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  4. 2018.05.01 기우 - 한국어

아그니의 신(神)

아쿠타가와 류노스케(芥川龍之介)(1921)

일본어 원문


      一


 支那(シナ)の上海(シャンハイ)の或(ある)町です。昼でも薄暗い或家の二階に、人相の悪い印度(インド)人の婆さんが一人、商人らしい一人の亜米利加(アメリカ)人と何か頻(しきり)に話し合っていました。

「実は今度もお婆さんに、占いを頼みに来たのだがね、――」

 亜米利加人はそう言いながら、新しい巻煙草(まきたばこ)へ火をつけました。

「占いですか? 占いは当分見ないことにしましたよ」

 婆さんは嘲(あざけ)るように、じろりと相手の顔を見ました。

「この頃は折角見て上げても、御礼さえ碌(ろく)にしない人が、多くなって来ましたからね」

「そりゃ勿論(もちろん)御礼をするよ」

 亜米利加人は惜しげもなく、三百弗(ドル)の小切手を一枚、婆さんの前へ投げてやりました。

「差当りこれだけ取って置くさ。もしお婆さんの占いが当れば、その時は別に御礼をするから、――」

 婆さんは三百弗の小切手を見ると、急に愛想(あいそ)がよくなりました。

「こんなに沢山頂いては、反(かえ)って御気の毒ですね。――そうして一体又あなたは、何を占ってくれろとおっしゃるんです?」

「私(わたし)が見て貰(もら)いたいのは、――」

 亜米利加人は煙草を啣(くわ)えたなり、狡猾(こうかつ)そうな微笑を浮べました。

「一体日米戦争はいつあるかということなんだ。それさえちゃんとわかっていれば、我々商人は忽(たちま)ちの内に、大金儲(おおがねもう)けが出来るからね」

「じゃ明日(あした)いらっしゃい。それまでに占って置いて上げますから」

「そうか。じゃ間違いのないように、――」

 印度人の婆さんは、得意そうに胸を反(そ)らせました。

「私の占いは五十年来、一度も外(はず)れたことはないのですよ。何しろ私のはアグニの神が、御自身御告げをなさるのですからね」

 亜米利加人が帰ってしまうと、婆さんは次の間(ま)の戸口へ行って、

「恵蓮(えれん)。恵蓮」と呼び立てました。

 その声に応じて出て来たのは、美しい支那人の女の子です。が、何か苦労でもあるのか、この女の子の下(しも)ぶくれの頬(ほお)は、まるで蝋(ろう)のような色をしていました。

「何を愚図々々(ぐずぐず)しているんだえ? ほんとうにお前位、ずうずうしい女はありゃしないよ。きっと又台所で居睡(いねむ)りか何かしていたんだろう?」

 恵蓮はいくら叱(しか)られても、じっと俯向(うつむ)いたまま黙っていました。

「よくお聞きよ。今夜は久しぶりにアグニの神へ、御伺いを立てるんだからね、そのつもりでいるんだよ」

 女の子はまっ黒な婆さんの顔へ、悲しそうな眼を挙(あ)げました。

「今夜ですか?」

「今夜の十二時。好(い)いかえ? 忘れちゃいけないよ」

 印度人の婆さんは、脅(おど)すように指を挙げました。

「又お前がこの間のように、私に世話ばかり焼かせると、今度こそお前の命はないよ。お前なんぞは殺そうと思えば、雛(ひよ)っ仔(こ)の頸(くび)を絞めるより――」

 こう言いかけた婆さんは、急に顔をしかめました。ふと相手に気がついて見ると、恵蓮はいつか窓際(まどぎわ)に行って、丁度明いていた硝子(ガラス)窓から、寂しい往来を眺(なが)めているのです。

「何を見ているんだえ?」

 恵蓮は愈(いよいよ)色を失って、もう一度婆さんの顔を見上げました。

「よし、よし、そう私を莫迦(ばか)にするんなら、まだお前は痛い目に会い足りないんだろう」

 婆さんは眼を怒(いか)らせながら、そこにあった箒(ほうき)をふり上げました。

 丁度その途端です。誰か外へ来たと見えて、戸を叩(たた)く音が、突然荒々しく聞え始めました。


     二


 その日のかれこれ同じ時刻に、この家の外を通りかかった、年の若い一人の日本人があります。それがどう思ったのか、二階の窓から顔を出した支那人の女の子を一目見ると、しばらくは呆気(あっけ)にとられたように、ぼんやり立ちすくんでしまいました。

 そこへ又通りかかったのは、年をとった支那人の人力車夫です。

「おい。おい。あの二階に誰が住んでいるか、お前は知っていないかね?」

 日本人はその人力車夫へ、いきなりこう問いかけました。支那人は楫棒(かじぼう)を握ったまま、高い二階を見上げましたが、「あすこですか? あすこには、何とかいう印度人の婆さんが住んでいます」と、気味悪そうに返事をすると、匆々(そうそう)行きそうにするのです。

「まあ、待ってくれ。そうしてその婆さんは、何を商売にしているんだ?」

「占い者(しゃ)です。が、この近所の噂(うわさ)じゃ、何でも魔法さえ使うそうです。まあ、命が大事だったら、あの婆さんの所なぞへは行かない方が好(よ)いようですよ」

 支那人の車夫が行ってしまってから、日本人は腕を組んで、何か考えているようでしたが、やがて決心でもついたのか、さっさとその家の中へはいって行きました。すると突然聞えて来たのは、婆さんの罵(ののし)る声に交った、支那人の女の子の泣き声です。日本人はその声を聞くが早いか、一股(ひとまた)に二三段ずつ、薄暗い梯子(はしご)を駈(か)け上りました。そうして婆さんの部屋の戸を力一ぱい叩き出しました。

 戸は直ぐに開きました。が、日本人が中へはいって見ると、そこには印度人の婆さんがたった一人立っているばかり、もう支那人の女の子は、次の間へでも隠れたのか、影も形も見当りません。

「何か御用ですか?」

 婆さんはさも疑わしそうに、じろじろ相手の顔を見ました。

「お前さんは占い者だろう?」

 日本人は腕を組んだまま、婆さんの顔を睨(にら)み返しました。

「そうです」

「じゃ私の用なぞは、聞かなくてもわかっているじゃないか? 私も一つお前さんの占いを見て貰いにやって来たんだ」

「何を見て上げるんですえ?」

 婆さんは益(ますます)疑わしそうに、日本人の容子(ようす)を窺(うかが)っていました。

「私の主人の御嬢さんが、去年の春行方(ゆくえ)知れずになった。それを一つ見て貰いたいんだが、――」

 日本人は一句一句、力を入れて言うのです。

「私の主人は香港(ホンコン)の日本領事だ。御嬢さんの名は妙子(たえこ)さんとおっしゃる。私は遠藤という書生だが――どうだね? その御嬢さんはどこにいらっしゃる」

 遠藤はこう言いながら、上衣(うわぎ)の隠しに手を入れると、一挺(ちょう)のピストルを引き出しました。

「この近所にいらっしゃりはしないか? 香港の警察署の調べた所じゃ、御嬢さんを攫(さら)ったのは、印度人らしいということだったが、――隠し立てをすると為(ため)にならんぞ」

 しかし印度人の婆さんは、少しも怖(こわ)がる気色(けしき)が見えません。見えないどころか唇(くちびる)には、反って人を莫迦にしたような微笑さえ浮べているのです。

「お前さんは何を言うんだえ? 私はそんな御嬢さんなんぞは、顔を見たこともありゃしないよ」

「嘘(うそ)をつけ。今その窓から外を見ていたのは、確(たしか)に御嬢さんの妙子さんだ」

 遠藤は片手にピストルを握ったまま、片手に次の間の戸口を指さしました。

「それでもまだ剛情を張るんなら、あすこにいる支那人をつれて来い」

「あれは私の貰い子だよ」

 婆さんはやはり嘲るように、にやにや独(ひと)り笑っているのです。

「貰い子か貰い子でないか、一目見りゃわかることだ。貴様がつれて来なければ、おれがあすこへ行って見る」

 遠藤が次の間へ踏みこもうとすると、咄嗟(とっさ)に印度人の婆さんは、その戸口に立ち塞(ふさ)がりました。

「ここは私の家(うち)だよ。見ず知らずのお前さんなんぞに、奥へはいられてたまるものか」

「退(ど)け。退かないと射殺(うちころ)すぞ」

 遠藤はピストルを挙げました。いや、挙げようとしたのです。が、その拍子に婆さんが、鴉(からす)の啼(な)くような声を立てたかと思うと、まるで電気に打たれたように、ピストルは手から落ちてしまいました。これには勇み立った遠藤も、さすがに胆(きも)をひしがれたのでしょう、ちょいとの間は不思議そうに、あたりを見廻していましたが、忽ち又勇気をとり直すと、

「魔法使め」と罵(ののし)りながら、虎(とら)のように婆さんへ飛びかかりました。

 が、婆さんもさるものです。ひらりと身を躱(かわ)すが早いか、そこにあった箒(ほうき)をとって、又掴(つか)みかかろうとする遠藤の顔へ、床(ゆか)の上の五味(ごみ)を掃きかけました。すると、その五味が皆火花になって、眼といわず、口といわず、ばらばらと遠藤の顔へ焼きつくのです。

 遠藤はとうとうたまり兼ねて、火花の旋風(つむじかぜ)に追われながら、転(ころ)げるように外へ逃げ出しました。


     三


 その夜(よ)の十二時に近い時分、遠藤は独り婆さんの家の前にたたずみながら、二階の硝子窓に映る火影(ほかげ)を口惜(くや)しそうに見つめていました。

「折角御嬢さんの在(あ)りかをつきとめながら、とり戻すことが出来ないのは残念だな。一そ警察へ訴えようか? いや、いや、支那の警察が手ぬるいことは、香港でもう懲り懲りしている。万一今度も逃げられたら、又探すのが一苦労だ。といってあの魔法使には、ピストルさえ役に立たないし、――」

 遠藤がそんなことを考えていると、突然高い二階の窓から、ひらひら落ちて来た紙切れがあります。

「おや、紙切れが落ちて来たが、――もしや御嬢さんの手紙じゃないか?」

 こう呟(つぶや)いた遠藤は、その紙切れを、拾い上げながらそっと隠した懐中電燈を出して、まん円(まる)な光に照らして見ました。すると果して紙切れの上には、妙子が書いたのに違いない、消えそうな鉛筆の跡があります。


「遠藤サン。コノ家(うち)ノオ婆サンハ、恐シイ魔法使デス。時々真夜中ニ私(わたくし)ノ体ヘ、『アグニ』トイウ印度ノ神ヲ乗リ移ラセマス。私ハソノ神ガ乗リ移ッテイル間中、死ンダヨウニナッテイルノデス。デスカラドンナ事ガ起ルカ知リマセンガ、何デモオ婆サンノ話デハ、『アグニ』ノ神ガ私ノ口ヲ借リテ、イロイロ予言ヲスルノダソウデス。今夜モ十二時ニハオ婆サンガ又『アグニ』ノ神ヲ乗リ移ラセマス。イツモダト私ハ知ラズ知ラズ、気ガ遠クナッテシマウノデスガ、今夜ハソウナラナイ内ニ、ワザト魔法ニカカッタ真似(まね)ヲシマス。ソウシテ私ヲオ父様ノ所ヘ返サナイト『アグニ』ノ神ガオ婆サンノ命ヲトルト言ッテヤリマス。オ婆サンハ何ヨリモ『アグニ』ノ神ガ怖(こわ)イノデスカラ、ソレヲ聞ケバキット私ヲ返スダロウト思イマス。ドウカ明日(あした)ノ朝モウ一度、オ婆サンノ所ヘ来テ下サイ。コノ計略ノ外(ほか)ニハオ婆サンノ手カラ、逃ゲ出スミチハアリマセン。サヨウナラ」


 遠藤は手紙を読み終ると、懐中時計を出して見ました。時計は十二時五分前です。

「もうそろそろ時刻になるな、相手はあんな魔法使だし、御嬢さんはまだ子供だから、余程運が好くないと、――」

 遠藤の言葉が終らない内に、もう魔法が始まるのでしょう。今まで明るかった二階の窓は、急にまっ暗になってしまいました。と同時に不思議な香(こう)の匂(におい)が、町の敷石にも滲(し)みる程、どこからか静(しずか)に漂って来ました。


     四


 その時あの印度人の婆さんは、ランプを消した二階の部屋の机に、魔法の書物を拡(ひろ)げながら、頻(しきり)に呪文(じゅもん)を唱えていました。書物は香炉の火の光に、暗い中でも文字だけは、ぼんやり浮き上らせているのです。

 婆さんの前には心配そうな恵蓮が、――いや、支那服を着せられた妙子が、じっと椅子に坐っていました。さっき窓から落した手紙は、無事に遠藤さんの手へはいったであろうか? あの時往来にいた人影は、確に遠藤さんだと思ったが、もしや人違いではなかったであろうか?――そう思うと妙子は、いても立ってもいられないような気がして来ます。しかし今うっかりそんな気(け)ぶりが、婆さんの眼にでも止まったが最後、この恐しい魔法使いの家から、逃げ出そうという計略は、すぐに見破られてしまうでしょう。ですから妙子は一生懸命に、震える両手を組み合せながら、かねてたくんで置いた通り、アグニの神が乗り移ったように、見せかける時の近づくのを今か今かと待っていました。

 婆さんは呪文を唱えてしまうと、今度は妙子をめぐりながら、いろいろな手ぶりをし始めました。或時は前へ立ったまま、両手を左右に挙げて見せたり、又或時は後へ来て、まるで眼かくしでもするように、そっと妙子の額の上へ手をかざしたりするのです。もしこの時部屋の外から、誰か婆さんの容子を見ていたとすれば、それはきっと大きな蝙蝠(こうもり)か何かが、蒼白(あおじろ)い香炉の火の光の中に、飛びまわってでもいるように見えたでしょう。

 その内に妙子はいつものように、だんだん睡気(ねむけ)がきざして来ました。が、ここで睡ってしまっては、折角の計略にかけることも、出来なくなってしまう道理です。そうしてこれが出来なければ、勿論二度とお父さんの所へも、帰れなくなるのに違いありません。

「日本の神々様、どうか私(わたし)が睡らないように、御守りなすって下さいまし。その代り私はもう一度、たとい一目でもお父さんの御顔を見ることが出来たなら、すぐに死んでもよろしゅうございます。日本の神々様、どうかお婆さんを欺(だま)せるように、御力を御貸し下さいまし」

 妙子は何度も心の中に、熱心に祈りを続けました。しかし睡気はおいおいと、強くなって来るばかりです。と同時に妙子の耳には、丁度銅鑼(どら)でも鳴らすような、得体の知れない音楽の声が、かすかに伝わり始めました。これはいつでもアグニの神が、空から降りて来る時に、きっと聞える声なのです。

 もうこうなってはいくら我慢しても、睡らずにいることは出来ません。現に目の前の香炉の火や、印度人の婆さんの姿でさえ、気味の悪い夢が薄れるように、見る見る消え失(う)せてしまうのです。

「アグニの神、アグニの神、どうか私(わたし)の申すことを御聞き入れ下さいまし」

 やがてあの魔法使いが、床の上にひれ伏したまま、嗄(しわが)れた声を挙げた時には、妙子は椅子に坐りながら、殆(ほとん)ど生死も知らないように、いつかもうぐっすり寝入っていました。


     五


 妙子は勿論婆さんも、この魔法を使う所は、誰の眼にも触れないと、思っていたのに違いありません。しかし実際は部屋の外に、もう一人戸の鍵穴(かぎあな)から、覗(のぞ)いている男があったのです。それは一体誰でしょうか?――言うまでもなく、書生の遠藤です。

 遠藤は妙子の手紙を見てから、一時は往来に立ったなり、夜明けを待とうかとも思いました。が、お嬢さんの身の上を思うと、どうしてもじっとしてはいられません。そこでとうとう盗人(ぬすびと)のように、そっと家の中へ忍びこむと、早速この二階の戸口へ来て、さっきから透き見をしていたのです。

 しかし透き見をすると言っても、何しろ鍵穴を覗くのですから、蒼白い香炉の火の光を浴びた、死人のような妙子の顔が、やっと正面に見えるだけです。その外(ほか)は机も、魔法の書物も、床にひれ伏した婆さんの姿も、まるで遠藤の眼にははいりません。しかし嗄(しわが)れた婆さんの声は、手にとるようにはっきり聞えました。

「アグニの神、アグニの神、どうか私の申すことを御聞き入れ下さいまし」

 婆さんがこう言ったと思うと、息もしないように坐っていた妙子は、やはり眼をつぶったまま、突然口を利(き)き始めました。しかもその声がどうしても、妙子のような少女とは思われない、荒々しい男の声なのです。

「いや、おれはお前の願いなぞは聞かない。お前はおれの言いつけに背(そむ)いて、いつも悪事ばかり働いて来た。おれはもう今夜限り、お前を見捨てようと思っている。いや、その上に悪事の罰を下してやろうと思っている」

 婆さんは呆気(あっけ)にとられたのでしょう。暫くは何とも答えずに、喘(あえ)ぐような声ばかり立てていました。が、妙子は婆さんに頓着(とんじゃく)せず、おごそかに話し続けるのです。

「お前は憐(あわ)れな父親の手から、この女の子を盗んで来た。もし命が惜しかったら、明日(あす)とも言わず今夜の内に、早速この女の子を返すが好(よ)い」

 遠藤は鍵穴に眼を当てたまま、婆さんの答を待っていました。すると婆さんは驚きでもするかと思いの外(ほか)、憎々しい笑い声を洩(も)らしながら、急に妙子の前へ突っ立ちました。

「人を莫迦(ばか)にするのも、好(い)い加減におし。お前は私を何だと思っているのだえ。私はまだお前に欺される程、耄碌(もうろく)はしていない心算(つもり)だよ。早速お前を父親へ返せ――警察の御役人じゃあるまいし、アグニの神がそんなことを御言いつけになってたまるものか」

 婆さんはどこからとり出したか、眼をつぶった妙子の顔の先へ、一挺のナイフを突きつけました。

「さあ、正直に白状おし。お前は勿体(もったい)なくもアグニの神の、声色(こわいろ)を使っているのだろう」

 さっきから容子を窺っていても、妙子が実際睡っていることは、勿論遠藤にはわかりません。ですから遠藤はこれを見ると、さては計略が露顕したかと思わず胸を躍(おど)らせました。が、妙子は相変らず目蓋(まぶた)一つ動かさず、嘲笑(あざわら)うように答えるのです。

「お前も死に時が近づいたな。おれの声がお前には人間の声に聞えるのか。おれの声は低くとも、天上に燃える炎の声だ。それがお前にはわからないのか。わからなければ、勝手にするが好(い)い。おれは唯(ただ)お前に尋ねるのだ。すぐにこの女の子を送り返すか、それともおれの言いつけに背くか――」

 婆さんはちょいとためらったようです。が、忽ち勇気をとり直すと、片手にナイフを握りながら、片手に妙子の襟髪(えりがみ)を掴(つか)んで、ずるずる手もとへ引き寄せました。

「この阿魔(あま)め。まだ剛情を張る気だな。よし、よし、それなら約束通り、一思いに命をとってやるぞ」

 婆さんはナイフを振り上げました。もう一分間遅れても、妙子の命はなくなります。遠藤は咄嗟(とっさ)に身を起すと、錠のかかった入口の戸を無理無体に明けようとしました。が、戸は容易に破れません。いくら押しても、叩いても、手の皮が摺(す)り剥(む)けるばかりです。


     六


 その内に部屋の中からは、誰かのわっと叫ぶ声が、突然暗やみに響きました。それから人が床の上へ、倒れる音も聞えたようです。遠藤は殆ど気違いのように、妙子の名前を呼びかけながら、全身の力を肩に集めて、何度も入口の戸へぶつかりました。

 板の裂ける音、錠のはね飛ぶ音、――戸はとうとう破れました。しかし肝腎(かんじん)の部屋の中は、まだ香炉に蒼白い火がめらめら燃えているばかり、人気(ひとけ)のないようにしんとしています。

 遠藤はその光を便りに、怯(お)ず怯ずあたりを見廻しました。

 するとすぐに眼にはいったのは、やはりじっと椅子にかけた、死人のような妙子です。それが何故(なぜ)か遠藤には、頭(かしら)に毫光(ごこう)でもかかっているように、厳(おごそ)かな感じを起させました。

「御嬢さん、御嬢さん」

 遠藤は椅子へ行くと、妙子の耳もとへ口をつけて、一生懸命に叫び立てました。が、妙子は眼をつぶったなり、何とも口を開きません。

「御嬢さん。しっかりおしなさい。遠藤です」

 妙子はやっと夢がさめたように、かすかな眼を開きました。

「遠藤さん?」

「そうです。遠藤です。もう大丈夫ですから、御安心なさい。さあ、早く逃げましょう」

 妙子はまだ夢現(ゆめうつつ)のように、弱々しい声を出しました。

「計略は駄目だったわ。つい私が眠ってしまったものだから、――堪忍(かんにん)して頂戴よ」

「計略が露顕したのは、あなたのせいじゃありませんよ。あなたは私と約束した通り、アグニの神の憑(かか)った真似(まね)をやり了(おお)せたじゃありませんか?――そんなことはどうでも好(い)いことです。さあ、早く御逃げなさい」

 遠藤はもどかしそうに、椅子から妙子を抱き起しました。

「あら、嘘(うそ)。私は眠ってしまったのですもの。どんなことを言ったか、知りはしないわ」

 妙子は遠藤の胸に凭(もた)れながら、呟(つぶや)くようにこう言いました。

「計略は駄目だったわ。とても私は逃げられなくってよ」

「そんなことがあるものですか。私と一しょにいらっしゃい。今度しくじったら大変です」

「だってお婆さんがいるでしょう?」

「お婆さん?」

 遠藤はもう一度、部屋の中を見廻しました。机の上にはさっきの通り、魔法の書物が開いてある、――その下へ仰向(あおむ)きに倒れているのは、あの印度人の婆さんです。婆さんは意外にも自分の胸へ、自分のナイフを突き立てたまま、血だまりの中に死んでいました。

「お婆さんはどうして?」

「死んでいます」

 妙子は遠藤を見上げながら、美しい眉をひそめました。

「私、ちっとも知らなかったわ。お婆さんは遠藤さんが――あなたが殺してしまったの?」

 遠藤は婆さんの屍骸(しがい)から、妙子の顔へ眼をやりました。今夜の計略が失敗したことが、――しかしその為に婆さんも死ねば、妙子も無事に取り返せたことが、――運命の力の不思議なことが、やっと遠藤にもわかったのは、この瞬間だったのです。

「私が殺したのじゃありません。あの婆さんを殺したのは今夜ここへ来たアグニの神です」

 遠藤は妙子を抱(かか)えたまま、おごそかにこう囁(ささや)きました。

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Posted by 문학관 관리인 위어조자(謂語助者)

아그니의 신(神)

아쿠타가와 류노스케(芥川龍之介)(1921)

번역 : 홍성필


1.


 중국 샹하이에 있는 어느 마을입니다. 낮인데도 어두컴컴한 어느 집 2층에 인상이 험악한 인도인 노파 하나가 상인 같은 한 미국인과 연신 이야기하고 있었습니다.

 “사실 이번에도 할머니에게 점을 보러왔는데…….”

 미국인은 그렇게 말하면서 새 잎담배에 불을 붙였습니다.

 “점이라고요? 점은 당분간 안 치기로 했습니다.”

 노파는 비웃듯이 슬쩍 상대방 얼굴을 쳐다봤습니다.

 “요즘은 기껏 쳐줘도 사례조차 제대로 하지 않는 사람들이 많아졌거든요.”

 “그야 물론 사례는 해드리죠.”

 미국인은 아낌없이 300달러 수표를 한 장, 할머니에게 건냈습니다.

 “일단 이것만 지불해두지. 만약 할머니 점이 맞으면 그 때는 따로 사례를 할 테니까…….”

 노파는 300달러 수표를 보자 갑자기 친절해졌습니다.

 “이렇게 많이 받으면 오히려 죄송하지요. 그런데 대체 당신은 무슨 점을 봐달라는 말씀이온지?”

 “내가 원하는 건…….”

 미국인은 담배를 물자 교활한 웃음을 지었습니다.

 “대체 미일전쟁은 언제 일어나는가 하는 거요. 그것만이라도 잘 알고 있으면, 우리 상인들은 순식간에 떼돈을 벌 수 있으니 말이오.”

 “그렇다면 내일 오시오. 그 때까지 점을 쳐볼 테니.”

 “그렇군. 그럼 꼭 부탁하네.”

 인도인 노파는 자랑스럽다는 듯 가슴을 폈습니다.

 “내 점은 지난 50년 동안 한 번도 틀린 적이 없습죠. 뭐니 뭐니 해도 내게는 아그니 신이 스스로 점괘를 주시거든요.”

 미국인이 돌아가자 노파는 사랑방 입구에 서더니,

 “혜련(惠蓮)아. 혜련아.” 하고 불렀습니다.

 그 소리를 듣고 나온 것은 아름다운 중국 여자 아이였습니다. 그러나 무슨 힘든 일이라도 있는지, 부어오른 통통한 볼은 마치 촛농과도 같은 빛을 띠고 있었습니다.

 “뭘 꾸물대는 게야. 정말 너처럼 뻔뻔한 년은 없어. 분명 또 부엌에서 졸고나 있었겠지?”

 혜련은 아무리 혼이 나도 묵묵히 고개를 숙인 채로 있었습니다.

 “잘 들어라. 오늘 밤은 모처럼 아그니 신께 여쭐 것이야. 그렇게 알고 있어라.”

 여자 아이는 시커먼 할머니 얼굴 쪽으로 슬픔에 잠긴 눈을 들었습니다.

 “오늘 밤이요?”

 “오늘 밤 12시야. 알았지? 잊지 말아라.”

 인도인 노파는 협박하듯 손가락을 치켜세웠습니다.

 “또 네가 예전처럼 나한테 귀찮게 굴면 이번에야말로 네 목숨은 없는 줄 알아라. 너 같은 걸 죽이는 건 병아리 모가지를 비틀기보다…….”

 여기까지 말한 노파는 갑자기 얼굴을 찡그렸습니다. 문득 앞을 보자 혜련은 어느새 창가에 가서 마침 열려 있던 유리문으로 쓸쓸한 거리를 바라보고 있는 것입니다.

 “뭘 보고 있는 게야?”

 혜련은 사색이 되어 다시 한 번 할머니 얼굴을 올려다보았습니다.

 “그래. 알았어. 그렇게 날 바보취급 하는 걸 보니, 아직 정신을 못 차렸구나.”

 노파는 눈을 부라리며 그곳에 있던 빗자루를 집어 들었습니다.

 바로 그 순간입니다. 밖에서 누군가가 온 듯. 문을 두르리는 소리가 갑자기 거칠게 들려오기 시작하였습니다.



 2.


 그날 비슷한 시간에 그 집 바깥을 지나던 젊은 한 일본인이 있었습니다. 자신도 모르게 문득 2층 창문에서 얼굴을 내민 중국 여자아이를 한 번 보더니 잠시 동안 넋을 잃은 듯 멍하니 그 자리에 멈춰서버리고 말았습니다.

 마침 그곳을 지나던 나이 든 중국인 인력거가 있었습니다.

 “이봐, 여보게. 저기 2층에는 누가 살고 있는지, 자네 알고 있나?”

 일본인은 그 인력거 장수에게 대뜸 물었습니다. 중국인은 손잡이를 쥔 채로 높은 2층을 올려다보았습니다만, “저기 말인가요? 저기에는 뭐라고 하는 인도인 노파가 살고 있습니다.”라며 얼굴을 찡그리며 대답하자 서둘러 떠나려 하는 것이었습니다.

 “잠깐 기다려주게. 그런데 그 노파는 어떤 장사를 하고 있지?”

 “점쟁이에요. 하지만 들리는 소문에 의하면 무슨 마법까지도 쓰나봅니다. 뭐, 목숨이 아깝거든 그런 노파한테는 가지 않는 편이 좋습죠.”

 중국인 인력거가 떠나가자 일본인은 팔짱을 끼고 무언가를 생각하고 있는 것 같았습니다, 이윽고 결심이라도 섰는지 서둘러 그 집안으로 들어갔습니다. 그러자 갑자기 들러온 것은 노파의 고함소리에 섞여 중국인 여자의 우는 소리였습니다. 일본인은 그 목소리를 듣자마자 단번에 두 세 단씩 어두컴컴한 사다리를 뛰어 올라갔습니다. 그리고 노파가 있는 방문을 힘껏 두드렸습니다

 문은 바로 열렸으나 일본인이 들어가자 그 곳에는 노파가 홀로 서 있을 뿐, 이미 중국인 여자 아이는 다른 방에라도 숨었는지 흔적조차 없습니다.

 “무슨 볼 일이라도?”

 노파는 매우 수상하다는 듯이 유심히 상대방 얼굴을 쳐다보았습니다.

 “당신은 점쟁이 아닌가?”

 일본인은 팔짱을 낀 채로 노파 얼굴을 노려보았습니다.

 “그렇습니다.”

 “그렇다면 내가 온 이유 같은 건 묻지 않아도 알고 있는 게 아닌가? 나도 어디 한 번 당신 점을 보러 온 거요.”

 “무엇이 궁금하시죠?”

 노파는 더욱 수상하다는 듯한 눈빛으로 일본인을 지켜보고 있었습니다.

 “내가 모시는 주인의 따님이 작년 봄에 행방불명이 되었소. 그걸 한 번 알아봐줬으면 하는데…….”

 일본인은 한 마디 한 마디를 힘을 주며 말하는 것이었습니다.

 “내 주인은 홍콩에 계신 일본 영사님이시오. 아가씨 이름은 타에코(妙子) 씨라고 하오. 나는 엔도(遠藤)라고 하는 서생인데……어떤가? 그 아가씨는 어디 계시지?”

 엔도는 이렇게 말하면서 윗도리 안주머니에 손을 넣자 한 자루 권총을 꺼냈습니다.

 “이 주변에 계시지 않나? 홍콩 경찰서에서 조사한 바에 의하면 아가씨를 납치한 자는 인도인 같다고 하던데……숨기면 신상에 안 좋을 게야.”

 그러나 인도인 노파는 조금도 두려워하는 기색이 없습니다. 두려워하기는커녕 입가에는 오히려 사람을 조롱하듯 미소까지 띄우고 있었습니다.

 “당신 무슨 말을 하시나? 난 그런 아가씨는 얼굴도 본 적이 없다우.”

 “거짓말 말아. 지금 그 창문에서 바깥을 보고 있던 건 분명 타에코 아가씨였어.”

 엔도는 한 손에 권총을 쥐고서 다른 한 손으로 옆방 문을 가리켰습니다.

 “그래도 계속 고집을 부리면 저기 있는 중국인들 데리고 와.”

 “저건 내 양녀요.”

 노파는 역시 조소하는 피식피식 혼자 웃고 있는 것입니다.

 “양녀인지 아닌지 한 번 보면 알 수 있겠지. 네놈이 데리고 오지 않는다면 내가 저기에 가보마.”

 엔도가 옆방으로 들어서려 하자 순식간에 인도인 노파는 그 입구를 막아셨습니다.

 “여긴 내 집이야. 누군지도 모르는 당신 같은 사람한테 들여보낼 수야 있나.”

 “비켜. 비키지 않으면 쏴 죽인다.”

 엔도는 권총을 들어 올렸습니다. 아니, 들어 올리려고 했습니다. 그러나 그 순간 노파가 까마귀 울음소리 같은 것을 내자 마치 전기에 감전이라도 된 듯이 권총을 놓치고 말았습니다. 이렇게 되자 그 때까지 강경했던 엔도도 과연 놀랐겠지요. 잠시 동안은 이상하다는 듯이 주변을 돌아보았으나 곧바로 정신을 가다듬고는,

 “요망한 할멈 같으니라구.” 라고 소리치며 호랑이와도 같이 노파를 향해 덤벼들었습니다.

 그러나 노파도 가만히 있지는 않습니다. 날렵하게 몸을 피하더니 거기에 있던 빗자루를 쥐고서는 또다시 덤벼드는 엔도 얼굴을 향해 고춧가루를 뿌렸습니다. 그러자 그 고춧가루가 모두 불꽃으로 변하더니 눈이고 입이고 태우기 시작하는 것이었습니다.

 엔도는 결국 견딜 수가 없어 불꽃 질풍에 쫓기며 굴러 떨어지듯 바깥으로 도망쳐 나왔습니다.



 3.


 그날 밤 12시 경, 엔도는 홀로 노파 집앞에 머물면서 2층 유리창에 비치는 불빛을 안타까운 심정으로 바라보았습니다.

 “간신히 아가씨가 계신 곳을 찾아냈건만 구해낼 수 없다니 애석하다. 아예 경찰에 신고할까? 아니, 아냐. 중국 경찰이 허술하다는 건 홍콩에서 뼈저리게 느꼈지. 만약 다시 도망치면 또다시 찾아내기는 힘들 거야. 그렇다고 저 요망한 할멈한테는 권총도 소용없으니…….”

 엔도가 그런 생각을 하고 있자 갑자기 높은 2층 창문에서 바람에 날리며 떨어진 종잇조각이 있습니다.

 “어? 종잇조각이 떨어져왔군……. 혹시 아가씨가 보낸 편지가 아닐까?”

 이렇게 중얼거린 엔도는 그 종잇조각을 주우면서, 숨겨 두었던 회중전등을 꺼내어 동그란 빛에 비춰봤습니다. 그러자 역시 종잇조각에는 분명히 타에코 아가씨가 쓴 희미한 연필흔적이 있습니다.

 “엔도 씨. 이 집 할머니는 무서운 마법사입니다. 가끔 한밤중에 제 몸에 ‘아그니’라는 인도 신을 들게 합니다. 저는 그 신이 들렸을 때는 죽은 것처럼 되어 있습니다. 그러므로 어떤 일이 벌어질지 모르지만, 할머니한테 들은 바로는 ‘아그니’ 신이 제 입을 빌려 여러 가지 예언을 한다고 합니다. 오늘 밤에도 12시에는 할머니가 또 ‘아그니’를 불러들입니다. 평소 같으면 저는 나도 모르게 정신이 멍해져가지만 오늘은 그렇게 되기 전에 일부러 마법에 걸린 시늉을 할 겁니다. 그리고 저를 아버님께로 돌려보내지 않으면 ‘아그니’의 신이 할머니 목숨을 빼앗을 거라고 말해주겠습니다. 할머니는 누구보다도 ‘아그니’ 신을 두려워하므로 그 말을 들으면 저를 되돌려줄 것입니다. 제발 내일 아침 다시 한 번 할머니가 있는 곳에 와 주세요. 이 계략 외에 할머니 손아귀에서 벗어날 방법은 없습니다. 그럼 이만.”

 엔도는 편지를 다 읽고 나서 시계를 꺼내보았습니다. 시계는 12시 5분전이었습니다.

 “이제 서서히 시작하겠군. 상대방은 저런 마법사이고 아가씨는 아직 어리시니 좀처럼 운이 좋지 않으면…….”

 엔도의 말이 끝나기도 전에 벌써 마법이 시작되는지, 지금까지 밝았던 2층 창문은 갑자기 어두워졌습니다. 동시에 기이한 향내가 동네 길바닥까지도 스며들 정도로 어딘가에서부터 천천히 퍼져 나왔습니다.



 4.


 그 때 그 인도인 노파는 호롱불을 끈 2층 방 책상에 마법서를 펼치면서 연신 주문을 외우고 있었습니다. 책에는 향로 불빛으로 어둠 속에서도 글씨만은 희미하게 보이도록 한 것입니다.

 노파 앞에는 걱정스러운 혜련이……. 아니, 중국옷이 입혀진 타에코가 가만히 의자에 앉아 있었습니다. 방금 전 떨어뜨린 편지는 무사히 엔도 씨한테 전해졌을까? 그 때 거리에 있던 사람은 분명 엔도 씨라고 생각했는데, 혹시 다른 사람이 아니었을까……? 그런 생각을 하자 안절부절 못했습니다. 그러나 지금 실수로 노파에게 그런 눈치라도 채는 날에는 끔찍한 마법사 집에서 도망치려는 계략이 탄로나고 말 것입니다. 그러므로 타에코는 열심히 떨리는 손을 꼭 잡고는 예정대로 아그니 신이 씐 것처럼 보이게 할 기회를 불안에 떨며 기다리고 있었습니다.

 노파는 주문을 외우자 이번에는 타에코 주변을 돌며 이런저런 손짓을 하기 시작했습니다. 어떤 때는 앞에 선 채로 두 손을 좌우로 펼치기도 하고, 또 어떤 때는 뒤에 와서 마치 눈을 가리듯 조용히 타에코 이마 위에 손을 대기도 하였습니다. 만약 지금 방 바깥에서 누군가가 노파 모습을 보았다면, 그건 분명 큰 박쥐같은 것이 창백한 향로 불빛 속에서 날아다니는 것처럼 보였을 것입니다.

 그러자 타에코는 평소처럼 점점 졸음이 오기 시작했습니다. 그러나 여기서 잠이 들어버리면 계략에 걸 수도 없습니다. 그리고 노파를 속일 수 없다면 물론 두 번 다시 아버님께로 돌아갈 수 없을 것입니다.

 “일본의 하나님. 제발 제가 잠이 들지 않도록 지켜주세요. 그 대신 저는 다시 한 번, 아무리 단 한번이라도 아버님 얼굴을 뵐 수 있다면 곧바로 죽어도 좋습니다. 일본의 하나님. 제발 할머니를 속일 수 있도록 힘을 주세요.”

 타에코는 몇 번이고 마음 속으로 열심히 기도했습니다. 그러나 졸음은 점점 더 밀려올 따름이었습니다. 그와 동시에 타에코 귀에는 마치 징이라도 울리는 것처럼 정체 모를 음악소리가 희미하게 들려왔습니다. 이것은 항상 아그니 신이 하늘에서 내려올 때에 들려온 소리였던 것입니다.

 이렇게 되자 아무리 참아도 잠이 들지 않을 도리가 없습니다. 눈앞에 놓인 향로 불빛이나 인도인 노파 모습조차도 악몽이 희미해지듯 사라져가고 있었습니다.

 “아그니 신이시여, 아그니 신이시여. 부디 제 부탁들 들어주소서.”

 이윽고 마법사가 바닥 위에 엎드린 채로 쉰 목소리를 낼 때, 타에코는 의자에 앉은 채로 거의 생사도 모를 정도로 어느새 깊이 잠이 들고 있었습니다.



 5.


 타에코는 물론이고 노파조차도 이 마법을 사용하는 곳은 아무도 안 보고 있다고 생각했을 것입니다. 그러나 실제로는 방문 앞에 있는 출입문 열쇠구멍으로 훔쳐보고 있는 사람이 있었습니다. 그것은 누구였을까요. 두말할 나위 없이 서생인 엔도였습니다.

 엔도는 타에코가 쓴 편지를 읽고서 거리에 선 채로 새벽을 기다릴까도 했습니다. 그러나 아가씨 신상을 생각하자 도저히 가만히 있을 수가 없었습니다. 그리하여 결국 도둑처럼 몰래 집안으로 침입하자 곧바로 여기 2층 문 앞까지 와서 방금 전부터 몰래 훔쳐보고 있었던 것입니다.

 그러나 훔쳐본다고 해도 열쇠구멍으로 보는 것이므로 창백한 항로불빛을 받아 죽은 자와 같은 타에코 얼굴이 간신히 정면으로 보일 뿐입니다. 그 외에는 책상이나 마법서, 그리고 바닥에 엎드려 절하는 노파 모습도 전혀 엔도 눈에는 들어오지 않습니다. 하지만 쉰 노파 목소리는 너무나도 선명하게 들렸습니다.

 “아그니 신이시여, 아그니 신이시여. 부디 제 부탁들 들어주소서.”

 노파가 이렇게 말하자 숨도 안 쉬는 것처럼 앉아 있던 타에코는 역시 눈을 감은 채로 갑자기 말을 하기 시작했습니다. 더구나 그 목소리는 아무리 들어도 타에코와 같은 소녀라고는 보이지 않는, 거친 남자 목소리였던 것입니다.

 “아니야. 나는 네 소원 같은 것은 듣지 않을 것이다. 너는 내 명을 거스르고 항상 악행만 저질러 왔다. 나는 이제 오늘 밤 이후로 너를 버리려 한다. 아니, 나아가 악행에 대한 벌을 내리려고 한다.”

 노파는 놀란 듯했습니다. 잠시 아무런 대답도 하지 않은 채 신음소리만 내고 있었습니다. 그러나 이와는 상관없이 타에코는 노파에게 계속 말을 이었습니다.

 “너는 가엾은 아버지 손에서부터 이 여자 아이를 훔쳐왔다. 만약 목숨이 아깝거든 내일도 아닌 오늘 밤이 가기 전, 이 여자 아이를 돌려보내도록 하라.”

 엔도는 열쇠구멍에 눈을 댄 채로 노파의 대답을 기다리고 있었습니다. 그러자 노파는 놀라지도 않고 뜻밖에 웃음소리를 내며 갑자기 타에코 앞에 다가섰습니다.

 “사람을 놀리는 건 집어치워라. 네가 나를 누구인줄 아냐. 난 아직 너한테 속을 정도로 노망 들지는 않았다고. 어서 너를 아버지한테 돌려주라고? 경찰 관리도 아닌 아그니 신이 그런 말을 할 것 같냐?”

 노파는 어디서 났는지 눈을 감은 타에코 얼굴 앞에 한 자루 칼을 들이댔습니다.

 “자아, 솔직하게 불어. 너는 감히 아그니 신의 목소리를 쓰고 있는 게지?”

 아까부터 지켜보고 있어도 타에코가 실제로 잠을 자고 있다는 것은 물론 엔도도 알 길이 없었습니다. 그러므로 엔도는 이를 보자 계략이 탄로 난 줄로 알고 몹시 긴장했습니다. 그러나 타에코는 여전히 눈꺼풀 하나 움직이지 않고 비웃듯이 대답하는 것이었습니다.

 “너도 죽을 때가 됐나보군. 내 목소리가 네게는 인간의 목소리로 들리는가. 내 목소리는 고요해도 천상에서 타오르는 불꽃처럼 나는 소리다. 그것을 너는 알지 못하는가. 알지 못한다면 마음대로 해라. 나는 그저 네게 물을 따름이다. 곧바로 이 여자 아이를 돌려보내든지, 아니면 내 명을 거역하든지…….”

 노파는 잠시 주저한 것 같았습니다. 그러나 다시 용기를 되찾더니 한 손에 칼을 쥐면서 다른 한 손으로는 타에코의 멱살을 잡고 질질 끌어당겼습니다.

 “이 나쁜 년 같으니라고. 아직도 고집을 부리는 게냐? 그래. 알았다. 그렇다면 약속대로 단번에 죽여주마.”

 노파는 칼을 들어 올렸습니다. 이제 1분만 늦어도 타에코는 목숨을 잃습니다. 엔토는 순식간에 몸을 펴자 열쇠가 잠긴 문을 억지로 열려고 하였습니다. 그러나 문은 쉽게 열리지 않습니다. 아무리 누르고 두드려도 손가죽이 벗겨질 뿐이었습니다.



 6.


 그러는 동안에 방 안에서는 누군가의 비명소리가 갑자기 어둠 속에 울려 퍼졌습니다. 그리고는 사람이 바닥 위에 쓰러지는 소리도 들린 것 같습니다. 엔도는 거의 미친 듯이 타에코 이름을 부르며 전신의 힘을 어깨에 모아 몇 번씩이나 입구 문을 향해 돌진했습니다.

 나무 판이 깨지는 소리, 자물쇠가 떨어져 나가는 소리……문은 드디어 부서졌습니다. 그러나 막상 방 안에는 아직 향로에 창백한 불이 활활 타오르고 있을 뿐, 인기척이 없이 정적에 싸여 있습니다.

 엔도는 그 빛을 의지하며 조심스럽게 주변을 살폈습니다.

 그러자 바로 눈에 들어온 것은 역시 가만히 의자에 앉아 있는, 마치 죽은 사람과도 같은 타에코입니다. 그런데 왠지 모르게 엔도에게는 머리에서 후광이라도 비치듯이 근엄한 느낌을 불어 일으켰습니다.

 “아가씨, 아가씨.”

 엔도는 의자가 있는 곳으로 가자 타에코 귓가에 입을 대고 열심히 소리쳤습니다. 그러나 타에코는 눈을 감은 채로 아무런 말도 없습니다.

 “아가씨. 정신 차리세요. 엔도입니다.”

 타에코는 그제야 꿈에서 깨어나듯 천천히 눈을 떴습니다.

 “엔도 씨?”

 “그래요. 엔도입니다. 이제 괜찮으니 안심하세요. 자, 어서 도망칩시다.”

 타에코는 아직도 비몽사몽인 듯, 작은 목소리를 냈습니다.

 “계략은 안 됐어요. 제가 잠이 들고 말았어요……. 죄송해요.”

 “계략이 탄로 난 건 아가씨 때문이 아니에요. 아가씨는 저와 약속한 대로 아그니 신이 씐 흉내를 잘 해내셨잖아요? 아무튼 그 일은 이제 됐습니다. 어서 빨리 도망칩시다.”

 엔도는 초초한 듯이 의자에서 타에코를 일으켜 세웠습니다.

 “어머, 거짓말. 전 잠이 들었어요. 무슨 말을 했는지 알 수 없는걸요.”

 타에코는 엔도 품에 기대며 중얼거리듯 그렇게 말했습니다.

 “계략은 실패했어요. 저는 도저히 도망갈 수 없어요.”

 “그럴 리가 있나요. 저와 함께 갑시다. 이번 기회를 놓치면 큰일 납니다.”

 “하지만 할머니가 있잖아요?”

 “할머니요?”

 엔도는 다시 한 번 방 안을 살폈습니다. 책상 위에는 방금 전 그대로 마법서가 펼쳐져 있고……그 밑에 쓰러져 있는 것은 그 인도인 노파였습니다. 노파는 뜻밖에도 자기 가슴에 자기 칼이 꽂힌 채로 흥건하게 피가 고인 곳에 누워서 죽어 있었습니다.

 “할머니는 어때요?”

 “죽어 있습니다.”

 타에코는 엔도를 올려보며 아름다운 눈썹을 찌푸렸습니다.

 “전 아무 것도 몰랐어요. 할머니는 엔도 씨가……당신이 죽이신 건가요?”

 엔도는 노파 시신에서 타에코 얼굴로 눈길을 옮겼습니다. 오늘 밤 계략이 실패한 것 …… 하지만 그럼으로써 노파도 죽고 타에코도 무사히 구해낼 수 있었다는 것 …… 불가사의한 운명의 힘을 엔도가 알 수 있었던 것은 바로 이 순간이었습니다.

 “제가 죽인 건 아닙니다. 저 노파를 죽인 것은 오늘 밤 여기에 온 아그니의 신입니다.”

 엔도는 타에코를 안은 채로 이렇게 조용히 속삭였습니다.

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기우(奇遇)

아쿠타가와 류노스케 (芥川龍之介)(1921)

일본어 원문


支那(シナ)へ旅行するそうですね。南ですか? 北ですか?

小説家 南から北へ周(めぐ)るつもりです。

編輯者 準備はもう出来たのですか?

小説家 大抵(たいてい)出来ました。ただ読む筈だった紀行や地誌なぞが、未だに読み切れないのに弱っています。

編輯者 (気がなさそうに)そんな本が何冊もあるのですか?

小説家 存外ありますよ。日本人が書いたのでは、七十八日遊記、支那文明記、支那漫遊記、支那仏教遺物、支那風俗、支那人気質、燕山楚水(えんざんそすい)、蘇浙小観(そせつしょうかん)、北清(ほくしん)見聞録、長江(ちょうこう)十年、観光紀游、征塵録(せいじんろく)、満洲、巴蜀(はしょく)、湖南(こなん)、漢口(かんこう)、支那風韻記(しなふういんき)、支那――

編輯者 それをみんな読んだのですか?

小説家 何、まだ一冊も読まないのです。それから支那人が書いた本では、大清一統志(たいしんいっとうし)、燕都遊覧志(えんとゆうらんし)、長安客話(ちょうあんかくわ)、帝京(ていきょう)――

編輯者 いや、もう本の名は沢山です。

小説家 まだ西洋人が書いた本は、一冊も云わなかったと思いますが、――

編輯者 西洋人の書いた支那の本なぞには、どうせ碌(ろく)な物はないでしょう。それより小説は出発前(まえ)に、きっと書いて貰えるでしょうね。

小説家 (急に悄気(しょげ)る)さあ、とにかくその前には、書き上げるつもりでいるのですが、――

編輯者 一体何時(いつ)出発する予定ですか?

小説家 実は今日(きょう)出発する予定なのです。

編輯者 (驚いたように)今日ですか?

小説家 ええ、五時の急行に乗る筈なのです。

編輯者 するともう出発前には、半時間しかないじゃありませんか?

小説家 まあそう云う勘定(かんじょう)です。

編輯者 (腹を立てたように)では小説はどうなるのですか?

小説家 (いよいよ悄気(しょげ)る)僕もどうなるかと思っているのです。

編輯者 どうもそう無責任では困りますなあ。しかし何しろ半時間ばかりでは、急に書いても貰えないでしょうし、………

小説家 そうですね。ウェデキンドの芝居だと、この半時間ばかりの間(あいだ)にも、不遇の音楽家が飛びこんで来たり、どこかの奥さんが自殺したり、いろいろな事件が起るのですが、――御待ちなさいよ。事によると机の抽斗(ひきだし)に、まだ何か発表しない原稿があるかも知れません。

編輯者 そうすると非常に好都合ですが――

小説家 (机の抽斗を探しながら)論文ではいけないでしょうね。

編輯者 何と云う論文ですか?

小説家 「文芸に及ぼすジャアナリズムの害毒」と云うのです。

編輯者 そんな論文はいけません。

小説家 これはどうですか? まあ、体裁の上では小品(しょうひん)ですが、――

編輯者 「奇遇(きぐう)」と云う題ですね。どんな事を書いたのですか?

小説家 ちょいと読んで見ましょうか? 二十分ばかりかかれば読めますから、――


×          ×          ×


 至順(しじゅん)年間の事である。長江(ちょうこう)に臨んだ古金陵(こきんりょう)の地に、王生(おうせい)と云う青年があった。生れつき才力が豊な上に、容貌(ようぼう)もまた美しい。何でも奇俊(きしゅん)王家郎(おうかろう)と称されたと云うから、その風采(ふうさい)想うべしである。しかも年は二十(はたち)になったが、妻はまだ娶(めと)っていない。家は門地(もんち)も正しいし、親譲りの資産も相当にある。詩酒の風流を恣(ほしいまま)にするには、こんな都合(つごう)の好(い)い身分はない。

 実際また王生は、仲の好(い)い友人の趙生(ちょうせい)と一しょに、自由な生活を送っていた。戯(ぎ)を聴(き)きに行く事もある。博(はく)を打って暮らす事もある。あるいはまた一晩中、秦淮(しんわい)あたりの酒家(しゅか)の卓子(たくし)に、酒を飲み明かすことなぞもある。そう云う時には落着いた王生が、花磁盞(かじさん)を前にうっとりと、どこかの歌の声に聞き入っていると、陽気な趙生は酢蟹(すがに)を肴に、金華酒(きんかしゅ)の満(まん)を引きながら、盛んに妓品(ぎひん)なぞを論じ立てるのである。

 その王生がどう云う訳か、去年の秋以来忘れたように、ばったり痛飲を試みなくなった。いや、痛飲ばかりではない。吃喝嫖賭(きっかつひょうと)の道楽にも、全然遠のいてしまったのである。趙生を始め大勢の友人たちは、勿論この変化を不思議に思った。王生ももう道楽には、飽きたのかも知れないと云うものがある。いや、どこかに可愛い女が、出来たのだろうと云うものもある。が、肝腎(かんじん)の王生自身は、何度その訳を尋ねられても、ただ微笑を洩らすばかりで、何がどうしたとも返事をしない。

 そんな事が一年ほど続いた後(のち)、ある日趙生が久しぶりに、王生の家を訪れると、彼は昨夜(ゆうべ)作ったと云って、元(げんしんたい)の会真詩(かいしんし)三十韻(さんじゅういん)を出して見せた。詩は花やかな対句(ついく)の中に、絶えず嗟嘆(さたん)の意が洩らしてある。恋をしている青年でもなければ、こう云う詩はたとい一行(いちぎょう)でも、書く事が出来ないに違いない。趙生は詩稿を王生に返すと、狡猾(こうかつ)そうにちらりと相手を見ながら、

「君の鶯鶯(おうおう)はどこにいるのだ。」と云った。

「僕の鶯鶯(おうおう)? そんなものがあるものか。」

「嘘をつき給え。論より証拠はその指環じゃないか。」

 なるほど趙生(ちょうせい)が指さした几(つくえ)の上には、紫金碧甸(しこんへきでん)の指環が一つ、読みさした本の上に転がっている。指環の主は勿論男ではない。が、王生(おうせい)はそれを取り上げると、ちょいと顔を暗くしたが、しかし存外平然と、徐(おもむ)ろにこんな話をし出した。

「僕の鶯鶯なぞと云うものはない。が、僕の恋をしている女はある。僕が去年の秋以来、君たちと太白(たいはく)を挙げなくなったのは、確かにその女が出来たからだ。しかしその女と僕との関係は、君たちが想像しているような、ありふれた才子の情事ではない。こう云ったばかりでは何の事だか、勿論君にはのみこめないだろう。いや、のみこめないばかりなら好(い)いが、あるいは万事が嘘のような疑いを抱きたくなるかも知れない。それでは僕も不本意だから、この際君に一切の事情をすっかり打ち明けてしまおうと思う。退屈でもどうか一通り、その女の話を聞いてくれ給え。

「僕は君が知っている通り、松江(しょうこう)に田を持っている。そうして毎年秋になると、一年の年貢(ねんぐ)を取り立てるために、僕自身あそこへ下(くだ)って行く。所がちょうど去年の秋、やはり松江へ下った帰りに、舟が渭塘(いとう)のほとりまで来ると、柳や槐(えんじゅ)に囲まれながら、酒旗(しゅき)を出した家が一軒見える。朱塗りの欄干(らんかん)が画(えが)いたように、折れ曲っている容子(ようす)なぞでは、中々大きな構えらしい。そのまた欄干の続いた外には、紅い芙蓉(ふよう)が何十株(なんじっかぶ)も、川の水に影を落している。僕は喉(のど)が渇(かわ)いていたから、早速その酒旗の出ている家へ、舟をつけろと云いつけたものだ。

「さてそこへ上(あが)って見ると、案(あん)の定(じょう)家も手広ければ、主(あるじ)の翁(おきな)も卑しくない。その上酒は竹葉青(ちくようせい)、肴(さかな)は鱸(すずき)に蟹(かに)と云うのだから、僕の満足は察してくれ給え。実際僕は久しぶりに、旅愁(りょしゅう)も何も忘れながら、陶然(とうぜん)と盃(さかずき)を口にしていた。その内にふと気がつくと、誰(たれ)か一人幕の陰から、時々こちらを覗(のぞ)くものがある。が、僕はそちらを見るが早いか、すぐに幕の後(うしろ)へ隠れてしまう。そうして僕が眼を外(そ)らせば、じっとまたこちらを見つめている。何だか翡翠(ひすい)の簪(かんざし)や金の耳環(みみわ)が幕の間(あいだ)に、ちらめくような気がするが、確かにそうかどうか判然しない。現に一度なぞは玉のような顔が、ちらりとそこに見えたように思う。が、急にふり返ると、やはりただ幕ばかりが、懶(ものう)そうにだらりと下(さが)っている。そんな事を繰(く)り返している内に、僕はだんだん酒を飲むのが、妙につまらなくなって来たから、何枚かの銭(ぜに)を抛(ほう)り出すと、また舟へ帰って来た。

「ところがその晩舟の中に、独りうとうとと眠っていると、僕は夢にもう一度、あの酒旗の出ている家(うち)へ行った。昼来た時には知らなかったが、家(うち)には門が何重(なんじゅう)もある、その門を皆通り抜けた、一番奥まった家(いえ)の後(うしろ)に、小さな綉閣(しゅうかく)が一軒見える。その前には見事な葡萄棚(ぶどうだな)があり、葡萄棚の下には石を畳(たた)んだ、一丈ばかりの泉水がある。僕はその池のほとりへ来た時、水の中の金魚が月の光に、はっきり数えられたのも覚えている。池の左右に植わっているのは、二株(ふたかぶ)とも垂糸檜(すいしかい)に違いない。それからまた墻(しょう)に寄せては、翠柏(すいはく)の屏(へい)が結んである。その下にあるのは天工のように、石を積んだ築山(つきやま)である。築山の草はことごとく金糸線綉(きんしせんしゅうとん)の属(ぞく)ばかりだから、この頃のうそ寒(さむ)にも凋(しお)れていない。窓の間には彫花(ちょうか)の籠(かご)に、緑色の鸚鵡(おうむ)が飼ってある。その鸚鵡が僕を見ると、「今晩は」と云ったのも忘れられない。軒の下には宙に吊(つ)った、小さな木鶴(もっかく)の一双(ひとつが)いが、煙の立つ線香を啣(くわ)えている。窓の中を覗いて見ると、几(つくえ)の上の古銅瓶(こどうへい)に、孔雀(くじゃく)の尾が何本も挿(さ)してある。その側にある筆硯類(ひっけんるい)は、いずれも清楚(せいそ)と云うほかはない。と思うとまた人を待つように、碧玉の簫(しょう)などもかかっている。壁には四幅(しふく)の金花箋(きんかせん)を貼って、その上に詩が題してある。詩体はどうも蘇東坡(そとうば)の四時(しじ)の詞(し)に傚(なら)ったものらしい。書は確かに趙松雪(ちょうしょうせつ)を学んだと思う筆法である。その詩も一々覚えているが、今は披露(ひろう)する必要もあるまい。それより君に聞いて貰いたいのは、そう云う月明りの部屋の中に、たった一人坐っていた、玉人(ぎょくじん)のような女の事だ。僕はその女を見た時ほど、女の美しさを感じた事はない。」

「有美(ゆうび)閨房秀(けいぼうのしゅう) 天人(てんじん)謫降来(たくこうしきたる)かね。」

 趙生(ちょうせい)は微笑しながら、さっき王生(おうせい)が見せた会真詩(かいしんし)の冒頭の二句を口ずさんだ。

「まあ、そんなものだ。」

 話したいと云った癖に、王生はそう答えたぎり、いつまでも口を噤(つぐ)んでいる。趙生はとうとう待兼ねたように、そっと王生の膝を突いた。

「それからどうしたのだ?」

「それから一しょに話をした。」

「話をしてから?」

「女が玉簫(ぎょくしょう)を吹いて聞かせた。曲(きょく)は落梅風(らくばいふう)だったと思うが、――」

「それぎりかい?」

「それがすむとまた話をした。」

「それから?」

「それから急に眼がさめた。眼がさめて見るとさっきの通り、僕は舟の中に眠っている。艙(そう)の外は見渡す限り、茫々とした月夜(つきよ)の水ばかりだ。その時の寂しさは話した所が、天下にわかるものは一人もあるまい。

「それ以来僕の心の中(うち)では、始終あの女の事を思っている。するとまた金陵(きんりょう)へ帰ってからも、不思議に毎晩眠りさえすれば、必ずあの家(うち)が夢に見える。しかも一昨日(おととい)の晩なぞは、僕が女に水晶(すいしょう)の双魚(そうぎょ)の扇墜(せんつい)を贈ったら、女は僕に紫金碧甸(しこんへきでん)の指環を抜いて渡してくれた。と思って眼がさめると、扇墜が見えなくなった代りに、いつか僕の枕もとには、この指環が一つ抜き捨ててある。してみれば女に遇(あ)っているのは、全然夢とばかりも思われない。が、夢でなければ何だと云うと、――僕も答を失してしまう。

「もし仮に夢だとすれば、僕は夢に見るよりほかに、あの家(うち)の娘を見たことはない。いや、娘がいるかどうか、それさえはっきりとは知らずにいる。が、たといその娘が、実際はこの世にいないのにしても、僕が彼女を思う心は、変る時があるとは考えられない。僕は僕の生きている限り、あの池だの葡萄棚(ぶどうだな)だの緑色の鸚鵡(おうむ)だのと一しょに、やはり夢に見る娘の姿を懐しがらずにはいられまいと思う。僕の話と云うのは、これだけなのだ。」

「なるほど、ありふれた才子の情事ではない。」

 趙生(ちょうせい)は半ば憐(あわれ)むように、王生(おうせい)の顔へ眼をやった。

「それでは君はそれ以来、一度もその家(うち)へは行かないのかい。」

「うん。一度も行った事はない。が、もう十日ばかりすると、また松江(しょうこう)へ下(くだ)る事になっている。その時渭塘(いとう)を通ったら、是非あの酒旗(しゅき)の出ている家へ、もう一度舟を寄せて見るつもりだ。」

 それから実際十日ばかりすると、王生は例の通り舟を艤(ぎ)して、川下(かわしも)の松江へ下って行った。そうして彼が帰って来た時には、――趙生を始め大勢の友人たちは、彼と一しょに舟を上(あが)った少女の美しいのに驚かされた。少女は実際部屋の窓に、緑色の鸚鵡(おうむ)を飼いながら、これも去年の秋幕(まく)の陰(かげ)から、そっと隙見(すきみ)をした王生の姿を、絶えず夢に見ていたそうである。

「不思議な事もあればあるものだ。何しろ先方でもいつのまにか、水晶の双魚の扇墜が、枕もとにあったと云うのだから、――」

 趙生はこう遇う人毎(ひとごと)に、王生の話を吹聴(ふいちょう)した。最後にその話が伝わったのは、銭塘(せんとう)の文人瞿祐(くゆう)である。瞿祐はすぐにこの話から、美しい渭塘奇遇記(いとうきぐうき)を書いた。……


×          ×          ×


小説家 どうです、こんな調子では?

編輯者 ロマンティクな所は好(い)いようです。とにかくその小品(しょうひん)を貰う事にしましょう。

小説家 待って下さい。まだ後(あと)が少し残っているのです。ええと、美しい渭塘奇遇記(いとうきぐうき)を書いた。――ここまでですね。


×          ×          ×


 しかし銭塘(せんとう)の瞿祐(くゆう)は勿論、趙生(ちょうせい)なぞの友人たちも、王生(おうせい)夫婦を載(の)せた舟が、渭塘(いとう)の酒家(しゅか)を離れた時、彼が少女と交換した、下(しも)のような会話を知らなかった。

「やっと芝居が無事にすんだね。おれはお前の阿父(おとう)さんに、毎晩お前の夢を見ると云う、小説じみた嘘をつきながら、何度冷々(ひやひや)したかわからないぜ。」

「私(わたし)もそれは心配でしたわ。あなたは金陵(きんりょう)の御友だちにも、やっぱり嘘をおつきなすったの。」

「ああ、やっぱり嘘をついたよ。始めは何とも云わなかったのだが、ふと友達にこの指環(ゆびわ)を見つけられたものだから、やむを得ず阿父さんに話す筈の、夢の話をしてしまったのさ。」

「ではほんとうの事を知っているのは、一人もほかにはない訳ですわね。去年の秋あなたが私の部屋へ、忍んでいらしった事を知っているのは、――」

「私。私。」

 二人は声のした方へ、同時に驚いた眼をやった。そうしてすぐに笑い出した。帆檣(ほばしら)に吊った彫花(ちょうか)の籠には、緑色の鸚鵡(おうむ)が賢そうに、王生と少女とを見下している。…………


×          ×          ×


編輯者 それは蛇足(だそく)です。折角の読者の感興をぶち壊すようなものじゃありませんか? この小品が雑誌に載るのだったら、是非とも末段だけは削(けず)って貰います。

小説家 まだ最後ではないのです。もう少し後(あと)があるのですから、まあ、我慢して聞いて下さい。


×          ×          ×


 しかし銭塘の瞿祐は勿論、幸福に満ちた王生夫婦も、舟が渭塘を離れた時、少女の父母が交換した、下(しも)のような会話を知らなかった。父母は二人とも目(ま)かげをしながら、水際(みずぎわ)の柳や槐(えんじゅ)の陰に、その舟を見送っていたのである。

「お婆さん。」

「お爺さん。」

「まずまず無事に芝居もすむし、こんな目出たい事はないね。」

「ほんとうにこんな目出たい事には、もう二度とは遇(あ)えませんね。ただ私は娘や壻(むこ)の、苦しそうな嘘を聞いているのが、それはそれは苦労でしたよ。お爺さんは何も知らないように、黙っていろと御云いなすったから、一生懸命にすましていましたが、今更(いまさら)あんな嘘をつかなくっても、すぐに一しょにはなれるでしょうに、――」

「まあ、そうやかましく云わずにやれ。娘も壻も極(きま)り悪さに、智慧袋(ちえぶくろ)を絞ってついた嘘だ。その上壻の身になれば、ああでも云わぬと、一人娘は、容易にくれまいと思ったかも知れぬ。お婆さん、お前はどうしたと云うのだ。こんな目出たい婚礼に、泣いてばかりいてはすまないじゃないか?」

「お爺さん。お前さんこそ泣いている癖に……」


×          ×          ×


小説家 もう五六枚でおしまいです。次手(ついで)に残りも読んで見ましょう。

編輯者 いや、もうその先は沢山です。ちょいとその原稿を貸して下さい。あなたに黙って置くと、だんだん作品が悪くなりそうです。今までも中途で切った方が、遥(はるか)に好かったと思いますが、――とにかくこの小品(しょうひん)は貰いますから、そのつもりでいて下さい。

小説家 そこで切られては困るのですが、――

編輯者 おや、もうよほど急がないと、五時の急行には間(ま)に合いませんよ。原稿の事なぞはかまっていずに、早く自動車でも御呼びなさい。

小説家 そうですか。それは大変だ。ではさようなら。何分(なにぶん)よろしく。

編輯者 さようなら、御機嫌好う。



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기우(奇遇)

아쿠타가와 류노스케 (芥川龍之介)(1921)

번역 : 홍성필


 편집자 : 중국으로 여행하신다면서요. 남쪽인가요, 북쪽인가요?

 소설가 : 남쪽으로 해서 북쪽으로 돌 생각입니다.

 편집자 : 준비는 이제 다 끝나셨나요?

 소설가 : 대략 끝났습니다. 다만 읽기로 한 기행문이나 지도 등을 아직 다 읽지 못해서 좀 난처한 거죠.

 편집자 : (관심 없다는 듯이) 그런 책이 많나 보죠?

 소설가 : 생각보다 많이 있습니다. 일본인이 쓴 것으로는 팔십 칠일 유기(八十七日遊記), 중국 문명기, 중국 만유기(漫遊記), 중국 불교유물, 중국 풍속, 중국인 기질, 연산초수(燕山楚水), 소절소관(蘇浙小觀), 북청(北淸) 견문록, 장강 십년, 관광 기유(紀游), 정진록(征塵錄), 만주, 파촉, 호남, 한구, 중국 풍운기(風韻記), 중국…….

 편집자 : 그걸 다 읽으셨어요?

 소설가 : 아뇨, 아직 한 권도 안 읽었습니다. 그리고 중국인이 쓴 책으로서는 대청일통지(大淸一統志), 연도유람지(燕都遊覽志), 장안객화(長安客話), 제경…….

 편집자 : 아이고, 이제 책 이름은 됐습니다.

 소설가 : 아직 서양인이 쓴 책은 한 권도 말씀드리지 않은 것 같은데…….

 편집인 : 서양인이 쓴 중국 책 같은 건, 어차피 제대로 된 책이 있겠어요? 그것보다 소설은 출발 전에 꼭 써주시는 거겠죠?

 소설가 : (갑자기 힘이 빠진다) 글쎄요, 아무튼 그 전에 쓰려고 하긴 하는데 말이죠…….

 편집자 : 대체 언제 출발할 예정이신데요?

 소설가 : 사실은 오늘 출발할 예정입니다.

 편집자 : (놀란 듯이) 오늘이요?

 소설가 : 네에. 5시 급행열차에 탈 예정입니다.

 편집자 : 그렇다면 이제 출발시간까지 30분밖에 없잖아요?

 소설가 : 뭐, 그렇게 되는군요.

 편집자 : (화를 내며) 아니, 그럼 소설은 어떻게 되는데요?

 소설가 : (점점 더 힘이 빠진다) 저도 어떻게든 되겠지 하고 있어요.

 편집자 : 그렇게 무책임하면 곤란하네요. 하지만 어차피 30분이라면 갑자기 쓸 수도 없을 테고…….

 소설가 : 그러게요. 베데킨트의 희곡에서는 이 30분 사이에도 불우한 음악가가 갑자기 등장한다거나, 어떤 부인이 자살한다거나, 여러 가지 사건들이 일어나지만 말이에요……. 잠깐만요. 어쩌면 책상 서랍 안에 아직 발표하지 않은 원고가 있을지도 모릅니다.

 편집자 : 그렇다면 매우 다행이죠.

 소설가 : (서랍 속을 찾으며) 논문은 안 될까요?

 편집자 : 어떤 논문이죠?

 소설가 : ‘문예에 미치는 저널리즘의 해악’이라는 거예요.

 편집자 : 그런 논문은 안 돼요.

 소설가 : 이건 어떨까요? 뭐, 외형상으로는 소품이긴 합니다만…….

 소설가 : ‘기우(奇遇)’라는 제목이군요. 어떤 내용이죠?

 소설가 : 잠깐 읽어볼까요? 20분 정도면 읽을 수 있을 거예요.

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 원 나라 지순(至順) 때의 일이다. 장강에 임한 고금릉(古金陵) 땅에 왕생(王生)이라는 청년이 살았다. 선천적으로 힘이 좋았으며 용모 또한 아름답다. 당시 기준(奇俊) 왕가랑(王家郞)이라고 불렸다고 하니 그 풍채도 짐작이 간다. 더구나 나이는 스물이었으나 부인은 아직 없다. 집안은 가문도 좋고 상속 받은 자산도 상당히 있다. 시주(詩酒) 풍류를 즐길 수 있는, 이런 속 편한 팔자도 없다.

 실제로 또한 왕생은 사이좋은 벗인 조생(趙生)과 함께 유유자적한 생활을 보내고 있었다. 연극을 보러갈 때도 있고, 도박을 하러 가기도 한다. 어떤 날은 진회(秦淮) 부근에 있는 술집에서 밤새도록 마실 때도 있다. 꽃무늬 술잔을 앞에 놓고 어딘가로부터 들려오는 노랫소리에 귀를 기울이고 있으면, 활달한 조생은 게 요리를 안주 삼아 금화주(金華酒)를 잔뜩 마시며 연신 일품이라며 술맛을 논한다.

 그 왕생이 어찌된 영문인지 작년 가을 이후 술을 딱 끊고 말았다. 술만이 아니다. 모든 방탕한 생활에서부터 멀어지고 만 것이다. 조생을 비롯하여 많은 벗들은 물론 이 변화를 이상하게 생각했다. 왕생도 이제 노는 일이 질렸는지도 모른다고 하는 자가 있다. 아니, 어딘가에 아리따운 여인이라도 생겼을 것이라고 말하는 자도 있다. 그러나 막상 왕생 자신은 몇 번이고 그 이유를 물어도 그저 미소를 지을 뿐 가타부타 말이 없다.

 그런 일이 1년 정도 이어진 후, 어느 날 조생이 모처럼 왕생 집을 방문하자 그는 간밤에 지었다고 하여 원체(元體) 회진시(會眞詩) 삼십운(三十韻)을 보여주었다. 시는 화려한 댓구 사이에 끊임없이 한탄하는 모습이 엿보인다. 사랑을 하고 있는 청년이 아니고서야 이런 시는 단 한 줄이라도 쓸 수 없음이 분명하다. 조생은 시를 왕생에게 돌려주자 교활하게 상대방을 슬쩍 보면서,

 “자내의 앵앵(鶯鶯)은 어디 있나?” 라고 물었다.

 “내 앵앵? 그런 게 어디 있나.”

 “거짓말 말게나. 무엇보다 증거가 저 반지 아니겠나.”

 그러고 보니 조생이 가리킨 책상 위에는 자금벽전(紫金碧甸) 반지가 하나, 읽고 있던 책 위에 놓여 있다. 반지 주인은 물론 남자가 아니다. 그러나 왕생은 그것을 집어 들자 살짝 표정이 어두워졌으나, 하지만 여전히 태연하고 천천히 이런 이야기를 하기 시작했다.

 “내게 앵앵 같은 건 없으나 내가 사랑하는 여인은 있네. 내가 작년 가을 이후 자네들과 함께하지 못한 건 분명히 그 여인이 생겼기 때문일세. 그러나 그 여인과 나 사이는 자네들이 상상하는 그런 흔한 남녀관계가 아니라네. 이렇게 말을 하면 도무지 무슨 뜻인지 모르겠지. 아니, 모르기만 하면 상관없으나 설혹 모든 것이 거짓말이라며 의심을 품을지도 모르겠군, 그렇게 되는 것을 나도 원하는 바가 아니니, 이참에 자네한테 일체 사정을 모두 털어놓으려 하네. 지루하더라도 처음부터 그 여인 이야기를 좀 들어주게나.

 “나는 자네가 알고 있는 바와 같이 송강에 논을 가지고 있네. 그리하여 매년 가을이 되면 소작료를 징수하러 스스로 그 곳으로 내려가네. 그런데 마침 작년 가을, 역시 송강에 갔다가 오는 길에 배가 위당(渭塘) 부근까지 오자, 버드나무나 홰나무에 둘러싸이고 주점 간판을 내놓은 집이 한 채 보이더군. 붉은 난간이 마치 한 폭의 그림을 그려놓은 것처럼 생긴 모습으로 보아 상당히 큰 집 같더구먼. 또한 그 난간으로 이어진 곳에는 수 십 그루의 연꽃들이 강물을 수놓고 있었네. 난 갈증이 났기에 서둘러 그 간판을 내놓은 집 앞으로 배를 대라고 했네.

 “그렇게 들어가 보니 예상대로 집도 넓었으며 주인 어르신도 점잖은 분이셨네. 더구나 술은 죽엽청(竹葉靑), 안주는 농어와 게였으니 내가 얼마나 만족했는지는 짐작이 갈 걸세. 실제로 난 오랜만에 객지에서 느끼는 쓸쓸함 같은 것도 잊은 채로 거나하게 술잔을 기울였네. 그러던 중 문득 보니 누군가가 천막 뒤 그늘에서 가끔 이쪽을 바라보는 시선이 있지 않은가. 그런데 내가 그쪽으로 눈을 돌리자마자 곧바로 뒤로 숨어버리고는, 다시 고개를 돌리면 또 가만히 이쪽을 본다네. 무슨 비취 머리 장식이나 금 귀걸이가 천막 사이에서 반짝이는 것 같았지만, 정말 그랬는지는 확실하지가 않으이. 사실 한 번은 옥과 같은 얼굴이 살짝 보인 것 같기도 했네. 하지만 갑자기 뒤돌아보자 역시 그저 천막만이 내려져 있을 뿐이었네. 그런 일을 되풀이하는 사이에 나는 점점 흥이 깨졌기에 엽전을 몇 개 내던져놓고 서둘러 다시 배를 타고 왔다네.

 “그런데 그날 밤 뱃속에서 홀로 잠시 졸았더니 나는 꿈속에서 다시 한 번 그 주점 간판이 나와 있는 집을 간 게 아닌가. 낮에 왔을 때는 몰랐는데 집에는 문이 몇 겹으로 있었으며, 그 문을 모두 지나고 가장 깊숙한 집 뒤편에는 작은 수각(綉閣)이 한 채 보이는데, 그 앞에는 훌륭한 포도선반이 있고, 포도선반 밑에는 돌로 만들어진 연못이 있더군. 내가 그 연못가에 갔을 때 물속 금붕어가 달빛으로도 선명하게 셀 수 있었다는 것이 지금도 기억나네. 연못 좌우에는 분명 두 그루의 노송나무였고 그 주위를 푸른 잣나무로 둘러싸여 있었네. 그 밑으로는 천공(天工)처럼 돌로 가산(假山)이 쌓여 있었으며, 거기에 난 풀들은 모두 금사 과에 속한 것이었기에 요즘 같은 늦가을 추위에도 시들지 않았더군. 창가에는 꽃문양 바구니에 녹색 앵무새가 자라고 있으이. 그 앵무새가 나를 보자 ‘안녕하세요’ 라고 말했던 것도 잊지 못하겠네. 처마 끝에 매달린 작은 나무 학 한 쌍이 연기 나는 향을 물고 있었네. 창문 속을 들여다보니 책상 위에 있는 고동병에 공작 꼬리가 몇 개나 꽂혀 있었으며, 그 곳에 있는 필구류는 모두 청초하다고밖에 할 수가 없더구먼. 그런가하면 다른 쪽에는 사람을 기다리듯 벽옥 자수도 걸려있었으며, 벽에는 네 가지 복을 상징하는 금화선이 걸려 있고, 그 위에 시가 적혀 있더군. 시체는 아무래도 소동파 사시의 시에서 따온 것 같았네. 서는 아마 조송설(趙松雪)을 배운 것으로 보이는 필법이었네. 그 시도 모두 기억하지만 지금 선보일 필요도 없을 걸세. 그것보다 자네한테 들어주었으면 하는 건, 그와 같은 방안에 홀로 앉아 있던, 마치 옥과도 같은 여인에 대한 것이네. 나는 그 여인을 보았을 때만큼 여인의 아름다움을 느낀 적이 없다네.”

 “‘유미규방수(有美閨房秀)하고 천인적강래(天人謫降来)하노라’였군”

 조생은 미소를 지으며 방금 전 왕생이 보여준 회진시 시작 두 줄을 읊었다.

 “뭐, 그렇다고 할 수 있네.”

 말하겠다고 했으면서도. 왕생은 그렇게 대답하고는 언제까지나 입을 다물고 있다. 조생은 결국 참다못해 조용히 왕생 무릎을 찔렀다.

 “그래서 어떻게 됐나?”

 “그러고는 함께 이야기를 나누었네.”

 “그 다음에는?”

 “그 다음에는 갑자기 잠에서 깨어났지 뭔가. 깨고 난 후 생각해보니 그대로 나는 배 안에서 잠을 자고 있었네. 배 밖은 그저 망망한 달빛에 물든 강물뿐이었네. 그 때의 적적함을 아무리 말해도 천하에 그 마음을 알아 줄 이는 없을 걸세.

 “그 이후 내 마음 속으로는 시종 그 여인 생각을 하고 있네. 그런데 다시 금릉으로 돌아와서도 이상하게 매일 밤, 잠만 자면 반드시 그 집이 꿈에 보이더군. 더구나 그저께 밤 같은 경우는 내가 여인한테 수정으로 만들어진 한 쌍의 붕어가 그려진 부채를 선물했더니, 여인은 내게 자금벽전의 반지를 뽑아 주었네. 그런가보다 하고 눈을 떠보니 부채가 사라진 대신에 어느새 내 머리맡에는 이 반지가 하나 뽑혀 있지 않은가. 그러고 보니 여인을 만나고 있는 것은 완전히 꿈만 같지는 않으이. 꿈이 아니라면 무엇이냐고 묻는다면……. 나도 할 말이 없네만.

 “만약 꿈이라고 한다면 나는 꿈에서 말고는 그 집에 사는 아낙을 본 적은 없네. 아니, 아낙이 있는지조차도 제대로 모르고 있네. 그러나 아무리 그 아낙이 사실은 이 세상에 없다고 한들 내가 그녀를 생각하는 마음이 변하리라고는 생각되지 않으이. 나는 내가 살아가는 한 그 연못이나 포도선반이나 푸른빛 앵무새들과 함께 역시 꿈에 보이는 아낙 모습을 그리워 아니 할 수 없을 걸세. 내 말은 이것으로 끝이네.”

 “과연 흔한 남녀관계는 아니구먼.”

 조생은 한 편으로 가엾다는 듯이 왕생을 바라보았다.

 “그렇다면 자네는 그날 이후 한 번도 그 집에는 안 갔단 말인가?”

 “음. 한 번도 간 적이 없네. 그러나 이제 열흘 후에는 다시 송강으로 내려가게 되어 있네. 그 때 위당을 지나면 꼭 그 술집 간판을 내걸고 있는 집에 다시 한 번 배를 대 볼 생각일세.”

 그로부터 실제로 열흘이 지난 후 왕생은 여느 때처럼 배를 내어 송강까지 내려갔다. 그리고는 그가 돌아왔을 때 조생을 비롯하여 많은 벗들은 그와 함께 배에서 내린 소녀의 아름다움에 경탄을 금하지 못했다. 소녀는 실제로 자신의 방 창문에 푸른 앵무새를 기르며, 그것도 작년 가을, 천막 그늘에서 몰래 왕생 모습을 훔쳐보는 꿈을 끊임없이 꾸고 있었다고 한다.

 “기이한 일이로세. 더구나 그 쪽도 어느새 수정 물고기 한 쌍이 그려진 부채가 머리맡에 있었다니 말이오…….”

 조생은 만나는 사람마다 왕생 이야기를 해주었다. 마지막으로 그 이야기가 전해진 것은 전당(錢塘)의 문인 구우(瞿祐)였다. 구우는 곧바로 이 이야기를 듣고는 아름다운 위당기우기(渭塘奇遇記)를 남겼다…….

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  소설가 : 어떻습니까?

 편집자 : 낭만적인 부분이 좋군요. 아무튼 그 소품을 받도록 하지요.

 소설가 : 잠깐만요. 아직 뒷부분이 조금 더 남았습니다. 그……. ‘아름다운 위당기우기를 남겼다…….’까지 읽었죠?

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 그러나 위당 구우는 물론 조성 등의 벗들도 왕생부부를 태운 배가 위당 주점을 떠날 때 그가 소녀와 나눈 다음과 같은 대화를 알지 못했다.

 “이제야 연극이 무사히 끝났어. 난 네 아버님께 매일 밤 네 꿈을 본다고 하는, 소설 같은 거짓말을 하면서도 얼마나 가슴이 조마조마했는지 모른다고.”

 “저도 그건 걱정했어요. 당신은 금릉에 계신 친구분들께도 역시 거짓말을 하셨나요?”

 “응. 역시 거짓말을 했지. 처음에는 아무런 말도 안 했지만, 어떤 친구가 이 반지를 찾아냈기에 부득이 하게 아버님께 말씀드릴 꿈 이야기를 하고 말았어.”

 “그렇다면 사실을 알고 있는 사람은 아무도 안 계신 거군요? 작년 가을 당신이 제 방으로 몰래 들어온 것을 알고 있는 건…….”

 “저요. 저요.”

 둘은 목소리가 들려온 쪽으로 동시에 놀란 눈을 돌렸다. 그리고는 곧바로 웃음을 터뜨렸다. 돛대에 매달아 놓은 꽃무늬 바구니에는 푸른 앵무새가 영리한 표정으로 왕생과 소녀를 내려다보고 있다…….

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 편집자 : 그건 사족입니다. 독자의 감흥을 엉망으로 만들어놓을 뿐이잖습니까. 이 소품을 잡지에 실을 거라면 꼭 마지막 부분은 편집해 달라고 해야겠군요.

 소설가 : 아직 끝나지 않았어요. 조금 더 있으니 잠깐만 참고 들어주세요.

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 그러나 위당 구우는 물론 행복에 겨운 왕생 부부도 배가  위당 주점을 떠날 때 그가 소녀의 부모가 나눈 다음과 같은 대화를 알지 못했다. 부모는 둘 모두 손으로 햇살을 가린 채 물가에 심어진 버드나무나 홰나무 사이로 그 배가 떠나는 모습을 지켜보고 있었던 것이다.

 “이보게 임자.”

 “예, 영감님.”

 “일단 무사히 연극도 끝났으니 이렇게 좋을 수가 없구먼.”

 “그러게 말이에요. 이제 두 번 다시 만날 수가 없겠군요. 다만 저는 딸과 사위가 하는 억지스러운 거짓말을 듣고 있는 것이 참으로 어려웠습니다. 영감님도 모른 척하고 듣고 있으라고 하시기에 열심히 참고 있었습니다만, 이제 와서 그런 거짓말을 하지 않더라도 함께 보내주었을 텐데 말이에요…….”

 “그래도 잔소리는 하지 말게. 딸이나 사위 모두 나름대로 머리를 짜 내서 한 거짓말이오. 저 사위 입장에서는 그렇게라도 하지 않으면 외동딸을 쉽게 주지 않을 거라고 생각한지도 모르지. 임자, 임자는 대체 왜 그러나. 이렇게 좋은 혼례 날에 울고만 있으니 말이오.”

 “영감님, 영감님도 울고 계시면서…….”

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 소설가 : 이제 대여섯 장 정도로 끝납니다. 내친 김에 다 읽어보도록 하죠.

 편집자 : 아뇨. 그 다음은 됐습니다. 충분합니다. 잠깐 그 원고 좀 이리 주세요. 이대로 당신한테 맡겨뒀다가는 점점 더 작품이 나빠질 것 같습니다. 지금까지 들어봐도 차라리 도중에서 끝내는 편이 훨씬 더 좋았던 것 같은데 말이에요……. 아무튼 이 소품은 가져갈 테니 그렇게 알아 두십시오.

 소설가 : 거기서 끝나면 곤란한데요…….

 편집자 : 어? 이제 서두르지 않으면 5시 급행을 놓칩니다. 원고 같은 건 그냥 두시고 어서 자동차라도 부르시죠.

 소설가 : 그런가요? 이거 큰일이군요. 그럼 안녕히 가세요. 아무쪼록 잘 부탁드립니다.

 편집자 : 안녕히 계세요. 건강하시고요.

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