいいました。「あなたは小説をお書きになりますから、一つその種を供給しますかな」

 こういって、藤岡さんは次のごとく語りました。


       二


 まったく、私は後覧のとおり[#「後覧のとおり」はママ]、頑健でして、今日まで、これという病気をしたことがないのでした。中学時代も非常に運動に熱心でして、庭球の選手をしておりましたが、どうした訳か、正式の試合となると、あたりが悪いので、いつも「中堅」ぐらいで暮したのです。一口に言うと「あがる」とでも申しますか、ふだんは誰にも負けないのですが、あらたまった場所へ出ると、心臓の鼓動がはげしくなって、汗がにじみ出て、どうにも落つきがなくなるのでした。

 でも、度々試合をした結果、だんだんそういうことはなくなったのですが、とうとう大将組にはいることが出来ずに卒業することになりました。

 かねて軍人になりたいと思っていたのですから、私は、士官学校の入学試験準備をしました。試合のときにあがるような性分では、立派な軍人になれない訳ですが、その時は別にそんな深い考をめぐらさないで、軍人を志望したのです。果して、私は、この私の性分が祟って軍人になることが出来ませんでしたが、今になって見れば、軍人になっておらなくってよかったと思います。軍縮とか何とかいってさわがれている時節で、どうせ碌な人間にはなれていなかっただろうと思うと、まったく世の中は、何が幸福になるかわかりません。

 卒業後はかなりに勉強して、自分でも入学出来る自信を持つに至りました。ところがいよいよ入学試験がはじまると、私は、意外にも体格検査で不合格の憂目を見ることになりました。しかもそれがまたまったく意外な原因でありまして、いかにもくやしくてなりませんでした。

 それもその筈です、私が不合格となった原因は、私の後頭部にある二銭銅貨大の禿だったのです。

 いや、お笑いになるのも無理はありませんよ。何と馬鹿々々しい原因ではありませんか。士官学校の入学試験の規則に、禿のあるものは合格させぬとでもあったのか知れませんが、たといそういう規則があったとしてもあまりにも、その規則は、人を馬鹿にしていると思います。

 それにしても、軍医が私の後頭部を検査して、「不合格」を宣言したときには、私は卒倒せんばかりに驚きました。残残といおうか何といおうか、本当にその後一月あまりというものは気が変になるかと思うくらい悲しくてなりませんでした。

 私は軍医をうらみました。自分の不具をうらむ代りに、軍医をうらむのは道がちがっているかも知れませぬが、何とかもっと同情ある処置をとってくれたらよかりそうだのにと思いました。二銭銅貨大の禿のあることが何故悪いのでしょう。それが伝染性のものででもあったならば、或は不合格を宣言されても然るべきでありますが、私のこの禿は小さいときに、火傷を受けて出来たのでして、今でもこのとおりに御座います。それくらいのことは少し叮嚀(ていねい)に診察してくれればわかる筈です。まったくなさけないことだと思いました。


       三


 体格検査ではねられても、私は、私の軍人志願をあきらめることが出来ませぬでした。友人たちは、

「君が何か、その軍医を怒らせるようなことをしたのだろう。そのために、禿を楯にとって不合格を宣言したのだろう。毎年同じ軍医が検査をするとは限るまいから、是非もう一度受けて見たまえ」

 と、すすめてくれました。

 私はどう考えて見ても、自分が軍医を怒らせたとは思えませんでした。そうして、軍医の診断の粗漏(そろう)によるものと信じました。で、私は、もう一度、士官学校の入学試験を受けることに致しました。

 普通の人は、体格検査など問題にしないで、学科に苦労するのですが、私にとっては学科はむしろ第二義のもので、何とかして体格検査に通過したい、どうか、軍医がこの禿を正しく診断してくれるようにと心の中で神さまに祈りました。

 いや、おかしいでしょう。まったくこんな祈りをする受験生は今でもめったにないだろうと思います。

 いよいよ体格検査の当日が来ました。検査官を見ると、昨年とはちがった軍医でしたので、私は何ともいえぬ喜びを感じ、心臓の鼓動が高まりました。

 私の番が来たとき、私がどんな気持で軍医の前に出たか、御察しを願います。何だか気がぼーっとして、心臓の音だけが、いやに強く私の耳に響きました。

 軍医はついに問題の禿を見つけました。

 何といわれるかと思って、私の全身には粟(あわ)が生じたくらいでした。

「ふむ」と軍医は大声で言いました。「大きな禿だな。ははあ、火傷を受けて出来たようだな。よし」

 こう言ったきり、不合格とも何ともいいませんでした。

 その時の私の喜びを御察し下さい。併せてその時の私の心臓の鼓動をお察し下さい。

 まったく、私の心臓は、早鐘をつくように、いわば破れんばかりに躍動して自分ながら心臓の処置に困るほどでした。

 いよいよ合格だ! 学科試験はもう訳はないのだ! こう思って、いわば有頂天になって、前後も知らぬ有様でした。

 ふと、気がつくと、軍医は私の前に腰かけて、私の脈を診(み)ておりました。と、その時、軍医の顔に一抹の暗影を認めましたので、私は、恐ろしい予感のためにはッと思って身をすくめました。

「ひどい不整脈だ!」と、軍医はつぶやきました。「こりゃいかん。強度の心臓病だ」

 こう言ったかと思うと、にッと笑って私の顔を見ました。その時の軍医の顔の恐ろしさは、今でも思い出すとぞっとします。

「不合格!」

 りんとした声が耳の底に伝わったかと思うと、私はその場に卒倒してしまいました。



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시체양초(屍體蠟燭)

고사카이 후보쿠 (小酒井 不木) (1927)

일본어 원문


 宵(よい)から勢いを増した風は、海獣の飢えに吠ゆるような音をたてて、庫裡(くり)、本堂の棟(むね)をかすめ、大地を崩さんばかりの雨は、時々砂礫(すなつぶて)を投げつけるように戸を叩いた。縁板という縁板、柱という柱が、啜(すす)り泣くような声を発して、家体は宙に浮かんでいるかと思われるほど揺れた。

 夏から秋へかけての暴風雨(あらし)の特徴として、戸内の空気は息詰まるように蒸し暑かった。その蒸し暑さは一層人の神経をいらだたせて、暴風雨の物凄(ものすご)さを拡大した。だから、ことし十五になる小坊主の法信(ほうしん)が、天井から落ちてくる煤(すす)に胆(きも)を冷やして、部屋の隅にちぢこまっているのも無理はなかった。

「法信!」

 隣りの部屋から呼んだ和尚(おしょう)の声に、ぴりッと身体をふるわせて、あたかも、恐ろしい夢から覚めたかのように、彼はその眼を据(す)えた。そうしてしばらくの間、返答することはできなかった。

「法信!」

 一層大きな和尚の声が呼んだ。

「は、はい」

「お前、御苦労だが、いつものとおり、本堂の方を見まわって来てくれないか」

 言われて彼はぎくりとして身をすくめた。常ならば気楽な二人住まいが、こうした時にはうらめしかった。この恐ろしい暴風雨の時に、どうして一人きり、戸締まりを見に出かけられよう。

「あの、和尚様」

 と、彼はやっとのことで、声をしぼり出した。

「なんだ」

「今夜だけは……」

「ははは」

 と、和尚の哄笑(たかわら)いする声が聞こえた。

「恐ろしいというのか。よし、それでは、わしもいっしょに行くから、ついて来い」

 法信は引きずられるようにして和尚の部屋にはいった。

 いつの間に用意したのか、書見していた和尚は、手燭の蝋燭(ろうそく)に火を点じて、先に立って本堂の方へ歩いて行った。五十を越したであろう年輩の、蝋燭の淡い灯によって前下方から照し出された瘠(や)せ顔は、髑髏(どくろ)を思わせるように気味が悪かった。

 本堂にはいると、灯はなびくように揺れて、二人の影は、天井にまで躍り上がった。空気はどんよりと濁って、あたかも、はてしのない洞穴(ほらあな)の中へでも踏みこんだように感ぜられ、法信は二度と再び、無事では帰れないのではないかという危惧の念をさえ起こすのであった。

 正面に安座まします人間大の黒い阿弥陀如来(あみだにょらい)の像は、和尚の差し出した蝋燭の灯に、一層いかめしく照し出された。和尚が念仏を唱えて、しばらくその前に立ちどまると、金色の仏具は、思い思いに揺れる灯かげを反射した。香炉、燈明皿(とうみょうざら)、燭台、花瓶、木刻金色(もっこくこんじき)の蓮華をはじめ、須弥壇(しゅみだん)、経机、賽銭箱(さいせんばこ)などの金具が、名の知れぬ昆虫のように輝いて、その数々の仏具の間に、何かしら恐ろしい怪物、たとえば巨大な蝙蝠(こうもり)が、べったり羽をひろげて隠れているかのように思われ、法信の股の筋肉は、ひとりでにふるえはじめた。

 和尚は再び歩き出したが、さすがの和尚にも、その不気味さは伝わったらしく、前よりも速めに進んで、ひととおり戸締まりを見まわると、蒼白い顔をしてほッとしたかのように溜息(ためいき)をついた。

 しかし、和尚は、何思ったか再び恐ろしい本堂に引きかえした。そうして、阿弥陀如来の前に来たかと思うと、真下にあたる勤行(ごんぎょう)の座につき、手燭をかたわらに置いて言った。

「法信、礼拝だ」

 法信は機械(からくり)人形のようにその場にひれ伏した。しばらく和尚とともに念仏をとなえて、やがて顔をあげると、如来の慈悲忍辱(じひにんにく)の光顔(こうがん)は、一層柔和の色を増し、暴風雨にも動じたまわぬ崇高さが、かえって法信を夢のような恐怖の世界に引き入れた。

「恐ろしい風だなあ」

 和尚の言葉に法信はどきりとした。

「時に法信!」

 しばらくの後、和尚は突然あらたまった口調で、法信の方に向き直って言った。

「今夜わしは、阿弥陀様の前で、お前に懺悔(ざんげ)をしなければならぬことがある。わしは今、世にも恐ろしいわしの罪をお前に白状しようと思う。幸いこの暴風雨では、誰にきかれる憂いもない。耳をさらえてよく聞いておくれよ」

 和尚はその眼をぎろりと輝かして一段声を高めた。

「実はなあ、お前はわしを徳の高い坊主だと思っているかもしれんが、わしは阿弥陀様の前では、じっとして坐っておれぬくらいの、破戒無慚(はかいむざん)の、犬畜生(いぬちくしょう)にも劣る悪人だよ」

「えッ?」

 あまりに意外な言葉に法信は思わず叫んで、化石したかのように全身の筋肉をこわばらせ、和尚の顔を穴のあくほどながめた。

「わしはなあ、人を殺した大悪人だ。さあ、驚くのも無理はないが、お前がこの寺に来る前に雇ってあった良順(りょうじゅん)という小坊主は、あれはわしが殺したのだ」

「嘘(うそ)です、嘘です、和尚さま、それは嘘です。どうぞ、そんな恐ろしいことはもう言わないでください」

「いや、本当だよ。阿弥陀様の前で嘘は言わぬ。良順は、表て向きは病気で死んだことになっているが、その実、わしが手をかけて死なせたのだ。それには事情(わけ)があるのだよ、深い事情があるのだよ。その事情というのはまことに恥ずかしいことだけれども、これだけはどうしてもお前に聞いてもらわねばならん。

 わしは坊主となって四十年、その間、ずいぶん人間の焼けるにおいを嗅(か)いだ。はじめはあまり心地のよいものではなかったが、だんだん年をとるにしたがって、あのにおいがたまらなく好きになったのだ。そうしてしまいには、人間の脂肪の焼ける匂いを一日でも嗅がぬ日があると、なんだかこう胸の中が掻(か)きむしりたくなるような、いらいらした気持になって、じっとして坐っていることすらできなくなったのだ。あさましいことだと思っても、どうにも致し方がない。魚を焼いても、牛肉を焼いても、その匂いは決してわしを満足させてくれぬ。あの、したまがりの花の毒々しい色を思わせるような人肉の焼けるにおいは、とても、ほかのにおいでは真似(まね)ができぬ。

 お前は、わしがこのあいだ貸してやった雨月物語の青頭巾(あおずきん)の話を覚えているだろう。童児に恋をした坊主が、童児に死なれて悲しさのあまり、その肉を食い尽くし、それからそれに味を覚えて、後には里の人々を殺しに出たというあの話を。わしは、ちょうど、あのとおりに人界の鬼となったのだ。そうして、とうとう、そのために、良順を殺すようなことになったのだ。

 良順がしばらく病気をしたのを幸いに、わしはひそかに毒をあたえて、首尾よく彼を殺してしまった。まさか、わしが殺したとは誰も思わないから、ちっとも疑われずに葬式を出した。しかし、彼が焼かれる前に、彼の肉は、ことごとく、わしのために切りとられたのだ。そうしてそのことは、もとより誰も知るはずがなかったのだ。

 それから、わしがその良順の肉をどうしたと思う。さすがにわしもたびたび人を殺すのは厭(いや)だから、なるべく長い間、彼の肉の焼けるにおいを嗅ぎたいと思ったのだよ。そこでいろいろと考えた結果、ふと妙案を思いついたのだ。それはほかでもない、その肉の脂肪から、蝋燭を作ろうと考えたのだ。蝋燭ならば坊主の身として、朝晩それを仏前で燃やしてにおいをかぎ、誰に怪しまれることもない。それに蝋燭にしておけば、かなり長い間楽しむことができる。こう思って、わしはひそかに手ずから蝋燭を作ったよ。普通の蝋の中へ良順の脂肪をとかしこんで、わしは沢山思いどおりのものを作った。

 そうして毎日、わしはもったいなくも、勤行の際に、その蝋燭を燃やして、わしの犬畜生にも劣る慾を満足させておった。時には勤行以外のおりにも、蝋燭を燃やして楽しんだことがある。だが今日まで、仏罰にもあたらず暮らしてきた。思えば恐ろしいことだった。

 ところが、法信、わしの作った蝋燭には限りがある。毎日一本ずつ燃やしても一年かかれば三百六十五本なくなる。だんだん蝋燭がなくなってゆくにつれて、わしは言うに言えぬもどかしさを覚えたよ。この二、三日、わしはなんともいえぬやるせない心細さを感じてきた。これではなんとかしなければならんと、法信、わしは食べ物も咽喉(のど)をとおらぬくらい考え悩んだのだ。

 ここにいま燃えているのが、良順の脂肪でつくった蝋燭のおしまいだ。わしは先刻から気が気でないのだ。法信、わしは良順の代わりがほしくなった。わしは、法信、お前を殺したくなった。

 こら、何をする! 逃げようったとてもう駄目だ。この暴風雨は、人を殺すに屈竟(くっきょう)の時だ。これ泣くな、泣いたとて、わめいたとて、誰にも聞こえやせん。お前はもう、蛇(へび)に見こまれた蛙(かえる)も同然だ。いさぎよく覚悟してくれ、な、わしの心を満足させてくれ、これ、どうかわしの不思議な心をたのしませる蝋燭となってくれ、よう」

 和尚に腕をつかまれた法信は、絶大な恐怖のために、もはや泣き声を立てることすらできず、その場に水飴のようにうずくまってしまった。でも、今が生死のわかれ目と思うと、その心は最後の頼みの綱を求めて、思わず歎願の言葉となった。

「和尚さま、どうぞ勘弁(かんべん)してくださいませ。わたしは死にたくありません、どうぞどうぞ、生命をお助けくださいませ」

「ふ、ふ、ふ」

 和尚は悪魔の笑いを笑った。その時、暴風雨は一層つよく本堂をゆすぶった。

「これ、この期(ご)になって、お前がいくら、なんといっても、わしはもう容赦(ようしゃ)しない。さあ、覚悟をせい!」

 こう言ったかと思うと、和尚は腰のあたりに手をやって、ぴかりとするものを取り出した。

「わッ、和尚さま、後生です、どうかその刃物だけは、どうか、御免なされてくださいませ! わたしは厭です、殺されては困ります」

 この言葉をきくなり、和尚はふり上げた腕をそのまま、静かに下ろした。

「お前はそれほど生命がほしいのか」

「はい」

 法信は手を合わせて和尚を拝んだ。

「それでは、お前の生命は助けてやろう。その代わり、わしの言うことをなんでもきくか」

「はい、どんなことでもします」

「きっとだな?」

「はい」

「そうならわしの人殺しを手伝ってくれるか」

「え?」

「お前を助ければ、その代わりの人を殺さにゃならん。その手伝いをお前はするか」

「そ、そんな恐ろしいこと」

「できぬというのか」

「でも」

「それならば、いさぎよく殺されるか」

「ああ、和尚さま」

「どうだ」

「ど、どんなことでも致します」

「手伝ってくれるか」

「は、はい」

「よし、それではこれからすぐに取りかかる」

「え?」

「これから人殺しをするのだ」

「どこで……」

「ここで」

「誰を殺すのですか」

 和尚は返答する代わりに、殺気に満ちた顔をして、左手で、阿弥陀如来の方を指した。

「それではあの阿弥陀様を?」

「そうではない。あの尊像の後ろには、今、この暴風雨に乗じて、この寺にしのび入った賽銭(さいせん)泥棒がかくれているのだ。それをお前の身代わりにするのだ。さあ来い」

 和尚は立ち上がった。が、法信が立ち上がらぬ前に、そこに異様な光景があらわれた。

 阿弥陀如来の後ろから、巨大な鼠(ねずみ)のような真っ黒な怪物が、さッと飛び出して、あたりのものを蹴散らかし、一目散(いちもくさん)に逃げ出して行った。法信が、それを覆面の泥棒だと知るには幾秒かの時間を要した。

「やッ、和尚さま!」

 不思議にもその時恐怖を忘れた彼が、こう叫んで、泥棒のあとから駈(か)け出そうとすると、和尚はぎゅッと彼の腕をつかみ今までとは似ても似つかぬやさしい顔をして言った。

「捨てておけ。逃げたものは逃がしておけ。だが、法信、勘忍(かんにん)してくれよ。今のわしの話した蝋燭の一件は、あれはわしがとっさの間にこしらえた話だよ。さっき、わしは阿弥陀様の後ろに、ちらッと動くものを見たので、さては、泥棒がこの暴風雨に乗じて賽銭を盗みに来たのだと知ったが、うっかりわめいては、先方がどんなことをするかも知れぬと思ったから、これは策略で追い散らすより外はないと考えたのだよ。刀でもふりまわされた日にゃ、二人とも殺されてしまうかもしれないからなあ。でも、幸いに、泥棒もわしの話を本当だと思って逃げて行った。なに、この蝋燭は普通のものだよ。良順は病気で死んだに間違いない。実は今夜わしは雨月物語を読んでいたのだ。それから思いついたのだ、お前をびっくりさせたあの話を」

 こう言って右手にもった光るものを差し出し、さらに続けた。

「お前が刃物だといったのは、この扇子(せんす)だよ。恐ろしい時には、物が間違って見える。きっとあの泥棒もこれを刃物だと思ったにちがいない……」

 暴風雨はいぜんとして狂いたけった。


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보기 드문 범죄(稀有の犯罪)

고사카이 후보쿠 (小酒井 不木) (1927)

일본어 원문


       一


 悲劇というものは、しばしば、まるでお話にならぬような馬鹿々々しい原因で発生するものであります。ほんの一寸(ちょっと)した出来心や、まったく些細ないたずらから、思いもよらぬ大事件を惹き起すというようなことは、よく物語などにも書かれているのであります。

 これから私が御話しようとするのも、やはり馬鹿々々しい原因で、三人の宝石盗賊がその生命を失う物語であります。というと、察しのよい読者は「ハハア宝石を取り扱った探偵小説だな。今どき探偵小説の中へ宝石を持ち出すなんて古い古い」と仰(おっ)しゃるにちがいありません。実際そのとおりで、宝石とピストルにはお互いにもう厭き厭きしてしまいました。

 けれども、懐中時計が宝石を断念する事ができぬと同じように、探偵小説もなかなか宝石と絶縁することはむずかしいのであります。まったく、宝石の色と光とはたまらなくいいものです。じっと見ていると、しまいには一種の法悦を感ずるくらいでありますから、箕島(みのしま)、仙波(せんば)、京山(きょうやま)の三人が、共謀して、宝石専門の盗賊となったのも、あながち酒色に費す金がほしいばかりでなかったのであります。しかし、どうして三人が一しょになって仕事をする様になったか、また、三人がどういう生い立ちの者であるかというようなことは、この物語とは関係のないことですから、申し上げません。とにかく、三人は宝石に対する趣味を同じくして、他人の秘蔵している宝石を盗んだのですが、いつも一定の時日愛翫すると、それを売り払って、金にかえ、しばらくの間にその金を費い果してしまうのでした。

 して見ると彼等三人の宝石に対する趣味は、純なものだとはいわれません。それのみならず、彼等は、宝石を奪うためには、他人を傷つけたり、殺したりすることさえ敢(あえ)てしましたから、いわば彼等の趣味は悪趣味というべきものでした。

 こうした悪趣味は、そんなに長い間、青天白日の下で栄えるものではありませんが、不思議にも警察は、久しくその悪趣味を除くことに成功せず、実をいうと、彼等三人が、何処に住(すま)って、どんな容貌をしているかさえ知らなかったのであります。知っているのはこの物語の作者ばかりで、実は彼等は市内に二ヶ所の住居(すまい)即ち根城を持っていましたが、三人とも非常に変装に巧(たくみ)でありまして、単に風采を変えるのに秀でていたばかりでなく、他人の容貌に扮装することも、彼等にとっては極めて容易な業でありました。だから、警察には中々わからなかったのであります。何しろ盗賊にはいって、ただちにその家の主人公に扮装することなどがあるのですから、無理もありません。

 ところが、悪運が尽きたとでもいうのですか、それとも、阿漕(あこぎ)が浦で引く網も度重なれば何とやらの譬(たとえ)か、警察ではやっとのことで、彼等の二つの住居の中の一つを嗅ぎ出したのです。場所はS区B町という尼寺の多い町でして、まったく宝石盗賊などの住みそうもないように思われる場所なのです。しかも、いざというときには、うまく逃げられるように、警察の知らぬ秘密の通路などがこしらえられてありました。

 で、警察では、こんど、三人が何処かの邸宅にはいって宝石を盗んだならば、すぐこの根城を襲って彼等を取り押える手はずになっていたのであります。このことは、やはり作者が知っているだけで、彼等三人はちっとも知らなかったのであります。さればこそ、彼等がN男爵家にはいって、男爵の秘蔵していた青色のダイヤモンドを盗むなり、警察のために、その根城に踏みこまれ、しかも、妙な行きがかりから、三人とも生命を失うようなことになったのであります。

 N男爵家の青色のダイヤモンドは、彼等三人の久しく狙っていたところのものであります。それは時価少くとも二十万円の宝石でありまして、大きさは無名指の頭ぐらいですけれど、その色が南国の海の様に青く、たまらなく美しいのであります。実は彼等は、これを奪うなり、暫く日本から離れて、支那へでも渡ろうという計画を建てていたのですが、とかく、世の中のことは、予定通りにはまいらぬもので、とうとう支那よりももっと遠い、十万億の仏土を隔てたむこうまで旅行することになりました。


       二


 お話の順序としては、彼等が如何なる手段をもって、N男爵家の金庫の中にあったダイヤモンドをまんまと手に入れたかを語らねばなりませんが、そういう探偵小説はもういい加減に読者諸君が厭き厭きしておられるであろうから、私は、いきなり、三人が、B町の住居の一室で、盗んで来たダイヤモンドを中央のテーブルの上に置き、それを取り囲んで、うっとりと見つめながら思うままに賞翫している場面から述べはじめるのであります。いつも三人は、緑色のシェードをもった卓上電燈の光りで、宝石の魅力ある光をながめるのですが、今は丁度午前二時で、三人は一時間ほど前に、男爵邸でかなりに心身を疲労したせいか、青色の光の前で、まるで催眠術にでもかけられているように、ぼんやりした表情をしつつ、長い間、無言の行をつづけました。三人とも煙草がきらいなので、はたから見ると、頗(すこぶ)る手持無沙汰に見えますけれど本人たちはそれ程に思わないのでしょう。テーブルの上にのせた手を組んで、前かがみに椅子に腰かけ、宝石の光に刺戟されて、色々の追想にふけるのでした。秋の夜の戸外は至って寂しく、お寺の多い町の静けさは、人々に一種の鬼気を感ぜしめないではおきません。

「美しい!」と、箕島が小声でいいました。

「すごい!」と、仙波がいいました。

「素敵だ!」と、京山がいいました。

 それから、再び沈黙が続きました。

 凡そ三十分程鑑賞の沈黙が続いたとき、聴覚の最もよく発達した箕島は戸外にある一種の異様な物音をききました。もし三人の聴覚が同じ程度の鋭敏さであったならばこれから述べるような悲劇は起らなかったであろうに、仙波と京山の二人は、年は箕島と同じく三十五六歳でありながら、耳の発達が普通で、その時何の音をも聞かなかったのであります。

 だから箕島が、青色のダイヤモンドの方へ、フッと手をのばして、瞬く間に、口の中へ入れてぐっと嚥(の)みこんだ時には、箕島が戸外の物音を警察の追跡と直覚し、危険を恐れてダイヤモンドを体内にかくしたのだとは思わず、反対に箕島がそのダイヤモンドを独占しようとしたのだと誤解したのであります。

 仙波と京山とは、同時に箕島におどりかかりました。その時箕島が、その理由を説明すればよかったであろうに、箕島は三人の生命を完(まっと)うしなければならぬという方に気をとられ、いきなり卓上電燈のスイッチをひねって灯を消しました。ところが、この行為は、他の二人の疑惑を一層深めました。

「しッ!」といって箕島は、二人の注意を促そうとしましたが、もはや駄目でした。次の瞬間、椅子のたおれる音、テーブルの転がる音、卓上電燈の割れる音が聞えました。いうまでもなく、はげしい暗中の格闘がはじまったのです。

 一しきり、どたんばたんという音が続きましたが、そのうちに突然ピストルの音がしたかと思うと、それと同時に「うーん」とうめく声が聞えました。そうしてしばらくの間、ぴたりと物音がとだえましたが、その時室外に突然どやどや沢山の人の足音がしました。即ち警官たちが、N男爵邸の盗難の報に接して、かねて目星をつけていた三人の巣窟を襲ったのです。

 警官たちが、三人のいた室にはいるためには、相当の時間を要しました。即ち扉(ドア)を破らねばならなかったからです。室の中には火薬の煙のにおいが漂っておりました。そうして、警官たちが、懐中電燈をもって室内を照らして見ますと、家具の狼藉の中に、箕島――即ち、いましがたダイヤモンドを嚥(の)みこんだ箕島が、左の胸部から血を流して死んでおりました。


       三


 もし箕島がダイヤモンドを嚥みこんでいなかったならば、仙波も京山も生命を失うような悲劇を起さなかったでしょうが、箕島の腹の中にあるダイヤモンドを取り返そうと二人が計画したばかりに、はからずも悲運を招くことになりました。

 B町の巣窟の秘密の通路から首尾よく逃げ出した仙波と京山の二人は、第二のかくれ家に来て、「ほッ」と一息つきました。

「貴様が箕島を殺したばっかりに、折角手に入れたダイヤモンドを、みすみす捨ててしまった」と、京山は残念そうな顔をしていいました。

 この京山の言葉によると、ピストルを発射したのは仙波だと見えます。

「仕方がないよ。箕島の奴、俺等二人を出し抜いて、自分一人でダイヤモンドをせしめようとしたんだもの。奴にとられるよりはまだましだ」と、仙波は、箕島を殺したことを左程後悔もせず、またダイヤモンドを失ったことをあまり惜しがりもしないような態度で言いました。

「これでいよいよ日本の土地を離れることが出来るのだと思って喜んでいたのに、すっかり計画がくるってしまった」と、京山は吐き出すようにいいました。

「まあそんなに悲観するな」と仙波は諭(さと)しました。仙波は甚だ気が短かい性分でして、だからこそ、一時の激情に駆られて、久しく親密にしていた箕島を殺したわけですが、京山が甚だしく悄気(しょげ)かえっているのを見ると、先ず自分から落ついて、京山をなぐさめるより外はありませんでした。

「でも惜しいよ」と、京山はなおもあきらめられませんでした。

「おいおい」と仙波は京山の注意を促すようにいいました。「おれの身にもなってくれ。おれは人殺しをして、今日から日蔭ものだよ。もっとも、つかまった時には貴様にも、まきぞえを食わしてやるつもりだがな、まあまあ当分はつかまらぬつもりだから心配せぬでもいい。それよりも、何か新らしい仕事を計画しようよ」

「新らしい仕事よりも、おれはあの箕島の嚥みこんだダイヤモンドを取りかえしたいと思うんだ。何とかよい方法はないものかなあ」

 京山はどこまでも青色の宝石に未練を残しておりました。

 いわれて見れば仙波にしても、まんざら惜しくないこともありません。といって今ごろは警察の手に渡ってしまったであろうところの箕島の死骸の中から、問題のダイヤモンドを取りかえすことは、到底不可能のことであります。

「駄目だよ。箕島の身体はもう、こっちのものでないからな。それにしても、どうして警察の奴等が俺等の巣を嗅ぎ出したのだろう。ことによると、箕島の奴め、警察に密通して、あの場合、俺等二人を警察の手に渡して、ずらかるつもりだったかも知れん」と、仙波は、どこまでも、箕島の行動を誤解しております。

「だから、宝石が箕島に占領されたかと思うと、いよいよ残念じゃないか」と、やっぱり、京山にも箕島の真意がわかっておりません。

「それもそうだなあ」と、仙波も考えはじめました。「けれど、とてもとてもとり戻す手段はないじゃないか」

「そこを何とか工夫して見ようじゃないか。貴様は俺より人間の身体の中のことはずっと委(くわ)しいはずだから、一つよく考えて見てくれ」

 仙波はもと、T医科大学の病理学教室の小使をしていたことがあって、人間の解剖に馴れていたので、京山はこういったのです。仙波は人間の解剖をたえず見ていたので、自然殺伐な性質が養われたわけですが、いかに人体の内部のことにくわしくても、箕島の体内にはいったダイヤモンドを取り返す妙案は浮びそうにもありません。

「待てよ」と仙波は腕を組み、眼を閉じて、しばらくの間考えこみました。朝が近づいたと見えて、街から荷車のとおる音が聞えて来ました。二人は別に疲れた様子もなく一生懸命に考えました。

 やがて、仙波の顔にはあかるい表情がうかびました。

「あるよ、妙案が」と、仙波はにこにこしながらいいました。

「どんなことだい?」と京山は息をはずませました。

「まあ、ゆっくり聞け」と、仙波は得意気にいいました。「箕島の死骸は、今日、大学の法医学教室へ運ばれて、解剖されるにちがいない。おれは病理学教室にいる時分、時々法医学教室へもいったが、法医学教室は教授と助手二人と小使との四人きりで、解剖は教授がやることもあるし、助手がやることもあるのだ。殺人死骸が外から運ばれてくると、とりあえず解剖室に置いて、すぐさま、解剖の始まることもあるが、大ていは、四五時間の後か、或は教授の都合により、翌日に行われるのだ。だから、こんども、その間に、うまく教室へしのびこんで、死体の腹を開いて、胃の中から、ダイヤモンドを取り出せばいい」

「なる程なあ」と、京山もこの妙案に力づけられていいました。「けれど、夜分ならともかく、今日の昼中解剖が行われて警察の人間がそばに居たら、盗みにはいることも出来ないじゃないか」

「それもそうだ」と、仙波は再び考えこみました。そうして暫くの後、何思ったか、じっと京山の顔を見つめて、にこりとしながら「いいことがある」と叫びました。

「何だい、俺の顔ばかり、じろじろながめて」

「その貴様の顔が入用なんだよ。というのは、貴様に白い鬘(かつら)をきせて、胡麻塩(ごましお)の口髭と頤髭とをつけると、法医学教授の奥田博士とそっくりの顔になるんだ。だから、教授に扮装して教室へ入りこみ、ダイヤモンドを取り出してくればよい」

「なるほど、もしそうだったら、そいつは面白い」と、これまで三人のうちで扮装の一ばん巧だった京山は、一種の誇りを感じていいました。が、次の瞬間、急に顔を曇らせました。

「けれど、俺は解剖のことをちっとも知らないんだから駄目じゃないか。もし沢山の人がいたら、何とも仕ようがないじゃないか」

「そこだよ、貴様の腕を見せるところは、つまり、教授に扮装して、助手に命令し、万事助手にやらせて見ておればよいのだ」

「けれど、そうすれば、ダイヤモンドをその助手にとられてしまうじゃないか」

「無論ぼんやりしていてはいけない。即ちその助手に命じて、胃と腸は都合によって自分で研究して見たいからといって、胃腸を切り出させ、それを貰って逃げてしまえばよいのだ」

「そうか。しかし、同じ教授が二人おればすぐ見つかってしまうじゃないか」

「それで、俺が力を貸してやろうと思うんだ」と、仙波もいつの間にか、真剣になりました。

「先ず、貴様と一しょに警察のものだと偽って法医学教室をたずねる。教授に逢って二三世間話をし、その間に貴様が教授の声色(こわいろ)や癖を研究する。それから突然二人で教授を縛り上げて猿轡(さるぐつわ)をかませる。そうして貴様が持って行った扮装道具で手早く教授に扮装して解剖室へ行く。その間、俺は教授室の中から鍵をまわして本物の教授の番をしている。貴様は解剖室で助手に命じて胃腸を切り出させ、一寸自分の室へ行ってくるといって、そいつをもって帰ってくる。そこですぐさまもとの服装にかえり、臓物を新聞紙に包んで法医学教室を抜け出す。どうだい? これなら、そんなにむずかしいことはないじゃないか」

「うまいうまい」と、京山は、はや計画が成功したかのように、うれしそうな顔をしていいました。まったくこの計画が成功すれば二十万円を二人でわけることが出来るのですから嬉しいにちがいありません。「それじゃ、そういうことにして準備に取りかかろう。これから一寝(ひとね)入りしたら貴様すまぬが自働電話をかけて、解剖が何時にはじまるかきいてくれよ。それとも、解剖はもうはじまったかも知れぬかな?」と、不安そうな顔をしました。

「大丈夫だよ。九時より前にはじまることは決してないよ」と、仙波は自信をもっていいました。


       四

 九時少し前、仙波は法医学教室へ自働電話をかけに行って、にこにこしながら、帰って来ました。二人とも熟睡と朝食との為に、溌溂とした元気でおりました。

「どうだった?」と京山がたずねました。

「上首尾さ」と、仙波は答えました。「午後の正三時に解剖が行われるというのだ」

「そりゃ都合がいい」と、京山も嬉しそうにいいました。「時に、電話で、どういって先方へたずねたのかい?」

「別にむずかしいことはなかったさ」と、いいながらも仙波は少なからず得意です。

「こちらは警察のものだが、昨晩、S区B町で殺された死骸はもう着きましたかとたずねたのさ。すると、小使の声で、今朝早く着きましたという返事よ。〆(しめ)たと思ってね。それから、解剖は何時からですかというと、午後の三時からだという答えなんだ。万事工合よく行ったよ」

 それから二人は扮装に必要な道具を吟味しました。そうして、午後二時四十分ごろ法医学教室をたずねた時には、二人はまったく、私服の警察官らしい姿になっておりました。

 だから、二人は教授室へ、何の疑惑もなく迎え入れられました。京山は教授の顔を一目見るなり、なるほど自分の顔に似たところがあると思い、同時に教授の態度や声色が極めて真似し易いことを知りました。

 教授との二三の会話の後、いま、解剖室には警察や検事局の人が立合って、教授の行くのを待っているばかりであるということがわかりました。で、仙波はすばやく京山に合図をして、あッと思う間に教授に猿轡(さるぐつわ)をはめ、教授をしばり上げました。そうして五分たたぬうちに、京山は、白い手術衣をつけた奥田博士になり切ってしまいました。

 贋の奥田博士が廊下に出るなり、むこうから、同じく白服を着た男が来ました。京山は直覚的に、それが助手であると知りました。

「先生、もう皆様(みなさん)がお待ち兼ねですから、呼びにまいりました」

「そうかね、今一寸手が離せなかったものだから」と贋博士は鷹揚(おうよう)な態度でいいました。

 助手は敬意を表する為、教授の後にまわって歩こうとしました。京山ははッと驚きました。解剖室がどこにあるかわからないので、思わずもその場に立ちどまってしまいました。が、さすがはこれまで幾度(いくたび)となく扮装したことのある京山ですから、突嗟(とっさ)の間に、ある考えを思いつきました。

「実は今日の解剖は君たち二人にやってもらうことにしたよ。だから、そのつもりで一足先へ行って、もう一人の助手にそういってくれたまえ」

 助手は怪訝(けげん)そうに教授の顔を見上げていいました。「矢野君は今日留守で御座いますから、先生と御一緒に解剖するはずで御座いましたが」

「いや、そうそう」と京山は、内心ぎくりとしながら答えました。「ついうっかりしていた。実はねえ、あの死骸は少し怪しいと思うところがあるから、腹の中の……五臓を僕自身で検(しら)べて見たいと思うのだ。だから君面倒だが、真先に腹の中のものみんな取出してくれぬか」

『五臓』などという言葉をこれまで一度も先生の口からきいたことがないので、助手は不審に思いましたが、矢野助手の不在を忘れるくらいだから、先生今日はどうかしてるなと思いました。

「承知しました」こういって助手が先になって走り出そうとすると、

「あ、君一寸」と贋教授はよびとめました。「君、僕はここで待っているが、腹の中のものだけ切り出して持って来てくれぬか。何だか今日は気分がすぐれないから」

 少々京山も臆病になって来ました。

「でも先生、先生の口から、一応検事にそのことを仰(おっ)しゃって下さらなければ困ります。先生がそばにいて下されば、私がすぐ切り出して差上げます」

 この最後の言葉に急に力づけられた京山は、「よし、それでは挨拶に行こう」と助手のあとから、解剖室にはいりました。

 解剖室の中には検事をはじめ、その他の司法官、警察官など数人の人が、鹿爪(しかつめ)らしい顔をして立っていました。京山は何となく気がひける思いをしましたが、折角ここまで事を運んで、やり損なっては何にもならぬと思い、勇を鼓して、かるくみんなに目礼をしました。

 が、中央の解剖台上の死体を見るに及んで顔をそむけずにはおられませぬでした。死体の顔と局部はガーゼで蔽(おお)ってありましたが、胸の創(きず)がまる出しになって、そこから血がにじみ出ていたので、これまで一度も、かようなものを見たことのない京山は、少なからず内心の平衡を失いました。

「この死骸は」と、いきなり京山はいい出しました。その声が少し調子外れでありましたから、みんなは一斉に教授の顔を正視しました。すると教授は一層興奮してしまいました。「腹の中にダイ……いや大事な……証拠をもっていると思いますので、先ず腹の中のものだけを切り出して、それを僕自身で検べて見ようと思います。おい君!」と、助手の方に向い、「大急ぎで取り出してくれたまえ」

 もとより誰も教授の言葉にさからうものはありませんでしたから、何か質問されやしないかと、はらはらしていた京山は、この後幾分か安心の呼吸をすることが出来ました。けれども、彼は全身に汗のにじみ出たことを感じました。

 助手は教授の命令のままに、腹壁を開いて、手早く、腹部内臓の切り出しに取りかかりました。京山は、はじめはおそろしいような気になりましたが、段々見ているうちに、不思議なもので、何ともなくなりました。そうして幾十分かの後腹部内臓の全部が、琺瑯(ほうろう)鉄器製の大盆の上に取り出されたときには、そばにあったピンセットを取り上げて、臓器の一部分に、もっともらしく触れて見るだけの勇気が出ました。

 贋教授はやがて、大盆を取り上げましたが、思ったより重いのにびっくりして下に置きました。

「僕が御室(おへや)まで持って行きましょうか」と、助手がいいました。

「それには及ばぬ」こういって再び持ち上げましたが、その瞬間、ふと、これが昨日まで一しょに語った箕島の『はらわた』であるかと思って、気がぼーっとしました。もしその時、助手が、

「先生!」

 と叫ばなかったなら、或は彼はその盆を床の上に落したかも知れません。

 助手は言葉を続けました。「胸部の解剖はどうしましょうか?」

「どしどしやってくれたまえ。僕はじきかえって来る」

 こういって京山は逃げるようにして、解剖室を出ました。


       五


「重い重い。まったく、くたびれてしまった」と、京山は、大きな新聞紙の包をテーブルの上に投(ほう)り出して、ぐったりと椅子に腰掛けました。

「自業自得だよ。胃腸だけでいいものを、余分のものまでとってくるんだから」と、仙波は、たしなめるようにいいました。でも、二人の顔には、予定どおり事を運んで、首尾よくダイヤモンドを取りかえした満足の表情がうかんでおりました。

「だって、俺は、胃腸という言葉を忘れてうっかり五臓といってしまったんだ」

「馬鹿、五臓といや、胸の臓器もはいるのだよ」

「でも、あの助手は俺の言葉をすっかりのみこんで、とにかく、目的をとげさせてくれたよ。だが、今ごろは教室で大騒ぎをしていることだろう」

「まったくだ。けれど、教授は俺が番をしている間、神妙にしていたよ。それにしても切出しは随分長くかかったもんだ」

「俺も本当に気が気でなかった。……時にぼつぼつダイヤモンドの取り出しにかかろうか。これからは、貴様の仕事だぞ」と、京山は促すようにいいました。

「よし来た」こういって、仙波は新聞紙を解きにかかりました。解いて行くにつれ、生々しい血潮のしみがあらわれましたので京山は妙な気分になりましたが、仙波は平気の平左で手ぎわよくあしらって行きました。

 やがて比較的乾いた内臓があらわれました。

「これが脾臓(ひぞう)で、これが肝臓だ。こいつが馬鹿に重いんだよ。これが胃で、この中にダイヤモンドがあるはずだ」

 こういって彼は、指をもって胃袋の上面を触れました。

「ダイヤモンドは外からさわって見てもわかるはずだ」

 暫くさわっていましたが、

「おや、おかしいぞ!」といいました。この言葉に、京山も思わず全身を緊張させて仙波の血に染った指の先を見つめました。

「おい、鋏(はさみ)とナイフを取ってくれ」と仙波がいいましたので、京山がそれを渡すと、手早く仙波は胃袋を切り開きました。

「無い。腸の方へ行ったのかしら」

 こういって、仙波は何となくあわてた様子をして、十二指腸、小腸、大腸、直腸を切り開き、次で、その内容を調べて見ましたがダイヤモンドは姿を見せませんでした。

 二人は暫くの間、互いに顔を見合せました。腹立たしさと絶望とのために、二人の顔は急に蒼ざめました。

「ないんだよ、おい!」と、気の早い仙波は額に青い筋を立てていいました。

「ないはずがあるものか」と、京山は、不審そうな顔をしました。

「だってないじゃないか」

「もっと捜して見い。その大きな肝臓とやらの中にはないのか」

「こんなところへ行くものか」

「それじゃ、箕島が、口の中へふくんでいただろうか」

 そういえば、そうと考えられぬこともないので、仙波は、

「畜生、また奴に一ぱい食わされたのかな。奴め、どこまでも祟りやがる」

 といいながら、あたかも、箕島に復讐するかのように、ナイフをもって、肝臓や脾臓を寸断々々(ずたずた)に切りました。そうして、残った臓器の塊を、あちらこちらにひっくりかえしながら、なおもナイフを突きさすのでした。

「おい、よせよ。無いものは仕方がないじゃあないか。俺はもうあきらめたよ。折角貴様の力でここまでやって来たが、こんどはよっぽど悪運につけこまれたんだ。貴様もあきらめてしめえ」と吐き出すようにいいました。

 妙なものです。始めは京山の方があきらめかねて事を企てたのですに、今は、仙波の方があきらめかねるのでした。そうして依然として、寸断の行為(しぐさ)を続けました。

「いい加減にしないか」と京山は声を強めていいました。

 と、その時仙波は何思ったか、怖ろしいものでも見つけたかのように、そのうちの一つの臓器をじっと見つめていましたが、やがて、手に取り上げて見るなり、

「やッ」と叫びました。「これ、貴様、とんでもないものを持って来たな」と、怖ろしい眼をしていいました。

「何だ?」

「こりゃ貴様、子宮だぞ!」

「え?」

「え? もないもんだ。これ、よく聞け、貴様がもってきたのは女のはらわただぞ」

「女?」

「そうよ、男に子宮はない」

「だって」

「だってじゃない。女と男と間違える奴があるか。一目でわかるじゃないか」

「でも、顔と局部には白いきれがあててあった」

「髪があるじゃないか、髪が」

「髪はなかったようだ」

「嘘いえ。それに乳房でもわかるじゃないか」

「それが、乳房も大きくなかったようだ」

「おい、おい」と仙波の声は荒くなりました。

「人を馬鹿にするなよ、人を」

「何を?」と、京山もいささか憤慨しました。

「貴様、助手をだまして、箕島のダイヤモンドをせしめ、俺には別の死骸のはらわたを持って来たな? 道理でながくかかったと思った」

 身に覚えのないことをいわれて京山の怒りは急に膨脹しました。

「何だと? いわして置けば、きりがない。貴様先刻から、あちら、こちらにいじくりまわしていたが、俺の知らぬ間にダイヤモンドを取り出して、俺がはらわたの事を知らぬと思って、子宮だなどといって、うまくごまかすのだろう」

 ぱッと仙波は京山にとびつきました。次の瞬間はげしい格闘がはじまり、やがて二発の銃声が起って、二人は死体と化してしまいました。


 翌日の新聞には、「稀有の犯罪」と題してT大学法医学教室の奥田教授の奇禍と鑑定死体の腹部臓器の盗難顛末が報ぜられておりました。それによると、S区B町の尼寺にその前夜強盗がはいって、尼さんの胸を短刀で刺し殺して金員を強奪して行ったのであるが、その尼さんの死体の臓器を二人の男が持って行ったのであって、何の目的であるのか判らないということでした。なお、焼場の死体の臓器を盗む犯罪はよくあるが、法医学教室へ強奪に来るのは稀有の犯罪だと書き加えられてありました。

 これで読者諸君にも、臓器の間違いの理由はわかったことと思いますが、ここに当然起る疑問は、箕島の死体がどうなったかということです。これは翌日の新聞にも出ていなかったのです。というのは、警察は三人組の他の二人をさがす為に、秘密に行動したからでありました。箕島の死体は警察医によってB町の三人の巣窟で解剖され、その結果、当然、胃の中から青色のダイヤモンドが発見されました。そうして宝石は首尾よくN男爵の手にかえりました。

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혈우병(血友病)

고사카이 후보쿠 (小酒井 不木) (1927)

번역 : 홍성필


“아무리 잘못된 신념이라도 상관없습니다. 그 신념을 지키고 정신을 긴장시킨다면 그 긴장이 계속되는 한 생명을 유지할 수 있다고 생각합니다.”

의사인 무라오(村尾) 씨는 봄날 저녁 간담회 석상에서 불로장수(不老長壽)법이 화제에 올랐을 때 매우 진지한 표정으로 이렇게 말문을 열었다.

“지금부터 10년 정도 전에 제가 지금 그 자리에서 개업하고 얼마 지나지 않았을 때의 일입니다. 어느 여름 날 아침, 저는 같은 동네에 사는 시모야마(下山)라고 하는 집에서 긴급환자가 있으니 어서 와 달라고 했습니다. 그 집은 나이 든 부인과 그녀를 보살피는 노파만이 살고 있었는데, 주인인 부인을 저는 한 번도 본 적이 없었으며, 또한 그 집에서 진찰을 와 달라는 청은 지금까지 한 차례도 없었습니다. 노파에 의하면 그 부인은 매우 고령이며 더구나 경건한 크리스천이라고 했기에 동네 사람들은 여러 가지 소문을 말하기도 했습니다만, 부인은 세상과의 교제를 끊고 살았기에 누구도 그 집 사정을 아는 사람은 없었습니다. 그런데 지금 그 부인이 병에 걸렸다고 하여 노파가 왕진을 청하러 왔기에 저는 어느 정도 호기심도 느끼며 곧바로 출발했습니다.

도착하자 놀랍게도 주인인 부인은 안방에서 방석에 가지런히 앉아 있었습니다. 하지만 제가 더욱 놀란 것은 부인의 풍채입니다. 일반적으로 노인 나이를 가늠하기는 힘들지만 저는 부인이 90세 이상은 된 것처럼 직감했습니다. 그 이유는 대개 여러분도 상상하실 수 있겠지만 머리카락은 한 가닥도 검은 털이 없고, 얼굴은 수많은 주름이 깊게 파여 있었습니다. 뿐만 아니라 어딘지 모르게 범상치 않은 기운까지 느껴졌습니다. 그러나 제게 있어서는 처음 본 얼굴이지만 분명 심한 근심을 앓고 있다는 사실을 엿볼 수 있었습니다.

…… 어떤 일이세요? 어디가 편찮으세요? 라고 인사를 마치고서 물었습니다.

부인은 말없이 가만히 제 얼굴을 바라보았습니다. 그 눈에는 기이하게 번쩍였으며 만약 상대방이 묘령의 여인이었다면 사랑에 불타는 눈빛이라고 밖에는 안 보였기에 저는 무척 당황했습니다.

…… 선생님, 저는 이제 죽어야 합니다. 선생님 손으로도 도저히 막을 수 없다고 생각했지만 이 나이가 되어서도 세상에 미련이 남았는지 아무튼 모시게 된 것입니다.

부인은 고령에 걸맞지 않게 또박또박 말했습니다. 만약 그 날이 가을밤이기라도 했다면 아마도 저는 참을 수 없을 정도로 공포심을 느꼈을 것입니다.

…… 대체 어디가 불편하신가요?

…… 알아보지 못하시는 것도 당연하지요. 그럼 부디 제 말씀을 처음부터 들어주시기 바랍니다. 사실 저희 집에는 끔찍한 질병 혈통이 있습니다. 한 마디로 말씀드리자면 신체 어딘가에 상처를 입고 피가 나오기 시작하면, 보통 사람들이라면 얼마 지나지 않아 멎습니다만, 저희 집 사람들은 그 피가 아무리 지나도 멎지 않고 몸속에 있는 피가 모두 나오고는 죽어간다는 기병(奇病)을 앓고 있습니다. 제가 알고 있는 범위 내에서 말씀드리자면 조부도 부친도 숙부도 모두 같은 병으로 죽었습니다. 또한 제 두 오라버니도 20세 전후에 같은 병으로 죽었습니다. 조부 대에서부터 저희 집에는 사내만이 태어나고, 제게는 고모도 없고 또한 언니나 여동생도 없었습니다. 두 오라버니가 죽고 (이미 그 때에는 부친도 이미 돌아가셨습니다) 제가 외동딸로 남았을 때 어머니는 어떻게든 저를 그 끔찍한 병에서 구해내고자 하여 남몰래 크리스천으로 귀의하여 하나님께 기도를 드렸던 것입니다.

제가 홀로 된 것은 제가 13세 때입니다. 어머니는 하나님께 부디 제가 세상에 있는 평범한 여인이 아니기를 기도했습니다. 말씀드리지 않아도 아시겠지만, 평범한 여인이라면 2~3년 뒤에 월경이 시작합니다. 그렇게 되면 그대로 피가 멈추지 않고 죽어가야만 하기 때문입니다. 상처만 입지 않는다면 죽음을 막을 수 있으나 이처럼 자연스럽게 일어나는 상처는 어찌 할 도리가 없기에 그저 하나님을 의지할 수밖에 없었던 것입니다.

저도 어머니로부터 그 이유를 듣고는 진심으로 하나님께 기도를 드렸습니다. 오라버니가 얼굴에 작은 상처를 입고는 의사가 처방할 도리도 없이 거기서부터 흘러나오는 피에 재를 비비면서도 점점 창백해지며 죽어가는 모습은 지금도 아직 제 눈에 생생합니다. 아아, 끔찍한 일입니다. 너무나도 끔찍합니다.

그러자 하나님은 제 소원을 들어주셔서, 제가 17세가 되어도 20세가 되어도 월경이 시작하지 않았습니다. 25세가 되어도 역시 마찬가지였기에 이제 어머니도 괜찮다고 안심하셨는가봅니다. 그 해 여름에 저 혼자 이 세상에 남겨 놓고 돌아가셨습니다. 임종에 이르기까지 어머니는 저를 보고, 너는 절대 시집가서는 안 된다, 시집가면 아이를 낳을 때 죽고 만다, 시모야마 가문은 네가 죽음과 함께 대가 끊기게 되므로, 최소한 150세까지 살아 달라고 말씀하셨습니다.

무슨 이유로 어머니가 150세까지라고 말씀하셨는지는 모릅니다. 아무튼 저는 어머니의 유언을 굳게 지키고 매일 하나님께 기도를 드리며 오늘에 이르렀습니다. 작은 상처도 입지 않도록 한시도 방심하지 않고 살아왔습니다. 그리고 다행히 단 한 번도 병을 앓지 않고, 또한 월경도 없었던 것입니다. 제가 XXXX년 X월 X일 태어났으니 오늘로 꼭 만 150세가 되는 날입니다.

이렇게 말하고 쓸쓸한 미소를 지으며 가만히 제 얼굴을 바라보았습니다. 저는 또다시 놀랐습니다. 만 150세라는 말에도 물론 놀랐으나 그보다도 섬뜩한 것은 부인의 눈빛이었습니다.

…… 그런데, 라고 부인은 말을 이었습니다. 그 눈빛이 한층 더 빛났기에 저는 어딘지 모르게 소름이 끼쳤습니다. …… 오늘 아침 갑자기 월경이 시작한 것입니다. 선생님. 제가 얼마나 놀랐는지 상상이 되시나요? 저는 이제 죽어야 합니다. 하지만 선생님, 어찌된 일인지 월경이 시작하고부터는 어제보다도 한층 더욱 이 세상에 대한 미련이 생겼습니다. 저는 죽고 싶지 않습니다. 선생님, 부디 하실 수만 있다면 저를 죽음으로부터 구해주시기 바랍니다. 제발 부탁입니다.

150세인 부인은 이렇게 말하고는 제 곁으로 다가왔습니다. 지금까지의 그 긴장이 갑자기 풀리기 시작했습니다. 저는 그 때 말로 표현할 수 없는 불쾌감을 느꼈습니다만 간신히 냉정함을 유지할 수 있었습니다.

…… 절대 걱정하지 않으셔도 됩니다. 부인 가문에 전해 내려오는 병은 혈우병이라고 하는 것인데, 이 병은 그 가문 중에서 남성한테만 걸리고 여성한테는 절대 걸리지 않습니다. 아무리 당신이 15~16세 때 월경이 시작했다고 해도 부인은 절대 죽지 않았을 것입니다. 부인께서 믿고 계신 하나님은 여성한테 월경이 있다는 이유로 여성한테는 혈우병이 걸리지 않도록 배려해주신 것입니다. 그러니 아무리 오늘 월경이 시작했다고 하더라도 머지않아 피는 반드시 멎습니다. 부인은 그로 말미암아 죽고 싶다고 해도 실제로는 죽으실 수 없습니다.

제가 말을 잇는 동안 부인 얼굴에는 일종의 야성을 띤 표정이 떠올랐습니다만 점점 그것이 표면화되어가는 것을 저는 놓치지 않았습니다. 그리고 제 말이 끝나자 눈 깜짝할 사이에 150세를 먹은 부인은 그 깊게 주름이 박힌 두 팔을 뻗고는 제 목을 끌어안았습니다.

너무나 갑작스러운 일이라서 저는 정신없이 부인을 밀쳐냈습니다.

몇 초 후, 정신을 차려보자 제 눈앞에 부인, 아니 부인 시신이 말라비틀어진 바가지처럼 추한 모습으로 누워 있었습니다.”


이렇게 말하고서 무라오 씨는 잠시 말을 멈추고 손수건을 꺼내들고는 목덜미를 닦은 후 말을 계속했습니다.

“참으로 뜻밖의 경험을 했습니다. 무엇 때문에 부인이 나한테 달려들었는지는 알 수 없으나, 그 끔찍한 경험은 평생 잊을 수 없습니다. 부인은 월경이 시작했다고 하지만 아마도 다른 질병이었는지도 모릅니다. 아무래도 150세라는 나이였으니 말입니다. 하지만 세상에는 도저히 상상할 수 없는 사실이 있다는 점을 우리는 부정해서는 안 될 것입니다. 그러나 여하튼 정신적인 긴장이 풀리면 인간은 가차 없이 허물어지고 만다는 것을 이 사건을 통해서 분명하게 알 수 있었습니다. 그리고 만약 제 말이 부인의 정신적 긴장을 풀어지게 했다면 제가 간접적으로 그 부인을 죽인 것이 되는지도 모르겠습니다…….”



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신체검사(체격검사 : 体格検査)

고사카이 후보쿠 (1927)

번역 : 홍성필


1.

“또 입학시험으로 젊은이들이 뼈를 깎는 고생을 하는군.”

손님인 후지오카(藤岡)는 측은하게 말했다.

“정말 딱한 일이야. 육체적으로나 정신적으로 너무나 과로해서 고등학교 같은 데에서는 기껏 입학해도 곧바로 병에 걸려 일어나지 못하는 사람들이 많다고 하더라고. 참 안타까운 현실이지.”라고 저는 맞장구를 쳤습니다.

“고민한 끝에 자살까지 하는 사람도 있다고 하는데 그런 말을 듣고 있으면 학문이 증오스럽기까지 해.”라고 후지오카는 지극히 진지한 표정으로 말했습니다.

초등학교 시절 동창이었던 후지오카는 24~5년 만에 저를 찾아왔는데 문득 말하다가 입학시험까지 주제가 흘러갔습니다.

올해 추위는 여전히 이어지고 춘분도 지났는데 겨울옷을 벗을 수도 없을 정도였으나 창문 너머로 들어오는 햇살은 어딘지 모르게 봄기운이 있는 것처럼 따뜻한 기운을 느낄 수 있었습니다.

후지오카는 초등학교 때 매우 기운이 넘치고 쾌활했으나 그 쾌활함은 지금도 여전합니다. 그러나 입학시험 이야기가 되자 후지오카는 갑자기 어두운 표정을 지었습니다.

저는 아까부터 그 점이 이상했는데 제 궁금증을 알아차렸는지,

“사실 나도 입학시험에 있어서는 쓴 맛을 봤어.”라며 설명하듯이 후지오카는 말했습니다.

“뭐?”라고 저는 적지 않게 놀랐습니다. “쓴 맛이라니?”

“아니, 뭐 전혀 말이 안 되는 바보 같은 일이야. 난 초등학교를 졸업하자마자 도쿄에 있는 I 중학교에 들어갔는데, 중학교를 졸업하고는 육군사관학교를 지망했거든. 그런데 신체검사에서 보기 좋게 낙방했지 뭔가…….”

“자네같이 체격 좋은 사람이 말이야? 어디가 안 좋았는데?”

저는 후지오카의 이 말을 듣고 갑자기 호기심이 생겼습니다. 대체 어디가 원인으로 이 훌륭한 체격을 가진 이가 두 번이나 신체검사에 합격하지 못했는지 매우 궁금해졌습니다.

그래서 저는 괜찮다면 불합격이 된 연유를 말해달라고 재촉했습니다.

“그게 말이야.”라고 후지오카는 말했습니다. “자네는 소설을 쓰니까, 어디 한 번 이야깃거리라도 하나 줘볼까?”

이러면서 후지오카는 다음과 같이 말했습니다.


2.

정말 나는 보는 바와 같이 건강하고 오늘까지 이렇다 할 병에 걸린 적이 없었습니다. 중학교에 다닐 때도 매우 운동에 열심을 내서 테니스 선수도 했었으나 어떻게 된 영문인지 정식 시합 날이 되면 여의치가 않아 중간 정도밖에 올라가지 못했습니다. 한 마디로 긴장한다고 해야 될지 모르겠습니다. 평소에는 아무한테도 지지 않지만 공식적인 자리에 나가면 심박 박동이 심해지고 비지땀이 흘러나와 도무지 침착성을 잃고 맙니다.

예전부터 군인이 되고 싶었기에 나는 사관학교 입학시험 준비를 했습니다. 시합이 있을 때에 긴장하는 성격이라면 훌륭한 군인이 될 수는 없겠으나, 그 때는 그리 깊이 생각하지 않고 군인을 지망했습니다. 역시 내 성격 탓에 군인이 되지 못했지만 지금 생각하면 군인이 안 되길 잘했다고 생각합니다. 군축이다 뭐다 하는 말이 나오는 세상에 어차피 제대로 된 인간이 되지 못했을 거라고 생각하자 참으로 이 세상에서는 무엇이 행복인지 모르겠습니다.

졸업 후에는 열심히 공부해서 스스로도 입학할 수 있다는 자신감을 갖기에 이르렀습니다. 그러나 드디어 입학시험이 시작하자 나는 뜻밖에도 신체검사에서 불합격 판정을 받게 되었습니다. 더구나 그것이 전혀 예상하지 못했던 원인이라 아쉽거나 안타깝기조차 하지 않았습니다.

그도 그럴 것이 내가 불합격이 된 원인은 내 뒤통수에 있는 동전 크기만 한 부분 탈모였던 것이었습니다.

아니, 웃는 것도 무리가 아니겠지. 이 무슨 말도 안 되는 원인이란 말입니까. 사관학교 입학시험 규칙에 탈모증이 있다면 불합격시키라고 되어 있었는지는 모르겠으나, 아무리 그런 규칙이 있었다고 해도 그런 규칙은 사람을 바보취급 하는 것입니다.

그런데 군의관이 내 뒤통수를 검사하고 불합격 판정을 내렸을 때 나는 졸도할 정도로 놀랐습니다. 처참하다고 해야 할지 무참하다고 해야 할지, 그야말로 그 후 한 달 정도는 정신이 이상해질 정도로 매우 슬펐습니다.

나는 군의관을 저주했다. 내 부족함을 증오하는 대신 군의관을 저주하는 것은 말이 맞지 않는지 모르겠지만, 그래도 조금 더 애정 어린 조치를 취해주었으면 하는 마음이 있었습니다. 동전 크기만 한 탈모가 있다는 것이 왜 나쁘다는 말인가요. 그것이 전염성인 것이라면 불합격 판정도 당연하겠으나 내 이 탈모는 어렸을 때 화상을 입어 생긴 흉터로서 지금도 이렇게 있습니다. 그 정도는 조금 더 검사하면 알만도 했는데 참 억울하다고 생각했습니다.


3.

신체검사에서 떨어져도 나는 군인이 되고 싶다는 마음을 포기할 수 없었습니다. 친구들은,

“자네가 무슨 짓을 해서 군의관의 심기를 건드린 게 아닌가? 그래서 부분 탈모를 핑계로 불합격 판정을 내린 거겠지. 매년 똑같은 군의관이 검사하지는 않을 테니 꼭 한 번도 받아봐.”

라고 권해주었습니다.

나는 아무리 생각해봐도 자기가 군의관의 심기를 건드린 것 같지는 않았습니다. 그리고 군의관이 진단을 게을리 했다고 믿었습니다. 나는 다시 한 번 사관학교 입학시험을 치르기로 했습니다.

보통 사람들은 신체검사 같은 것은 신경 쓰지 않고 학과시험 때문에 고생하지만, 내게 있어서 학과시험은 오히려 둘째였으며 무슨 수를 써서라도 신체검사를 통과하고 싶다, 어떻게든 이 탈모를 제대로 진단해주었으면 좋겠다고 마음속으로 하느님께 기도드렸습니다.

정말 이상하죠? 정말 이런 기도를 하는 수험생은 지금도 찾아볼 수 없을 겁니다.

드디어 신체검사 당일이 왔습니다. 검사관을 보자 작년과는 다른 군의관이었기에 저는 말로 다할 수 없는 기쁨을 느끼며 심장이 뛰었습니다.

제 차례가 왔을 때 제가 어떤 마음으로 군의관 앞에 나갔는지 상상이 되죠? 왠지 정신이 멍해지고 가슴 뛰는 소리가 평소보다 크게 제 귀에 들렸습니다.

군의관은 결국 문제의 탈모를 발견했습니다.

무슨 말을 할까 하고 제 온몸에는 소름이 바싹 돋았습니다.

“흠.”하고 군의관은 큰 소리로 말했습니다. “큰 탈모군. 아아, 화상으로 생긴 거로구먼.”

이렇게 말하고는 불합격이라는 말을 안 했습니다.

그 때의 제 기쁨을 생각해보세요. 아울러 그 때 제 마음속 설렘을 상상해 보세요.

그야말로 제 심장은 종이라도 울리듯 터질 것만 같이 뛰고 있었으며 저 자신도 난리 치는 심장 때문에 어쩔 줄을 몰랐습니다.

드디어 합격이다! 학과 시험은 별것 아니다! 이렇게 생각하고 너무나 기뻐했습니다.

문득 정신이 들자 군의관은 제 앞에 앉아 맥을 짚어보고 있었습니다. 그런데 문득 군의관의 표정에 그림자가 드리워졌기에 저는 불안한 예감 때문에 몸을 움츠렸습니다.

“부정맥이 너무 심해.”라고 군의관은 중얼거렸습니다. “이건 안 되겠어. 극도의 심장병이야.”

이렇게 말하더니 ‘씨익’ 웃으며 제 얼굴을 쳐다보았습니다. 그 때 군의관의 끔찍한 표정은 지금 생각해도 소름이 끼칩니다.

“불합격!”

날카로운 목소리가 귓속으로 들려오자 저는 그 자리에서 졸도하고 말았습니다.



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시체양초(屍體蠟燭)

고사카이 후보쿠 (小酒井 不木) (1927)

번역 : 홍성필


저녁부터 심해진 바람은 바다에서 짐승이 굶주림에 울부짖는 듯한 소리를 내며 고리(고리 주고(廚庫), 본당 건물을 스쳐가고, 대지를 허물어뜨릴 것만 같은 비는 간혹 모래를 내던지듯 문을 두드렸다. 문짝이라는 문짝, 기둥이라는 기둥들은 흐느끼는 소리를 내고, 집체는 마치 공중에라도 떠 있는 것처럼 흔들렸다.

여름에서 가을에 걸친 폭풍부의 특징 때문에 실내 공기는 숨 막히듯 찜통더위가 계속 되었다. 그 더위는 한층 사람의 신경을 거슬리게 했고 폭풍우의 위력은 더욱 커져만 갔다. 그랬기에 올해 열다섯이 되는 동자승 법신(法信)이 천정에서 떨어지는 그을음도 무서워 방안 구석에서 두려움에 떨고 있는 것도 무리는 아니었다.

“법신아!”

옆방에서 들려온 주지스님 목소리에 몸을 떨며, 마치 무슨 악몽에서 깨어난 듯 그는 눈을 크게 떴다. 그리고는 잠시 대답할 수가 없었다.

“법신아!”

주지스님이 한층 더 큰 소리로 불렀다.

“네, 네에.”

“수고스럽지만 여느 때처럼 본당 쪽을 돌아봐 주겠나.”

말을 듣고 그는 흠칫 놀라 몸을 움츠렸다. 다른 때라만 단둘이서의 생활이 속편하게 느껴졌겠으나 이런 날은 절망적이었다. 이 끔찍한 폭풍우가 몰아치는 날에 어찌 혼자 문단속을 위해 순찰할 수 있을까.

“저어, 스님.”

그는 간신히 목소리를 짜냈다.

“왜 그러냐.”

“오늘 밤만은…….”

“허허허.”

스님이 호탕하게 웃는 소리가 들려왔다.

“무섭단 말이냐. 좋아. 그럼 나도 같이 갈 테니 따라오너라.”

법신은 끌려가듯 스님 방으로 들어갔다.

언제 준비했는지 책을 보던 스님은 휴대용 양초에 불을 켜고 앞장서서 본당 쪽으로 걸어갔다. 희미한 양초 불빛에 비춰지는, 쉰도 넘었을 스님의 마른 얼굴을 보니 해골이 떠올라 섬뜩했다.

본당으로 들어가자 촛불은 펄럭이듯 흔들리고 두 사람의 그림자는 천장에까지 닿았다. 공기는 무겁게 탁했으며 마치 끊임없는 동굴 속으로 발을 들여놓은 것 같아, 법신은 두 번 다시 무사히 돌아갈 수 없지 않을까 하는 걱정까지 하게 되었다.

정면에 모셔놓은 사람만한 크기의 검은 아미타여래 상은 스님이 비추는 촛불에 의해 한층 더 무섭게 보였다. 스님이 연불을 외우고 잠시 그 앞에 멈춰 서자 금빛을 한 불구(佛具)들은 각기 다른 모양대로 촛불을 반사했다. 향로, 등명접시, 촛대, 화병, 목각금색을 한 연화(蓮華)를 비롯하여 수미단(須彌壇), 책상, 새전함(賽錢函) 등의 금작식물이 이름 없는 곤충처럼 빛났으며, 그 모든 불구 사이에 어떤 무서운 괴물, 예컨대 거대한 박쥐가 납작하게 날개를 편 채로 숨어 있을 것만 같아 법신의 다리 근육은 벌벌 떨려왔다.

스님은 또다시 걷기 시작했으나 역시 스님도 그런 섬뜩함이 느껴졌는지, 조금 전 보다도 빠른 걸음으로 앞서 가며 문단속을 하시고는 창백한 얼굴로 안도하신 듯 한숨을 쉬었다.

그러나 스님은 무슨 생각을 했는지 다시 끔찍한 본당으로 되돌아갔다. 그리고 아미타여래 앞에 가더니 바로 밑에 있는 근행(勤行)자리에 앉아 양초를 놓고 말했다.

“법신아. 불공드리자꾸나.”

법신은 꼭두각시 인형처럼 그 자리에 철퍼덕 하고 엎드렸다. 잠시 스님과 함께 불경을 드리고 있더니 이윽고 얼굴을 들자 여래의 자비인욕(慈悲忍辱)한 얼굴은 한층 더 부드러움이 더하고 폭풍우에도 요동하지 않는 숭고함이 오히려 법신을 꿈결과도 같은 공포의 세계에 몰아넣었다.

“무서운 폭풍우로구나.”

스님 말에 법신은 깜짝 놀랐다.

“그런데 법신!”

잠시 후 스님은 갑자기 경직된 목소리로 법신 쪽을 돌아앉으며 말했다.

“오늘 밤 나는 아미타님 앞에서 네게 참회를 해야 할 일이 있다. 나는 지금 너무나도 끔찍한 죄를 네게 고백하려 한다. 다행이 이런 폭풍우라면 누가 들을 염려도 없겠지. 정신 똑바로 차리고 잘 들어라!”

스님은 눈빛을 번쩍이며 한층 소리를 높였다.

“사실은 말이다. 너는 나를 덕이 높은 고승이라고 생각하는지는 모르지만, 나는 아미타님 앞에서 가만히 앉아있지 못할 정도로 후한무치하고 개돼지만도 못한 악한 인간이란다.”

“네?”

너무나도 뜻밖인 스님 말에 법신은 자기도 모르게 소리치고 화석처럼 굳은 몸으로 스님 얼굴을 뚫어져라 쳐다보았다.

“나는 말이다. 사람을 죽인 큰 죄인이다. 그렇게 놀랄 만도 하지만 네가 이 절에 오기 전에 있었던 양순(良順)이라는 동자승을 내가 죽였단다.”

“거짓말이입니다. 거짓말이라고요. 스님, 그건 거짓말입니다. 제발 그런 끔찍한 말씀은 이제 하지 마세요.”

“아니야. 사실이다. 아미타님 앞에서 거짓말은 안 해. 여기에는 사정이 있단다. 깊은 사정이 있지. 그 사정이란 너무나도 부끄러운 일이지만 이것만은 꼭 네가 들어주었으면 한다.

내가 승려가 되고 40년. 그 동안 무척이나 많이 사람 타는 냄새를 맡았지. 처음에는 그리 탐탁지 않았으나 점점 나이를 먹어감에 따라 그 냄새가 무척이나 좋아지더구나. 그러자 결국에는 사람의 지방이 타는 냄새를 하루라도 맡지 않는 날이 있으면 왠지 이렇게 가슴이 메여오는 답답함을 느끼고는 가만히 앉아 있을 수조차 없게 되었지. 말도 안 된다고 생각했지만 어쩔 방도가 없어. 생선을 구워봐도 쇠고기를 구워봐도 그 냄새는 절대 나를 만족시켜주질 못해. 만주사화(曼珠沙華)의 끔찍한 꽃을 연상시키는 인육 타는 냄새는 도저히 다른 것으로 흉내를 낼 수가 없어.

너는 내가 얼마 전에 빌려준 우게츠 모노가타리(雨月物語)에 나오는 파란 두건 이야기를 기억하지? 한 아이를 사랑한 스님이 아이가 죽은 슬픔 때문에 그 인육을 모두 먹고는, 그로부터 그 맛을 알고 훗날에는 마을 사람들을 죽이러 나왔다는 그 이야기를 말이다. 나는 마치 그런 인간세계의 악귀가 되고 만 게야. 그리고 결국 그런 이유로 양순을 죽이게 되었지.

양순이 잠시 병에 걸린 것을 기회 삼아 나는 몰래 독을 먹게 하여 성공적으로 그를 죽여 버렸어. 설마 아무도 내가 죽였으리라고는 상상하지 않을 테니 조금도 의심 받지 않고 장례를 치렀지. 하지만 양순이 타기 전에 그의 몸은 모두 내가 잘라 놓았거든. 그리고 그 사실은 당연히 아무도 몰랐어.

그 다음에 내가 양순의 살을 어떻게 했을 것 같으냐. 아무리 그래도 자주 사람을 죽이기는 싫었으니 가급적 오랫동안 그 살이 타는 냄새를 맡고 싶었네. 그래서 여러 가지 생각해본 결과 문득 묘안이 떠올랐지. 그건 다름 아닌 그 살에 붙은 지방으로 양초를 만들기로 한 게야. 양초라면 승려로서 아침 밤 부처님 앞에서 태우며 냄새를 맡으면서도 아무한테 의심을 받지는 않잖느냐. 더구나 양초로 만들어버리면 상당이 오랜 시간을 즐길 수 있지. 이래서 나는 몰래 손수 양초를 만들었어. 보통 양초 속에 양순의 지방을 녹여 넣고서 나는 마음껏 양초를 만들었다.

그리고 매일 나는 불경하게도 염불을 드릴 때에 그 양초를 태우며 내 개돼지만도 못한 내 탐욕을 만족시키고 있었지. 때로는 염불을 드리지 않을 때라도 양초를 태우며 즐긴 적도 있어. 하지만 오늘까지 천벌도 받지 않고 살아왔다. 생각하면 끔찍한 일이지.

그런데 법신아. 내가 만든 양초에는 한도가 있다. 매일 하나씩을 태워도 1년이면 365개가 없어지지. 점점 양초가 줄어들어감에 따라 나는 말로 다할 수없는 야속함을 느껴왔어. 이 2~3일 동안 나는 정말로 불안했지 뭔가. 법신아, 이제 어떻게 수를 써야 한다고 식음을 전폐해가며 고민했다.

여기 지금 타고 있는 게 양순의 지방으로 만든 마지막 양초야. 나는 아까부터 불안해서 어쩔 줄을 모르겠다. 법신아, 나는 양순을 대신할 것이 갖고 싶어졌어. 법신아, 난 너를 죽이고 싶어졌다.

이놈, 무슨 짓이냐! 도망치려 해도 쓸데없어. 이 폭풍우는 사람을 죽이기에 안성맞춤이야. 얘야, 울지 마라. 울어도 소리쳐도 들어줄 사람은 아무도 없어. 너는 이제 뱀한테 찍힌 개구리가 된 꼴이야. 깨끗하게 각오해줘라. 제발 내 마음을 만족시켜줘라. 얘야, 제발 내 불가사의한 마음을 만족시켜줄 양초가 되어 주게.“

스님한테 팔을 잡힌 법신은 너무나 공포에 떤 나머지 이제 울음소리조차 낼 수 없어 그 자리에 주저앉고 말았다. 그러나 지금이 생사의 갈림길이라고 생각하자 그 마음은 마지막 지푸라기라도 잡는 심정으로 애원하는 말이 나왔다.

“스님, 제발 용서해주세요. 저는 죽고 싶지 않아요. 제발, 제발 목숨만은 살려주세요.”

“후후후.”

스님은 악마처럼 웃었다. 그 때 폭풍우는 한층 본당을 흔들었다.

“얘야. 여기까지 와서 네가 아무리 무슨 소리를 해도 나는 용서하지 않아. 자, 각오해라!”

이렇게 말하자 스님은 허리춤에서 번쩍거리는 것을 꺼내들었다.

“앗! 스님. 제발 부탁이에요. 제발 그 칼을, 제발 용서해주세요! 전 싫어요. 죽기 싫단 말이에요.”

이 말을 듣자 스님은 들어 올린 팔을 그대로 조용히 내렸다.

“넌 그렇게 목숨이 아깝냐.”

“네.”

법신은 두 손을 모아 스님한테 빌었다.

“그렇다면 네 목숨은 살려주지. 그 대신 내 말을 무엇이든 듣겠느냐.”

“네. 무슨 일이든 하겠어요.”

“정말이지?”

“네.”

“그렇다면 내가 사람 죽이는 일을 돕겠느냐.”

“네?”

“너를 살려주면 너 대신 다른 사람을 죽여야 하지 않겠느냐. 그것을 네가 도와줄 수 있겠느냐.”

“그, 그런 끔찍한.”

“못하겠다는 게야?”

“하지만.”

“그렇다면 깨끗이 여기서 죽겠느냐.”

“제발, 스님.”

“어떠냐.”

“무, 무슨 일이든 하겠어요.”

“도와주겠느냐.”

“네, 네에.”

“좋다. 그럼 지금부터 어서 시작하자.”

“네?”

“지금부터 사람을 죽이는 게야.”

“어디서…….”

“여기서.”

“누굴 죽인단 말씀이세요?”

스님을 대답하는 대신 살기에 찬 얼굴로 왼쪽 아미타여래 쪽을 가리켰다.

“그럼 저 아미타님을?”

“그렇지가 않아. 아미타님 뒤에는 지금 이 폭풍우가 몰아치는 틈을 타서 몰래 들어온 새전도둑이 숨어 있어. 그 놈을 너 대신으로 삼겠다. 따라오너라!”

스님이 일어섰다. 그러나 법신이 일어서기 전 거기에 기이한 광경이 펼쳐졌다.

아미타여래 뒤에서 거대한 쥐와 같은 시커먼 괴물이 튀어나오더니 주변에 있는 것들을 걷어차고 정신없이 도망쳤다. 법신이 그것을 복면을 한 도둑이라고 알아본 것은 몇 초가 지난 후였다.

“앗, 스님!”

이상하게도 그 때 공포심을 잊은 법신이 이렇게 소리치고는 도둑을 좇아가려 하자 스님은 그의 팔을 꼭 잡고는, 지금까지와는 전혀 다른 부드러운 표정으로 말했다.

“내버려둬라. 도망친 건 도망가게 둬. 하지만 법신아, 용서해라. 지금 내가 말한 양초 이야기는 바로 지금 만들어낸 것이야. 아까 내가 아미타님 뒤에 슬쩍 움직이는 게 보였기에, 아마 도둑이 이 폭풍우를 틈타 새전을 훔치러 왔다고 알았지만, 섣불리 소리치면 그 놈이 무슨 짓을 할지 모르기에, 이건 작전을 써서 내쫓는 방법 밖에는 없다고 생각했지. 칼이라도 휘두르면 둘 다 죽고 말 것이 아니겠느냐. 하지만 다행이 도둑놈도 내 이야기를 정말인줄 알고 도망쳤다. 뭐, 이 양초는 어디에나 있는 게야. 양순이도 분명 질병으로 죽었어. 사실 오늘 밤 나는 우게츠 모노가타리를 읽고 있었거든. 너를 놀래게 만든 그 이야기는 거기서 따 온 게야.”

이렇게 말하고 오른 손에 든 번쩍이는 것을 내보이며 말을 이어갔다.

“네가 칼이라고 말한 것은 이 부채야. 두려움을 느낄 때는 잘못 볼 때가 있지. 분명 도둑놈도 이것을 칼이라고 생각했을 게야…….”

폭풍우는 여전히 몰아치고 있었다.

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Posted by 문학관 관리인 위어조자(謂語助者)

보기 드문 범죄(稀有の犯罪)

고사카이 후보쿠 (小酒井 不木) (1927)

번역 : 홍성필


1.

비극이란 종종 마치 말도 안 되는 엉뚱한 원인으로 발생하기도 합니다. 매우 작은 호기심이나 사소하기 짝이 없는 장난으로 인해 생각지도 않은 큰 사건을 일으킨다는 이야기는 책에서도 자주 나옵니다.

지금부터 말씀드리려는 것은 역시 엉뚱한 원인으로 세 명의 보석강도가 그 생명을 잃는다는 이야기입니다. 이렇게 쓰면 감이 좋으신 독자 분들께서는 “아아, 보석을 다룬 추리소설이군. 요즘 추리소설에서 보석을 들먹이다니 너무나 구식이야.”라고 말씀하시는 분들도 계시겠지요. 사실 말씀 그대로 보석과 권총에 대해서는 이미 질릴 대로 질렸습니다.

하지만 손목시계가 보석을 포기할 수 없는 것처럼 추리소설도 좀처럼 보석과 인연을 끊기는 어렵습니다. 정말 보석 색과 빛깔은 사람을 매료합니다. 가만히 보고 있으면 끝내는 일종의 황홀경에 빠질 정도이니 미노시마(箕島), 센바(仙波), 교야마(京山)의 세 명이 공모하여 보석전문 도둑이 된 것도 그저 유흥비로 쓰기 위한 돈이 필요했기 때문만은 아닙니다. 그러나 왜 셋이서 함께 일을 하게 되었는지, 그리고 셋이 어떻게 자라왔는지 하는 것은 본 내용과 관련이 없으므로 말씀드리지는 않겠습니다. 아무튼 셋은 보석에 대한 취향이 같았으므로 다른 사람들이 가지고 있는 보석을 훔쳤는데, 항상 어느 정도 즐긴 후에는 팔아치워 돈으로 바꾸고는 얼마 지나지 않아 그 돈을 탕진하고 말았습니다.

이렇게 보면 그들 세 명의 보석에 대한 애착은 순수하다고 할 수 없겠지요. 뿐만 아니라 그들은 보석을 빼앗기 위해 다른 사람을 해하게 하거나 살인까지도 서슴지 않았기에 이른바 취미는 악취미라고 해야겠습니다.

이와 같은 악취미는 백일천하에서 얼마 버틸 수 없겠지만, 이상하게도 경찰은 오랫동안 그 악취미를 제거하는 데에 실패했고, 사실을 말하자면 그들 셋이 어디에 살고 어떤 얼굴인지조차 모르고 있었던 것입니다. 알고 있는 것은 이 이야기의 필자뿐이며, 사실 그들은 시내 두 곳의 거주지 즉, 아지트를 가지고 있었습니다, 세 명 모두 매우 분장술에 능했는데, 단순히 외모를 바꾸는 것만 잘한 것이 아니라 다른 사람으로 변장하는 것도 그들에게 있어서는 식은 죽 먹기였습니다. 그래서 경찰들도 좀처럼 잡지 못했던 것입니다. 오죽하면 도둑으로 들어와서도 곧바로 그 집 주인으로 변장할 때도 있으니 그럴 만도 하겠지요.

그런데 운이 다 했다고나 할까요. 아니면 꼬리가 길면 밟힌다고 해야 할까요. 경찰은 간신히 그들의 두 아지트 중 하나를 찾아냈습니다. 장소는 S구 B동이라는 비구니 절이 많은 동네로서, 전혀 보석 도둑들이 살 것 같지 않는 곳인데다가, 급할 때는 도망칠 수 있도록 경찰이 모르는 비밀 통로 같은 것도 있는 곳이었습니다.

그래서 경찰에서는 이번에 세 명이 어디 저택에 들어가 보석을 훔치기만 한다면 곧바로 아지트를 덮쳐서 그들을 체포할 작전을 세웠습니다. 이 점 또한 필자만 알고 있을 뿐, 그들 셋은 전혀 모르고 있었습니다. 그랬기에 그들이 N남작 집에 들어가 남작이 가지고 있던 청색 다이아몬드를 훔치자마자 경찰이 아지트를 습격하였고, 기묘한 이유로 결국 세 명 모두 생명을 잃게 된 것입니다.

N남작 집에 있는 청색 다이아몬드는 그들 셋이 오랫동안 노리고 있었던 것입니다. 그 물건은 시가로 최소한 2억이나 되는 보석이었으며 크기는 손가락 약지 끄트머리 정도 되었으나, 그 빛깔이 남쪽나라 바다처럼 푸르고 매우 아름다웠습니다. 사실 그들은 이 보석을 훔치면 잠시 일본을 떠나 중국에라도 가려던 계획을 세우고 있었으나, 역시 세상일은 마음먹은 대로 되는 법이 없어, 결국 중국보다 훨씬 머나먼 저승길까지 여행하게 된 것입니다. 


2.

이야기 순서대로라면 그들이 어떠한 수단으로 N남작 집에 있는 금고 속에 들어 있던 다이아몬드를 성공적으로 손에 넣었는지를 말해야 하지만 그런 추리소설은 이미 독자 여러분들도 질릴 대로 질렸을 테니, 저는 갑자기 세 명이 B동 아지트에 있는 탁자에 둘러 앉아 그들이 훔쳐온 다이아몬드를 탁자 중앙에 올려놓고 매료당한 표정으로 감상하고 있는 장면부터 시작하려고 합니다. 항상 이들 세 사람은 녹색 갓이 씌워진 탁상전등 불빛으로 보석의 아름다운 빛을 감상하곤 하는데, 때마침 시간이 새벽 2시인데다가 불과 1시간 전에 N남작의 집에서의 일로 상당히 심신에 피로를 느껴서인지 세 사람은 푸른 보석 빛깔 앞에서 마치 최면술에라도 걸린 것처럼 멍한 표정으로 오랜 시간 동안 묵언수행을 계속했습니다. 세 명 모두 담배를 싫어했으므로 옆에서 보면 매우 심심해보이지만 본인들은 전혀 그런 생각을 안 하나봅니다. 탁자에 올려놓은 손을 가지런히 모은 채로 구부정하게 의자에 앉아서는 보석 빛에 자극을 받아 사색에 잠기는 것입니다. 소슬한 가을 밤, 바깥은 쓸쓸하고 절이 많은 동네의 고요함은 사람들에게 일종의 기이한 마음을 느끼게 합니다.

“아름답다!”라고 미노시마가 작은 소리로 말했습니다.

“굉장해!”라고 센바가 말했습니다.

“멋지다!”라고 교야마가 말했습니다.

그리고 또다시 침묵이 흘렀습니다.

30분 정도 감상하며 침묵이 이어졌을 때 청각이 가장 발달한 미노시마가 문밖에서 수상한 소리를 들었습니다. 만약 세 명의 청각이 모두 예민했다면 지금부터 말하는 비극은 일어나지 않았겠으나 센바와 교야마, 두 사람은 나이가 미노시마와 비슷한 서른 대여섯이면서도 청각의 발달이 평범하여 그 때 아무런 소리도 듣지 못했던 것입니다.

그래서 미노시마가 푸른 색 다이아몬드를 재빨리 집어 들고는 눈 깜짝할 사이에 입속에 넣고 삼켜버리자 두 사람은 미노시마가 문밖에서 들리는 소리를 경찰의 추격이라고 하면서 보석을 독점하려 했다고 오해한 것입니다.

센바와 교야마는 동시에 미노시마한테 덤벼들었습니다. 그 때 미노시마가 그 이유를 설명하면 좋았을 것을, 미노시마는 세 명의 목숨을 지켜야 한다는 데에 여념이 없어 갑자기 탁자 위에 있던 전등을 꺼버리고 말았습니다. 하지만 그 행위는 다른 두 사람의 의혹을 한층 더 깊게 만들었습니다.

“쉿!” 미노시마는 두 사람에게 주의를 주려고 했으나 이미 때는 늦었습니다. 다음 순간 의자가 쓰러지는 소리, 탁자가 뒹구는 소리, 탁상 전등이 깨지는 소리가 들렸습니다. 두말할 것 없이 어둠 속에서 극심한 격투가 시작한 것입니다.

엎치락덮치락 하며 요란한 소리가 계속됐습니다만, 그러는 와중에 갑자기 권총소리가 났고 동시에 신음소리가 들렸습니다. 그리고 잠시 동안 조용해졌으나 그 때 문밖에서 쿵쾅쿵쾅 하고 사람들 발소리가 났습니다. N남작 집에서 도난신고를 받은 경찰들이 예전부터 지목하고 있었던 세 명의 아지트를 곧바로 덮친 것입니다.

경찰들이 셋이 있던 방으로 들어오는 데에 상당한 시간이 걸렸습니다. 곧바로 문을 부수지 않았기 때문입니다. 방안에는 화약 연기와 냄새가 났습니다. 경찰들이 회중전등을 들고 실내를 비춰보자 가구더미 속에 미노시마, 즉 방금 전 다이아몬드를 삼킨 미노시마가 왼쪽 흉부에서 피를 흘리고 죽어 있었습니다.


3.

만약 미노시마가 다이아몬드를 삼키지 않았다면 센바와 교야마도 목숨을 잃게 되는 비극은 일어나지 않았겠지만 미노시마 뱃속에 있는 다이아몬드를 되찾으려고 둘이 계획하는 바람에 안타깝게도 비극을 초래하게 되었습니다.

B동 아지트에 있던 비밀통로를 통해 성공적으로 도망친 센바와 교야마는 제2의 아지트에 와서 한숨을 돌렸습니다.

“네가 미노시마를 죽이는 바람에 기껏 손에 넣은 다이아몬드를 버리고 말았잖아”라고 교야마는 안타까운 표정을 지으며 말했습니다.

교야마의 말에 의하면 권총을 쏜 것은 센바처럼 보입니다.

“할 수 없잖아. 미노시마 그 놈이 우리 둘을 빼놓고 자기 혼자 다이아몬드를 독차지하려고 했으니까 그랬지. 그 놈한테 빼앗기는 것보다는 차라리 낫다고.”라고 센바는 미노시마를 죽인 것을 그다지 후회하지도 않고, 또한 다이아몬드를 잃은 것도 별로 안타까워하지 않는 것처럼 말했습니다.

“이제 드디어 일본 땅을 떠날 수 있다고 기뻐했는데 완전히 엉망이 되고 말았어.”라고 교야마는 내뱉듯이 말했습니다.

“뭐 그렇게 낙심하지 마.”라고 센바는 위로했습니다. 센바는 매우 성격이 급한 편이기에 순간의 격정을 억누르지 못하고 오랫동안 친하게 지냈던 미노시마를 죽인 것이겠으나, 몹시 힘이 빠진 교야마를 보고 있노라니 우선 스스로 침착해지고 교야마를 위로할 수밖에 없었습니다.

“하지만 너무 아까워.”라고 교야마는 여전히 포기하지 못한 눈치입니다.

“이런, 이봐.”라고 센바는 교야마에게 주위를 환기시키듯 말했습니다. “내 입장도 생각해줘. 난 사람을 죽였으니 오늘부터는 숨어 다녀야 해. 물론 잡히면 너도 끌어들일 생각이지만, 뭐 당분간은 잡히지 않을 테니 걱정은 마. 그것보다 무슨 새로운 일을 계획하자.”

“새로운 일보다 난 그 미노시마가 삼켜버린 다이아몬드를 되찾고 싶어. 무슨 좋은 방법이 없을까?”

교야마는 어디까지나 푸른빛 보석에 미련이 남아 있었습니다.

듣고 보니 센바가 생각하기에도 아까운 것은 마찬가지였습니다. 하지만 지금쯤은 경찰 손으로 건너갔을 미노시마 시신에서 문제의 다이아몬드를 되찾는 일은 도저히 불가능한 일입니다.

“안 돼. 미노시마 몸은 이미 우리 것이 아니니까 말이야. 그런데 어떻게 경찰 놈들이 우리 아지트를 찾아냈을까. 어쩌면 미노시마 그 녀석이 경찰에 밀고해서 그 때 우리 둘을 경찰한테 넘겨주고 도망칠 생각이었는지도 몰라.”라고 센바는 어디까지나 미노시마의 행동을 오해하고 있었습니다.

“그렇다면 보석을 미노시마가 가지고 있게 되면 더더욱 속상하잖아.” 교야마 역시 미노시마의 진심을 모르고 있었습니다.

“그것도 맞는 말이야.”라고 센바도 동감하기 시작했습니다. “하지만 아무리 생각해봐도 손을 쓸 도리가 없잖아.”

“한번 연구해보자고. 넌 나보다 인간의 몸에 대해서는 훨씬 많이 아니까 잘 생각해봐.”

센바는 본래 T의과대학 병리학교실에서 직원으로 근무한 적이 있기에 인간 해부에는 조금 익숙했으므로 교야마가 이렇게 말한 것입니다. 센바는 인간 해부를 많이 봐왔기 때문에 자연히 살벌한 성미가 몸에 뱄는데, 아무리 인체 내부에 대해 안다고 하지만 미노시마의 몸속으로 들어간 다이아몬드를 되찾을 묘안이 떠오를 것 같지는 않았습니다.

“잠깐만.” 하고 센바는 팔짱을 끼고 눈을 감고는 잠시 사색에 잠겼습니다. 아침이 다가오는 듯, 거리에서 짐차가 지나가는 소리가 들려왔습니다. 둘은 그리 지치지도 않고 열심히 생각했습니다.

이윽고 센바 얼굴이 밝아졌습니다.

“묘안이 있어.”라고 센바는 웃으며 말했습니다.

“어떤 건데?”라고 교야마는 흥분했습니다.

“아무튼 잘 들어봐.”라고 센바는 의기양양하게 말했습니다. “미노시마의 시신은 오늘 틀림없이 대학 법의학교실로 운반되고 부검을 받겠지. 난 병리학교실에 있을 때 가끔 법의학교실에도 가봤는데, 법의학교실에는 교수와 조수 두 명, 그리고 병원 직원 도합 네 명이 있으며, 부검은 교수가 할 때도 있고 조수가 할 때도 있어. 살인사건의 시신이 외부에서 들어오면 일단 부검실에 놓고 곧바로 부검이 시작될 때도 있지만 대개는 4~5시간 뒤, 어떤 때는 교수 사정 때문에 다음 날에 하기도 하거든. 그러니 이번에도 그 동안 몰래 교실에 들어가서는 시체 배를 열어 위장에서 다이아몬드를 꺼내면 돼.”

“그렇군.” 하고 교야마도 이 묘안에 힘을 얻었습니다. “하지만 밤이라면 또 모를까 오늘 낮에 부검이 시작되고 경찰들이 주변에 있다면 훔치러 들어갈 수도 없잖아.”

“그것도 그러네.”라고 센바는 다시 생각에 잠겼습니다. 그리고 잠시 후 무슨 생각을 했는지 가만히 교야마 얼굴을 바라보며 웃고는 “좋은 생각이 났어.”

“뭐야? 사람 얼굴만 쳐다보고 말이야.”

“바로 네 얼굴이 필요해서 그래. 무슨 말이냐 하면, 너한테 흰 가발을 씌우고 깨로 만든 콧수염과 턱수염을 붙이면 법의학교수인 오쿠다(奧田)박사와 꼭 닮았겠어. 그러니 교수로 분장하고 교실에 들어가서 다이아몬드를 꺼내오면 되잖아.”

“그래? 만약 그렇다면 참 재미있겠군.” 하고 지금까지 셋 중에서 가장 변장을 잘했던 교야마는 일종의 자부심을 느끼며 말했습니다. 하지만 다음 순간 갑자기 표정이 어두워졌습니다.

“그래도 난 해부에 대해서 전혀 모르니까 안 되잖아. 만약에 많은 사람들이 있다면 어쩔 도리가 없어.”

“바로 그거야. 네 실력을 보여줄 때가 된 거야. 그러니까 교수로 분장해서 조수한테 명령하고 모든 걸 조수한테 시키면 돼.”

“하지만 그렇게 하면 다이아몬드까지 그 조수한테 빼앗길 거잖아.”

“물론 멍하니 서 있기만 하면 안 되지. 곧바로 그 조수한테 명령해서 위장과 장은 자기가 연구해보고 싶다고 해서 위장을 절단하게 하고 그걸 가지고 도망치면 돼.”

“그렇지. 하지만 같은 교수가 둘이나 있으면 들키지 않을까?”

“그래서 내가 도와주려는 거야.”라고 센바도 어느새 진지해졌습니다.

“우선 너랑 함께 경찰에서 왔다면서 법의학교실을 가는 거야. 교수와 만나 이런저런 이야기를 나누고 그 동안에 네가 그 동안에 목소리나 버릇을 연구하는 거야. 그리고 갑자기 둘이서 교수를 묶어놓고 입을 막는 거지. 그러고는 네가 가지고 온 분장도구로 재빨리 교수로 변장해서 부검실로 간다. 그 동안 나는 교수실 안쪽에서 열쇠를 잠그고 진짜 교수를 지키고 있을게. 넌 부검실에서 조수한테 위장을 절단시키고 잠깐 내 방에 다녀온다고 하고 그걸 가지고 오는 거야. 여기서 재빨리 본래 옷을 갈아입고 내장을 신문지에 싸서 법의학교실을 빠져 나간다. 어때? 이거라면 그리 어렵지 않겠지?”

“기가 막히다.”라고 교야마는 벌써 계획이 성공한 것처럼 기뻐했습니다. 정말로 이 계획이 성공한다면 2억 원을 둘이서 나눌 수 있으니 분명 기뻤을 것입니다. “그럼 그렇게 하기로 하고 준비를 시작하자. 지금부터 잠깐 눈을 붙이고 난 다음에 너는 전화를 걸어서 부검이 몇 시에 시작하는지 물어봐. 근데…… 혹시 벌써 시작한 건 아닐까?”라고 불안한 표정을 지었습니다.

“괜찮아. 9시 이전에 시작하는 일은 절대 없어.” 라고 센바는 자신 있게 말했습니다.


4.

9시 조금 전. 

센바는 법의학교실로 전화를 걸러 가서는 웃으며 돌아왔습니다. 둘 모두 숙면과 아침 식사 덕분에 기운이 넘쳐났습니다.

“어땠어?”라고 교야마가 물었습니다.

“아주 잘 됐어.”라고 센바는 물었습니다. “오후 3시 정각에 부검이 시작한다는 거야.”

“좋았어.”라고 교야마도 기쁜 듯이 말했습니다. “그런데 뭐라고 하면서 그쪽에 물었지?”

“별로 어려울 건 없었어요.”라고 말하면서도 센바는 적지 않게 자랑스러워한다.

“여긴 경찰인데 어젯밤 S구 B동에서 살해된 시신은 벌써 도착했냐고 물었지. 그러자 거기 직원 목소리로 오늘 아침 일찍 도착했다고 하는 거야. 다행이라고 생각했지. 그리고 부검은 몇 시부터냐고 했더니 오후 3시부터라더군. 모두 잘 되고 있어.”

둘은 분장에 필요한 도구를 점검했습니다. 그리고 오후 2시 40분경 법의학교실을 찾았을 때 둘은 완전히 사복경찰과도 같은 모습이었습니다.

덕분에 둘은 아무 의심도 받지 않은 채 교수실로 침입할 수 있었습니다. 교야마는 교수 얼굴을 한 번 보자마자 역시 자신과 닮은 구석이 있다고 생각하고는 동시에 교수 태도나 목소리가 지극히 흉내 내기 쉽다는 사실도 알았습니다.

부검실에서 경찰과 검찰청 사람들의 입회하에 교수를 기다리고 있다는 것을 알고 있었기에 교수와 두세 마디 나눈 후 센바는 재빨리 교야마에게 신호를 보내 순식간에 교수 입을 막고 끈으로 묶었습니다. 그리고 5분도 채 지나지 않아 교야마는 흰 수술복을 입은 오쿠다 박사로 변장하고 말았습니다.

가짜 오쿠다 박사가 복도로 나가자 저쪽에서 역시 흰 옷을 입은 사내가 다가왔습니다. 교야마는 직감적으로 그가 조수라는 사실을 알았습니다.

“선생님. 모두 벌써부터 기다리고 계시기에 모시러 왔습니다.”

“그런가? 지금 좀 바빴거든.”라고 가짜 박사는 당당한 태도로 말했습니다.

조수는 경의를 표하기 위해 교수 뒤에 서서 걸어가려 했습니다. 교야마는 깜짝 놀랐습니다. 부검실이 어딘지 모르기에 멈춰서고 만 것입니다. 그러나 지금까지 변장의 경험이 풍부한 교야마였으므로 머릿속에 문득 어떤 생각이 떠올랐습니다.

“사실 오늘 부검은 자네들 둘이 해줬으면 하네. 그렇게 알고 먼저 가서 다른 조수에게 그렇게 전해주게.”

조수는 이상하다는 듯이 교수 얼굴을 올려다보았습니다. “야노(矢野)는 오늘 안 나와서 선생님과 함께 부검할 예정이었는데요?”

“아, 그렇지.”라고 교야마는 내심 당황하며 대답했습니다. “잠시 깜빡했군. 사실 그 시신은 좀 수상한 곳이 있어서 뱃속에 있는……오장(五臟)을 내가 직접 조사하려고 하네. 그러니 수고스럽지만 자네가 우선 뱃속에 있는 것을 모두 꺼내주지 않겠나.”

‘오장(五臟)’이라는 말을 지금까지 한 번도 선생님한테 들은 적이 없기에 조수는 이상하게 느껴졌습니다만. 야노 조수가 없다는 것도 잊을 정도이니 선생님이 오늘은 좀 평소와 다르다고만 생각하였습니다. 

“알겠습니다.”라고 말하고 조수가 앞서서 뛰어가려 하자,

“아, 이봐. 잠깐.” 하고 가짜 교수는 불러 세웠습니다. “자네, 난 여기서 기다리고 있을 테니 뱃속에 있는 것만 가지고 와 주지 않겠나. 왠지 오늘은 마음이 내키지 않아.”

교야마도 다소 겁이 나기 시작했던 것입니다.

“하지만 선생님. 선생님께서 직접 검사님한테 이 일을 말씀해주시지 않으면 곤란합니다. 선생님이 계시면 제가 곧바로 잘라내 드리겠습니다.”

이 마지막 말을 듣고는 갑자기 힘이 난 교야마는 “좋아. 그렇다면 인사를 가도록 하지.” 하고 조수 뒤를 따라 부검실로 들어갔습니다.

부검실 내에는 검사를 비롯해 기타 사법관, 경찰 몇 명이 굳은 표정으로 서 있었습니다. 교야마는 주눅이 들었으나 기껏 여기까지 와서 물러설 수는 없다며 용기를 내어 가볍게 인사를 했습니다.

그러나 중앙 부검대 위에 있는 시체를 보게 되자 고개를 돌리지 않을 수 없었습니다. 시신 얼굴과 국부는 거즈로 덮여 있었으나 가슴 흉터가 드러나 있고 거기서부터 피가 흐르고 있었기에, 지금까지 한 번도 그런 것을 본 적이 없는 교야마에게 있어서는 적지 않게 당혹스러웠습니다.

“이 시신은.”하고 갑자기 교야마는 말을 꺼냈습니다. 그 목소리가 뒤집혀 있었기에 모두 교수의 얼굴을 쳐다보았습니다. 그러자 교수는 한층 흥분하고 말았습니다. “뱃속에 다이…… 아니, 그, 중요한…… 증거를 갖고 있는 것 같으므로 우선 뱃속에 있는 것만을 채취하여 그것을 저 자신이 조사해보려고 합니다. 이봐, 자네!”라고 조수를 보고는, “서둘러 채취해주게.”

본래 그 누구도 교수의 말은 거역하지 않는 법이기에, 무슨 질문이라도 하지 않을까 하고 긴장했던 교야마는 어느 정도 안도의 숨을 내쉴 수 있었습니다. 그러나 그는 온몸이 식은땀으로 젖어 있다는 사실을 알고 있었습니다.

조수는 교수의 명령대로 복부를 절개하고 재빨리 복부 내장을 채취하기 시작했습니다. 교야마는 처음에는 섬뜩했으나 점점 보고 있는 동안에 이상하게도 아무렇지도 않게 되었습니다. 그리고 몇 십 개나 되는 후복부 내장 모두가 에나멜로 만들어진 큰 철제 쟁반 위에 놓였을 때에는 곁에 있던 핀셋을 들고 장기 일부를 그럴 듯하게 만져볼 용기까지 생겼습니다.

가짜 교수는 이윽고 큰 쟁반을 들었으나 생각보다 무거웠기에 깜짝 놀라 다시 내려놓았습니다.

“제가 방까지 가져다 드릴까요?”라고 조수가 말했습니다.

“그럴 필요까지는 없네.” 이렇게 말하고 다시 들어 올렸으나 그 순간 문득 이것이 어제까지 함께 지내던 미노시마의 ‘창자’라고 생각하자 정신이 혼미해졌습니다. 만약 그 때 조수가,

“선생님!”

하고 소리치지 않았다면, 어쩌면 그 쟁반을 바닥 위에 떨어뜨렸을지도 모릅니다.

조수는 말을 이었습니다. “흉부 해부는 어떻게 할까요?”

“계속 해주게. 난 곧 돌아오겠네.”

이렇게 말을 남기고 교야마는 도망치듯 부검실을 빠져나왔습니다.


5.

“정말 무겁네. 완전히 지쳐버렸어.”라고 교야마는 큰 신문지 다발을 탁자 위에 내던지고는 의자에 철퍼덕 앉았습니다.

“자업자득이야. 위장만으로 됐는데 쓸데없는 것까지 가져와서 말이야.”라고 센바는 나무라듯 말했습니다. 하지만 그들 얼굴에는 예정대로 일이 풀려 성공적으로 다이아몬드를 되찾은 것에 대한 만족스러움이 가득하였습니다. 

“왜냐하면 난 위장이라는 말을 깜빡하고 나도 모르게 ‘오장’이라고 해버렸거든.”

“바보야. 오장이라고 하면 가슴에 있는 내장까지 모두 들어간다고.”

“하지만 그 조수는 내 말을 그대로 믿고 아무튼 일을 잘 해줬잖아. 하지만 지금쯤 교실에서는 난리가 났겠지.”

“그러게 말이야. 하지만 교수는 내가 지키고 있는 동안 얌전히 있었어. 그런데 채취하는 시간이 꽤 오래 걸렸네.”

“나도 정말 걱정이었지. ……자, 이제 서서히 다이아몬드를 꺼내볼까? 이제부터는 네가 할 차례야.”라고 교야마는 재촉하듯 말했습니다.

“내게 맡겨 둬.”라고 말하고 센바는 신문지를 풀기 시작했습니다. 풀어감에 따라 생생한 피에 젖은 얼룩이 나왔기에 교야마는 묘한 기분이 들었으나, 센바는 태연하게 아무렇지도 않다는 듯이 다루어 갔습니다.

이윽고 비교적 물기가 마른 듯한 내장이 드러났습니다.

“이게 비장이고 이게 간장. 이게 무척 무겁거든. 이게 위장이고 이 속에 다이아몬드가 들어있을 거야.”

이렇게 말하고 그는 손가락으로 위장 표면을 만졌습니다.

“다이아몬드는 밖에서 만져도 알아볼 수 있을 거야.”

잠시 만지고 있었으나,

“어? 이상하다!”라고 말했습니다. 이 말에 교야마도 갑자기 온몸이 긴장되어 피에 물든 센바의 손끝을 바라보았습니다.

“이봐. 가위와 칼을 줘봐.”라고 센바의 말에 따라 교야마가 건네주자 재빨리 센바는 위장을 절개했습니다.

“없어. 장에까지 내려갔나?”

이렇게 말하고 센바는 조금 서두르는 듯이 십이지장, 소장, 대장, 직장을 절개하고는 그 내용물을 살펴봤으나 다이아몬드는 보이지 않았습니다.

둘은 잠시 동안 서로의 얼굴을 마주보았습니다. 분노와 절망 때문에 두 얼굴은 갑자기 창백해졌습니다.

“야! 없단 말이야!”라고 성미가 급한 센바가 이마에 핏줄을 세웠습니다.

“없을 리가 있나.”라고 교야마도 이상하다는 표정을 지었습니다.

“잘 봐. 없잖아.”

“더 잘 찾아봐. 그 큰 간장이라는 것 속에는 없어?”

“이런 데에 갈 리가 있나.”

“그렇다면 미노시마가 입에 물고 있었나?”

그 말을 들으면 그럴 수도 있다는 생각이 들었기에 센바는,

“제기랄. 또 저 놈한테 한 방 먹었군. 그 녀석은 끝까지 속을 썩이네.”

라고 말하면서 마치 미노시마에게 복수를 하듯이 칼을 가지고 간장이나 비장을 산산조각 내었습니다.

“이봐. 그만해. 없는 걸 어쩌겠어. 난 포기했다고. 기껏 네 힘으로 여기까지 왔지만 이번에는 재수가 없어도 보통 없는 게 아니야. 너도 포기해라.”라고 내뱉듯 말했습니다.

이상한 일입니다. 처음에는 교야마가 포기하지 못해 일을 계획했으나 지금은 센바가 오히려 포기를 못하고 있는 것입니다. 그리고 여전히 내장들을 찢어내고 있었습니다.

“이제 그만 하라니까.”라고 교야마는 힘주어 말했습니다.

그때 센바는 무슨 생각을 했는지 끔찍한 것이라도 발견한 것처럼 내장 중 하나를 가만히 쳐다보고 있고는 손으로 들어보더니,

“으악!” 하고 소리쳤습니다. “이게, 너, 웃기는 걸 가지고 왔구먼.”하고 무서운 눈으로 말했습니다.

“뭔데?”

“야, 이 자식아. 자궁이야!”

“뭐?”

“‘뭐’ 좋아하네. 잘 들어. 네가 가지고 온 건 여자 내장이란 말이야.”

“여자?”

“그럴 리가.”

“그럴 리가라니. 여자와 남자를 못 알아보는 놈이 어디 있어. 보면 알잖아.”

“하지만 얼굴과 국부에는 흰 거즈가 덮여 있었어.”

“머리카락이 있잖아, 머리카락이.”

“머리카락은 없었어.”

“웃기지 마. 더구나 젖가슴을 보면 알거 아냐.”

“그게 젖가슴도 크지 않았던 것 같애.”

“야, 이 자식아.”라고 센바 목소리는 거칠어졌습니다.

“너 지금 나를 우습게 보는 거지?”

“뭐라고?”하고 교야마도 다소 화가 났습니다.

“너 이 자식, 조수를 속이고 미노시마의 다이아몬드를 뺏고 나서, 나한테는 다른 시체 창자를 가지고 왔잖아? 어쩐지 오래 걸린다 했더니!”

뜻밖의 말을 듣고 교야마의 분노는 갑자기 커졌습니다.

“무슨 소리야? 듣자듣자 하니 끝이 없군. 네 놈이 아까부터 여기저기 건드리더니, 내가 모르는 사이에 다이아몬드를 꺼내고는 내가 창자에 대해서 모른다는 걸 알고 자궁이라고 하면서 속이려는 게지?”

갑자기 센바는 교야마한테 달려들었습니다. 다음 순간 극심한 격투가 벌어지고 잠시 후 두 발의 총성이 울리고서 둘은 시체로 변해버리고 말았습니다.


다음 날 신문에는 ‘보기 드문 범죄’라는 제목으로 T대학 법의학교실의 오쿠다 교수가 당한 재난과 감정시신의 복부장기 도난에 대한 전말이 보도되었습니다. 이에 따르면 S구 B동에 있는 비구니 절에 전날 밤 강도가 침입하여 비구니 가슴을 칼로 찔러 죽이고는 금품을 빼앗고 도망쳤는데, 그 비구니 시신의 장기를 두 사내가 가져갔으나, 무슨 목적인지 모른다는 것입니다. 한편 화장터에서 시신의 장기를 훔치는 범죄는 가끔 있으나, 법의학교실에 침입하는 것은 보기 드문 범죄라고 덧붙여졌습니다.

이제 독자 여러분도 장기가 뒤바뀐 경위는 아시겠지만, 여기에 당연히 드는 의문은 미노시마의 시체가 어떻게 되었는가 하는 점입니다. 이는 다음날 신문에서 실리지 않았습니다. 그 이유는 경찰이 3인조 중에서 남은 두 명을 찾기 위해 비밀리에 행동했기 때문입니다. 미노시마 시신은 경찰에 의해 B동에 있는 아지트에서 해부되고, 그 결과 당연히 위장 안에서 푸른색 다이아몬드가 발견되었습니다. 그리고 보석은 무사히 N남작에게 돌아갔습니다.



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Posted by 문학관 관리인 위어조자(謂語助者)


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