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  1. 2018.05.01 죽음의 키스 - 일본어
  2. 2018.05.01 죽음의 키스 - 한국어

죽음의 키스 (死の接吻)

고사카이 후보쿠 (小酒井 不木) (1926)

일본어 원문



 その年の暑さは格別であった。ある者は六十年来の暑さだといい、ある者は六百年来の暑さだと言った。でも、誰も六万年来の暑さだとは言わなかった。中央気象台の報告によると、ある日の最高温度は華氏(かし)百二十度であった。摂氏(せっし)でなくて幸福である。「中央気象台の天気予報は決して信用出来ぬが、寒暖計の度数ぐらいは信用してもよいだろう」と、信天翁(あほうどり)の生殖器を研究して居る貧乏な某大学教授が皮肉を言ったという事である。

 東京市民は、耳かくしの女もくるめて、だいぶ閉口したらしかった。熱射病に罹(かか)って死ぬものが日に三十人を越した。一日に四十人ぐらい人口が減じたとて大日本帝国はびくともせぬが、人々は頗(すこぶ)る気味を悪がった。何しろ、雨が少しも降らなかったので、水道が一番先に小咳(こぜき)をしかけた。日本人は一時的の設備しかしない流儀であって、こういう例外な暑い時節を考慮のうちに入れないで水道が設計されたのであるから、それは当然のことであった。そこで水が非常に貴重なものとなった。それは然(しか)し、某大新聞が生水宣伝をしたためばかりではなかった。氷の値が鰻上りに上った。N製氷会社の社長は、喜びのあまり脳溢血を起して即死した。然し製氷会社社長が死んだぐらいで、暑さは減じなかった。

 人間は例外の現象に遭遇すると、何かそれが不吉なことの起る前兆ででもあるかのように考えるのが常である。だから、今年のこの暑さに就(つい)て、論語しか知らない某実業家は、生殖腺ホルモンの注射を受けながら、「日本人の長夜(ちょうや)の夢を覚醒させるために、天が警告を発したのだ」という、少しも意味をなさぬことを新聞記者に物語り、自分は自動車で毎晩妾(めかけ)の家を訪ねて、短夜の夢を貪った。由井正雪が生きて居たならば、品川沖へ海軍飛行機で乗り出し、八木節でもうたって雨乞をするかも知れぬが、今時の人間は、なるべく楽をして金を儲けたいという輩(やから)ばかりで、他人のためになるようなことはつとめて避けようとする殊勝な心を持って居るから、誰も雨乞いなどに手出しをするものがなかった。従って雨は依然として降らず、人間の血液は甚(はなは)だ濃厚粘稠(ねんちゅう)になり、喧嘩や殺人の数が激増した。犯罪を無くするには人間の血液をうすめればよいという一大原則が、某法医学者によって発見された。兎(と)に角(かく)、人々は無闇に苛々するのであった。

 その時、突如として、上海(シャンハイ)に猛烈な毒性を有するコレラが発生したという報知が伝わった。コレラの報知は郭松齢(かくしょうれい)の死の報知とはちがい、内務省の役人を刺戟して、船舶検疫を厳重にすべき命令が各地へ発せられたが、医学が進めば、黴菌だって進化する筈であるから、コレラ菌も、近頃はよほどすばしこくなって検疫官の眼を眩まし、易々として長崎に上陸し、忽(たちま)ち由緒ある市中に拡がった。長崎に上陸しさえすれば、日本全国に拡がるのは、コレラ菌にとって訳のないことである。で、支那人の死ぬのに何の痛痒を感じなかった日本人も、はげしく恐怖し始めた。然し黴菌の方では人間を少しも恐怖しなかった。各府県の防疫官たちは、自分の県内へさえ侵入しなければ、ほかの県へはいくら侵入してもかまわぬという奇抜な心懸けで防疫に従事し、ことに横浜と神戸は、直接上海(シャンハイ)から黴菌が運ばれて来るので、ある防疫官は、夫人が産気づいて居る時に出張命令を受けて、生れる子を見届けないで走り出した。

 が、防疫官たちのあらゆる努力も効を奏しないで、コレラは遂(つい)に大東京に入(い)りこんだのである。いつもならば京橋あたりへ、薪炭(しんたん)を積んで来る船頭の女房が最初に罹るのであるのに、今度の流行の魁(さきがけ)となったのは、浅草六区のK館に居るTという活動弁士であった。ハロルド・ロイドの「防疫官」と題する喜劇を説明して居るとき嘔吐(おうと)を催おしたのであるが、真正のコレラであると決定した頃には、ぎっしりつまって居た観客は東京市中に散らばって、防疫の責任を持つ当局の人々は蒼くなったけれども、もはや後の祭であった。

 疫病は破竹の勢で東京の各所に拡がった。毒性が極めて強かったためであろう、一回や二回の予防注射は何の効も奏せず、人々は極度に恐怖した。五十人以上の職工を有する工場は例外なく患者を出して一時閉鎖するのやむなきに至った。暑さは依然として減退しなかったので、飲んではならぬという氷を[#「氷を」はママ]敢て飲むものが多く、さような連中はみごとにころりころりと死んで行った。皮肉なことには医師がだいぶ罹った。平素それ等の医師から高い薬価を請求されて居る肺病患者は、自分自身の病苦を忘れて痛快がった。やがて死ぬべき運命にあるものは、知った人の死をきくと頗(すこぶ)る痛快がるものである。

 どこの病院も伝染病院を兼ねさせられ忽ち満員になってしまった。焼場が閉口し、墓場が窮屈を感じた。葬式はどの街にも見られた。日本橋の袂(たもと)に立って、橋を渡る棺桶の数を数える数奇者(すきしゃ)はなかったが、仕事に離れて、財布の中の銭を勘定する労働者は無数であった。

 恐怖は大東京の隅々まで襲った。あるものは恐怖のために、生きようとする努力を痲痺せしめて自殺した。あるものは同じく恐怖のために発狂して妻子を殺した。又、精神の比較的健全な者も、種々の幻覚に悩んだ。たといそれが白昼であっても、白く塵(ちり)にまみれた街路樹の蔭に、首を吊って死んで居る人間の姿を幻視した。況(いわ)んや、上野や浅草の梵鐘(ぼんしょう)が力なく響き渡って、梟(ふくろ)の鳴き声と共に夜の帷(とばり)が降りると、人々は天空に横わる銀河にさえ一種の恐怖を感じ、さっと輝いてまた忽ち消える流星に胸を冷すのであった。なまぬるく静かに動く風の肌ざわりは、死に神の呼吸かと思われた。

 けれども、さすがに近代人である。疫病が「猖獗(しょうけつ)」という文字で形容された時代ならば、当然「家々の戸はかたくさしこめられ、街頭には人影もなく」と書かるべきであるのに、その実、それとは正反対に、人々は身辺にせまる危険を冒して外出し、街は頗る雑沓した。夜になると外気の温度が幾分か下降し、蒸されるような家の中に居たたまらぬという理由もその一つであったが、主なる理由は近代人の絶望的な、宿命論的な心の発現であった。恐怖をにくみながら、恐怖に近づかずに居(お)られないという心は近代人の特徴である。彼等は釣り出されるようにして外出した。然し、外出はするものの彼等の心は彼等を包む夜よりも遥かに暗かった。平素彼等の武器として使用されて居る自然科学も、彼等の心を少しも晴れやかにしなかった。従って彼等は明日にも知れぬ命を思って、せめて、アルコホルによって一時の苦悶を消そうとした。だから、バアやレストオランが常になく繁昌した。彼等は歌った。然し彼等の唄は道行く人の心を寒からしめた。その昔ロンドンでペストが大流行をしたとき、棺桶屋に集った葬式の人夫や薬剤師たちが商売繁昌を祝ってうたう唄にも似て物凄い響を伝えた。

 人々を襲った共通な不安は、却って彼等の個々の苦悩を拡大した。疫病の恐怖は借金の重荷を軽減してはくれなかった。また各人の持つ公憤や私憤を除いてはくれなかった。しかのみならず公憤や私憤は疫病恐怖のために一層強められるのであった。従って暑さのために激増した犯罪はコレラ流行以後、急加速度をもって増加するのであった。



 本篇の主人公雉本静也(きじもとしずや)が、失恋のために自殺を決心し、又忽ちそれを翻(ひるが)えして、却って殺人を行うに至ったのも、こういう雰囲気の然らしめたところである。

 静也は、東京市内のM大学の政治科を卒業し、高等下宿の一室に巣喰いながら、国元から仕送りを受けて、一日中を、なすこともなくごろごろして暮して居るという、近代に特有な頽廃人(たいはいじん)であった。アメリカには美爪術(メニキュア)を行(や)って日を送る頽廃人が多いが、彼も、髪をときつけることと、洋服を着ることに一日の大半を費した。彼は何か纏(まと)まった職業に従事すると、三日目から顱頂骨(ろちょうこつ)の辺がずきりずきりと痛み出すので一週間と続かなかった。彼はいつも、頭というものが、彼自身よりも賢いことを知って、感心するのであった。又、彼は何をやってもすぐ倦(あ)いてしまった。時には強烈な酒や煙草を飲み耽(ふけ)ったり、或は活動写真に、或は麻雀(マージャン)に、或はクロス・ワード・パズルに乃至は又、センセーショナルな探偵小説に力を入れても見たが、いずれも長続きがしなかった。彼はこの厭(あ)き性(しょう)を自分ながら不審に思った。そうして、恐らく自分の持って生れた臆病な性質が、その原因になって居るだろうと考えるのであった。

 近代の頽廃人には二種類ある。第一の種類に属するものは、極めて大胆で、死体に湧く青蠅(あおばえ)のように物事にしつっこい。第二の種類に属するものは、極めて臆病で、糊(のり)の足らぬ切手のように執着に乏しい。静也はいう迄もなく、この第二の種類に属する頽廃人であった。かれはバアやカフェーの女と話すときにすら、一種の羞恥を感じた。だから彼は今まで一度も恋というものを経験しなかった。彼にとっては、恋することは一種の冒険であった。心の中では冒険してみたくてならなかったけれども、彼の臆病心が邪魔をした。それに彼の痩せた身体が、冒険には適して居(お)らなかった。

 ところが、運命は彼に恋する機会を与えたのである。即ち、彼は生れて初めての恋を経験するに至ったのである。然し皮肉なことは、彼の恋した女は、彼の友人の妻君であった。それは皮肉であると同時に、彼にとって不幸なことであった。彼にとって不幸であるばかりでなく、その友人にとっても不幸なことであった。実に、彼の友人は、それがため、何の罪もなくて彼のために殺さるべき運命に導かれたといってもよいからである。古来、妻が美しかったために、不慮の死を招いた良人(おっと)は少くなかったが、静也の友人佐々木京助(ささききょうすけ)のように、何にも知らずに死んで行ったのは珍らしい例であるといわねばならない。

 佐々木京助の妻敏子(としこ)は所謂(いわゆる)新らしい女即ち新時代の女性であった。新時代の女性の通性として、彼女は男性的の性格を多分に具え、理性が比較的発達して居た。彼女の容貌は美しく、態度がきびきびして居た。そうした彼女の性格が女性的分子の多い静也を引きつけるのは当然であった。静也は京助を訪ねる毎に、敏子の方へぐんぐん引きつけられて行った。

 京助は彼と同級生で、今年の春敏子と結婚し、郊外の文化住宅に住(すま)って居た。彼は別にこれという特徴のない平凡人であった。平凡人の常として、彼はふとって、鼻の下に鰌髭(どじょうひげ)を貯えて居た。然しその平凡人であるところが新時代の女性には気に入るらしい。実際また、京助のような平凡人でなくては、新時代の女性に奉仕することは困難である。その証拠に、ある天才音楽家は新らしい女を妻として、帝国劇場のオーケストラで指揮をして居る最中に俄然(がぜん)卒倒した。招かれた医師は、患者のポケットに、一回一錠と書かれた薬剤の瓶を発見して、その卒倒の原因を確めることが出来た。又、ある代議士は、議会で八百万円事件というのに関聯(かんれん)して査問に附せられた。彼は衆議院の壇上で、「嘘八百万円とはこのことだ」と、苦しい洒落を言って、その夜インフルエンザに罹った。いずれにしても新らしい女を妻とするには、身命を投出す覚悟がなくてはならない。

 京助が、果してそういう覚悟を持って居たかどうかはわからぬが、彼の体力と金力とは敏子を満足させることが出来たと見え、二人の仲は至ってよかった。然し敏子は、持ちまえの、コケッチッシュな性質をもって、良人(おっと)の友人を待遇したから、静也はいつの間にか、妙な心を起すに至ったのである。といって静也はその妙な心を、どう処置してよいかわからなかった。静也が若し臆病でなかったならば、或はあっさり敏子に打あけることが出来たかも知れない。然し、臆病な人間の常として、結果を予想して、色々と思い迷うものであるから、静也は打ちあけたあげくの怖ろしい結果を思うと、どうしても口の先へ出すことが出来なかった。だから、一人で胸を焦(こが)して居るより外はなかったのである。

 とはいえ、段々恋が膨脹して来ると、遂には破裂しなければならぬことになる。静也は、どういう風に破裂させたものであろうかと頻(しき)りに考えたけれども、もとより名案は浮ばなかった。いっそ、思い切った手紙でも書いたならばと考えたけれど、字はまずいし、文章は下手であるし、その上手紙というものは、時として後世にまでも残るものであるから、それによって、永遠に嘲笑(ちょうしょう)の的になるのは厭であった。阿倍仲麻呂(あべのなかまろ)が、たった一つ和歌を作っただけであるのに、その一つを、疝気(せんき)持ちの定家(さだいえ)に引奪(ひったく)られ、後世「かるた」というものとなって、顔の黄ろい女学生の口にかかって永久に恥をさらして居る。又、手紙故に、「珍品」という綽名(あだな)を貰って腎臓炎を起した一国の宰相もある。そう考えると、静也は手紙を書くのが恐ろしくてならなかった。

 静也が恋の重荷に苦しんで居るとき、突如として、コレラが帝都を襲ったのである。すると不思議なことに、臆病な静也は急に大胆になった。そうして、敏子の前に恋を告白しようと決心したのである。恋とコレラとの関係については、まだ科学的な研究は行われて居ないようであるが、若し研究したい人があるならば、静也は、誠に適当な研究材料であるといってよい。

 大東京に恐怖の色が漂って居たある日、静也は京助が会社へ行って居る留守に敏子をたずねた。そうして静也は、演説に馴れない人が、拍手に迎えられて登壇するときのように、ボーッとした気持になって、生れて初めて恋の苦しみを味わったこと、言わなければとても堪えられぬので思い切って告白するということなどを、敏子に向って語ったのである。その日はやはり非常に暑くて、暑いための汗と、恥かしさの汗とで、静也は多量の水分を失い、告白の最後には声が嗄(しわが)れてしまって、まるで、死にともない老婆が、阿弥陀如来の前で、念仏を唱えて居るような心細い声になった。

 敏子は臣下(しんか)の哀願をきいて居るクイーンのような態度で、静也の告白をきいて居たが、静也が語り終って手巾(ハンカチ)で頸筋を拭うと、手にもって居た団扇(うちわ)で静也をふわりと一度あおって、甲高い声を出した。

「ホホホホホ、何をいってるの、馬鹿らしい。ホホホホホ」



 落下傘を持たずに、三千尺(じゃく)の高空から突き落された飛行士のような思いをした雉本静也は、その夜、下宿に帰ってから、自殺しようと決心した。犯罪学者は、自殺の原因に暑気を数えるけれども、静也は暑いから自殺するのではなく、失恋したから自殺することにしたのである。尤(もっと)も、彼に自殺を決心せしめた動機には、やはりコレラを数えないわけにはいかない。人がどしどし死ぬときに、何か悲惨な目に出逢うと、気の弱い人間は自殺をしたがるものである。

 さて、静也は自殺を決心したものの、どういう手段によって自殺したらばよいかということに甚だ迷ったのである。そうして自殺した後、何だか自殺したといわれるのが恥かしいような気持にもなった。出来るならば、自殺しても自殺したとは思われぬような方法を用いたいとも思った。そう考えて居るうち、以前、ある薬局の二階に下宿して居たときに手に入れた亜砒酸(あひさん)を思い出した。亜砒酸をのめば皮膚が美しくなるということを何処(どこ)かで聞いて来て、薬局の人に話して貰い受けたものである。その後いつの間にか、亜砒酸をのむことをやめたが、その残りがまだ罎(びん)の中に入れられて、机の抽斗(ひきだし)の奥に貯えられてあったのである。すべて人間は、一旦毒薬を手に入れると、それが危険なものであればある程手離すことを惜しがるものであって、従って色々の悲劇発生のもとになる。静也も別に深い意味があって亜砒酸を貯えて居たわけではないが。それが、今、どうやら役に立ちそうになって来た。

 静也は机の抽斗をあけて、亜砒酸の小さな罎を取り出した。そうして白い粉末をながめたとき彼の全身の筋肉はほんの一時的ではあるが硬直したように思われた。彼はその時、こんなことで果して自分は自殺し得(う)るだろうかと思った。彼はまた亜砒酸をのむと、どんな死に方をするかを知らなかった。あんまり苦しくては困ると思った。又なるべくなら、死後、自殺したように思われぬものであってほしいとも思った。そこで、彼は図書館へ行って、一応亜砒酸の作用を調べて見ようと決心した。

 上野の図書館は、コレラ流行時に拘(かか)わらず、意外に賑って居た。死神が横行するとき、読書慾の起るのは古来の定則である。彼は毒物のことを書いた書物を請求したが、驚いたことに日本語で書かれた医書は悉(ことごと)く貸し出されて居た。「やっぱり、みんな生命が惜しいからであろう」と、考えると、彼は、生命を捨てるために医書を読みに来た自分を顧みて苦笑せざるを得なかった。仕方がないので彼は英語の薬理学の書を借りて、貧弱な語学の力で、亜砒酸の条を辛うじて読んだ。

 すると意外にも、亜砒酸の症状は、コレラの症状に極めてよく似て居ると書かれてあった。彼はこれを読んだとき、すばらしい発見でもしたかのように喜んだ。何となれば、亜砒酸をのんで自殺したならば、こういうコレラ流行の時節には、必ずコレラと間違えられるにちがいなく、従って自殺しても自殺だとは思われないからである。医師というものは誤診するために、神様がこの世に遣されたものであるらしいから、亜砒酸で死ねば必ずコレラで死んだと間違えられる。こう思うと、静也は試みに、亜砒酸をのんで自殺し、医学そのものを愚弄してやりたいような気にもなった。

 ところが段々読んで行くうちに、亜砒酸は激烈なる疝痛(せんつう)を起すものであると知って、少しく心が暗くなって来た。コレラと亜砒酸中毒との区別は主としてこの疝痛の有無によってなされると書かれてあったので、いっそコレラに罹ろうかとも思って見たが、コレラで死んではあまりに平凡な気がしてならなかった。といって激烈な疝痛に悩むのも厭になった。疝痛に悩むのが厭になったばかりでなく、自殺することさえ厭になりかけて来た。

 で、彼は図書館を出て、公園を歩いた。白い土埃が二寸(すん)も三寸(ずん)もたまって居て、暑さは呼吸困難を起させるくらいはげしかった。彼は木蔭のベンチに腰を下して、さて、これからどうしたものであろうかと考えて居るとき、ふと、面白い考えが浮んだ。

「自分が死ぬよりも、誰かに代って死んで貰った方が、はるかに楽である」

 と、彼は考えたのである。いかにもそれは愉快な考えであった。そう考えると彼はもう自殺するのがすっかり厭になった。自殺しようとした自分の心がおかしくなって来た。そうして急に人を殺して見たくなった。ことに愉快なことは、今、亜砒酸を用いて毒殺を行(や)ったならば、医師は前述の理由で、コレラと診断し、毫(ごう)も他殺の疑を抱かないに違いない。自分で死んで医学を愚弄するよりも、自分が生きて居て医学を愚弄した方がどれだけ愉快であるかも知れない……。こう考えると静也は、うれしさにその辺を駈けまわって見たいような気がした。

 彼は下宿に帰ってから、然らば一たい誰を殺そうかと考えた。すると、彼の目の前に下宿の主婦(おかみ)のあぶらぎった顔が浮んだ。彼は自分が痩せて居たために、ふとった人間を見ると癪(しゃく)にさわった。そこで彼は下宿屋の主婦(おかみ)を槍玉にあげようかと思ったが、あんな人間を殺しても、なんだか物足りないような気がした。

 段々考えて居るうちに、彼は突然、友人の佐々木京助を殺してはどうかと思った。彼は、京助のふとって居ることがいつも気に喰わなかったが、ことに、京助の顔は、この世に居ない方がいいというようなタイプであったから、京助を犠牲にすることが一ばん当を得て居るように思われた。尤(もっと)も、敏子に対する腹癒(はらい)せの感情も手伝った。綺麗さっぱりとはねつけられた返礼としては正に屈竟(くっきょう)の手段であらねばならぬ。

 こう決心すると、彼は非常に自分の命が惜しくなって来た。殺人者は普通の人間よりも一層生に執着するものだという誰かの言葉がはじめて理解し得られたように思った。殺人を計画するだけでさえ生に対する執着がむらむらと起るのであるから、殺人を行(や)ったあげくにはどんなに猛烈に命が惜しくなるだろうかと彼は考えるのであった。良心の苛責(かしゃく)などというものも、要するところは、生の執着に過ぎぬかも知れない。こうも、彼は考えるのであった。

 然し、殺人を行うのは、自殺を行うとちがって、それほど容易ではない。どうして京助を毒殺すべきであろうか。これには流石(さすが)に頭をなやまさざるを得なかった。然し、彼は京助の性格を考えるに至って、その問題を容易に解決した。京助は平凡人である。だから、平凡人を殺すにふさわしい平凡な方法を用うればそれでよい。と、彼は考えたのである。

 先ず、会社へ行って京助を連れ出し、二人で西洋料理屋にはいり、ビーフステーキを食べる。京助は肉に焼塩をかけて食う癖があるから、その焼塩の中に亜砒酸をまぜて置けばそれでよい訳である。予(あらかじ)め、料理店で使用するような焼塩の罎を買って、焼塩と亜砒酸とをまぜて入れて置き、それを持参して、いざ食卓に就くというときに、料理店の罎とすり替える。……何と簡単に人間一匹が片附くことだろう。

 普通の時ならば、亜砒酸中毒はすぐに発見される。然し時節が時節であるから、決して発見される虞(おそれ)はあるまい。彼は医師の腕に信頼した。平素人殺しをする医師諸君は、こういう時でなければ人助けをする機会がない。して見れば自分は医師にとっての恩人となることが出来る。何という愉快なことであろう。などと考えて、彼は殺人者が殺人を決行する前に陥る陶醉状態にはいるのであった。



 殺人を決意してから十日の後、亜砒酸をまぜた焼塩の罎をポケットに入れた静也は、京助の会社をたずねて、京助を何の苦もなく連れ出すことが出来た。静也は、若しや敏子が例の一件を京助に話しては居ないかと心配したけれども京助に逢って見ると、そんな様子は少しもなかった。又静也が、一しょに西洋料理を食べようと言い出した時にも、何の疑惑も抱かなかった。平凡人の特徴は物事に不審を起さぬことである。実際また彼は、物事に不審を抱くほど痩せた身体の持主ではなかった。だから殺されるとは知らずに、平気で静也について来たのである。

 静也はもとより行きつけのレストオランへは行かなかった。知った家で人殺しをするということは、あまり気持がよくないだろうと思ったからである。京助はもとよりこれに就(つい)ても不審を抱かなかった。そうして雪白(せっぱく)の布(きれ)のかかって居るテーブルに着いて、ビーフステーキを食べた。京助が手を洗いに行った間に静也がすり替えて置いた焼塩の罎を、京助は極めて自然にとりあげて牛肉の上に、而(しか)も大量にふりかけた。そうしていかにも美味しそうに食べた。二片三片食べたとき、京助は腹の痛そうな顔をして眉をしかめたので、静也ははっと思ったが、然しその後は何ともなく、食事は無事に済んだ。食事が済むと二人は早速勘定を払って立ち上った。その時、静也は京助に気附かれずに、再び、もとの罎とすり替えた。ところが、戸外へ出ると程なく、京助は前こごみになって立ちどまり苦痛の表情をしたので、静也は、京助にすすめて、其処(そこ)に立たせ、街角へ走ってタクシーをよび、京助を家に帰らせたのである。

 京助と別れて下宿に戻った静也は、可なり興奮し、そうして、意外に疲労して居ることを感じた。レストオランで京助の一挙一動を緊張してながめて居たときは、全身の筋肉がぶるぶる顫えた。そうして心臓が不規則に搏(う)ち出したような気がした。今、下宿へかえってからでも、なお胸の動悸は去らなかった。で、彼は畳の上へぐったりとして寝ころんだが、それと同時に一種の不安が彼を襲った。

 果して医師がコレラと診断するであろうか。

 ここまでは自分の手で首尾よく事を運んで来たが、これ以上は他人の手を待たねばならない。万が一にも、医師が誤って、正しい診断を下したならば、それこそ、あまり呑気にしては居(お)られない。と考えると、何だかじっとしては居(お)られぬ気持になり、つと立ち上って畳の上をあちらこちら歩いたが、今更、何の施すべき手段はなかった。

 いくら暑い夜(よ)でも、今までは一晩も眠れぬことはなかったのに、その晩は妙に暑さが気になって、暁方に至るまで眠られなかった。然し、彼が眼をあいた時には、夏の日がかんかん照って居た。彼は朝飯をすますなり、飛び出すようにして郊外の京助の家の附近にやって来た。果して京助の家は、貼紙をして閉されてあった。近所で聞いて見ると京助は昨夜コレラを発して死に、奥さんと女中は隔離されたということであった。然し敏子と女中とが何処(どこ)に居るかを誰も知るものがなかった。

 静也はほっとした。自分の医師に対する信頼が裏切られなかったことを知って、甚だ、くすぐったい気がした。そうして、世の中が案外住みよいものであることを悟って、生に対する執着が一層深められて行った。深められて行くと同時に敏子に対する恋が頭を擡(もた)げ始めた。彼は敏子に急に逢いたくなった。逢ってもう一度、彼女の反省を乞おうと思った。彼は死んだ京助に対しては少しの同情をも感じなかった。そうして京助が死んだ以上、敏子も、この前のような、呆気ない態度には出るまいと思い、一日も早く敏子に逢いたいと思った。

 けれど敏子の行方(ゆくさき)は誰も知らなかった。あんまり深入りしてたずねるのも気がひけたので、彼は敏子が帰るまで毎日訪ねて来て様子を見ることにした。

 五日過ぎ、七日過ぎても敏子の家は閉されたままになって居た。逢えぬと思うと益々逢いたくなった。漸(ようや)く二週間目に、彼は敏子が帰って来て居ることを知ったが、日中、何となく恐ろしいような気がしたので、夜になるのを待ちかねて、久し振りに、馴染の深い玄関のベルのボタンを心臓の動悸を高めながら押すのであった。



「まあ、雉本さん、よく来てくれました。きっと来て下さるだろうと思って待って居たのよ」

 と、敏子は自分で玄関まで出迎えて、嬉しそうな顔をして言った。彼女は幾分頬がこけて居たが、そのため却って美しさを増した。

 静也は、眼を泣きはらした顔を想像して居たのであるから、彼女のこの言葉に頗(すこぶ)る面喰って、何といってよいかに迷った。

「今晩、女中は居(お)りませんの、ゆっくり遊んでいらしてもよいでしょう、御上りなさい」

 こう言って彼女は、あかるく電灯に照された応接室へ、静也を引摺るようにして案内した。静也は籐椅子に腰を下し、手巾(ハンカチ)で汗をふいてから、

「時に……」

 と、いいかけると、彼女はそれを遮って言った。

「御くやみを述べて下さるのでしょう。有難いですわ。でも、人間の運命というものはわからぬものですね、佐々木はあの夜、あなたと一しょにレストオランへ行って、同じものを食べながら、あなただけは、このように無事なのですもの……」

 敏子が静也の顔を見つめたので、静也はあわてて、まぶしそうに眼たたきをした。敏子は更に言葉を続けた。

「佐々木はあの夜(よ)家に帰るなり、はげしい吐瀉(としゃ)を始めて三時間たたぬうちに死にましたわ。まるで夢のようねえ」

「本当にそうです」と静也ははじめて口をきくことが出来た。「あのあくる日、気になったものですから、こちらを御訪ねすると、佐々木君が死んだときいてびっくりしました。御見舞しようと思ってもあなたの行先がわからず、あれから毎日こちらへ来て見たのです。二週間とは随分長い隔離ですねえ」

「そうよ、わたし病院で予防注射を受けて居ましたの。あなたは注射をなすって?」

「いいえ、一回や二回の注射では駄目だということで、面倒ですからやめました」

 敏子はそれをきくと、何思ったか、急にその眼を輝かせた。

「一回や二回ではきかなくても、十回もやれば、黴菌をのみ込んだって大丈夫だそうだわ。わたし、毎日一回宛(ずつ)十回ほど注射して貰ったのよ。あなただって、佐々木のように死にたくはないでしょう?」

「佐々木君が死んだときいてから、急に死にたくなくなりました」

 こう言って静也は意味あり気な眼付をして敏子をながめた。

「それじゃ、その以前は死にたかったの?」

 静也はどうした訳か、急に顔がほてり出したので、伏目になって黙って居た。

「ね、仰(おっ)しゃいよ」

 静也は太息(ためいき)をついた。

「実は、この前御目にかかってから、自殺しようと思いました」

「どうして?」

「失望して」

「何を?」

「何をってわかってるじゃありませんか」

 こう言って彼は、小学生徒が先生の顔を見上げる時のようにおずおず敏子をながめた。二人の視線がぶつかった。敏子はうつむいて、黙って手巾(ハンカチ)で口を掩(おお)った。

「どうしたのですか。佐々木君が死んで悲しいのですか?」

 敏子が顔をあげてじろりと静也をながめた。その眼は一種の熱情に輝いて居た。

「わたし、恥かしくなったわ」こういって又も俯向いて、声を低くして言った。「この前、あなたにあんな心にもないことを言ったので……」

 静也ははっとした。

「そ、それでは敏子さんは……」

「佐々木に済まないけれど……」

 静也は熱病に罹ったような思いをして、ふらふらと立ち上って敏子の椅子に近よった。

「敏子さん、本当ですか?」と言って彼は彼女の肩に手をかけた。ふくよかな触感が、彼の全身の神経をぴりりと揺ぶった。

「あなた、電灯を消して下さい」と敏子は恥かしそうに言った。

 静也は応接室の入口に備え附けてあるスイッチのところへよろよろ歩いて行って、パチンと捻った。

 闇が二人を包んだ。

 それから……接吻の音。



 恋を語るには暗い方がよい。これは誰でも知って居ることである。

 あけ放たれた窓から、なまぬるい空気が動いて来る。二人は暑かった。

 接吻の後……男は辛抱がなかった。

 女は四時間待って下さいといった。

 四時間! 何故?

 その四時間は静也にとって、「永久」に思われた。

 然し、その長い四時間も過ぎた。夏の夜は更けた。

 すると男は暗黒の中で奇妙な声を出した。それは全くその場にふさわしからぬものであった。

「アッ!」

 嘔吐(おうと)の声。

「うーん」

 嘔吐の声。

「ホ、ホ、ホ、ホ、ホ」女の甲高い声が暗の中に響き渡った。「よくも、よくも、あなたは佐々木を毒殺しましたね? 卑怯(ひきょう)もの! わからぬと思ったのは大間ちがい、佐々木は予防注射を何回も受けたのよ……」

「あーっ」と腹の底をしぼるような声。

 嘔吐の声。

「だから、わたしはすぐ覚ったわ。けれど、佐々木は毒殺されたとは知らないで死んだのよ。死ぬ人の心を乱してはいけないと思って、わたしも御医者さんが誤診したのを幸いに黙って居たわ。だから、佐々木は予防注射をしてもきかなかったのだと思って死んで行ったわ……」

 嘔吐の声。

「それに、わたしは、あなたを警察の手に渡したくなかったのよ。警察の手に渡れば、死刑になるやらならぬやらわからぬでしょう。わたしは、一日も早く自分で復讐しようと思ったのよ、だから、昨日まで予防注射をしてもらって生きた黴菌を嘗(な)めても病気にかからぬ迄になったのよ。先刻、あなたが電灯を消しに行った間に、病院から黙って持って来た試験管の、生きた黴菌を口に入れたのよ。それから接吻でしょう。わかって?」

 嘔吐の声。唸(うめ)く声。

「なかなか苦しそうですねえ。苦しみなさい。今年のは毒性が強いから、四時間で発病すると医者が言ったのよ。『四時間』の意味がわかったでしょう? ね、これからあなたは、苦しみ抜いて死ぬのよ。電灯をつけましょうか。どうしてどうして、おお、見るも厭だ。あなたが死んでしまってから警察へ届けるのよ。たとい死体を解剖されたって、他殺だとは決してわからぬわよ、ホ、ホ、ホ、ホ、ホ」

 嘔吐の声。唸く声。

 死を語るにも暗い方がよい。これも……誰でも知って居ることかも知れない。


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Posted by 문학관 관리인 위어조자(謂語助者)

죽음의 키스 (死の接吻)

고사카이 후보쿠 (小酒井 不木) (1926)

번역 : 홍성필


1.

그 해 더위는 각별했다. 어떤 이는 60년만의 더위라고 했고, 또 어떤 이는 600년만의 더위라고 했다. 하지만 누구도 6만년만의 더위라고는 하지 않았다. 중앙기상대 보고에 의하면 어느 날 최고온도는 화씨 120도였다. 섭씨가 아니라 다행이다. “중앙기상대 일기예보는 절대 신용할 수 없으나 기온 정도는 믿을 수 있겠지.”라고 신천옹(信天翁:바보새) 생식기를 연구하고 있는 가난한 모 대학교수가 비꼬면서 말했다고 한다.

도쿄(東京) 시민은 치장한 여성들을 포함해서 큰 어려움을 겪은 것 같다. 열사병에 걸려 죽은 자가 하루에 30명을 넘었다. 하루에 40명 정도 인구가 줄었다고 해서 일본은 끄떡하지 않지만 사람들은 매우 두려워했다. 비가 전혀 내리지 않았기 때문에 수돗물이 무엇보다도 큰 문제였다. 일본인은 일시적인 대비책밖에 마련하지 않기에 이처럼 예외적인 더위를 고려하지 않고 수도가 설계되었으니 당연했다. 물이 많이 귀해졌다. 그러나 모 대형신문이 생수선전을 했기 때문만은 아니었다. 술값이 급상승했다. N얼음회사 사장은 너무 기쁜 나머지 뇌졸중을 일으켜서 즉사했다. 그러나 얼음회사 사장이 죽었다고 해서 더위는 식지 않았다.

인간은 예외적인 현상을 겪게 되면 그것이 무슨 불길한 일이 일어나는 징조라도 되는 것처럼 생각하는 습성이 있다. 그래서 논어밖에 모르는 모 실업가는 올해 더위에 대해서 생식선 호르몬 주소를 맞으며 “일본인들을 오랜 잠에서 깨우기 위해 하늘이 경고하는 것이다.”라고 무슨 뜻인지도 모르는 말을 신문에서 말하고, 본인은 자동차로 매일 밤 첩을 찾아다니며 달콤한 꿈을 탐닉했다. 유이 마사유키(由井 正雪)가 살아 있었다면 시나가와(品川) 해안까지 해군 비행기를 타고 나가서 민요라도 부르며 기우제(祈雨祭)를 지냈을지도 모른다. 하지만, 요즘 사람들은 가급적 편하게 돈을 벌려는 무리들뿐이기에 다른 사람을 위한 일이라고는 가급적 피하려는 이기적인 생각을 가지고 있으므로 누구 하나 기우제를 지내려는 이는 없었다. 따라서 비는 여전히 내리지 않았고 사람들 혈액도 매우 끈적끈적해져서 싸움이나 살인사건 수가 급증했다. 범죄를 없애기 위해서는 사람 혈액 농도를 떨어뜨리면 된다고 하는 대원칙이 모 법의학자에 의해 발표되었다. 아무튼 사람들은 이유 없이 무척이나 신경이 예민해졌다.

그 때 갑자기 상해(上海)에 맹렬한 독성을 갖는 콜레라가 발생했다는 속보가 전해졌다. 콜레라 소식은 곽송령(郭松齡:중국군인 - 역자 주) 사망소식과는 달리 내무성 관리들을 자극시켜 선박검역을 엄중하게 하도록 하는 명령이 시달되었으나, 의학이 발전하면 세균 또한 진화하는 법이기에 콜레라균도 요즘은 매우 민첩해져서 검역관의 눈을 피하고 유유히 나가사키(長崎)에 상륙하고는 순식간에 유서 깊은 시내에까지 퍼져나갔다. 나가사키에 상륙만 한다면 일본 전역으로 퍼지는 것은 손쉬운 일이었다. 그래서 중국인의 죽음에 대해 아무런 아픔도 느끼지 않았던 일본인도 극심한 공포에 떨기 시작했다. 하지만 세균 쪽에서는 인간을 조금도 두려워하지 않았다. 각 지방 방역관들은 자신이 살고 있는 지역만 지켜내면 다른 지역은 어떻게 되더라도 상관없다는 식의 기발한 마음가짐으로 방역에 종사하고, 특히 요코하마(橫浜)와 코베(神戶)에는 직접 상해에서부터 세균이 들어오기에, 어떤 방역관은 부인이 출산을 앞두고 진통을 앓고 있는 와중에 출장명령을 받고 태어나는 아기도 못 본채로 달려 나왔다.

그러나 방역관들의 수많은 노력에도 불구하고 콜레라는 마침내 도쿄 안으로 침입한 것이다. 평소라면 교바시(京橋) 부근에서 장작과 숯을 실어 오는 선장 부인이 먼저 걸리는데, 이번에 ‘유행에서 앞서 나가지’ 못한 이유는 아사쿠사(淺草) K 여관에 있는 T라는 변사(辯士) 때문이었다. 하롤드 로이드가 출연한 ‘방역관’이라는 제목의 희극을 설명하고 있을 때 구토를 일으켰는데, 콜레라라고 진단되었을 때에는 꽉 차 있던 관객들은 시내로 흩어지고 방역 책임을 맡은 당국 사람은 창백해졌지만 이미 때는 늦었다.

역병은 파죽지세로 도쿄 각처에 퍼져나갔다. 독성이 지극히 강했기 때문이었을 것이다. 예방주사 한두 번 정도로는 효과를 발휘하지 못했기에 사람들의 공포심은 극에 달했다. 50명 이상이 근무하는 공장은 예외 없이 환자가 나왔으며 부득이하게 일시폐쇄를 감수해야 했다. 더위는 여전히 물러가지 않았기에 마시면 안 된다는 물을 마시는 자도 많았고, 그런 이들은 모두가 하나 둘 죽어갔다. 어이없는 점은 많은 의사들이 걸렸다. 평소 그들의 의사들로부터 높은 약값을 청구 당한 폐병환자들은 자기 자신의 병도 잊은 채 통쾌해했다. 머지않아 죽어야 할 운명에 있는 자는 아는 사람의 죽음을 들으면 매우 통쾌해하는 법이다.

모든 병원도 강제로 전염병원을 겸하게 하였으며, 순식간에 만원이 되고 말았다. 화장터는 문을 닫고 공동묘지는 비좁게만 느껴졌다. 장례식은 어디에서나 볼 수 있었다. 니혼바시(日本橋) 다리 맡에 서서 다리를 건너는 관 수를 셀 정도로 숫자에 집착하는 사람은 없었으나, 일터가 사라진 후 지갑 속 돈을 세는 노동자는 무수히 많았다.

공포는 도쿄 구석구석까지 미쳤다. 어떤 이는 두려움 때문에 살려고 하는 노력이 마비되어 자살했다. 또 어떤 이는 마찬가지로 공포 때문에 발광해서 처자를 죽였다. 또한 정신상태가 비교적 건전한 자도 각종 환각 때문에 괴로워했다. 아무리 그것이 대낮이었다 해도 흰 먼지에 뒤덮인 가로수 그늘에 목을 매어 죽어 있는 사람들을 보는 환각 증세를 일으켰다. 하물며 우에노(上野)나 아사쿠사에 있는 큰 종소리가 힘없이 울려 퍼지고, 부엉이소리와 함께 어둠에 잠기면 사람들은 밤하늘에 펼쳐진 은하수를 보면서도 일종의 두려움을 느끼며, 갑자기 나타났다 사라지는 별똥별을 보고도 소름이 돋았다. 조용히 불어오는 미지근한 바람은 죽음의 사자가 부는 입김처럼 느껴졌다.

그러나 역시 현대인이다. 역병이 ‘창궐(猖獗)’이라는 문자로 형용된 시대라면 당연히 ‘모든 집 대문은 굳게 닫히고 거리에는 그림자 하나 없다’는 식으로 적어야 하겠지만, 사실 그와는 정반대로 사람들은 코앞에 닥쳐오는 위험을 무릎 쓰고 외출해서 거리는 매우 붐볐다. 밤이 되면 바깥 기온이 어느 정도 떨어지고 찌는 더위 때문에 집안에 있을 수 없다는 것도 이유 중 하나였으나, 주된 원인은 현대인이 갖고 있는 절망적이고도 숙명론적인 마음 때문이었다. 공포를 증오하면서도 공포에 다가가지 않을 수 없는 심리는 현대인의 특징이다. 그들은 무언가에 이끌리듯 외출했다. 그러나 외출은 하지만 그들 마음은 그들을 감싸는 어둠보다도 훨씬 더 어두웠다. 평소 그들의 무기로 사용되는 자연과학도 그들 마음을 조금도 밝게 해주지 못했다. 따라서 그들은 밤이면 언제 끝날지도 모르는 목숨을 가지고, 최소한 알코올에 의해 한 때나마 고통을 지우려고 했다. 그래서 술집이나 레스토랑이 여느 때보다 번창했다. 그들은 노래했다. 그러나 그들의 노래는 길 가는 사람들 마음을 서늘하게 했다. 그 옛날 런던에서 흑사병이 유행했을 때 장의사로 모여든 장례 인부들이나 약제사들이 사업 번창을 축하하며 부르는 노래와도 같은 끔찍한 느낌을 자아내게 했다.

사람들을 사로잡은 공통된 불안감은 오히려 그들이 가지고 있는 개개인의 고민들을 확대시켰다. 역병에 대한 공포는 빚에 대한 중압감을 줄여주지는 못했다. 또한 각자가 갖는 분노들은 역병에 대한 공포 때문에 한층 더 강해졌던 것이다. 따라서 더위 때문에 급증한 범죄는 콜레라 유행 이후 급속도로 증가하는 추세에 있었다.


2.

본 소설의 주인공 기지모토 시즈야(雉本 靜也)가 실연 때문에 자살을 결심했는데, 그 마음이 오히려 살인을 하게 된 것도 이런 분위기 때문이었다.

시즈야는 도쿄 시내에 있는 M대학 정치학과를 졸업하고 고급 하숙집에 서식하면서, 고향으로부터 보내오는 돈으로 하루 종일 하는 일 없이 허송세월을 하고 있다는, 현대사회 특유의 폐인이었다. 미국에는 매니큐어를 칠하면서 세월을 보내는 폐인이 많지만, 시즈야도 하루에 머리를 빗는 것과 양복을 입는 일에 대부분의 시간을 할애했다. 그는 어떤 직장에 취직을 하면 사흘째부터 정수리 부근 뼈가 지끈지끈 아파왔기 때문에 1주일 이상 계속하는 경우는 없었다. 또한 그는 무슨 일을 해도 얼마 지나지 않아 싫증을 내고 말았다. 때로는 독한 술이나 담배에 빠져 살거나 영화, 또는 마작이나 낱말 맞추기, 자극적인 탐정소설에 몰두해보기도 했으나 모두 오래 가지는 못했다. 그는 이 싫증내기 쉬운 기질을 본인조차도 이상하게 생각했다. 그리고 아마도 자신의 선천적인 겁쟁이 기질이 그 원인으로 여기는 것이었다.

현대 폐인에는 두 부류가 있다. 하나는 지극히 대담하고 시체 위에 들끓는 똥파리처럼 집요하다. 두 번째 부류는 지극히 겁이 많고 풀이 모자란 우표처럼 집요함이 없다. 시즈야는 두말할 필요 없이 두 번째 부류에 포함되는 폐인이었다. 그는 술집 여자와 말을 나눌 때조차 일종의 수치심을 느꼈다. 그래서 그는 지금까지 단 한 번도 사랑이라는 경험을 해보지 못했다. 그에게 있어서 사랑을 한다는 것은 일종의 모험이었다. 마음속으로는 너무나도 그런 모험을 해보고 싶었지만, 그의 겁쟁이 기질이 가로막았다. 또한 그의 마른 몸매가 모험에는 적합하지 않았다.

그러나 운명은 그에게 사랑할 기회를 주었던 것이다. 즉, 그는 태어나서 처음으로 사랑을 경험하기에 이른다. 하지만 공교롭게도 그가 사랑한 여인은 그의 친구 부인이었다. 이는 놀라우면서도 그에게 있어서는 불행한 일이었다. 그에게 있어서 불행이었을 뿐만 아니라 그 친구한테 있어서도 불행이었다. 실제 그의 친구는 이 때문에 아무런 죄 없이 그에 의해 죽어야 할 운명이 되었다고 해도 과언이 아니기 때문이다. 예부터 부인의 아름다움으로 인하여 불의의 죽음을 당하는 남성은 적지 않았으나, 시즈야의 친구인 사사키 교스케(佐佐木京助)처럼 아무 것도 모른 채 죽어간 경우는 드물다고 해야 할 것이다.

사사키 교스케의 부인인 도시코(敏子)는 이른바 현대 여성, 즉 요즘 여성이었다. 현대 여성의 공통점으로서 그녀는 남성적 성격을 충분히 갖추었고, 이성(理性)이 비교적 발달해 있었다. 그녀의 외모는 아름다웠으며 성격도 활달했다. 그런 그녀 성격이 여성적 요소가 많은 시즈야를 끌리게 했던 것은 당연했다. 시즈야는 교스케를 찾아갈 때마다 도시코한테 점점 마음이 동하게 되었다.

교스케는 시즈야와 동창이었으며 같은 해 봄에 도시코와 결혼하고 교외에서 살고 있었다. 그는 이렇다 할 특징이 없는 평범한 인물이었다. 평범한 사람들이 모두 그렇듯이 그는 살이 쪘으며 콧수염을 기르고 있었다. 그러나 그 평범한 점을 현대 여성들은 좋아하는 것 같다. 실제로 또한 교스케 같은 평범한 인물이 아니었더라면 현대 여성한테 봉사하는 일은 어렵다. 그 증거로 어떤 천재음악가는 새로운 여성을 부인으로 맞이하고는 데이코쿠(帝國) 극장 오케스트라에서 지휘하고 있을 때 갑자기 졸도했다. 불려온 의사는 환자 주머니에 1회 1정이라고 적힌 약병을 발견하고는 그 졸도 원인을 확인할 수 있었다. 또한 어떤 국회의원은 의회에서 800만엔 사건이라고 하는 것에 연루되어 질의를 받았었다. 그는 중의원(衆議院) 단상에서 “거짓말 800만엔이란 이런 걸 말한다(일본에서는 거짓말 종류가 800가지 된다는 말이 있다 - 역자 주)”며 씁쓸한 농담을 남기고는 그날 밤 독감에 걸렸다. 어쨌거나 현대 여성을 부인으로 맞이하기 위해서는 온몸을 다 바칠 각오가 필요하다.

교스케가 과연 그와 같은 각오를 하고 있었는지는 모르지만, 그의 체력과 재력이 도시코를 만족시켰는지 두 사람 금슬은 좋았다. 그러나 도시코는 본연의 요염함으로써 남편 친구들을 대했기 때문에 시즈야는 어느새 묘한 마음을 일으키게 된 것이다. 그렇다고 시즈야는 그 묘한 마음을 감당하지 못하고 있었다. 시즈야가 만약 겁쟁이가 아니었다면 어쩌면 시원하게 도시코한테 속내를 털어놨을지도 모른다. 그러나 겁이 많은 사람들이 항상 그렇듯, 결과를 예상하고 여러 가지 상상을 하게 되기에 시즈야는 고백한 다음에 벌어질 끔찍한 결과를 생각하면 도저히 입 밖으로 낼 수가 없어서 혼자 속을 태우고만 있을 뿐이었다.

그렇다고는 하나 점점 사랑이 부풀어 오르면 결국에는 터져야 할 시기가 온다. 시즈야는 어떤 식으로 터뜨려야 할 것인지를 심사숙고했으나 물론 묘안은 떠오르지 않았다. 아예 큰맘 먹고 편지라도 쓸까 하는 생각을 하기도 했으나 글씨는 서툴렀고 글재주도 없었다. 더구나 편지란 때로는 후세에까지 남는 것이므로 그 편지 때문에 영원히 조롱 대상이 되기도 싫었다. 아베노 나카마로(阿倍 仲麻呂)가 단 하나의 시를 읊었을 뿐인데도 그것을 가지고 산병(疝病) 걸린 후지와라 사다이에(藤原 定家)한테 빼앗겨서 후세에 ‘가루타’라는 것이 되고 말았다. 그리고는 얼굴이 노란 여학생 입에 오르내리며 영원히 수치를 당하고 있다. 또한 편지 때문에 ‘진품’이라는 별명을 얻어 신장염을 앓은 한 나라의 재상(宰相)도 있다. 이런 생각을 하자 시즈야는 편지 쓰는 것이 몹시 두려워졌다.

시즈야가 사랑의 무거운 짐 때문에 괴로워하고 있을 무렵 갑자기 콜레라가 도쿄를 급습한 것이다. 그러자 신기하게도 겁이 많은 시즈야는 갑자기 대담해졌다. 그리고 도시코 앞에서 사랑을 고백하려고 결심했다. 사랑과 콜레라 사이의 상관관계에 대해서는 아직 연구되지는 않은 것 같지만, 만약 연구하려는 사람이 있다면 시즈야는 매우 적합한 연구 자료가 되리라고 믿는다.

도쿄가 공포의 그림자로 가득 찬 어느 날, 시즈야는 교스케가 회사에 출근 한 틈을 타서 도시코를 찾아갔다. 그리고 시즈야는 연설에 익숙하지 않은 자가 박수소리와 함께 단상 위에 올라가듯 멍한 기분으로 난생 처음 사랑의 아픔을 앓았다는 점, 말하지 않고서는 견딜 수가 없었기에 단단히 마음먹고 고백한다는 점 등을 도시코한테 말했던 것이다. 그날은 역시 매우 더웠기에, 더워서 나는 땀과 창피해서 나는 땀 때문에 시즈야는 많은 양의 수분을 잃고는, 고백이 끝나갈 무렵 그는 목이 쉬고 말았다. 마치 죽어가는 노파가 아미타여래(阿彌陀如來) 앞에서 연불을 외우듯 가냘픈 목소리가 되고 말았다.

도시코는 신하한테서 애절한 청원을 듣고 있는 여왕과 같은 태도로 시즈야가 말하는 고백을 듣고 있었으나, 시즈야가 말을 끝내고 손수건으로 목덜미를 닦았더니, 손에 들고 있던 부채로 시즈야를 한 번 ‘휙’ 하고 부쳐주고는 깔깔 웃기 시작했다.

“호호호호호. 무슨 말씀이세요. 바보 같애. 호호호호호.”


3.

낙하산 없이 1킬로미터 상공에서 떠밀린 비행사와도 같은 경험을 한 기지모토 시즈야는 그날 밤 하숙집으로 돌아가 자살할 결심을 했다. 범죄학자는 자살 원인으로 더위를 꼽지만, 시즈야는 더워서 자살하는 것이 아니라 실연했기 때문에 자살하는 것이다. 물론 그에게 있어서 자살을 결심하도록 한 동기는 역시 콜레라를 꼽지 않을 수 없다. 수많은 사람들이 죽을 때 어떤 비참한 꼴을 당하면 마음 약한 사람은 자살하고 싶어지는 법이다.

그런데 시즈야는 자살을 결심하긴 했으나 어떤 방법으로 자살하면 좋을지를 매우 망설였다. 그리고 자살한 다음 왠지 자살했다고 보이기가 부끄럽다는 생각이 들었다. 가능하다면 자살해도 자살하지 않은 것처럼 보이는 방법을 쓰려고도 했다. 그랬더니 예전에 어떤 약국 2층에 하숙하고 있을 무렵 얻었던 아비산(亞砒酸)이 떠올랐다. 아비산을 먹으면 피부가 하얗게 된다는 말을 어딘가에서 듣고는 약국 사람한테 말해서 얻은 것이다. 그날 이후 어느 때인가부터 아비산 먹기를 그만 두었으나, 그 때 남은 것이 아직 병에 든 채로 책상 서랍 깊숙이 넣어두었던 것이다. 모든 사람은 일단 독약을 손에 넣으면 그것이 위험한 약이면 위험할수록 버리기를 주저하는 경향이 있기에 여러 비극이 발생하기도 한다. 시즈야도 특별한 의도가 있어서 아비산을 보관해둔 것은 아니지만 그것이 지금에 와서 아무래도 쓸모가 생길 것 같다.

시즈야는 책상 서랍을 열고는 아비산이 든 작은 병을 꺼냈다. 그리고 흰 분말을 바라보았을 때 온몸의 근육이 순간적이긴 했으나 굳어버린 것 같았다. 그는 그 때 이런 것으로 과연 자살할 수 있을까 하고 생각했다. 그는 또한 아비산을 먹으면 어떤 식으로 죽는지를 몰랐다. 너무 고통스럽지 않았으면 했다. 그래서 그는 도서관에 가서 일단 아비산 작용에 대해 살펴보자고 결심했다.

우에노(上野)에 있는 도서관은 콜레라가 유행하고 있음에도 불구하고 의외로 사람들이 많았다. 죽음의 사자가 횡행할 때 독서욕이 생기는 것은 예부터 그래왔다. 그는 독극물에 관한 책을 청구했으나 놀랍게도 일본어로 된 의학서적은 모두 대출 중이었다. “역시 모두 목숨이 아깝긴 아까운가보군.” 그렇게 생각하자 그는 목숨을 버리기 위해서 의학서적을 읽으러 온 자신을 되돌아보며 쓴웃음을 지었다. 하는 수 없이 그는 약리학 원서를 빌리고는 빈약한 어학력으로 아비산에 대해 적힌 항목을 간신히 읽었다.

그러자 뜻밖에도 아비산 증상은 콜레라와 매우 흡사하다고 적혀 있었다. 그가 이것을 읽었을 때 훌륭한 발견이라도 한 것처럼 기뻐했다. 만약 아비산을 먹고 자살한다면 요즘처럼 콜레라가 유행할 때는 분명 콜레라와 착각할 것이었으며, 따라서 자살해도 자살로 안 보이기 때문이다. 자고로 의사란 오진(誤診)을 하기 위해 신이 이 세상으로 내려보낸 무리들이므로 아비산으로 죽으면 틀림없이 콜레라로 죽었다고 진단할 것이다. 이렇게 생각하자 시즈야는 아비산을 죽어 자살하고는 의학 그 자체를 우롱해주고 싶은 생각도 들었다.

그러나 점점 읽어 내려가자 아비산은 극렬한 선통을 일으킨다는 사실을 알고 다소 주저했다. 콜레라와 아비산중독과 차이는 주로 이 선통 유무에 의해 달라진다고 적혀 있었기에 아예 콜레라에 걸릴까 하는 생각도 들었으나, 콜레라로 죽는다면 너무나도 평범해 보일 것만 같았다. 그렇다고 극심한 통증을 느끼기도 싫었다. 통증이 싫었을 뿐만 아니라 자살하는 것조차 주저하게 되었다.

그래서 그는 도서관을 나와서 공원을 걸었다. 흰 흙먼지가 6~7센티미터나 쌓여 있었으며 더위는 호흡곤란을 일으킬 정도로 심했다. 그는 나무 그늘에 있는 의자에 앉아, 이제부터 어떻게 해야 할까 하고 고민하던 중, 문득 재미있는 생각이 떠올랐다.

“내가 죽기 보다는 누군가 대신 죽이는 게 훨씬 편하다.”

라고, 그는 생각했다. 이는 매우 유쾌한 발상이었다. 그렇게 생각하자 그는 더 이상 자살하기 싫어졌다. 자살하려던 본인의 마음이 이상하게 여겨졌다. 그리고 갑자기 사람을 죽여보고 싶어졌다. 더욱 유쾌한 점은 지금 아비산을 써서 독살한다면 의사는 앞에서 언급한 이유 때문에 콜레라로 진단할 것이므로 꿈에도 타살이라는 의심을 품지 않을 것이다. 스스로 죽으면서 의학을 우롱하기 보다는 스스로 살아서 의학을 우롱하는 편이 얼마나 더 유쾌한지 모른다……. 이런 생각이 들자 시즈야는 너무 기쁜 나머지 주변을 뛰어다니고 싶어졌다.

그는 하숙집으로 돌아와서, 그렇다면 도대체 누구를 죽일까 하고 생각했다. 그러자 그의 눈앞에 하숙집 주인아주머니의 느끼한 얼굴이 떠올랐다. 그는 자신이 말라 있었기 때문에 살이 찐 사람을 보면 화가 났다. 그래서 그는 하숙집 주인아주머니를 실험대로 써볼까 했으나, 그런 인간을 죽인다 해도 어딘지 모르게 허전할 것 같았다.

점점 생각하자 그는 갑자기 친구 사사키 교스케를 죽이면 어떨까 했다. 그는 교스케의 뚱뚱한 점이 항상 마음에 들지 않았으나, 특히 교스케 얼굴은 이 세상에 없는 편 나을 것 같은 몰골이었기에 교스케를 가장 첫 대상으로 생각하게 되었다. 물론 도시코에 대한 화풀이 감정도 섞여 있었다. 완벽하게 거절당한 답례를 한다면 그야말로 결정적인 방법이어야만 한다.

이렇게 결심하자 그는 매우 자신의 목숨이 아까워졌다. 살인자는 보통 사람들보다도 훨씬 더 생에 집착한다고 한 누군가의 말이 비로소 와 닿았다. 살인을 계획하기만 해도 생에 대한 집착이 끓어오는데, 살인을 한 다음에는 얼마나 목숨이 아까울까 하고 그는 생각했다. 양심의 가책이라는 것도 말하자면 생에 대한 집착에 불과한지도 모른다는 생각까지도 들었다.

그러나 살인을 하기 위해서는 자살과는 달리 그리 쉽지만은 않다. 어떻게 교스케를 독살해야 할 것인가. 역시 이 문제는 매우 복잡했다. 그러나 그는 교스케 성격을 생각하면서부터 그 문제를 쉽게 해결했다. 교스케는 평범하다. 그래서 평범한 인간을 죽이기에 걸맞게 평범한 방법을 쓰면 된다고 그는 생각했다.

우선 회사에 가서 교스케를 불러내고 둘이서 양식집으로 들어가서는 스테이크를 먹는다. 교스케는 고기에 구운 소금을 뿌려 먹는 습관이 있기 때문에 그 소금 안에 아비산을 넣어두면 된다. 사전에 식당에서 사용하는 것 같은 소금병을 사고, 구운 소금과 아비산을 섞어 넣어두고는 그것을 가지고 들어가서 식탁에 앉을 때에는 식당 병과 맞바꾼다.

……어쩌면 이리도 쉽게 한 사람을 해치울 수 있을까.

평상시라면 아비산 중독은 쉽게 발각된다. 그러나 시기가 시기이니만큼 절대 발견될 염려는 없다. 그는 의사의 실력을 믿었다. 평소 사람을 죽이는 의사들은 이럴 때가 아니면 사람을 도울 기회가 없다. 그렇다면 나는 의사한테 있어서 은인이 될 수도 있다. 이 얼마나 유쾌한가. 이런저런 생각을 하고 그는 살인자가 살인을 단행하기 전에 경험하는 도취상태에 빠져들었던 것이다.


4.

살인을 결심하고 10일이 지난 밤, 아비산을 섞은 소금병을 주머니에 넣은 시즈야는 교스케 회사를 찾아가서 아무런 어려움 없이 불러낼 수 있었다. 시즈야는 혹시 도시코가 지난날의 그 사건을 말하지나 않았을까 하고 걱정했으나, 막상 만나보자 전혀 그런 낌새는 없었다. 또한 시즈야가 함께 양식집을 가자고 말을 꺼냈을 때에도 아무런 의심도 갖지 않았다. 평범한 인간들의 특징은 매사에 의심이 품지 않는다는 점에 있다. 실제로 또한 그는 매사에 의심을 품을 정도로 마른 체구가 아니었다. 그래서 죽는다는 것도 모르고 태연히 시즈야를 따라 나섰던 것이다.

시즈야는 당연히 단골 레스토랑에는 가지 않았다. 단골집에서 살인을 한다는 일은 별로 내키지 않았기 때문이다. 교스케는 물론 이 점에 대해서도 이상하게 생각하지 않았다. 그리고 흰 시트가 덮인 테이블에 앉고서 스테이크를 먹었다. 교스케가 화장실에 간 사이에 시즈야가 바꾸어놓은 군소금병을 교스케는 지극히 자연스럽게 집어 들고 쇠고기 위에, 그것도 상당히 많은 양을 뿌렸다. 그리고 먹음직스럽다는 듯이 먹었다. 두세 조각을 먹었을 때, 교스케는 배가 아프다는 듯 미간을 좁히기에 시즈야는 놀랐으나, 하지만 그러고는 아무 일 없이 무사히 식사를 마쳤다. 식사가 끝나자 둘은 서둘러 계산을 마치고 일어섰다. 그 때 시즈야는 교스케 몰래 소금병을 다시 바꿔놓았다. 그런데 문밖을 나서자마자 교스케가 주저앉고서는 얼굴을 찌푸렸기 때문에 시즈야는 교스케를 권해서 거기에 세워둔 채로 택시를 잡고서 교스케를 집으로 돌려보냈다.

교스케와 헤어지고 하숙집으로 돌아온 시즈야는 상당히 흥분하고, 그리고 생각보다 피곤함을 느꼈다. 레스토랑에서 교스케의 일거수일투족을 긴장하면서 바라보고 있었을 때에는 온몸의 근육이 벌벌 떨렸다. 그리고 심장이 불규칙적으로 박동하는 것 같았다. 지금 하숙집으로 돌아와서도 여전히 심장박동은 가라앉지 않았다. 그래서 그는 바닥 위에 철퍼덕 누웠으나, 그와 동시에 일종의 불안감이 그를 엄습했다.

과연 의사가 콜레라라고 진단할 것인가.

여기까지는 자신의 손으로 잘 되었으나, 여기서부터는 다른 사람의 손을 기다려야 한다. 만일에 의사가 실수로 올바른 진단을 내린다면, 그야말로 마음 편히 있을 수는 없다. 이런 생각을 하자 왠지 가만히 있을 수 없어, 문득 일어서서는 방 안을 이리저리 왔다 갔다 했으나, 이제 와서 달리 할 도리가 없었다.

아무리 더운 밤이라도 지금까지는 하룻밤도 잠을 못 잔 일은 없었는데, 그날 밤은 이상하게 더위가 신경 쓰여 새벽녘까지 잠을 이룰 수 없었다. 그러나 그가 눈을 떴을 때에는 여름 햇볕이 쨍쨍 비추고 있었다. 역시 교스케 집 문에는 안내판이 붙은 채로 닫혀 있었다. 이웃 사람한테 물어보자 교스케는 어젯밤 콜레라로 죽고, 부인과 가정부는 격리되었다는 것이다. 그러나 도시코와 가정부가 어디에 있는지는 누구도 알지 못했다.

시즈야는 안도의 숨을 내쉬었다. 의사가 자신의 믿음을 져버리지 않았다는 사실을 알고 매우 낯간지러웠다. 그리고 이 세상이 생각보다 살기 좋은 곳이라는 사실을 깨닫고 생에 대한 집착이 한층 깊어만 갔다. 깊어짐과 동시에 도시코에 대한 사랑이 고개를 들기 시작했다. 그는 도시코를 갑자기 만나고 싶어졌다. 만나서 다시 한 번 그녀의 반성을 구하려 했다. 시즈야는 죽은 교스케에 대해 조금도 연민을 느끼지 못했다. 그리고 교스케가 죽은 이상 예전처럼 어이없는 태도로 나오지는 않을 거라고 생각하고는, 하루라도 빨리 도시코를 만나고 싶었다.

그러나 도시코의 행방은 아무도 몰랐다. 너무 깊이 묻기도 꺼려졌기 때문에 그는 도시코가 돌아올 때까지 매일 찾아와서 동정을 살피기로 했다.

닷새가 지나고 7일이 지나도 도시코의 집 문은 굳게 닫혀 있었다. 만나지 못한다고 생각하자 더욱 만나고 싶어졌다. 2주일이 지나서야 그는 도시코가 돌아왔다는 사실을 알았으나, 낮에는 왠지 두려움을 느끼기에 밤이 되기를 기다렸다. 오랜만에 친숙한 현관 초인종을 정신없이 뛰는 심장박동과 함께 눌렀다.


5.

“어머, 기지모토 씨. 잘 오셨어요. 분명 와 주실 것만 같아 기다렸어요.”

라고, 도시코는 스스로 현관까지 나와 맞아주고는 기쁜 표정으로 말했다. 그녀는 다소 얼굴이 야위었으나 오히려 그런 모습 때문에 한층 아름다움이 돋보였다.

시즈야는 울어서 눈이 부운 모습을 예상하고 있었기에, 그녀의 이 말을 듣고 충격을 느껴 무슨 말을 해야 할지를 몰랐다.

“오늘 밤 가정부는 없어요. 천천히 놀다 가세요. 어서 들어오세요.”

이렇게 말하고 그녀는 불이 환하게 켜진 응접실로 시즈야를 잡아끌듯이 안내했다. 시즈야는 등나무의자에 앉고 손수건으로 땀을 닦고서는,

“정말…….”

라고 말을 꺼내자 그녀는 말을 가로막았다.

“위로의 말씀을 해주시려는 거죠? 고맙습니다. 하지만 사람 운명이란 알 수 없는 것이더군요. 제 남편은 그날 밤 당신과 함께 레스토랑에 가서 같은 것을 먹었으면서도 당신만은 이렇게 무사하신 걸요…….”

도시코가 시즈야의 얼굴을 바라보았기에 시즈야는 서둘러 눈이 부시다는 듯 깜빡거렸다. 도시코는 계속해서 말을 이었다.

“제 남편은 그날 밤 집으로 돌아오자 심한 구토를 시작하고는 3시간도 채 되지 않아서 죽었습니다. 마치 꿈만 같네요.”

“정말 그렇습니다.”라고 시즈야는 비로소 말을 할 수 있었다. “다음 날 걱정이 되어 이쪽을 찾아뵈었더니 사사키가 죽었다고 해서 깜짝 놀랐습니다. 위로의 말씀을 드리려고 해도 당신이 어디 계신지 알 길도 없고 해서 그날 이후로 매일같이 왔었습니다. 2주일이란 무척 길더군요.”

“그래요. 저도 병원에서 예방주사를 맞았어요. 당신도 주사를 맞으셨나요?”

“아뇨, 한두 번 정도의 주사만 가지고는 듣지 않는다고 하기에 귀찮아서 관뒀습니다.”

도시코는 그 말을 듣자 무슨 생각을 했는지 눈이 반짝였다.

“한두 번 정도로는 듣지 않더라도, 열 번 정도 맞으면 세균을 삼켜도 괜찮다던데요? 저는 매일 하루에 한 번씩 열 번 정도 주사를 맞았어요. 당신도 사사키처럼 죽기는 싫으시잖아요?”

“사사키가 죽었다는 소식을 듣고 나서 갑자기 죽기 싫어졌습니다.”

이렇게 말한 시즈야는 의미심장한 눈빛으로 도시코를 보았다.

“그럼 예전에는 죽고 싶으셨나요?”

시즈야는 왠지 갑자기 얼굴이 뜨거워지기 시작했기에 고개를 숙이고는 가만히 있었다.

“어서 말씀해보세요.”

시즈야는 한숨을 쉬었다.

“사실 예전에 뵙고 난 다음 자살하려고 했습니다.”

“왜요?”

“실망해서요.”

“무엇을요?”

“무엇이라니, 알고 계시잖아요.”

이렇게 말하고 그는 초등학생이 선생님 얼굴을 올려보듯 조심스럽게 도시코를 바라보았다. 두 사람의 시선이 맞았다. 도시코는 고개를 숙이고 손수건을 입으로 가져갔다.

“왜 그러시죠? 사사키가 죽어서 슬프신가요?”

도시코가 고개를 들고는 시즈야를 노려보았다. 그 눈은  열정으로 빛나는 눈빛이었다.

“제가 부끄러워졌어요.” 이렇게 말하고 또다시 고개를 숙이고는 조용한 목소리로 말했다. “얼마 전 당신한테 마음에도 없는 소리를 해버려서…….”

시즈야는 깜짝 놀랐다.

“그, 그렇다면, 도시코 씨는…….”

“남편한테는 미안하지만…….”

시즈야는 열병에 걸린 것처럼 비틀비틀 일어서서 도시코가 앉아 있는 의자 쪽으로 다가갔다.

“도시코 씨, 정말인가요?”라고 말하고서 그는 그녀 어깨 위에 손을 올렸다. 풍요로운 촉감이 그의 모든 신경을 자극했다.

“저, 불 좀 꺼주세요.”라고 도시코는 부끄러운 듯이 말했다.

시즈야는 응접실 입구에 있는 스위치 쪽으로 비틀거리며 걸어가서는 ‘찰칵’하고 눌렀다.

어둠이 두 사람을 감쌌다.

그리고……키스 소리.


6.

사랑을 하기에는 어두운 게 좋다. 이는 누구나 알고 있는 사실이다.

열려진 창문에서 미지근한 바람이 불어온다. 두 사람은 뜨거웠다.

키스가 끝나자……사내는 인내심이 없었다.

여자는 네 시간 기다려달라고 했다.

4시간! 왜?

그 4시간은 시즈야한테 있어서 ‘영원’처럼 느껴졌다.

그러나 기나긴 네 시간도 지났다. 여름밤은 밝아왔다.

그러자 사내는 암흑 속에서 이상한 소리를 냈다. 그 소리는 그런 상황에 전혀 어울리지 않는 것이었다.

“앗!”

구토 소리.

“으윽.”

구토 소리.

“호. 호. 호. 호. 호.” 날카로운 여자 웃음소리가 어둠 속에 울려 퍼졌다. “어떻게, 어떻게 당신이 사사키를 죽일 수 있죠? 비겁한 인간! 모를 거라고 생각하면 큰 오산이에요. 사사키는 예방주사를 몇 번이나 맞았거든요…….”

“으악!” 하고 배를 쥐어짜는 소리.

구토 소리.

“그래서 나는 금방 알았죠. 하지만 사사키는 독살됐는지도 모른 채로 죽었어요. 죽는 사람의 마음을 아프게 해서는 안 될 것 같아 저도 의사가 오진한 것을 다행으로 여기며 가만히 있었지요. 그래서 사사키는 예방주사도 듣지 않았다고 생각하며 죽어갔어요…….”

구토 소리.

“더구나 저는 당신을 경찰 손으로 넘기고 싶지 않았어요. 경찰한테 넘기면 사형이 될지 안 될지 모르잖아요? 저는 하루라도 빨리 내 손으로 복수하려고 했지요. 그래서 어제까지 예방주사를 맞고 살아있는 세균을 먹어도 병에 걸리지 않게까지 되었던 거예요. 방금 전 당신이 불을 껐을 때 병원에서 몰래 가져온 시험관에 든 살아있는 세균을 입에 넣었어요. 그리고 키스를 했죠. 알겠어요?”

구토 소리. 신음 소리.

“꽤나 괴로워 보이네요. 괴로워하세요. 올해 것은 독성이 강하니까 4시간이면 증세가 나타난다고 의사가 말하더군요. ‘4시간’의 의미를 알았죠? 자, 이제부터 당신은 괴로워하며 죽어가는 거예요. 불을 켤까요? 저런, 저런. 꼴 보기도 싫어요. 당신이 죽고 난 다음 경찰에 신고할 거예요. 아무리 부검을 해도 타살이라고는 절대 알 수 없겠지요. 호. 호. 호. 호. 호.”

구토 소리. 신음 소리.

죽음을 말하기에는 어두운 게 좋다. 이것도 역시……누구나 알고 있는 사실인지도 모른다.

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Posted by 문학관 관리인 위어조자(謂語助者)


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