시체양초(屍體蠟燭) 고사카이 후보쿠 (小酒井 不木) (1927) 일본어 원문 宵(よい)から勢いを増した風は、海獣の飢えに吠ゆるような音をたてて、庫裡(くり)、本堂の棟(むね)をかすめ、大地を崩さんばかりの雨は、時々砂礫(すなつぶて)を投げつけるように戸を叩いた。縁板という縁板、柱という柱が、啜(すす)り泣くような声を発して、家体は宙に浮かんでいるかと思われるほど揺れた。 夏から秋へかけての暴風雨(あらし)の特徴として、戸内の空気は息詰まるように蒸し暑かった。その蒸し暑さは一層人の神経をいらだたせて、暴風雨の物凄(ものすご)さを拡大した。だから、ことし十五になる小坊主の法信(ほうしん)が、天井から落ちてくる煤(すす)に胆(きも)を冷やして、部屋の隅にちぢこまっているのも無理はなかった。 「法信!」 隣りの部屋から呼んだ和尚(おしょう)の声に、ぴりッと身体をふるわせて、あたかも、..